「ぐんぐん成長する脳」と「全然成長しない脳」の違い。テキトーでいたら脳は退化する!

脳に水を与え、どんどん成長していく予感を示すイラスト

大人の脳には赤ちゃんの頃からの未熟な脳細胞が、未熟なまま無数に残っているそうです。もしもあなたが仕事や勉強を頑張っているなら、グングン成長する脳習慣と、ぜんぜん成長しない脳習慣を知っておいて損はありません。順番に説明しましょう。

◎成長する脳習慣【1】:コントロールアビリティな運動

筑波大学の研究者らは2018年に、ウォーキングやヨガなどの軽い運動を10分間行なうと記憶力が向上すると明らかにしました。また、磁気共鳴機能画像法(fMRI)を用い、軽い運動で記憶をつかさどる脳の海馬が刺激され、神経細胞を増やすことも可視化しています(2018年10月9日, 『米国科学アカデミー紀要』に掲載)。

そのため、脳を成長させるなら軽い有酸素運動がおすすめですが、その際にはコントロールアビリティ(得意で簡単)なスポーツを選ぶといいそうです。コントロールアビリティとは、自分をコントロールできる力のこと。

東北大学脳科学センター教授の瀧靖之氏いわく「ビジネスシーンで選択権をもつのはなかなか難しいけれど、運動なら何をいつ、どれだけやるかを自分で決めることができる。自分で選択が可能だとストレスが軽減するので、結果的には脳を萎縮から守ってくれる」とのこと。

したがって運動は、「苦手だしきついけど、やったほうがいいと言われたのでやる」のはおすすめしません。

白い壁の自宅でストレッチをする女性

◎成長する脳習慣【2】:Awe(オウ)体験をする

脳科学者の岩崎一郎氏によると、大自然や大宇宙を前に自分の存在の小ささを感じる体験を「Awe(オウ)体験」と呼ぶそうです。Awe体験で脳が活性化することは、多くの研究で明らかになっているのだとか。

たとえばカナダ・トロント大学のステラー博士らの研究では、Awe体験で謙虚な気持ちが生まれるとわかり、アメリカのジョン・テンプルトン財団の研究では、見破る力やだまされない思考力が高まるとわかりました。

岩崎氏によれば、Awe体験は脳の島皮質を鍛えてくれるそうです。ハブ的な役割を果たす島皮質の機能が高まれば脳全体が活性化され、脳が本来もっている力が引き出されるとのこと。

実際に大自然を目の前にすることが難しければ、広大な大自然の美しい動画を観ることでも軽微なAwe体験ができると、オランダ・アムステルダム大学のフォンエルク博士らが説明しています。

カナダのペイトー湖、圧巻の大自然の景色

◎成長する脳習慣【3】:利他的に動く

スイス・チューリッヒ大学のハイン博士らの研究では、自分のことよりも他者のために動く利他行動によって、前出の島皮質と、前帯状回、線条体という3つの脳部位がうまくつながり活動するとわかったそうです。

また、東北学院大学教養学部准教授の金井嘉宏氏によると、利他行動は注意のコントロールに関わる脳領域・後部上側頭皮質や、価値判断に関わる腹内側前頭前野(VMPFC)を活性化させるほか、ストレスを緩和する脳内物質のオキシトシンの発生にもつながるとのこと。脳がよく働きストレスも減るなら言うことなしですね。

フードバンク、困った人々に渡すための食べ物を集めるボランティア

ここまで「成長する脳習慣」について説明しました。次に「成長しない脳習慣」について説明していきましょう。

×成長しない脳習慣【1】:それ知ってる

株式会社脳の学校代表取締役・医学博士の加藤俊徳氏は、知識が増えて物事が新鮮に感じられない状況をマンネリ脳と表現し、それでは脳が成長しないと警鐘を鳴らします。脳が成長するためには脳が大好きな新しい刺激が必要なのです。

