タスクの優先順位のつけ方は?トレーニングと1年目社員への教え方

同僚に教えているビジネスパーソン

タスクの優先順位をつける能力とは、業務を効果的に計画し、適切に処理するスキルを指します。新入社員がクオリティの高い仕事を効率的にこなせるようになるためには、タスク管理の方法を適切に指導することが大切です。

この記事では、フレームワークやタイムマネジメントを活用したタスクの優先順位のつけ方や、新入社員への教え方、トレーニングのコツを紹介します。

 

【この記事で分かること】

  • タスクの優先順位のつけ方
  • タスクの優先順位づけに役立つフレームワーク
  • 新人にタスクの優先順位のつけ方を教えるトレーニングのコツ

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。

タイムマネジメントに基づくタスクの優先順位のつけ方

株式会社リクルートマネジメントソリューションズの「新入社員意識調査2024」によると、若手層が社会人として働くうえで大切にしたいことの第1位は「社会人としてのルール・マナーを身につけること」(45.2%)、第2位は「仕事に必要なスキルや知識を身につけること」(44.4%)でした。

社会人としての基本であるルールやマナーに加えて、スキルや知識の習得も同様に重視されていることがわかります。また、別の調査では、「労力をかけてでも得たいもの」として「プライベートの時間が確保できる、さらに充実させること」(24.4%)を挙げています。

つまり、効率的に仕事をこなし、プライベートも重視したいと考える新入社員・若手社員が多いということですね。

このように効率を重視する若手社員向け研修を行なうなら、まずタイムマネジメントについて伝え、そのあと、タスクの優先順位のつけ方について教えるのが効果的です。

ではそもそも、「タイムマネジメント」とは何なのでしょうか。

「タイムマネジメント」は直訳すると「時間管理」となりますが、単に残業やひとつの業務にかける時間を減らすことではありません。「タイムマネジメント」とは、仕事のクオリティを保ちながらも時間短縮を目指すこと。そのためには、効率を意識し、生産性を高める必要があります。

そして、タイムマネジメントのためにタスクの優先順位をつける場合、以下の3つの作業を行ないます。

  1. 仕事の全体像の把握
  2. 現在の仕事の洗い出しと細分化
  3. 分類・優先順位づけ

1.仕事の全体像の把握

まず、仕事の全体像を把握していないと、タスクごとの優先度を把握できません。また、新入社員は現在自分の担当している仕事が、チームや部署全体の仕事にどのように繋がるのかを理解できていない可能性もあります。

研修では、仕事の全体像を把握してもらい、最終的な目標やそれに至るまでの工程、新入社員に割り当てられた仕事の役割を伝えましょう。

2.現在の仕事の洗い出しと細分化

立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科 教授の枝川 義邦氏は、「脳を最大限に活用して、仕事の効率を上げるため」に、「タスクをできるだけ『細分化』『見える化』させること」を提唱しています。

たとえば「プレスリリースを作成」と一言でいっても、完成までには、画像のデザインや文面の作成、関係先への事前連絡、配信サービスへの入稿などさまざまな業務が発生します。他部署やチーム内のメンバーと連携をとる仕事なら、スケジュール調整や依頼連絡も欠かせません。

その一方で、新入社員は経験が不足しているため、依頼されたひとつの業務にどれほどの工程が必要なのか想像しにくいはずです。

研修では、実際の社内業務を例に出し、ひとつの業務の完了までにどのような工程が発生するのか、細分化してみせるといいでしょう。そうすることで、それぞれの工程にかかる時間を把握できるようになります。

3.分類・優先順位づけ

タスクを洗い出しや細分化ができたら、実際にタスクを分類・優先づけしていきます。この段階では、緊急度や重要度を見極める必要があります。

効果的に分類・優先順位づけを行うには、次に紹介するフレームワークを活用するとよいでしょう。

関連記事:緊迫の医療現場に学ぶ「優先順位」の定め方

 

メモを作成する人

フレームワークを活用したタスクの優先順位のつけ方

新人がタスクの優先順位をつける際に役立つフレームワークを紹介します。それぞれ異なる視点からタスクを整理できるため、状況に応じて使い分けることが大切です。

主要なフレームワークには以下のようなものがあります:

  • アイゼンハワーマトリクス:緊急度と重要度の2軸で分類
  • Value vs. Effortマトリクス:価値と労力の観点で評価
  • ICEスコアリングモデル:影響度・信頼度・実現容易さで判断

アイゼンハワーマトリクス

アイゼンハワーマトリクスとは、タスクを緊急度と重要度の2軸で4象限に分類し、優先順位をつけるフレームワークのこと。高い実務能力を評価されていたアメリカ合衆国第34代大統領のドワイト・D・アイゼンハワーの方法論にちなんで名づけられました。

アイゼンハワーマトリクスの4象限にタスクを振り分けると、以下のように分類でき、優先順位がひとめでわかります。取り組む順番は、1、2、3、4となります。

アイゼンハワーマトリクス

しかし、ここまで読んで「タスクの優先順位なら、ToDoリストで事足りるのでは?」と感じた方はいませんか?

