「勉強」の意味とは? なぜ勉強するのか深堀りしてみた

「勉強」の意味とは?

ふと人生を味気なく感じたり自分に足りないものを見つけたりして、「勉強でもしようかな……」と思ったことはありませんか? 自分を成長させるのに勉強は欠かせませんよね。

ですが、そもそも「勉強」とは具体的に何を意味するのでしょうか? 勉強とは何か、なぜ勉強するのかを掘り下げてみましょう。

勉強とは何か

まずは、勉強という言葉の意味を明らかにしましょう。

定義

『広辞苑(第7版)』によると、勉強の定義は次のとおりです。

  1. 精を出してつとめること
  2. 学問や技術を学ぶこと。さまざまな経験を積んで学ぶこと
  3. 商品を安く売ること

この説明を読むかぎり、勉強とは新しいことを習得したり、熱心に努力したりといった行動なのですね。「予想通り!」といったところでしょうか?

語源

現代語における「勉強」の意味はわかりましたね。でも、そもそもどんな意味だったのでしょう?

言語史研究者・杉本つとむ氏による語源辞典『語源海』によると、「勉強」は古代中国語に由来し、「励む」「無理強いする」という意味でした。儒学の古典である『中庸』に「或勉強而行之(あるいは勉強してこれを行なう)」とあるそうです。

そして現代日本語の「勉強」は、朱子学の入門書『近思録』の「学者固当勉強(学者はまことにまさに勉強すべし)」にルーツがあるとのこと。『近思録』は江戸時代の日本でよく読まれたため、勉強が「自ら学問に励む」という意味で広まり、明治時代には一般的になったそうですよ。

勉強と聞くと「学校でやらされるもの」というネガティブなイメージをおもちかもしれませんが、それには語源が影響していたのですね。

読書は勉強か

「勉強」の意味がだいぶつかめてきましたね。ところで、本を読んでいたら親に「勉強しなさい」と言われたことはありませんか? 

このような発言には、「読書は勉強ではない」という前提があります。本当にそうなのでしょうか? 読書は勉強かどうか、考えてみましょう。

哲学を専門とする立命館大学教授の千葉雅也氏は、「『まとも』な本を読むことが勉強の基本」と言います。千葉氏の言う「まともな本」とは、多くの専門家が参考にする、信頼できる文献のことです。

千葉氏によると、読書で自分と違う考え方に出会ったときは拒絶せず、「そういう考え方があるのか」と冷静に受け止めることが大事だそう。異質な世界観を学ぶことで、自分の視野が広がるのです。

自分の世界が広がり、ものの見方が変わるような読書であれば、十分に勉強だと言えるでしょう。

勉強の主な意味は「精を出してつとめること」と「学問や技術を学ぶこと」。

「勉強する」を言い換えると?

「勉強する」には、「学習する」や「学ぶ」など別の言い方がありますよね。これらの言葉の意味は同じなのでしょうか、それとも違うのでしょうか?

違う言い方と比較することで、勉強という言葉への理解をさらに深めましょう。

学習する

「勉強と類似の言葉は?」と聞いたら、まず「学習」が挙がるのではないでしょうか。『広辞苑(第7版)』によると、学習の意味は以下のとおりです。

  1. まなびならうこと
  2. 経験によって新しい知識・技能・態度・行動傾向・認知様式などを習得すること、およびそのための活動

学習は、習得する行為そのものなのです。「熱心に努力する」というニュアンスのあるなしが、勉強と学習の違いだと言えます。

研究する

勉強の類義語には「研究」もあります。英語だと、どちらもstudyですね。

『ベネッセ 表現読解国語辞典』によると、研究とは「物事を学問的によく調べ、深く考えて、真理を明らかにすること」。「研究と勉強の違いは?」と聞かれたら、以下のように説明できるのではないでしょうか。

勉強:「考えを深めて自分なりの発見をする」という意味を含まない
研究:「熱心に努力する」という意味を含まない

学ぶ

「勉強する」は「学ぶ」と言い換えられることも多いですね。『三省堂類語新辞典』によると「学ぶ」は次のような意味です。

  1. 勉強する
  2. 学問や技術の教えを受けて覚える
  3. 経験から知識を得る。会得する

「勉強する」と同じ意味なのですね。しかし『語源海』によると、「学ぶ」の語源は古語の「マナ(真似)」。聞いたことがあるかもしれませんが、「学ぶ」とは本来「まねる」という意味です。

語源を考慮すると、「学ぶ」は手本をまねする意味を含む点で、「勉強する」とは微妙に異なると言えるでしょう。

勉強と類義語の比較

なぜ勉強するのか

勉強という言葉の意味について、かなり理解が深まりましたね。今度は「勉強の意味」について別の角度から考えてみましょう。

「勉強なんて意味ないよ」「なんのために勉強しなくちゃいけないんだろう」と、誰もが一度は思うはず。勉強の必要性に関する名言に触れつつ、「勉強する意味」を掘り下げていきましょう。

自由に発想するため

勉強することで、固定観念にとらわれず自由に発想できるようになります。 勉強は必要かという問いに対し、生物学者の福岡伸一氏は次のように語りました。

人間は最初から自由にはなれないわけですね。自由とは、不自由を尽くしてみて初めて実感できること。だからまずは我慢して不自由な勉強をしてみることに意味があるのです。

(引用元:おおたとしまさ 編著(2013),『子どもはなぜ勉強しなくちゃいけないの?』, 日経BP社. 太字による強調は編集部が施した)