だから、たとえばあなたが「〇〇町にあるカレー専門店がおいしいこと」をよく知っているとしても、その話題が出るたびに「あー、それ知ってる。その店はね」などと自分の知識だけを披露していたら、脳は成長の機会を失います。そこはすかさず、

  • 「あの店のルーには何が入っているのかな?」
  • 「特にこだわった食べ方があったら教えて」

などと会話を広げながら、新しい刺激を得て自分の脳を成長させましょう。

知ったかぶりをしている様子のビジネスパーソン

×成長しない脳習慣【2】:時間は適当

脳科学者の篠原菊紀氏によると、「脳のメモ帳」と呼ばれるワーキングメモリは、思考をつかさどる脳の前頭前野と、記憶をつかさどる海馬の連動によって働くそうです。人間はそのワーキングメモリがあるからこそ、コミュニケーションや学習、そして計画を立てることができるのだとか。

そうしたなか前出の加藤氏は、時間を守って行動しなくなると海馬が刺激されなくなり、衰えてしまうと注意を促します。つまり時間を気にして行動するから海馬が刺激され、ワーキングメモリがよく働き、また適切に計画を立てられるということ。

働き方改革やリモートワークの普及促進で自由度が上がりつつあるいまだからこそ、しっかりと時間を管理しているか・いないかで、脳の成長に差がつくのです。

時間に縛られず家で仕事をするビジネスパーソン

×成長しない脳習慣【3】:身なりは気にしない

前出の瀧氏によれば、前頭葉(社会性をつかさどる脳領域)が発達している人は脳画像を見るまでもなくわかるそうです。16万人もの脳画像を見てきたという瀧氏は(2016年時点)、その経験を通じて身なりと脳画像は一致することが多いと気づいたのだとか。

身なりが雑なビジネスパーソン

身だしなみに気を配る70代の人の脳のMRI画像を見ると、委縮が少なく前頭葉が発達した若々しい脳である一方、同じ70代あるいはどんなに若くても、身なりを整えていない人は前頭葉を中心に脳の委縮が見られ、老化が進んでいるそうです。

同氏は脳がしっかりしているから身なりが整っているのか、外見に配慮しなくなって脳が衰えてきたのか、どちらが先なのかはわからないけれど、脳のデータは「見た目」と「脳の健康度」が一致しているので、見た目を整えることが脳の健康維持にいい可能性は高いと述べています。

したがって「見た目なんて関係ない。私は頭の中身で勝負する」は、つじつまが合わない主張なのです。

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これまでの内容をまとめてみましょう。

グングン成長する脳と、ぜんぜん成長しない脳の箇条書き

こうして見ると「成長する脳習慣」は自分の感情と他者との関わりを大切にしていますが、「成長しない脳習慣」は自己中心的で一方的な印象です。ぜひ一度、いつも何気なく行なっている習慣と見比べてみてくださいね。

(参考)
Mugendai(無限大)|成長する脳、しない脳――脳科学者・加藤俊徳氏が提唱する100歳まで成長する脳トレ
ハイムガーデン仙台泉|瀧靖之教授の話食動眠コラム|第1回 わかってきた、健康と認知症予防に影響を与える暮らし方
一般社団法人 日本生活習慣病予防協会|軽い運動を短時間しただけで記憶力を高められる 脳を標的とした運動プログラムの開発へ 筑波大
ananニュース|1日5分でも実践! Googleも採用した“マインドフルネス”って何?
クロワッサン オンライン|“物忘れ”と深く関わっているワーキングメモリとは? 脳科学者に聞いた。
STUDY HACKER|「誰かのために」で「自分が大儲け」の科学的根拠。優しくすると脳が “自然に” 鍛えられる!?
公益社団法人 日本心理学会|社交不安症の認知行動療法と 神経科学
東洋経済オンライン|大自然に触れた人の脳が驚くほど活性化する訳
東洋経済オンライン|自分は不幸だと思う人は脳の使い方を知らない
瀧靖之(2016),『脳が目覚めるたった1つの習慣』, かんき出版.

【ライタープロフィール】
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