「仕事でも勉強でも成果を出したいな!」と思うなら、健康にいい習慣が欠かせません。フランスの哲学者ルネ・デカルトも、健康について「この世で最上の善であり、ほかのあらゆる善の基礎」と述べています。
いくら能力が高くても、肉体やメンタルに不調があれば力を発揮できません。最重要の器官・脳の健康を保つための「いい習慣」を7つご紹介するので、どれかひとつでも実践してみてください。
- 脳にいい習慣1:腸のコンディションを保つ
- 脳にいい習慣2:手足を温かく保つ
- 脳にいい習慣3:パワーウォーキング
- 脳にいい習慣4:和ハーブを食事に取り入れる
- 脳にいい習慣5:森林浴
- 脳にいい習慣6:SOCを意識する
- 脳にいい習慣7:4つの「R」を実践する
脳にいい習慣1:腸のコンディションを保つ
脳にいい習慣のひとつは、腸のコンディションを整えることです。
「脳腸相関」をご存じですか? 脳と腸は互いに影響しています。「緊張してお腹が……」「お腹が痛いし頭も痛い……」などの現象は、脳腸相関のためです。
消化器病専門医の江田証氏によれば、慢性的にお腹の調子が悪い「過敏性腸症候群」という疾患があり、ビジネスパーソンに多いそう。過敏性腸症候群は、頭にもやがかかったようにボーッとしてしまう「ブレインフォグ」を起こしやすいそう。腸のコンディションは、仕事と勉強のパフォーマンスを大きく左右するのです。
江田氏によると、過敏性腸症候群の大きな要因はストレス。腸の調子を整えて脳のパフォーマンスを保つには、心身にかかるストレスを軽くすることが必要です。
最も重要なのは、質・量ともに十分な睡眠をとること。寝不足の日に限ってお腹が痛くなった経験はありませんか? ぐっすり眠って心身をリラックスさせると副交感神経が活発になり、腸内環境が整いやすくなるそうです。
食事については、パンをご飯に換えることも効果的とのこと。小麦が含む「フルクタン」という糖類は腸内で発酵しやすく、ガスが発生してお腹が苦しくなってしまいます。
抗炎症作用の高いDHA・EPA・αリノレン酸を摂取して、過敏性腸症候群の引き金となる炎症を防ぐのもおすすめ。DHAやEPAはブリ、サバ、マグロなどの青魚に、αリノレン酸はアマニ油やエゴマ油に多く含まれています。
◆腸のコンディションを保つ方法
- 良質な睡眠をとる
- 夜遅くの食事を避ける
- カフェインや乳製品を控える
- 米食中心にする
- 青魚やアマニ油、エゴマ油を摂取する など
このような習慣を取り入れれば、腸、そして脳をいい状態に保て、知的生産力を向上できますよ。
脳にいい習慣2:手足を温かく保つ
手足の冷えを改善し温かい状態に保つことも、脳にいい習慣のひとつです。
総合内科専門医の伊東エミナ氏によると、手足が冷えている場合、すでに全身が冷えている可能性が高いそう。身体が冷えている原因のひとつは血行不良。血行が悪いと、血液に乗ったエネルギーが身体に行き渡らず、心身の活動が衰えてしまうのです。
具体的には、次のようなデメリットがあります。
- 物事を忘れやすくなる
- 集中力が低下する
- 憂うつになる
- 疲れやすくなる
- やる気が出にくくなる など
このような状態では、仕事も勉強もうまくいきませんよね。「夏も冬も手足が冷たくて……」「体調を崩しやすいんだけど、冷え性が関係しているのかな?」という方は、特に意識して身体を温めてください。
身体を温める方法のひとつは、お風呂につかること。シャワーでは身体の表面しか温められないため、体内をめぐる血液の流れを促進したいなら、湯船につかり時間をかけて身体を温める必要があります。
身体を動かすことも重要です。筋肉が動くとポンプのように働き、血行が促進されます。特にリモートワークでは、家から出ず座りっぱなしで働くことになるので、そのままでは血行が悪化する一方。こまめに手足を動かして身体を温めましょう。
◆血行を改善して身体を温める方法
- 運動して筋肉を増やす
- 手足を動かす
- ストレスを解消する
- 猫背をやめ、姿勢をよくする
- 湯船につかる
- 甘いもの・冷たいものを食べすぎない
このような「いい習慣」を実践し、脳を活性化させましょう。
脳にいい習慣3:パワーウォーキング
頭を使う機会が多いビジネスパーソン・学生は、知的パフォーマンスを高めるのにいい習慣として、定期的な運動を行なうべきです。
『脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方』(NHK出版、2009年)の共著者である精神科医、ジョン・J・レイティ氏によると、運動によって脳細胞が増殖&活性化し、脳がより多くの情報を取り入れられるようになるそう。
とはいえ、「運動するべきなのはわかるけど、ランニングや筋トレなんて続けられない……」という気になりますよね。そんなあなたはウォーキングから始めましょう。レイティ氏によれば、歩くだけの運動でもある程度の効果を得られるそうですよ。
