転職で必要とされる英語力とは? 具体的なスキルも紹介!

インターネットで仕事探しをする転職希望者

「転職に向けてどれだけの英語力を身につければいいの?」
「転職ではどんな英語力が求められるの?」

あなたが転職を考えているなら、そんな疑問を感じた経験はあるはず。多くの企業が高い英語力をもつ人材を求めているなか、いますぐ英語力を伸ばしたいと思う方は多いでしょう。

実際にどの程度の英語力が必要なのか、転職市場でどんな英語力が重要なのか、気になっている……。そんな方のために、本記事では、英語力が特に求められる業界を紹介するとともに、転職先で求められる具体的な英語スキルについて深掘りします。最後まで目を通して、転職に必要な英語力をどう鍛えるべきか考えるヒントにしてみてください。 

【監修者プロフィール】
田畑翔子(たばた・しょうこ)
米国留学を経て、立命館大学言語教育情報研究科にて英語教育を専門に研究。言語教育情報学修士・TESOL(英語教育の国際資格)を保持。株式会社スタディーハッカー常務取締役、コンテンツ戦略企画部部長。

堀登起子(ほり・ときこ)
大学で言語学を学び、卒業後は英語講師やPR企業の海外担当として活躍。通訳・翻訳として10年以上のキャリアをもつ。大学院では国際言語教育について学びつつ、多読スクールを運営。脳科学とComplex Theoryの視点から第二言語習得をとらえることがライフワーク。大学の助教として英語を指導したこともある。TESOL修士取得。株式会社スタディーハッカーコンテンツ戦略企画部。

転職市場で高い英語力をもつ人材が求められているのはなぜ?

そもそも、転職市場で高い英語力がいま求められているのはなぜでしょうか? 大きな理由のひとつとして挙げられるのが、社員に英語スキル強化を求めている企業が多いという点。日本の労働人口減少によって、外国人労働者受け入れが急増しています。外国人従業員が多く働く企業では、日本語だけでは業務遂行が難しくなっているのです。

さらに、日本だけでなく海外でも事業を展開する企業で働く場合、海外の取引先やクライアントとのコミュニケーションも必要になります。こうした人々とやりとりするための手段として、英語力が求められているのです。

企業が英語力を求めているのは、データでも示されています。TOEIC®︎テストを運営する国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)が実施した「英語活用実態調査2019」によると、「英語」をビジネスパーソンにとって重要なスキルとして挙げたのは、回答した企業全体の82.6%。そして、67.0%の企業が社員の英語力の向上が必要だと答えました。

なかでも、企業が社員の英語力を評価する重要な基準のひとつとされているのが、TOEICスコア。英語を使用する部署で中途採用を行なう際、61.2%の企業がTOEICスコアを採用基準に含めています

同調査によると、社員・職員に期待するTOEIC Programの平均スコアは次のとおりです。

  • Listening & Reading
    中途社員・技術部門→560点 営業部門→575点 海外部門→690点
  • Speaking
    中途社員→110点 技術部門→120点 営業部門→120点 海外部門→140点
  • Writing
    中途社員→110点 技術部門→130点 営業部門→120点 海外部門→140点

上記のスコアを考慮すると、Listening & Readingでは575点以上、Speakingでは120点以上、Writingでは130点以上を目安として目指すとよいでしょう。特に海外部門への転職を考えている場合、より高いスコアが求められます。

以上のことから、英語力が高いほど、転職市場で有利に働くことが多いと言えます。転職における英語力の重要性がおわかりいただけたでしょうか。

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転職希望者が高い英語力を身につけるメリット

「絶対に外資系企業で働きたいというわけでもないし、転職するのに英語力は必要ないだろう」と考えている方もいるかもしれません。しかし、転職したい人が高い英語力を身につけるメリットは、意外にも大きいもの。その主な根拠は次のふたつです。

  • 職種の幅が増える
  • 年収アップのチャンスが生まれる

順番に詳しく見てみましょう。

1. 職種の幅が増える

英語力を身につければ、仕事の幅が格段に広がります。国際的なプロジェクトや海外のクライアントとの取引など、より多くの業務に携わる機会ができるのです。

英語力があることで、これまで手が届かなかった職種やポジションへの道が開けますよ!

2. 年収アップのチャンスが生まれる

英語力が高い人材は企業から高く評価され、その結果、より多くの年収を得ることができます

バイリンガル人材向けの転職・求人情報サイト「Daijob.com」のデータによると、企業からスカウトされる人材の76%が、ビジネスレベル以上(TOEIC735点以上に相当)の英語力を有しているそうです。

またデータでは、大半の職種でビジネス会話ができるレベル以上の英語力を有する人のほうが、日常会話以下の人よりも平均給与が高い結果が示されました。職種が「エグゼクティブ / 経営」の場合、英語力の有無で、1.4倍の年収差が見られたとのこと。金融、銀行など金融関連職種では、この差はさらに大きく、1.6倍にもなります。

