チョコレートは勉強に効果的な食べ物。テオブロミンは集中力を、カカオポリフェノールは記憶力を高め、ブドウ糖は脳のエネルギーとなります。勉強中の糖分補給におすすめの食品なのです。
ただし、チョコレートはカロリーが高く、血糖値を急激に上昇させてしまう場合も。では、何に気をつけるべきなのでしょう? どのようなチョコレートが効果的なのでしょうか? 今回は、チョコレートと勉強の関係をお話しします。
チョコレートが勉強にもたらす効果
チョコレートが勉強にもたらしてくれるポジティブな効果として、以下の4つを挙げておきます。
脳の活性化
チョコレートは脳を活性化してくれます。豊富に含まれるカカオポリフェノール(カカオフラバノール)が脳の血流量を増やすため、認知機能などが向上するのです。
薬理学者アンドリュー・スコーリー氏らの研究では、被験者がカカオポリフェノール994mg入り/520mg入りの飲料を摂取すると、摂取しない場合より単純計算の成績が向上しました(※)。また、栄養生理学者ジョージナ・クリクトン氏らの分析によると、チョコレートを頻繁に食べる人ほど認知テストの成績がいいそう(※ただし、994mg摂取時は計算ミスが増えたケースもあるので、多すぎるのもよくないようです)。
チョコレートは、脳を一時的に活性化するだけでなく、長期的にもいい影響を与えてくれるのです。
記憶力アップ
チョコレートには、記憶力アップの効果も期待できます。
チョコレートの製造などで知られる明治などの共同研究により、カカオポリフェノールが「BDNF」を増やす可能性が示唆されました。食品科学者の大澤俊彦氏によると、BDNFは「脳の栄養」とも呼ばれる、脳神経に関係した重要なタンパク質。記憶や学習などの認知機能を促進するそうです。
神経心理学者アダム・ブリックマン氏らによる研究でも、50~69歳の被験者にカカオポリフェノールを3ヵ月間摂取させ、脳検査や認知テストを行なったところ、記憶力に深く関わる脳の部位「海馬」の機能が向上したと確認されました。チョコレートは、脳を育てる食品でもあると言えそうですね。
集中力アップ
チョコレートには、集中力を高める作用もあります。苦み成分のテオブロミンが、カフェインに似た構造をしており、脳内ホルモン「セロトニン」の分泌を促して精神を安定させるからです。
2008年の『日健医誌』に掲載された実験でも、チョコレート16g(板チョコ1/4程度)を食べた被験者は、作業中にイライラや精神疲労を感じにくく、集中を維持しやすいとわかりました。集中力が続かず悩んでいる方は、勉強の前にチョコレートをかじってはいかがでしょう?
元気の回復
チョコレートを食べれば、脳にエネルギーを供給できます。
神経科医の米山公啓氏によると、ブドウ糖は脳にとって唯一のエネルギー源。不足すれば、頭の働きが鈍くなり、勉強の効率が低下してしまうでしょう。しかし、チョコレートを食べて糖分を摂取すれば、脳にブドウ糖が供給され、元気を回復できるのです。
ただし、チョコレートの食べすぎはNG。糖分を過剰に摂取して血糖値が急上昇すると、血糖値を下げる「インシュリン」が大量に分泌され、かえって低血糖になってしまいます。つまり、ブドウ糖が不足した状態です。
チョコレートを食べすぎると、頭がボンヤリしたり眠くなったりと、勉強のパフォーマンスが低下する恐れがあります。チョコレートを勉強に活かすなら、量と頻度に注意しましょう。
勉強におすすめのチョコレート
チョコレートを勉強に役立てるなら、以下のようなチョコレートが特におすすめです。
ビターチョコレート
砂糖が少なめのチョコレートは「ビターチョコレート」「ブラックチョコレート」「ハイカカオチョコレート」などと呼ばれます。血糖値が急上昇しにくいので、だるさや眠気のリスクが低め。勉強への効果を期待するなら、甘さ控えめのチョコレートを選びましょう。
ナッツ入りチョコレート
アーモンドなど、ナッツを含んだチョコレートもおすすめ。ナッツ類には、オメガ3脂肪酸(多価不飽和脂肪酸)という、脳にとって重要な油が豊富だからです。
医学ジャーナリストの氏家京子氏によると、脳の60%は油脂(脂肪)でできているそう。食事に含まれる油脂は、神経細胞などの原料になるため、脳機能の維持に欠かせません。
食事で摂取すべき主な油脂は、オメガ3とオメガ6。特にオメガ3は不足しがちなので、意識して摂取する必要があります。くるみには、オメガ3の一種「リノレン酸」が、アーモンドには「オレイン酸」が豊富。精神科医リチャード・ピーターソン氏によると、ピーナッツやブラジルナッツ、松の実などにもオメガ3が多いそうです。
上記のようなナッツを含んだチョコレートを食べれば、脳に大事なオメガ3を摂取できるでしょう。ナッツ類には、ビタミンやミネラルなどの栄養素も豊富です。
GABA入りチョコレート
「GABA」の入ったチョコレートもおすすめ。GABAとはアミノ酸の一種で、心身の興奮をしずめる神経伝達物質です。2008年の『日本栄養・食糧学会誌』によれば、精神の安定やストレス緩和、睡眠の質向上など、さまざまな効果が期待できるそう。
リラックス作用をもつテオブロミンとGABAを合わせたチョコレートなら、高いリラックス効果を得られるのではないでしょうか。
勉強中に気分が落ち着かないときや、特に集中したいときは、このようなGABA入りチョコレートを食べてみましょう。
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チョコレートには、脳の活性化や記憶力・集中力アップなど、さまざまな効果が期待できます。勉強のパフォーマンスを高め、心身の健康を保つため、チョコレートを食べる習慣を始めてはいかがでしょう?
みんなの健康チョコライフ|チョコレート摂取による健康効果に関する実証研究 最終報告
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あいち産業科学技術総合センター|カカオ製品の生理効果
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ITmediaビジネスオンライン|ビジネスパーソンの味方、“ブドウ糖”をうまくとる方法
幻冬舎ゴールドオンライン|医師「放置しないでほしい」食後に眠い…は脳の危険信号だった
よい日々ショップ|脳を作る脂肪、脳を働かせる脂肪
山田雅久 著, 林進 監修(2003),『脳を老化させない食べ物』, 主婦と生活社.
猪俣武範(2020),『病気に強いカラダをつくる 健康な数値』, クロスメディア・パブリッシング.
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日経DUAL|子どもの「育脳」のために魚、卵、ナッツを取ろう
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佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。