ここでは、心臓血管外科医の南和友氏が推奨する「パワーウォーキング」をご紹介します。
◆パワーウォーキングのやり方
- 普通に歩くときの1.5倍ほどのスピード
- 背筋をまっすぐ伸ばす
- 手を軽く握り、腕を直角に曲げて振る
- かかとから着地する
パワーウォーキングなら運動嫌いの人でも継続しやすいはず。通勤時にひと駅分だけ歩くなど、いつもの習慣に組み込んでもいいですね。
脳にいい習慣4:和ハーブを食事に取り入れる
食習慣に取り入れるといいのが「和ハーブ」。日本産ハーブのことで、医学博士・古谷暢基氏が提唱してから注目されています。
そもそもハーブとは、人間の生活に役立つ植物の総称。古谷氏が理事長を務める一般社団法人・和ハーブ協会は、和ハーブを「日本原産、あるいは江戸時代以前より日本に広く自生している有用植物」と定義しています。身近な例では、ワサビ、ショウガ、トウガラシ、シソ、ユズなどです。
なかでも古谷氏がおすすめする和ハーブは、ヨモギ、タチバナ、クロモジの3つ。脳や自律神経のコンディションを整えてくれ、仕事や勉強のパフォーマンス維持・向上に役立ちます。
ヨモギ
ヨモギの香り成分「シネオール」には、自律神経のバランスを整える効果が期待できるそう。山口大学大学院医学系研究科の名誉教授で神経伝達を研究する青島均氏によると、シネオールは交感神経系を優位にするそうです。
自律神経は交感神経と副交感神経で構成されており、血流や消化の働きを左右します。どちらか一方ばかりが活性化すると体調を崩してしまうため、交感神経と副交感神経のバランスをとることが必要です。
ヨモギを利用するなら、ヨモギもち、天ぷら、あえ物として食べたり、細かく刻んでソースの材料にしたり。ヨモギ粉・ヨモギ茶はスーパーマーケットで売っていることが多いので、ぜひ取り入れてみてください。
タチバナ
タチバナは、ミカンの原種として知られる柑橘類です。古事記や日本書紀に登場し “日本最古の薬” と呼ばれています。
タチバナには、脳機能を改善する機能性ポリフェノール「ノビレチン」が豊富です。2020年に発表された静岡県立大学と琉球大学の共同研究によると、「物忘れを自覚する65歳以上の男性および女性」がノビレチンを4ヶ月間摂取し続けたところ、プラセボ群と比べて認知機能テストの成績が優位に高くなったそう。
タチバナは、ジャムやお茶、甘露煮、酢漬けなどのかたちで食生活に取り入れられます。
クロモジ
クロモジは、クスノキ科の樹木です。かつては楊枝や歯ブラシ、石鹸の香料などとして生活に根づいていました。
木質科学の専門家である東京大学名誉教授の谷田貝光克氏によると、クロモジには以下のような効果があります。
クロモジ精油を嗅いだときの人への影響を測定した研究では、副交感神経の働きが優位になり、緊張状態を示す脳のβ波(ベータ波)が減少するという結果が得られました。この実験の結果からクロモジの香りが、ストレス解消や精神安定につながると期待できます。
(引用元:養命酒製造株式会社|東大名誉教授にきく、森林浴の効果!香りのメカニズムと注目の効能 太字による強調は編集部が施した)
クロモジの葉は香りがよく、お茶やのど飴に使われているほか、バジルのように料理のアクセントにもできます。パスタやスープ、カルパッチョなどさまざまな料理に合わせられ便利なので、料理をする際はぜひ試してみてください。
「和ハーブって何? 聞いたことない」という方にも興味をもっていただけたのではないでしょうか。心身を整えるいい習慣として、和ハーブを試してみてはいかがでしょう。
脳にいい習慣5:森林浴
脳にいい習慣として5つめにご紹介するのは、森林浴です。
森林や公園など自然の豊かな場所で、「心が洗われる……」「リフレッシュできそう!」という気分になった経験はありませんか? これは、木々が発する香り成分「フィトンチッド」によるものです。
植物学者の田中修氏によれば、フィトンチッドをかぐと副交感神経の活動が高まるそう。なかでも、マツ、スギ、ヒノキなどのフィトンチッドには、
- 心拍数の減少
- 入眠時間の短縮
- ストレスホルモンの減少
……など、さまざまな効果があるとのこと。公園や森林の散歩を習慣にすれば、リラックスしたいい気分で仕事や勉強に臨めそうですね。
脳にいい習慣6:SOCを意識する
心の健康にいい習慣として知っておきたいのが「SOC(Sense of Coherence:首尾一貫感覚)」。把握可能感・処理可能感・有意味感の3つで構成されます。
SOCの専門家で保健学博士の蝦名玲子氏によると、SOCが高ければ困難にぶつかってもうまく対処できるそう。把握可能感・処理可能感・有意味感を意識し、ストレス耐性を高めましょう。
把握可能感
把握可能感とは、「私は自分の置かれた状況を理解できているよ」という感覚。自分の実力やスキル、社内での評価や役割、キャリアプランなどを正確に把握すれば現状や行動指針が明確になり、不安が解消されます。
◆把握可能感を高める方法
