「新入社員の仕事の進みが遅く、残業も多いようだ」
「新入社員の仕事ぶりを見ていると、段取りが悪いと感じる」
職場に新入社員を迎えたものの、上記のように感じて、もどかしく思っていませんか? しかし、多くの新入社員は、仕事のクオリティを上げて効率的に進めたいと考えているようです。
この記事では、「タスクの優先順位のつけ方」をテーマにした新入社員研修を想定し、具体的な研修の進め方や内容を解説します。
【この記事はこんな方におすすめ】
- 新入社員に「タスクの優先順位のつけ方」を教えたい方
- 新入社員研修の担当として、研修のテーマをお探しの方
- チームの生産性を向上させ、より成果を出したい方
【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。
- 新人研修でまず伝えたい「タイムマネジメント」とは?
- 「アイゼンハワーマトリクス」でやるべき仕事が一目瞭然
- 新入社員に伝えたい注意点1:ツールを活用できるタスクは「3.任せる」に分類
- 新入社員に伝えたい注意点2:すべてタスク化しなくてOK!「2分間ルール」を取り入れよう
新人研修でまず伝えたい「タイムマネジメント」とは?
株式会社リクルートマネジメントソリューションズの調査によれば、若手層が働くうえで大切にしているのは「仕事に必要なスキルや知識を身につけること」が前年に続きトップ(48.5%)でした。(参考元:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ|【調査発表】新入社員意識調査2023)
さらに、労力をかけても得たいものとして「プライベートの時間が確保できる、さらに充実させる」 (24.4%)を挙げています。(参考元:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ|【調査発表】新人・若手の早期離職に関する実態調査)
つまり、効率的に仕事をこなし、プライベートも重視したいと考える新入社員・若手社員が多いということですね。
このように効率を重視する若手社員向け研修を行なうなら、まずタイムマネジメントについて伝え、そのあと、タスクの優先順位のつけ方について教えるのが効果的です。
ではそもそも、「タイムマネジメント」とは何なのでしょうか。
「タイムマネジメント」は直訳すると「時間管理」となりますが、単に残業やひとつの業務にかける時間を減らすことではありません。「タイムマネジメント」とは、仕事のクオリティを保ちながらも時間短縮を目指すこと。そのためには、効率を意識し、生産性を高める必要があります。
そして、タイムマネジメントのためにタスクの優先順位をつける場合、以下の3つの作業を行ないます。
- 仕事の全体像の把握
- 現在の仕事の洗い出しと細分化
- 分類・優先順位づけ
仕事の全体像の把握
まず、仕事の全体像を把握していないと、タスクごとの優先度を把握できません。また、新入社員は現在自分の担当している仕事が、チームや部署全体の仕事にどのように繋がるのかを理解できていない可能性もあります。
研修では、仕事の全体像を把握してもらい、最終的な目標やそれに至るまでの工程、新入社員に割り当てられた仕事の役割を伝えましょう。
現在の仕事の洗い出しと細分化
立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科 教授の枝川 義邦氏は、「脳を最大限に活用して、仕事の効率を上げるため」に、「タスクをできるだけ『細分化』『見える化』させること」を提唱しています。(カギカッコ内引用元:PRESIDENT Online ACADEMY|タスクを「細分化」「見える化」させて「認知負荷」を下げる)
たとえば「プレスリリースを作成」と一言でいっても、完成までには、画像のデザインや文面の作成、関係先への事前連絡、配信サービスへの入稿などさまざまな業務が発生します。他部署やチーム内のメンバーと連携をとる仕事なら、スケジュール調整や依頼連絡も欠かせません。
その一方で、新入社員は経験が不足しているため、依頼されたひとつの業務にどれほどの工程が必要なのか想像しにくいはずです。
研修では、実際の社内業務を例に出し、ひとつの業務の完了までにどのような工程が発生するのか、細分化してみせるといいでしょう。そうすることで、それぞれの工程にかかる時間を把握できるようになります。
ここまで、タスクの優先順位をつけるために、ふたつの作業をご紹介しました。いよいよ最後に分類・優先順位づけについて解説しますが、この作業を行なう際に便利なフレームワークがあります。それは「アイゼンハワーマトリクス」です。
「アイゼンハワーマトリクス」でやるべき仕事が一目瞭然
アイゼンハワーマトリクスとは、タスクを緊急度と重要度の2軸で4象限に分類し、優先順位をつけるフレームワークのこと。高い実務能力を評価されていたアメリカ合衆国第34代大統領のドワイト・D・アイゼンハワーの方法論にちなんで名づけられました。
アイゼンハワーマトリクスの4象限にタスクを振り分けると、以下のように分類でき、優先順位がひとめでわかります。取り組む順番は、1、2、3、4となります。
しかし、ここまで読んで「タスクの優先順位なら、ToDoリストで事足りるのでは?」と感じた方はいませんか?
