ミニテストは学ぶ人に復習の機会を与え、脳の性質を生かして記憶の定着をよくしてくれるのだとか。せっかく勉強しても、全然覚えられないとお悩みなら、ミニテスト勉強法で「勉強したことを忘れない自分」をつくってみては? ミニテストの効果と方法をお伝えしましょう。
ミニテストの効果とは
慶應義塾大学の「中室牧子研究室(※)」によると、大学生が参加した経済学の研究では、「ミニテストを行なわないグループ」よりも、「毎週ミニテストを受けているグループ」のほうが、テストの点数が高くなるとわかったそうです。
また、以前に行なわれたアメリカの大学による実験では、「授業の最後にミニテストを受けていた大学生グループ」よりも、「授業の最初にミニテストを受けていた大学生グループ」のほうが、勉強時間は長くなりテストの点数も高くなることがわかったとのこと。
日本で同様の実験を行なっても同じ結果が出たそうです。その際にミニテストを受けた大学生らはこんな意見を述べたのだとか。
- 「1週間後のミニテストに向け勉強する機会が増えた」
- 「直前にミニテストを行なうと、その日の授業内容が理解しやすくなった」
- 「ミニテストそのものが復習の役割を果たしていた」
- 「大事なのは1週間後に授業内容を思い出すプロセス」
こうした内容を受け、中室牧子研究室は「ミニテストで授業内容を思い出そうとするプロセスが、記憶の定着度をより高めた」との見解を示しています。
(※2018年3月公開の参考記事内では「慶應義塾大学中室牧子ゼミナール」の名称になっているが、現在の「中室牧子研究室」と同メンバーであることから「中室牧子研究室」と記載。中室牧子氏は慶應義塾大学 総合政策学部 教授)
ミニテストの好タイミングとは
前項の内容で「授業前のミニテスト」が効果的だとわかりました。ミニテストを行なうタイミングについて、さらに考察してみましょう。
世界記憶力選手権で日本人初の「記憶力グランドマスター」の称号を獲得した池田義博氏によれば、原始の時代から人の脳は生き延びるため、生命の危機に直結した情報を優先して覚える仕組みになっているそうです。
また、ジェネシスヘルスケア顧問、新潟リハビリテーション大学特任教授でメンタリストのDaiGo氏は、学習した内容を忘れかけたころに復習すると、生存に関わる重要な情報を優先的に記憶する脳の性質が生かされると述べています。脳が「あ、また必死に思い出そうとしている。これは生存に関わる重要な情報に違いない」と判断し、長期的な記憶に残そうとするわけです。
したがって、ミニテストを行なうタイミングは「あれ? なんだったかなぁ……。ここまで出かかっているんだけど……」といった状態のときがベスト。最大のポイントは「いかに必死に思い出そうとするか」です。
ミニテスト勉強法のやり方
これまでの内容をふまえながら、ミニテストの実践法を紹介していきましょう。
1. 紙もペンもいらないミニテスト
メンタリストのDaiGo氏が実践しているミニテストの手順は驚くほどシンプルです。必要なのは本やテキスト、もしくは自分が書いたノートなど、覚えたいことが書かれている情報源のみ。テスト用の紙もペンもいらず、すぐできて簡単です。手順は以下のとおり。
- 本やテキストなどの覚えたいページを読む
- いったん本やテキストを閉じる
- いま読んだページにどんな内容が書かれていたか思い出そうとする
これがまた思い出せそうで、意外とハッキリ思い出せないのとか。慣れてきたら少しずつ覚える範囲を広げていくとのこと。
つまり、「ここまで出かかっているのに思い出せない」といった状況をつくり、生存に関わる重要な情報を優先的に記憶する脳本来の性質を生かすことに特化するわけです。同氏によれば、この方法で長期記憶に定着する確率は50〜70%上がることのこと。手間いらずで、いつでもどこでもゲーム感覚で行なえるので容易に習慣づけられるはず。
2. 自分でつくったミニテストを勉強前に
テスト勉強用アプリ「暗記メーカー(iOS/Android)」など、問題集を自分でつくることができるアプリもあるので、そちらを試してみるのもいいかもしれません。あるいは紙に手書きでつくっても、PCで打ち込んでつくってもOK。
中室研究室の実験でテストを受けた学生が「1週間後のミニテストに向け勉強する機会が増えた」と述べましたが、勉強後に自分で問題をつくることも有効な勉強の手段になるはず。プロセスが大事なので、テストをつくる方法は自分の好みでいいのです。
そして、自らつくったテストを次回の勉強前に行なえば、同研究室が述べたように前回の学習内容を思い出そうとするプロセスが、記憶の定着度をより高めてくれるでしょう。
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なお、ミニテストを行なう際は時間を決めて行ない、思い出せない場合はサッサと答えを見てしまうことをおすすめします。『東大式節約勉強法』( 扶桑社)の著者で現役東大生の布施川天馬氏によれば、長く考え込んでしまうことは時間のムダなのだとか。
同氏は3分だけ考えて、何も浮かばなければすぐに答えを見るよう徹底しているそうです。よろしければ参考にしてみてくださいね。
(参考)
東洋経済オンライン|「忘れるのが早すぎる」自分を変える簡単なコツ | リーダーシップ・教養・資格・スキル
ダイヤモンド・オンライン|子どもの記憶力がアップする正しい褒め方 | “日本一の記憶力”池田義博が教える 仕事ができる人の記憶術
STUDY HACKER|東大生直伝「コスパがいい勉強」と「コスパが悪いクセ」。東大生は勉強前に◯◯している
Apple(日本)|「テスト勉強用アプリ「暗記メーカー」」をApp Storeで
Google Play|テスト勉強用アプリ 「暗記メーカー」
NIKKEI STYLE|小テストを行うなら、授業の前か後か
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STUDY HACKER 編集部
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