じつは、アイゼンハワーマトリクスを使う最も大きなメリットは、 "重要だが緊急でない仕事" を予定に組み入れられるところにあります。

重要度の高い仕事から取り組むのは当たり前のように感じられますが、ジョンズ・ホプキンス大学など世界のさまざまな大学で行なわれた実験によれば、人は "重要な仕事" よりも "緊急の仕事" に手を付けてしまうそう。

つまりこの4象限でいえば、緊急・重要が高い「1.まずやる」に当たるタスクの次に、「3.任せる」に分類されるタスクへ取り組んでしまう人が多いのです。

しかし、そうなると、重要であっても締め切りまで時間のあるタスクは常に残され、締め切り間際になって焦って取り組むため、重要な仕事にもかかわらず完成度が低いまま提出せざるを得なくなるかもしれません。

そんな事態を防ぐために、このアイゼンハワーマトリクスでは、「1.まずやる」に当たるタスクの次に、重要度が高くても緊急ではない「2.予定する」へ分類されたタスクに取り組みます。

先輩社員から依頼された仕事だけでなく、将来の目標のために必要なスキルを磨くこともここに含まれます。中・長期的に取り組むべき仕事が分類されると考えるとわかりやすいでしょう。

人に説明するビジネスパーソン

新入社員に伝えたい注意点1:ツールを活用できるタスクは「3.任せる」に分類

新入社員へアイゼンハワーマトリクスの使い方を教えていると、「3.任せる」に当てはまるタスクがないという声が上がるかもしれません。

マネージャーの立場にある社員なら、電話対応は部下に任せて、自分はほかの仕事に注力すべきです。しかし、ほかの人に仕事を割り振る立場ではない新入社員は、このエリアに含まれるタスクこそ自分がすべき業務であるケースも多いはずです。

そこで、新入社員に教える際には、「3.任せる」について「人ではなく、ツールに任せると読み替えられる」と伝えましょう。

具体的に言えば、スケジュール表をつくるならスプレッドシートのテンプレートを活用する、といったことが挙げられます。先輩社員からデータ入力を任されている新入社員がいるなら、マクロやVBA、Pythonを使ってExcelを自動化できることも研修で紹介してみると、学ぶ意欲を喚起できるかもしれませんね。

実際に研修で新入社員向けにアイゼンハワーマトリクスについて説明することを想定し、以下に例を作成してみました。

アイゼンハワーマトリクス図表の作成例

新入社員に伝えたい注意点2:すべてタスク化しなくてOK!「2分間ルール」を取り入れよう

最後にもうひとつ、アイゼンハワーマトリクスを使う際の注意点があります。

それは、アイゼンハワーマトリクスは緊急度、重要度によってタスクを振り分けますが、発生したすべてのタスクを振り分けると、かなり膨大になってしまうということ。

そこで取り入れたいのが、生産性の専門家として米海軍や世界銀行の相談役も務めるデヴィッド・アレン氏によって提唱された「2分間ルール」です。

このメソッドを紹介している人事ジャーナリストの溝上 憲文氏によれば、「行動を起こす必要があるもの」と判別されたタスクのうち、「2分以内で終わるものはすぐやる」ことが必要だそう。

たとえば、社内の避難訓練で送信された安否確認のメールなど、すぐに返信できるものは見たときに処理するようにしましょう。タスク化する時間を節約できますよ。

Value vs. Effortマトリクス

Value vs. Effortマトリクスは、タスクの「価値(Value)」と必要な「労力(Effort)」の2軸でマッピングし、タスクの優先順位をつけるフレームワークです。

このマトリクスを活用することで、「早く価値を期待できるタスクから始める」「工数が多い割に価値の低いタスクには労力を割かない」など、タスクの優先順位を判断しやすくなります。

Value vs. Effortマトリクス

  低労力(Easy) 高労力(Hard)
高価値
(High Value)
Quick Wins
(最優先)
すぐに実行
Big Features
(計画実行)
計画的に実行
低価値
(Low Value)
Maybes
(余裕があれば)
時間があるときに
Time Sinks
(回避)
可能な限り避ける

このフレームワークは、リソースが限られた状況で最大の成果を上げたい場合に特に有効です。

ICEスコアリングモデル

ICEスコアリングモデルは、アイデアやプロジェクト案を評価して優先順位をつけるフレームワークです。スコアの高いアイデアから取り組むことで、限られたリソースを有効活用して効果を挙げやすくなります。