そして、人材紹介・人材派遣会社のエンワールド・ジャパン社の調査でも、英語力向上と収入増加の強い関連性が見られます。特に「上級」レベル、つまり流暢に英語を話せる人々のなかで、年収が1,000万円を超える割合は約60%でした。

こうした調査結果をふまえると、英語力は年収にも直結する大きな武器であることがわかります。英語力は、よりよい職種へのキャリアアップのチャンスだけでなく、年収面のメリットももたらすのです。

転職に英語力は不要だと思っている方も、職種の幅や年収面のメリットから、考えを変えてみてはいかがでしょうか。

転職で年収がアップする様子

転職で英語力が特に求められる業界

英語力が高ければ高いほど、転職後のキャリアで大きなアドバンテージになる業界があります。ここでは、その代表的な業界をご紹介しましょう。

貿易業界

貿易業界では、海外から商品を買いつけたり、自社製品を輸出したりする際に英語力が不可欠です。英語を使う業務は、海外との交渉や通訳、文書の翻訳など、多岐にわたります。

英語力をもてば、海外の取引先とのコミュニケーションがより円滑に進むようになるでしょう。

IT・テクノロジー業界

ITやテクノロジー業界では、取引先が海外企業や外資系であることが多いものです。また、最新の技術動向を追うためには、幅広い情報収集が必要。そうした情報の多くが英語で提供されています。

特に英語力の高いエンジニアは、英語のエラーメッセージへの対応がしやすいため、重宝される存在になるでしょう。

金融業界

金融業界では、海外投資家との調整や交渉、契約書や資料の作成、海外ファンドの管理など、英語力が必須とされる業務が多数あります。国際的な取引が日常的に行なわれるため、英語力は業務遂行に欠かせないスキルです。

観光・ホスピタリティ業界

観光・ホスピタリティ業界では、近年のインバウンド観光客の急増にともない、英語力のニーズが高まっています。2023年10月の訪日外国人数は約252万人と、パンデミック前の2019年同月比を超える数を示しました。

なかでも、シンガポールなどの東南アジア、アメリカやドイツなどを含む欧米豪地域からの訪日外客数が増加したそうです。

観光・ホスピタリティ業界において、外国人観光客に対する英語での対応力がよりいっそう求められると言えるでしょう。

製薬・医療業界

製薬・医療業界での転職において、英語力は不可欠なスキルとなっています。特に臨床開発(CRA)の領域だと、新薬開発において海外の取引先や国際チームとのやりとりがさかん。国際的なチームワークを築くうえで、英語力が重要なツールです。

医薬品の情報提供を担う重要な役割を果たすメディカルサイエンスリエゾン(MSL)としての転職を目指す場合も、専門知識だけでなく英語力が必須です。

ほかにも、製薬会社のマーケティング職では、専門知識とともに海外情報の収集能力が求められます。海外情報を収集するためには英語力が欠かせません。メディカルライターとして働く場合も、英語の学術論文や海外学会の取材に対応するために、高い英語力が求められます。

英語力の証明としては、TOEIC®テストスコアが参考になり、750点以上を目安にするとよいでしょう。臨床開発分野における求人では、国内外の企業を問わず、英語力の要求が高まっており、特に国際共同試験では日常会話以上の英語力が必要とされます。

製薬・医療業界における転職を目指す方は、外資系企業ではTOEIC700点以上内資系では600点前後の英語力があると有利です。

これまでご紹介した業界で活躍するには、高い英語力が非常に重要です。英語力があれば、より多くのキャリアチャンスが得られ、転職市場での競争力が高まります。上記の業界に転職を考えている方は、英語力の向上に注力するとよいでしょう。

転職市場のさまざまな業界

転職先で重宝される英語力:必要なスキルとその磨き方

転職先で英語力が必要な場合、主にどのようなスキルが求められるでしょうか? 以下に挙げるスキルを身につけておくと、多くの業界や職種で重宝されるはずです。

リーディング

英語を使う職場なら、英文資料、報告書、契約書、Eメールなどのリーディングスキルが必須。書かれている情報を正確に迅速に理解するのに必要です。

現代の翻訳ソフトは非常に進歩しており、「翻訳ソフトに頼れば問題ない」と思うかもしれません。しかし翻訳ソフトは、業界固有の用語や文脈に合わせた適切な翻訳を提供できない場合があります。また、翻訳ソフトが間違った翻訳をする可能性も否定できません。

このようなリスクを考慮すると、自分自身で英語のリーディングスキルを身につけることの重要性が浮き彫りになります。また、翻訳ソフトが提供する訳が適切かどうかを判断するためにも、英語の理解力が必要です。

リーディングに関しては、資料やメールを読むのに時間がかかることで悩んでいる方が多いかもしれません。なぜ読むスピードが遅くなるのかというと、きれいな日本語に訳そうと「返り読み」(*)をしてしまうから。

*返り読み:英文に一度最後まで目を通してから訳し上げていく読み方

英文を速く読むためには、英文を頭からチャンク(意味のかたまり)ごとに理解していく「チャンクリーディング」が効果的です。この読み方を身につければ、複雑な構文でも返り読みせずに、文頭から順番に理解できますよ。

