マルチタスクが脳に及ぼす悪影響とは? 4つのデメリット

マルチタスクとは、複数の作業を同時に行うことだと考えられています。一見すると効率がよさそうですが、実は効率が悪いうえ、あなたの脳に悪影響を及ぼす可能性があるのです。今回は、マルチタスクのデメリットと、脳への影響、そしてシングルタスクに集中する方法について詳しくご紹介します。

マルチタスクとは

マルチタスク(multitask)とは、そもそもコンピューター用語。文字どおりには「多くの仕事」という意味です。オフィスのIT環境構築支援を手がける大塚商会によると、マルチタスクは以下のような状況だそう。

厳密にはまったく同時には複数のタスクを処理できないが、OSが複数のタスクを細かく分割し、素早く切り替えながら高速に実行することで、あたかも複数のタスクが同時実行されているように見えているのである。

(太字による強調は編集部が施した)
(引用元:大塚商会|マルチタスク

たとえば、PCでデータをダウンロードしているあいだに文書を作成したり、音楽を再生しながら画像を編集したりといったことがマルチタスクにあたります。また最近は、スマートフォンの画面を分割して同時に2つのアプリケーションを表示させることも、マルチタスクと呼ばれています。

仕事におけるマルチタスクとは

マルチタスクは仕事中にも起こりえます。個人の業務とグループでのプロジェクトを同時期に把握・進行させたり、会議で意見交換しながらも手元で別の作業をやったり。この記事で特に扱うのは、後者。関係のない別々の作業を同時に行うことです。

顧客の電話対応を行いながら会議の資料を作成したり、ラジオで情報収集しながら新聞を読んだり……このような行動をとっている人は、「同時に2つのことができるなんてすごい!」「仕事の効率がよさそうな人だなあ」と尊敬の目を向けられる場合があります。このような人を「マルチタスク能力がある」と称賛する向きも一部ではあるようです。

しかし、人間はコンピューターと同じで、実は厳密なマルチタスク処理は行えないのです。「素早く切り替えながら高速に実行することで、あたかも複数のタスクが同時実行されているように見えている」だけ。実際は、集中力を向ける先を交互に変えているだけで、同時に2つの物事に集中できているわけではありません。そのため、仕事においてマルチタスクを行うのは、効率的ではないのです。

マルチタスクが脳に及ぼす影響1:学習能力の低下

マルチタスクが脳に悪影響を及ぼすことは、複数の研究者によって示唆されています。たとえば東北大学加齢医学研究所教授の川島隆太氏は、2万人以上の市立中学生(仙台市)を対象にした学習に関する調査をもとに、2011年から独自の解析を開始したそうです。

すると、スマートフォンを長時間使用する中学生ほど、学力が下がっていくという事実が見えてきたのだとか。しかも、「スマートフォンを数時間使う習慣があり、毎日2時間以上勉強している生徒」は、「スマートフォンを使う習慣がなく、家で勉強をほとんど行わない生徒」よりも成績が低いのだとか。

このことに関して川島教授は、スマートフォンによる「メディア・マルチタスキング」の影響を示唆しています。スマートフォンは、さまざまなアプリや情報を細かくスイッチングできるため、マルチタスクの状況を確実につくり出します。それにより「前頭前野に強い抑制がかかり、悪影響が起きているのではないか」と川島教授は仮説を立てているそう。

スマートフォンの操作を含むマルチタスクが脳に悪影響を及ぼし、ビジネスパーソンの資格試験や昇格試験のための勉強、スキルアップのための勉強、そして、日々仕事で学んでいることを台無しにしているのは明確です。

マルチタスクが脳に及ぼす影響2:混乱・中毒を引き起こす

マルチタスクは、脳内で分泌される神経伝達物質にも影響を及ぼしています。神経科学者のDaniel Levitin氏は2015年1月にイギリスの新聞『The Guardian』で、マルチタスキングは、ストレスホルモンのコルチゾールやアドレナリンを増加させて脳を過度に刺激するため、頭をモヤがかかった、ごちゃ混ぜの状態にしてしまうと述べました。

また、マルチタスクは、快感ホルモンのドーパミンを分泌させ、ドーパミン中毒のフィードバックループをつくるそう。小刻みにタスクを替えることで脳が好きな“新しい情報”をたくさん得られたり、SNSなどのつながりに社会的な期待を持てたりするからです。そうなると人は焦点を失い、絶えず外部刺激を探すようになるのだとか。

たとえばPCの作業をしていたら、スマートフォンの通知ランプに気がついたので、返信を打ち込むついでにSNSをチェック。そこで電話の用事を思いだし、電話しながら仕事のメールチェックをしているとき、あなたの脳にはモヤがかかり、ごちゃごちゃになっていて、おまけにドーパミン中毒にもなっているということです。マルチタスクは脳を混乱させてしまうのですから、マルチタスクによって生産性を高めるのは不可能だといえるでしょう。

マルチタスクが脳に及ぼす影響3:記憶力を低下させる

マルチタスクによって生じるストレスは、脳に多大な影響を与えます。米国の経済誌『Forbes』に寄稿しているマルチベストセラー作家・戦略アドバイザーのIan Altman氏は、過去の科学誌記事からマルチタスクがストレスホルモンを増加させることを示し、「ストレスホルモンは短期記憶を悪化させるので、いくら努力しても情報が保持できなくなる」と述べました。

