社内チャットで返信しつつ、メールもチェックして、企画書のための情報を収集すると同時に、スマートフォンでSNSをチェック……。

もしもあなたが日常的に、こんなマルチタスクを行っているなら、いますぐ止めることを強くおすすめします。マルチタスクによる弊害と、シングルタスクを続けるコツをご紹介しましょう。

マルチタスクがNGである理由1:【学習能力の低下】

東北大学加齢医学研究所教授の川島隆太氏は、2万人以上の市立中学生(仙台市)を対象にした学習に関する調査をもとに、2011年から独自の解析を開始したそうです。

すると、スマートフォンを長時間使用する中学生ほど、学力が下がっていくという事実が見えてきたのだとか。しかも、「スマートフォンを数時間使う習慣があり、毎日2時間以上勉強している生徒」は、「スマートフォンを使う習慣がなく、家で勉強をほとんど行わない生徒」よりも成績が低いのだとか。

このことに関して川島教授は、スマートフォンによる「メディア・マルチタスキング」の影響を示唆しています。スマートフォンは、さまざまなアプリや情報を細かくスイッチングできるため、マルチタスクの状況を確実につくり出します。それにより「前頭前野に強い抑制がかかり、悪影響が起きているのではないか」と川島教授は仮説を立てているそう。

スマートフォンの操作を含むマルチタスクが、ビジネスパーソンの資格試験や昇格試験のための勉強、スキルアップのための勉強、そして、日々仕事で学んでいることを台無しにしているのは明確です。

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マルチタスクがNGである理由2:【脳の混乱・中毒を引き起こす】

神経科学者の Daniel Levitin 氏は2015年1月にイギリスの The Guardian 誌で、マルチタスキングは、ストレスホルモンのコルチゾールやアドレナリンを増加させて脳を過度に刺激するため、頭をモヤがかかった、ごちゃ混ぜの状態にしてしまうと述べています。

また、マルチタスクは、快感ホルモンのドーパミンを分泌させ、ドーパミン中毒のフィードバックループをつくるそう。小刻みにタスクを変えることで脳が好きな“新しい情報”をたくさん得られたり、SNSなどのつながりに社会的な期待を持てたりするからです。そうなると人は焦点を失い、絶えず外部刺激を探すようになるのだとか。

たとえばPCの作業をしていたら、スマートフォンの通知ランプに気がついたので、返信を打ち込むついでにSNSをチェック。そこで電話の用事を思いだし、電話しながら仕事のメールチェックをしているとき、あなたの脳にはモヤがかかり、ごちゃごちゃになっていて、おまけにドーパミン中毒にもなっているということです。脳が混乱した状態で、仕事の生産性を高めるのは到底不可能ですよね……。

マルチタスクがNGである理由3:【記憶力を低下させる】

Forbesに寄稿しているマルチベストセラー作家・戦略アドバイザーの Ian Altman 氏は、過去の科学誌記事からマルチタスクがストレスホルモンを増加させることを示し、「ストレスホルモンは短期記憶を悪化させるので、いくら努力しても情報が保持できなくなる」と述べています。

医薬品メーカーのエーザイが運営する「もの忘れ」に関するサイトでも、脳内のコルチゾールが増加すると、記憶にかかわる脳の「海馬」に作用し、記憶力の低下につながると説明しています。それに加え、注意力や認知能力まで低下してしまうのだとか(東京医科歯科大学脳統合機能研究センター特任教授・朝田隆氏監修)。

カリフォルニア大学の研究でも、マルチタスクが情報を吸収する脳の能力を妨げることが示されています。仕事で覚えなければいけないことはたくさんあるはず。それができず、なおかつ名刺交換をした人の名前や顔、その部署を覚えられないのは、ビジネスパーソンにとって由々しき事態なのです。

マルチタスクがNGである理由4:【問題解決力を低下させる】

イギリスの心理学者 Glenn Wilson 博士は、マルチタスクでストレスレベルが過度に上昇すると、IQ(知能指数)を10ポイント低下させるため、問題解決能力を低下させると語っているそう。

もちろん、問題解決には、感情を上手く扱い、適切な思考や行動に導くEQ(心の知能指数)も必要不可欠です。しかし、物事を記憶し、知識として生かすIQは、論理的な問題解決にはとても重要なのです。

そして、問題解決能力は、あらゆるビジネスの現場で必要不可欠なスキル。マルチタスクは、この能力までも奪ってしまうということです。

マルチタスクを回避する仕事のすすめ方

いまさらスマートフォンを地球上から抹消することはできないし、情報の入手にも人とのつながりにも事欠かないインターネットは排除できません。ならば、マルチタスクを回避できるような仕事のすすめ方を習慣づけましょう。

マッキンゼーのシニアアドバイザー、Caroline Webb 氏の著書『最高の自分を引き出す 脳が喜ぶ仕事術』や、コーネル大学ジョンソンスクールの客員教員を15年以上にわたり務め、マネジメントスキルやネットワーキングについて講義を行う Devora Zack 氏が著した『SINGLE TASK 一点集中術 「シングルタスクの原則」ですべての成果が最大になる』に記されている内容を参考に、シングルタスクを続けるためのコツをご紹介します。

重複するような内容もありますが、それぞれ視点が違うので、自身が理解しやすく、取り入れやすいものを選択してくださいね。

1.仕事を分類して個々に集中

たとえば「考える時間」「資料のチェック」「メールやチャットの返信」など、仕事を分類して、シンプルなタスクにする。

2.類似タスクをまとめる

自身の平均的な3日間をピックアップして作業を書き出し、脳のモードを切り替える必要のない類似タスクをまとめ、グループごとに片付ける。

3.それぞれのタスクを適時に

たとえば朝はインプットや考える作業、昼食前や休憩前にメールの送信や電話、その合間に単純な作業を行うなど、自分にとって、それぞれの作業がもっとも適した時間帯に行う。なお、もっとも難しい作業は、朝でも夜でも自分が一番調子のいい時間帯に行う。

4.「1×10×1」システムを活用

もしも仕事がたまってしまったら、メール返信など「1分」で片付くタスクから着手し、次に電話や書類をファイルに入れるなど「10分」で済むタスクを行い、最後に「1時間」以上かかるタスクを片付けるという、「1×10×1」システムを採用し、リズムをつけてそれぞれに集中。

5.パーキングロットを行う

会議などで本来の議事とは無関係なテーマが生じた場合、議事進行が妨げられないよう、あとで話し合うため記録しておく「パーキングロット(駐車場)法」を活用。

進行中の作業とは関係のないこと(たとえば「メールしなきゃ」「あのレポートの期限はいつだったか」「セミナーの予約」など)が頭に浮かんだら、レポート用紙などに書いて頭から切り離し、目の前のタスクに集中する。ひとつの作業が終わったら、書いた内容をチェックして対処する。

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こちらの記事“マルチタスクでIQが下がる!? 私の生産性を1.5倍にした効率的な「シングルタスク」3つの極意”にも、効果的な方法を紹介しています。ぜひご参考にしてみてくださいね。

(参考)
ダイヤモンド・オンライン|スマホのせいで偏差値10ダウン!?子どもの脳に何が起きているのか
Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)|マルチタスクは非効率的 成功のための正しい作業方法とは?
The Guardian|Science|Why the modern world is bad for your brain
The Guardian|Money|If you only do one thing this week … avoid multitasking
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