じつは、アイゼンハワーマトリクスを使う最も大きなメリットは、 “重要だが緊急でない仕事” を予定に組み入れられるところにあります。
重要度の高い仕事から取り組むのは当たり前のように感じられますが、ジョンズ・ホプキンス大学など世界のさまざまな大学で行なわれた実験によれば、人は “重要な仕事” よりも “緊急の仕事” に手を付けてしまうそう。(参考元:鈴木祐(2022),『YOUR TIME 4063の科学データで導き出した、あなたの人生を変える最後の時間術』,河出書房新社.)
つまりこの4象限でいえば、緊急・重要が高い「1.まずやる」に当たるタスクの次に、「3.任せる」に分類されるタスクへ取り組んでしまう人が多いのです。
しかし、そうなると、重要であっても締め切りまで時間のあるタスクは常に残され、締め切り間際になって焦って取り組むため、重要な仕事にもかかわらず完成度が低いまま提出せざるを得なくなるかもしれません。
そんな事態を防ぐために、このアイゼンハワーマトリクスでは、「1.まずやる」に当たるタスクの次に、重要度が高くても緊急ではない「2.予定する」へ分類されたタスクに取り組みます。
先輩社員から依頼された仕事だけでなく、将来の目標のために必要なスキルを磨くこともここに含まれます。中・長期的に取り組むべき仕事が分類されると考えるとわかりやすいでしょう。
新入社員に伝えたい注意点1:ツールを活用できるタスクは「3.任せる」に分類
新入社員へアイゼンハワーマトリクスの使い方を教えていると、「3.任せる」に当てはまるタスクがないという声が上がるかもしれません。
マネージャーの立場にある社員なら、電話対応は部下に任せて、自分はほかの仕事に注力すべきです。しかし、ほかの人に仕事を割り振る立場ではない新入社員は、このエリアに含まれるタスクこそ自分がすべき業務であるケースも多いはずです。
そこで、新入社員に教える際には、「3.任せる」について「人ではなく、ツールに任せると読み替えられる」と伝えましょう。
具体的に言えば、スケジュール表をつくるならスプレッドシートのテンプレートを活用する、といったことが挙げられます。先輩社員からデータ入力を任されている新入社員がいるなら、マクロやVBA、Pythonを使ってExcelを自動化できることも研修で紹介してみると、学ぶ意欲を喚起できるかもしれませんね。
実際に研修で新入社員向けにアイゼンハワーマトリクスについて説明することを想定し、以下に例を作成してみました。
新入社員に伝えたい注意点2:すべてタスク化しなくてOK!「2分間ルール」を取り入れよう
最後にもうひとつ、アイゼンハワーマトリクスを使う際の注意点があります。
それは、アイゼンハワーマトリクスは緊急度、重要度によってタスクを振り分けますが、発生したすべてのタスクを振り分けると、かなり膨大になってしまうということ。
そこで取り入れたいのが、生産性の専門家として米海軍や世界銀行の相談役も務めるデヴィッド・アレン氏によって提唱された「2分間ルール」です。
このメソッドを紹介している人事ジャーナリストの溝上 憲文氏によれば、「行動を起こす必要があるもの」と判別されたタスクのうち、「2分以内で終わるものはすぐやる」ことが必要だそう。(カギカッコ内引用元:PRESIDENT Online|発見!日本人の「長時間労働」をなくす方法)
たとえば、社内の避難訓練で送信された安否確認のメールなど、すぐに返信できるものは見たときに処理するようにしましょう。タスク化する時間を節約できますよ。
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アイゼンハワーマトリクスを使えば、自分が優先して取り組むべきタスクがひとめでわかります。新入社員がタスク管理を身につけられるよう、この記事を参考に研修を計画してみてくださいね。
新人社員研修でお困りの方は、「自ら考えて動ける新入社員の育て方。最初に『○○○管理』を教えるのが効果的!」もお読みください。
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ|【調査発表】新入社員意識調査2023
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ|【調査発表】新人・若手の早期離職に関する実態調査
PRESIDENT Online ACADEMY|タスクを「細分化」「見える化」させて「認知負荷」を下げる
鈴木祐(2022),『YOUR TIME 4063の科学データで導き出した、あなたの人生を変える最後の時間術』,河出書房新社.
RESIDENT Online|発見!日本人の「長時間労働」をなくす方法