過去について勉強し、既成の価値観がどうやってつくられたか理解することで、新しい問題点が見つかります。その結果、自分らしいアイデアが生み出せるのです。

「勉強しなくちゃいけないなんて不自由だなぁ」と感じたことがあるかもしれませんが、むしろ勉強によって自由になれると言えるでしょう。

人の役に立つため

2014年にノーベル物理学賞を受賞した天野浩氏は、勉強する理由について次のように語っています。

なぜ勉強をしなければならないか、高校生の時まではわからなかった。しかし、大学の講義で工学とは人のためになる学問と聞いて以来、視野が拡がり、どんな学問も好きになり、何でも頭の中に入るようになった。

(引用元:竹内薫(2019),『ノーベル賞受賞日本人科学者21人 こころに響く言葉』, 悟空出版. 太字による強調は編集部が施した)

いまは勉強の大切さを説く天野氏にも、勉強をなぜするのか疑問を抱いていた頃がありました。勉強への見方が変わったのは、「工学部の『工』には人(一)と人(一)をつなげるという意味がある」と耳にしたときです。

「勉強なんて必要ないんじゃないかな?」と感じたら、自分の役に立つかどうかではなく、その勉強はどう人の役に立つか考えてみましょう。勉強する目的が見いだせるかもしれません。

将来役に立つスキルを磨くため

勉強すれば、将来役に立つスキルが磨けます。メディアアーティストの落合陽一氏によると、100歳まで人生が続くのが当たり前の「人生100年時代」では、学び続けるためのスキルを磨くことが大事なのだとか。

たくさん勉強した経験のある人のほうが、新しい物事を習得するのが得意で、覚えるまでの期間が短いとのこと。反対に学校の勉強を無意味だと考え、学習のトレーニングを怠れば、新しいことを身につけにくくなってしまうというデメリットがあるそうです。

「勉強はなぜ必要なんだろう?」と自分なりの答えを出せていないなら、落合氏のこの言葉を読んでみてください。

僕は、勉強をする理由は、新しいことを考えたり、新しいことを身につける方法を学ぶためだと思っています。特定の勉強の内容そのものよりも、勉強し続けることを止めないことのほうが重要という価値観を持っているのです。

(引用元:落合陽一(2018),『0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる学ぶ人と育てる人のための教科書』, 小学館. 太字による強調は編集部が施した)

勉強によって、長い人生を快適にしてくれるスキルを鍛えたいですね。

人生を豊かにするため

「職業に役立たない勉強は必要ない」という意見がある一方、勉強は人生を豊かにするという考えもあります。興味を追求し続け、20世紀最大の科学者と呼ばれるまでになったアルベルト・アインシュタインは、次のように言いました。

満足を得るために、人は自らの知力や芸術的な力を磨く機会を持たなくてはならない。

(引用元:ロバート・アープ 編, 大野晶子・高橋知子・寺尾まち子 訳(2018),『世界の名言名句1001』, 三省堂.)

「知力を磨く機会」とは、つまり勉強です。知らなかったことを理解し、できなかったことができるようになれば、人生はより満足度の高いものになるでしょう。

「勉強って大変なのに、それで本当に人生が豊かになるのかな?」と思うかもしれません。しかし医学博士の養老孟司氏によれば、勉強はつらいけれど、やればやるほど自分の世界が無限に広がるおもしろさがわかり、努力が苦痛でなくなるのだそうです。

勉強は人生を豊かにしてくれます。無駄な勉強などありません。人生をより楽しむための「自分への投資」として、勉強をとらえ直してみてください。

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小説家・あさのあつこ氏が言うには、「すてきな人になるために人は勉強し続けるべき」。ちょっと興味のあることから、人生を輝きのあるものにしてくれる大人の勉強を始めてみませんか?

>>勉強したい社会人必見! おすすめ学習ジャンル3選

(参考)
琉球新報デジタル|「人に役立つため勉強を」 ノーベル賞の天野氏が講演
新村出 編(2018),『広辞苑(第7版)』, 岩波書店.
杉本つとむ(2005),『語源海』, 東京書籍.
沖森卓也・中村幸弘 編(2003),『ベネッセ 表現読解国語辞典』, ベネッセコーポレーション.
中村明・芳賀綏・森田良行 編(2005),『三省堂類語新辞典』, 三省堂.
千葉雅也(2017),『勉強の哲学ー来たるべきバカのために』, 文藝春秋.
おおたとしまさ 編著(2013),『子どもはなぜ勉強しなくちゃいけないの?』, 日経BP社.
おおたとしまさ 編著(2014),『続 子どもはなぜ勉強しなくちゃいけないの?』, 日経BP社.
NHKアナウンス室 編(2008),『NHK 気になることばー調べてナットク意外な発見!ー』, 東京書籍.
落合陽一(2018),『0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる学ぶ人と育てる人のための教科書』, 小学館.
竹内薫(2019),『ノーベル賞受賞日本人科学者21人 こころに響く言葉』, 悟空出版.
ロバート・アープ 編, 大野晶子・高橋知子・寺尾まち子 訳(2018),『世界の名言名句1001』, 三省堂.
齊藤隆夫 監(2013),『SUPER理科事典ー知りたいことがすぐ分かる!(4訂版)』, 増進堂・受験研究社.

【ライタープロフィール】
上川万葉
法学部を卒業後、大学院でヨーロッパ近現代史を研究。ドイツ語・チェコ語の学習経験がある。司書と学芸員の資格をもち、大学図書館で10年以上勤務した。特にリサーチや書籍紹介を得意としており、勉強法や働き方にまつわる記事を多く執筆している。

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