「飲み込みが早い人」と「遅い人」は、勉強の仕方がどう違うのか? 効率よく理解する3つの秘訣

「飲み込みが早い人」と「遅い人」では、勉強の仕方がどう違うのか?01

一を聞いて十を知る――この故事のような「飲み込みの早い人」だったら、短い勉強時間でも成果が伸びるのに。でも私の頭のつくりでは無理だな……。そう考えてはいませんか?

悲観する必要はありません。“理解の早さ” は先天的なものとは限らないのです。

今回の記事では、「飲み込みの早い人」がしている勉強の仕方を3つ紹介します。以下のことを意識すれば、あなたの理解もきっと早くなるはずですよ。

1. 構成をとらえる

「できる人は頭の構造が違う」とはよく言われるもの。教育評論家によれば、この言葉は的を射ているそうです。そしてその構造は、生まれながらに備わるものとは限らず、後天的にもつくれるのだとか――。

そう説明するのは、教育デザインラボ代表理事・教育評論家の石田勝紀氏。直接指導したり講演を行なったりした53,000人以上の子どもや、周囲の東大生の「頭の中身」を察する機会に触れ、石田氏は「できる子(人)」を以下のように結論づけました。

「できる子の頭は、樹木の構造になっている」
(中略)
できる子は自然と、または後天的に教えられて、体系化された構造が頭の中に作られているのです。

(引用元:東洋経済オンライン|デキる子の頭の中は「樹木構造」になっている ※太字は編集部にて施した)

石田氏は、その構造を「思考の樹」と呼び、次のように説明しています。

幹→これはいちばんの中心軸で「テーマ」です
大枝→「テーマ」をさらにわかりやすくするための中項目
小枝→場合によっては大枝のことをさらにわかりやすくするための小項目
葉→小枝についている具体的事例や具体的問題
根→背景や理由、言いたいこと

(引用元:同上)

できる人はこうした “一本の樹の構造” のように、情報を分類して理解しているというのです。フォルダ別に分けるように情報を整理するので、スムーズに理解・記憶できるのですね。言い換えるならば、インプットする前に、頭のなかに “フレームワーク” をつくっているといったところでしょうか。このことは、「飲み込みの早い人」の特徴と言って差し支えないはず。

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頭のなかで構造をつくるには、本の読み方が大切です。

東大薬学部出身の心理カウンセラー兼作家、杉山奈津子氏は、「冒頭から丁寧に暗記」するのはよくないと指摘します。やるべきなのは「最初から最後まで一通り目を通」すこと。物語を読み進めるような丁寧に順を追う読み方ではなく、「学習の全体像を漠然とでも把握することがその先の習熟度を決め」るそうです。(カギカッコ内引用元:プレジデントオンライン|偏差値29から東大へ「頭のよさとは要領のよさ」

東大、ハーバード大ロースクールで学んだ弁護士の山口真由氏が編み出した「7回読み勉強法」でも、全体をとらえることが重視されています。それが、以下の「サーチライト読み」です。

まず1~3回目は見出しなどを拾いながら読み流します。これを「サーチライト読み」と呼び、本の全体像をつかんでいく作業。

(引用元:STUDY HACKER|最速で確実に結果がついてくる「7回読み」勉強法——東大首席卒・NY州弁護士 山口真由さんインタビュー【第1回】

山口氏が「1冊の本を7回読めば、その内容を頭のなかに写し取ることができる」と語るこの勉強法の、最初の1~3回を、構成の把握に費やすわけです。この段階があるからこそ、参考書や教科書の中身がすっと頭に入るようになるのですね。

このように構成をとらえながらテキストを読む癖をつけてみれば、飲み込みの早い人に近づけるでしょう。

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2. 法則性を見つける

勉強では “反復” が大事だから参考書を繰り返し確認しているけれど、時間も労力もかかる……。そういう人は、学習内容に「ある法則性」を見つけることを意識してみましょう。

東京大学名誉教授で教育心理学が専門の市川伸一氏は、記憶の方法について「ひたすらくり返すだけが能ではありません」と述べます。市川氏が重要だと言うのは、「情報を関連づけるための構造やルールを見いだす」こと。(カギカッコ内引用元:市川伸一(2013),『勉強法の科学』, 岩波書店.)

市川氏は上記について、以下の数列を用いて解説しています。みなさんは、この数列をひと目で覚えることは可能でしょうか?