医薬品メーカーのエーザイが運営する「もの忘れ」に関するWebサイトも、脳内のコルチゾールが増加すると、記憶にかかわる脳の「海馬」に作用し、記憶力の低下につながると説明しています。それに加え、注意力や認知能力まで低下してしまうのだとか(東京医科歯科大学脳統合機能研究センター特任教授・朝田隆氏監修)。

カリフォルニア大学の研究でも、マルチタスクが情報を吸収する脳の能力を妨げることが示されています。仕事で覚えなければいけないことはたくさんあるはず。それができず、なおかつ名刺交換をした人の名前や顔、その部署を覚えられないのは、ビジネスパーソンにとって由々しき事態です。マルチタスクは脳にとって、百害あって一利なし、といえます。

マルチタスクが脳に及ぼす影響4:問題解決力を低下させる

マルチタスクが脳に与える影響は、人間が持つ根本的な能力を破壊してしまうかもしれません。イギリスの心理学者Glenn Wilson博士は、マルチタスクでストレスレベルが過度に上昇すると、IQ(知能指数)が10ポイント低下するため、問題解決能力が低下すると語っているそう。

もちろん問題解決には、感情を上手く扱って適切な思考や行動に導くEQ(心の知能指数)も必要不可欠です。しかし、物事を記憶し、知識として生かすIQは、論理的な問題解決にはとても重要なのです。

そして問題解決能力は、あらゆるビジネスの現場で必要不可欠なスキル。マルチタスクが脳にもたらす影響によって、この能力までが奪われてしまうのです。このように、マルチタスクは脳にとってデメリットばかりなので、原則的に回避するべきだといえます。

シングルタスクとマルチタスク

マルチタスクの反対語は、シングルタスク。物事に集中して何らかの成果を挙げたいと思うのなら、マルチタスクはやめて、シングルタスクに集中しましょう。

米国のコンサルティング企業・マッキンゼーのシニアアドバイザーであるCaroline Webb氏の著書『最高の自分を引き出す 脳が喜ぶ仕事術』(草思社、2016年)や、コーネル大学ジョンソンスクールの客員教員を15年以上にわたり務め、マネジメントスキルやネットワーキングについて講義を行うDevora Zack氏が著した『SINGLE TASK 一点集中術 「シングルタスクの原則」ですべての成果が最大になる』(ダイヤモンド社、2017年)に記されている内容を参考に、シングルタスクを続けるためのコツをご紹介します。

重複するような内容もありますが、それぞれ視点が違うので、ご自身にとって理解しやすく取り入れやすいものを選択してくださいね。

1.仕事をシンプルなタスクに分類する

たとえば「考える時間」「資料のチェック」「メールやチャットの返信」など、仕事を分類して、シンプルなタスクにする。

2.類似のタスクをまとめる

3日間の平均的なタスクを洗い出し、脳を切り替える必要のない類似タスクをまとめ、グループごとに処理する。

3.それぞれのタスクを最適な時間帯にこなす

たとえば朝はインプットや考える作業、昼食前や休憩前にメールの送信や電話、その合間に単純な作業を行うなど、自分にとって、それぞれの作業がもっとも適した時間帯に行う。なお、もっとも難しい作業は、朝でも夜でも自分が一番調子のいい時間帯に行う。

4.「1×10×1」システムを試す

メール返信など「1分」で片付く最小タスクから着手し、次に電話や書類をファイルに入れるなど「10分」で済む小さめのタスクを行い、最後に「1時間」以上かかる大きなタスクを片づけるという「1×10×1」システムを採用し、緩急をつけてそれぞれに集中する。

5.「パーキングロット法」を行う

会議などで本来の議事とは無関係なテーマが提示された場合、進行が妨げられないよう、あとで話し合うために記録しておく「パーキングロット(駐車場)法」を活用する。

進行中の作業とは関係のないこと(「メールしなきゃ」「あのレポートの期限はいつだったか」「セミナーを予約しないと」)が頭に浮かんだら、レポート用紙などに書いて頭から切り離し、目の前のタスクに集中する。そのタスクが片づいてから、書いた内容をチェックして対処する。

***
このように、マルチタスクが脳に与える影響は深刻なものばかり。「自分もやってしまっている」と気づいたら、すぐシングルタスクに切り替えましょう。

こちらの記事『マルチタスクでIQが下がる!? 私の生産性を1.5倍にした効率的な「シングルタスク」3つの極意』でも、効果的な方法を紹介しています。ぜひ参考にしてくださいね。

(参考)
StudyHacker|余計なことに集中してない? 『マルチタスク型人間』のための、2つの “集中力キープ法”
大塚商会|マルチタスク
ダイヤモンド・オンライン|スマホのせいで偏差値10ダウン!?子どもの脳に何が起きているのか
Forbes JAPAN|マルチタスクは非効率的 成功のための正しい作業方法とは?
The Guardian|Why the modern world is bad for your brain
The Guardian|If you only do one thing this week … avoid multitasking
エーザイ|もの忘れの教室|「もの忘れ」のおもな原因
アドバンテッジリスクマネジメントのEQソリューション|EQとは
RE:GRIT|脳を正しく使って生産性を上げよう!高いパフォーマンスを実現するマッキンゼー流仕事術
リクナビNEXTジャーナル|生産性10倍に?!「シングルタスク」に切り替える方法

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