リーディングスピードを効率よく上げる方法の詳細は、コラム「英語の長文が読めない主な理由と解決方法」が参考になるはずです。

リスニング

海外クライアントやスタッフと円滑にコミュニケーションするなら、正確なリスニングスキルは欠かせません。英語でのプレゼンテーションや会議の内容を理解する際にも、リスニング力が問われます。

みなさんのなかには、英文を読めばわかるのに、聞き取りが苦手だと感じる方がいるでしょう。きっと、「相手の話す英語が速すぎるから聞き取れない」と思っているのではありませんか? じつはもっと大きな原因は、「実際に発音される音」と「自分が想像している音」にギャップがあることなのです。

リスニングは、耳から入った音声を聞き分ける「音声知覚」と、聞き取った英語の内容の「理解」のふたつのプロセスから成り立ちます。実際に発音された音を英語として認識できないと、次の「理解」のプロセスに進みづらくなり、聞いて理解することが難しくなるのです。

ではどうしたら、「実際に発音される音」と「自分が想像している音」のギャップが埋まるのでしょうか? その謎を解く鍵は「音声変化」です。詳細は、コラム「英語の『音声変化』の特徴と効果的な学習方法」をチェックしてみてくださいね!

スピーキング

英語が多く使われる企業では、電話でのやりとり、プレゼンテーション、会議での発言、さらには交渉など、多様な場面でスピーキングスキルが求められます。英語で流暢に発言や説得ができるスキルは、ビジネスシーンでの効果的なコミュニケーションに不可欠です。

加えて、外資系企業や海外での転職を検討している場合、英語による採用面接も避けて通れません。自己PRや志望理由を簡潔に述べられるだけでなく、想定外の質問にも自信をもって答えられる準備も必要です。

転職に向けて英語を学ぶ多くの方が、流暢に話せるようになることを目指します。しかし、転職に活かせるスピーキングスキルを伸ばすためには、単に「話す」練習だけでは不十分

じつは、リーディングやリスニングといった「インプット」の学習が、英会話の「アウトプット」スキル向上に密接に関わっています。意外に思われるかもしれませんが、英語の理解を深め、豊かな表現力を養うためには、読むことや聞くことが不可欠なのです。

スピーキングスキルを伸ばす本当の近道は、コラム「英語のスピーキング力を効率よく伸ばせる勉強法」を見れば明らかになりますよ!

ライティング

海外の取引先とやりとりする際は、ビジネス文書や契約書、Eメールの作成スキルも必要。なかでもEメールでは、意図が明確で誤解を招かない文章で情報を伝えるスキルが重要です。

相手に伝わりにくかったり、失礼な印象を与えてしまったりする英文のメールだと、業務遂行に悪影響が出ます。それでも、英文メール作成で意識すべきポイントを押さえ、ルールを守って書けば、相手により確実に伝えられるようになるはずです。

詳細は、コラム「英文ビジネスメールの不安解消! 8つの重要ポイントと便利な表現」をチェックしてみてください。

以上のような英語力を身につけておけば、転職先で重宝される人材となれるはずです。

英文履歴書をもとに面接を受けている様子

転職でアピールできる英語力を身につけるための最短ルート

「転職に向けて英語力を伸ばす時間がない」と悩んでいませんか? 企業分析や書類準備、面接対策などで忙しいなか、英語学習に時間をかけられないと感じるのも無理はないですよね。

そこで、転職活動で忙しくても、効率よく英語力を身につける最短ルートを3ステップでご紹介します。

  1. 英語力に関する自らの課題を客観的に理解する
  2. 課題に合ったトレーニング方法を見つけ、実践する
  3. 英語学習を習慣化する

どういうことか、それぞれ詳しくご説明しましょう。

1. 英語力に関する自らの課題を客観的に理解する

英語学習を始める前に、まず自分の英語力の現状を客観的に把握することが重要です。他人の学習方法をそのまままねるのではなく、自分自身の弱点や課題を理解しましょう。

たとえば、基本的な文法や語彙が不足している、読むスピードが遅い、聞き取りができないなど、人によって異なる課題があります。これを正確に把握することで、効果的な学習計画を立てられます。

2. 課題に合ったトレーニング方法を見つけ、実践する

次に、自分の課題に合った効率的なトレーニング方法を見つけ、実践しましょう

たとえば、読むスピードが遅いなら、文を「意味のかたまり」でとらえるトレーニングを行なうなど、自分のニーズに合わせた学習方法を選ぶことが大切です。課題を克服するたびに新たな課題に取り組めば、段階的な英語力向上が実現できます。

3. 英語学習を習慣化する

そして、英語学習の習慣化が、長期的な学習の成功の鍵です。モチベーションに頼るのではなく、毎日特定の時間に英語学習を行なうなど、生活の一部として定着させることが重要。この習慣化が、転職でアピールできる高い英語力につながるのです。

英語力を身につけてキャリアアップの道を進む様子

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