ICEスコアリングモデル

評価項目 説明 スコア(1-10)
Impact
(影響度)
そのタスクがビジネスに与える影響の大きさ
売上向上、コスト削減、顧客満足度向上など
1(低)〜10(高)
Confidence
(信頼度)
期待される結果をもたらす確度
過去のデータや経験に基づく成功可能性
1(低)〜10(高)
Ease
(実現容易さ)
実行時の難易度や必要なリソース
技術的実現可能性、時間的制約、人的リソース
1(困難)〜10(容易)
総合スコア Impact × Confidence × Ease

各項目のスコアを掛け合わせることで総合スコアを算出し、スコアの高いものから優先的に取り組むことで、効率的にタスクを進められます。

関連記事:忙しいという感覚がなくなる! 「アイビー・リー・メソッド」というタスク管理術。

 

PC作業をするビジネスパーソン

新人に優先順位のつけ方を教えるトレーニングのコツ

新入社員がタスクの優先順位づけを習得するには、理論だけでなく実践的なトレーニングが重要です。効果的な指導方法を2つ紹介します。

トレーニング1:自分の優先順位のつけ方を見せて教える

新人が自分のタスクだけに向き合っていると、「この順番で進めてよかったのか」「もっと効率的なやり方はなかったのか」と判断に迷いやすくなります。そこで自分や先輩のタスク処理の流れを見せながら教える方法もあります。

たとえば、ある1日の業務を題材に「どんなタスクがあって、どんな順で対応したか」「なぜその順番を選んだか」といった思考の過程を共有します。そのうえで、「自分だったらどう進めるか?」を新人自身にも考えさせ、差分を一緒に確認していくことで、優先順位を見極める視点や判断力を養ってもらえます。

具体的な事例を通して学ぶことで、新入社員は抽象的な理論ではなく、実際の業務における判断基準を理解できるようになります。

トレーニング2:定期的にフィードバックを実施する

新人がタスクの優先順位を的確に判断できるようになるには、実践と振り返りを繰り返すトレーニングが効果的です。具体的には、「どのように優先順位をつけたか」「その結果、どう行動したか」を新人自身が定期的に振り返る機会を設けてあげ、フィードバックを行います。

あわせて、優先順位の付け方が適切にできているかを測る明確な基準も示してあげることで、新人の理解を深め、不安の払拭や自信・モチベーション向上にもつなげられます。

定期的なフィードバックを通じて、新入社員は自分の判断の精度を客観的に把握でき、継続的な改善につなげることができます。

関連記事: 付箋×優先度でタスク整理革命|仕事の優先順位が明確になる4ステップを試してみた

タスクの優先順位の付け方に関するよくある質問(FAQ)

タスクの優先順位の付け方について、よく寄せられる質問とその回答を紹介します。

タスクの優先順位をつけるための具体的なトレーニング方法はありますか?

多くのタスクに優先順位をつけ、限られた時間内で処理していく「インバスケット思考」による演習がおすすめです。

インバスケット思考とは、管理職や幹部候補生の能力開発に用いられる手法で、制限時間内に多数の案件を効率的に処理する能力を養います。実際のビジネスシーンを想定した演習を通じて、判断力と優先順位づけのスキルを実践的に身につけることができます。

優先順位の4分割とは何のことですか?

仕事やタスクを「重要度」と「緊急度」の2軸で整理し、以下4つの領域に分類したものです:

  • 重要かつ緊急:すぐに取り組むべきタスク
  • 重要だが緊急ではない:計画的に取り組むべきタスク
  • 緊急だが重要ではない:可能であれば他者に任せるタスク
  • 重要でも緊急でもない:後回しにするか、削除を検討するタスク

本記事で紹介したアイゼンハワーマトリクスなどで用いられる基本的な分類方法です。

優先順位をつけても上手くいかない場合はどうすればよいですか?

ツールを活用することも1つの手段です。たとえば「タスク忘れ防止にカレンダーアプリ」「時間管理にアラーム機能」「時間短縮のために自動化ツール」などを活用することで、優先順位づけの効果を高められます。

また、優先順位をつけた後も定期的に見直しを行い、状況の変化に応じて柔軟に調整することも大切です。完璧を求めすぎず、継続的な改善を心がけましょう。

優先順位のつけ方トレーニングで人材育成の土台を整えよう

新入社員にタスク管理を習得させるためには、タイムマネジメントをベースに、アイゼンハワーマトリクスなどのフレームワークを活用するとよいでしょう。また、Value vs. EffortマトリクスやICEスコアリングモデルなど、異なる視点からタスクを評価するフレームワークも状況に応じて使い分けることで、より効果的な優先順位づけが可能になります。

効果的なトレーニングには、実際の業務を通じた指導と定期的なフィードバックが欠かせません。新入社員が適切にタスク管理を身につけられるよう、この記事を参考に研修・トレーニングを計画してみてください。

新人社員研修については、「自ら考えて動ける新入社員の育て方。最初に『○○○管理』を教えるのが効果的!」の記事もおすすめです。

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