- 感情や思考を紙に書いて整理する
- 嫌な出来事が起きたら、その原因を冷静に考える
- やるべきことの量や全体像を把握する
- 将来の計画や見通しを立てる
処理可能感
処理可能感とは、「困難に直面しても自分なら切り抜けられる!」という自信のこと。能力への自信や「なんとかなる」という楽観思考、助けてくれる味方の存在などが、処理可能感のベースです。
◆処理可能感を高める方法
- 過去の成功体験を思い出す
- 「大丈夫」「なんとかなるさ」と自分を励ます
- 問題解決の具体策を考える
- 助けてくれる仲間を見つける
有意味感
有意味感は、困難に意義を見いだして「自分の能力を試すチャンスだ!」などとやりがいを感じられること。有意味感が稀薄だと、「なんでこんなことしないといけないんだ?」と感じやすくなってしまいます。
有意味感を高めるには、目の前の課題をポジティブに解釈し、能動的に取り組みましょう。
◆有意味感を高める方法
- 困難を「チャレンジ」や「チャンス」と解釈する
- 困難を乗り越えることで何が得られるか考える
- 困難が自分の人生にどんな意味をもたらすか考える
把握可能感・処理可能感・有意味感を高めるのにいい習慣を実践すれば、ストレスを感じくくなり、困難を乗り越えやすくなりますよ。
脳にいい習慣7:4つの「R」を実践する
「休むのも仕事のうち」と言うように、いい結果を出すには心身をうまく休ませる習慣が大切です。
ぜひ押さえてほしいのが、精神科医で僧侶の川野泰周氏が提唱する「4つのR」。4種類のアプローチで心身を休ませ、回復効果を高めます。
- Rest:身体を休ませる
【例】睡眠、マッサージ、温泉 - Relaxation:心をリラックスさせる
【例】アロマテラピー、深呼吸、瞑想 - Recreation:何かに夢中になり、心を回復させる
(夢中になれる趣味は人によって異なる) - Retreat:都会から離れ、自然に囲まれて過ごす
【例】旅行、森林浴
「土日にたくさん寝たはずなのに、だるさがとれないな……」という経験はありませんか? それは、4つのRのうち「Rest」しかやらなかったから。心身を回復させるには、4種類の休息が必要なのです。
自由時間や休日には、4つのRをバランスよく取り入れた「いい休息」を習慣にしてみましょう。
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仕事・勉強のパフォーマンスを高める「脳にいい習慣」を7つご紹介しました。「ほかにもっといい習慣はないかな?」という方は、こちらの記事もご覧ください。
>>社会人・学生向け理想的モーニングルーティン9選
>>あなたはどんなナイトルーティン? おすすめの夜習慣13選
>>成功者の習慣8個。続ければ年収が4倍に!?
(参考)
デカルト 著, 谷川多佳子 訳(1997),『方法序説』, 岩波書店.
太陽化学株式会社|脳腸相関が科学的に説明できるようになってきています
ソニー生命保険株式会社|特集「だるい、頭が働かない…その不調、“腸”のせいかも 春のストレスをはねかえす「快腸」術」
千葉県|鈴木たね子先生 講演4
のむら内科外科ファミリークリニック|良い油を摂りましょう
ソニー生命保険株式会社|特集「脳疲労や免疫力低下の原因にも『末端冷え症』を改善する6つの習慣」
「簡単に誰でもできるパワーウォーキング」, PHPほんとうの時代Life+, 2012年9月号.
日経Gooday|血管を若返らせる「パワーウォーキング」 その2大ポイントとは?
コトバンク|ハーブ
青島均(2010),「解ってきた香りの力」, 香料, 245巻, pp.21-32.
八百屋へ行こう!|2019年6月16日 第3回 和ハーブ・スイカ ~ 講演「日本の足元のたからもの」 一般社団法人和ハーブ協会 理事長 古谷暢基氏
株式会社 沖縄リサーチセンター|シークヮーサー由来ノビレチン含有食品の認知機能改善効果をヒト試験で初めて確認
養命酒製造株式会社|東大名誉教授にきく、森林浴の効果!香りのメカニズムと注目の効能
GreenSnap|今注目のクロモジの魅力を和ハーブ男子に学ぶ! 和ハーブだけで作る絶品ジェノベーゼなど多数紹介
日本メディカルハーブ協会|植物たちが秘める“健康力” 森林浴の効果
NIKKEI STYLE|医師が明かすストレス対策 心を病まないための習慣
All About|首尾一貫感覚(SOC)とは…ストレス対処のレジリエンスの新概念
All About|人生100年時代を健康的に生き抜く!「首尾一貫感覚」
蝦名玲子(2012),『ストレス対処力SOCの専門家が教える "折れない心"をつくる3つの方法』, 大和出版.
東洋経済オンライン|「精神科医の禅僧」が教える、心を休める方法
東洋経済オンライン|GW明けから「疲れがなかなか取れない」人の対処
【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。