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ぱっと見ただけで覚えられるなら、抜群の記憶力の持ち主と言えるでしょう。しかし、普通の人は、意味のない長い数字を瞬時に覚えることはできません。では、この数列に「ある法則性」を見つけたらどうでしょうか。

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1+1=2、1+2=3、2+3=5……。このように「前の数字を足していく」法則性を見つけられれば、覚えやすいですよね。この例は「フィボナッチ数列」というもの。これが、「構造やルールがわかれば簡単に長期記憶になる」ことについての「デモンストレーション」だと市川氏は言います(引用元:同上)。無意味に思えるものでも、法則性を見つければ、長期記憶に留めることができるのです。

勉強では繰り返すことが重要なのは確かですが、「ぱっと見て理解する」ことを目指すのなら、「何かルールはないかな?」と一度探してみるのが近道と言えるでしょう。

なお、法則性を見つけるには、次のような考え方が有効です。

教育コンテンツプロデューサーの犬塚壮志氏は、「法則やルール、パターンを導き出」すには「抽象化」するとよいと述べます。犬塚氏は、株の本で「著者がIT企業の銘柄をいくつか推してい」るという状況を例に、法則の導き方を次のように説明しています。

その企業を推している理由が具体的に明記されていなくても、「新型コロナウイルスの影響でデジタルシフトしている」「DX(デジタルトランスフォーメーション)のサポート実績がすでにある」「社長がデジタルネイティブ世代」などの共通項の抽出を試みます。

(上記カギカッコ内・枠内引用元:ダイヤモンド・オンライン|本の読み方を変えるだけで、ビジネスで差がつく「5つの力」が抜群に伸びる!

このように、著者の主張の「理由を法則化」すると、“株を買うならデジタル化に強い企業に注目すべきだな” といったことが見えてくるわけです。

法則やルールを探す習慣があれば、物事の背景にも考えが及ぶはず。その思考習慣が、知識の吸収力を高めてくれるでしょう。

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3. 要約を意識する

飲み込みの早い人は、テキストの内容などを “そのまま丸暗記” するわけではないようです。代わりに意識しているのが、自分の言葉に言い換える、いわゆる「要約」

資格・勉強コンサルタントの鈴木秀明氏は、「長い文章」を覚えるには、「要約力」が重要だと伝えています。

そのまま覚えようとするのではなくて、自分の中で「要するにどういうことか」と圧縮したうえで知識として吸収する必要があります。

「端折ってしまっても問題ない」ところを切り捨てたり、「複雑なワードや表現を」わかりやすい言葉に変換したりといった工夫で、「できるだけ文章を圧縮」して「端的に覚える」ことが大切だと鈴木氏(上記枠内・カギカッコ内引用元:ダイヤモンド・オンライン|覚え方は要約力で決まる)。

もしもあなたが「読んだり書いたりしても、覚えられなくて……」と悩んでいるなら、この要約を意識すれば、記憶効率を上げられる可能性があるのです。

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ノート術に関する著書がある東大医学部生の片山湧斗氏は、「要約は、勉強の本質」と説きます。なぜなら、自分の言葉でまとめるためには、まず「要約する内容をきちんと自分で理解」する必要があるからです。(カギカッコ内引用元:ログミーBiz|東大生は「これってつまりどういうことか」を捉える力がすごい  入試問題からわかる、頭をよくするために必要なこと

初めて読む本をいきなり要約しろって言われても、なかなか難しいじゃないですか。まずその読む本の内容が全部頭に入っていないと、そもそも要約ってできないですよね。
(中略)まず要約を書くためには必然と、この「要約」を意識することによって、その内容を理解しようとすることができるんですね。

(引用元:同上)

あとで要約することを前提に勉強するのと、目的もなく勉強するのとでは、理解力に差が出る――と言えるのではないでしょうか。

「要約の大切さはわかったけど、どうすれば?」と方法に迷う人もいるかもしれませんね。片山氏が推奨するのは、「ノートの最後に、今日学んだことやノートにとったことを簡潔にまとめる」というシンプルな方法(引用元:同上)。

たとえば、以下のように下部に「要約スペース」をとってみてはいかがでしょう。

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(筆者が「Inc.|Do You Have Emotional Intelligence? It Could Be in Your Genes」を読んで勉強したノート紙面を図版化したもの)

実際にやってみたところ、ただこのひとつの作業を入れることで勉強を振り返る一助となりましたし、習慣化すれば勉強内容をコンパクトにまとめる力がつきそうだと思いました。ぜひ試してみてください。

***
「飲み込みの早い人」の考え方ややり方をひとつでも取り入れ、短い勉強時間でインプット力を高めましょう。

(参考)
コトバンク|一を聞いて十を知る
東洋経済オンライン|デキる子の頭の中は「樹木構造」になっている
プレジデントオンライン|偏差値29から東大へ「頭のよさとは要領のよさ」
STUDY HACKER|最速で確実に結果がついてくる「7回読み」勉強法——東大首席卒・NY州弁護士 山口真由さんインタビュー【第1回】
市川伸一(2013),『勉強法の科学』, 岩波書店.
ダイヤモンド・オンライン|本の読み方を変えるだけで、ビジネスで差がつく「5つの力」が抜群に伸びる!
ダイヤモンド・オンライン|覚え方は要約力で決まる
ログミーBiz|東大生は「これってつまりどういうことか」を捉える力がすごい  入試問題からわかる、頭をよくするために必要なこと
Inc.|Do You Have Emotional Intelligence? It Could Be in Your Genes

【ライタープロフィール】
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。

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