大学受験に新聞が効く! こんなことを言う広告を見た人も多いはず。
大学受験の問題に取り上げられた記事数や率を取り上げ、新聞の購読を勧めるところもあります。
確かに、世の中の流れを知ったり、まとまった文章を読む訓練にしたり。 新聞を読むことで学力が鍛えられるのは本当でしょう。
でも、宣伝されているように「この社のものが多く出題されているから」といってその新聞を買う。
それは本当に正しい「新聞の使い方」なのでしょうか。
今日はどうして新聞が大学受験に効くのか。そこから考えてみたいと思います。
論理的な文章を読み通す力をつける
新聞の文章は、世の中で起きた出来事を正確に伝えることを目標としています。 実際にどうなっているかは置いておくとして、誰にでも理解できることを目指しているわけです。
こんな出来事が起きた。それについてこういう意見がある。反対意見もある。社としてはこういう意見を打ち出している。それが書かれています。
大学受験で出題される文章も、基本的には同じ。誰にでもわかるように、論理的な文章が選ばれています。論理的な文章を読み解き、問いに答える。
それができるかできないか、で合否を判断されるわけです。 ですから、同じような論理的な文章に日常から触れておくのが大事です。
毎日届き、しかも内容も全く新しいものばかり。新聞はまさにぴったりといえるでしょう。
実際の訓練としては、「言いたいこと」がなんなのか。それを意識しながら読むとよいでしょう。記事を一度じっくり読んで、
・その記事で伝えたいことは何か ・一般的にはどんな意見があるのか ・それに対する反対意見はどんなものか ・学者など権威はどんなコメントを残しているのか ・その新聞社はどんな意見なのか
これらを意識的に考えてみるとよいでしょう。
コラム欄は微妙かも。
最近、新聞のコラム欄が流行していますね。大抵の新聞は、第一面の下部、広告のすぐ上に、コラム欄を設けているようす。身近な話から時事ネタへと話が展開したり、社会問題から身近な話に話題が広がったり。非常に楽しく読めるのが特徴です。
最近では書き写したり、毎日スクラップして貼ったりするためのノートが売られたりもしているんだとか。大学受験対策にコラム欄を読むようにと勧める新聞社も多くあります。
ですが、このコラム欄「論理的な文章を読み解く」という目的から考えると、ちょっとビミョーなのです。
それは、このコラム欄の目的が「物事を伝える」というよりも「展開を楽しむ」ためのものだから。論理的な文章というのは、必ず伝えたいことがあります。それを根拠や他者の意見を述べつつ、補強していくのが特徴。
一方コラム欄は、何か明確に伝えたいことがあるわけではありません。確かに書いた人の意図はありますが、「伝えたいこと」「論拠や証拠」は、一般の記事の方が豊富です。
確かに大学受験で出題されていたりもしますが、それはあくまで小論文の導入などとして用いられるのが大半で、内容そのものの読解を問うものではありません。
学力を身につけるため、として読むのに相応しいわけではないのです。
英語で必要な「スキミング力」もつけられる
新聞には、「論理的な文章である」という他に、もう一つ特徴がありました。 それは「大量の情報が載っている」ということ。
昨日起こったニュース、政治の動き、大企業の不祥事、コラム、地方面……。 すべて含めれば相当な量になるはず。自分の興味のあるところを探し出すのだけでも一苦労です。
大学受験では得てして、大量の情報から素早く自分の使いたいものをピックアップする能力が求められます。いわゆる「スキミング力」ですね。特に英語では、大量の英文がドカンと与えられ、出題されるのはその中の一部、ということも珍しくありません。
そういう場合、文章自体が難しいことは少ないのです。じっくり読めば簡単に解ける。でも時間内に、必要な情報だけをピックアップしてくるのは難しい。そんなものが多いんですね。
もし日本語でそれができなければ、英語でできるはずもありません。 だからそのトレーニングを、新聞でやってみてほしいのです。
まず新聞を手に取ったら、目次を確認せずに、ざっと全体を通して見てみましょう。そしてその中から興味のある内容をピックアップして、読んでいくのです。
こうすることで、自然と情報の取捨選択ができます。 スキミング力養成のために。ぜひお試しあれ。
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最後に新聞を使った学力向上の方法を二つ、もう一度まとめておきます。
1、記事を読むときは ・その記事で伝えたいことは何か ・一般的にはどんな意見があるのか ・それに対する反対意見はどんなものか ・学者など権威はどんなコメントを残しているのか ・その新聞社はどんな意見なのか を意識して考えてみる
2、新聞を手に取ったらまず、目次を見ずに、全体に目を通してできるだけ素早く自分の興味のある記事を探してみる
「あの社のものがよく出題されているから」「こういうタイプの記事がよく出題されているから」そんなことにとらわれずに、もっと幅広く新聞を読んでみてくださいね。
参考 朝日新聞広場|朝日新聞のココが出た!