「とにかく英語を聞き流す」のはなぜ非効率なのか? “科学的な英語学習” 4つのポイント

英語を使えることが、もはや “当たり前” になりつつある今の時代だからこそ、どのように英語力を鍛えていくべきなのか戸惑っている人も多いことでしょう。なかには、「とりあえず大量の英語音声を聞き流すのが良さそうだ」「ネイティブと英会話しまくれば、いずれ英語を話せるようになるだろう」と考える人もいるでしょうが……これ、ちょっと危険です。

もしかしたらあなたは、そうとは知らずに “遠回りな勉強法” をしてしまっているかもしれません。立命館大学大学院 言語教育情報研究科の田浦秀幸(たうら・ひでゆき)教授による特別講演会『英語学習のための科学的トレーニング』より、言語習得の科学「第二言語習得研究」から見た、本当に効率的な英語学習法について学びましょう。

「ただ英語を聞き流す」のは非効率!?

言語習得に関する「第二言語習得研究」という学問があることをご存じでしょうか。これは、人間が母語以外の言語を習得するメカニズムやプロセスを解明する学問のことで、日本語を母語とする日本人が日本にいながら英語学習を進めていく際のヒントが隠れています。

そもそも日本は、アメリカやイギリスといった英語圏の国々とは違い、日常生活での英語使用が必須ではありません。第二言語習得研究では、このような学習環境は「EFL(English as a Foreign Language)環境」と呼ばれており、英語が日常的に使われている「ESL(English as a Second Language)環境」での学習とは異なる方法を取る必要があるとされているのです。

例えば、「とにかく英語を聞きまくれば、いずれ英語がデキるようになるだろう」という発想から、リスニング教材をひたすら聞き流すなんて学習をしている人も多いのではないでしょうか。ネイティブたちが自然と英語を習得していったプロセスをイメージしてのことかもしれませんが、田浦教授は「ぼんやり英語のシャワーを浴びても何の役にも立たない」と指摘します。

「例えば、日本語のニュースを通して詳しくなったり、趣味や仕事と関連しており予備知識を持っていたりする領域の英語であれば、“母語の知識” が理解を促進してくれます。でも、自分にとって明らかに難しすぎる英文や、内容がまったくわからない英語CDなど、“理解のレベルを超えた英語” を聞き続けるのは時間の無駄だと言わざるを得ません」(田浦教授)

では、日本人が日本にいながら効率よく英語学習を進めていくには、何をすればいいのでしょうか。田浦教授は「意識的な文法・語彙の学習」を挙げます。そしてここにも注意点があるのです。

「ロシアの心理学者ヴィゴツキーが提唱している『最近接領域』によれば、自分が知っているレベルの “ほんの少しだけ” 難しい単語や文法を学習するのが良いとされています。例えば、『過去完了進行形』や『未来完了進行形』は上級クラスの文法項目なので、自分がそのレベルに到達していないのであれば無理に覚える必要はない。それよりは、中学校英文法の必須事項である『現在形』『過去形』『未来形』といった基本中の基本を使いこなせるようになるべきです。決して一足飛びに学習を進めてはいけません。ひとつずつ積み重ねていくのが大切なのです」(田浦教授)

【結論】「英語シャワー」は遠回り。文法・語彙の意識的な学習が大切。

田浦秀幸教授

「言えない」を恐れてはいけない!?

I am . I like ( ) ing as one of my hobbies. I’m here today because I .

もしも皆さんがこのセミナーに足を運んだとして、これら3文を穴埋めする形で自己紹介しなさいと言われたら、はたして英語がスラスラと思い浮かぶでしょうか? 特に3文目で、多くの人が一瞬詰まってしまうかもしれません。じつは、こういった体験が英語習得では重要だと、田浦教授は述べます。

『英語で何かを言おうと思ったのに言えなかった』『あの単語を自分は知らなかった』——こういった発見のことを、専門用語で “noticing(気づき)” と言います。デキる人の英語を耳にして『あの単語は英語でこう言うんだ』『ここでこういう文法が使われているんだ』といった示唆を得るケースも該当しますね。このnoticingのプロセスが、英語習得では大切なのです」(田浦教授)

さらに、noticingを経て獲得した知識を自ら “実際にアウトプットしてみる” ことで、長期記憶として脳に刻み込まれる可能性が高まるのだそう。

「でも、日常で英語が使われていない日本では、自らnoticingを得ようとするのはハードルが高いはず。誰かに教えてもらいながらnoticingを得るというのが、最も効率的でしょう」(田浦教授)

英語力は人それぞれであり、例えば「リスニングができない」とひと口に言っても、そもそも単語力がないからなのか、単語力はあるものの文法力がないため意味が理解できないからなのか、音声ルール(※後述)に慣れていないからなのかなど、その原因はさまざまです。自分の現状の英語力を診断してもらい、英語のデキる人に教わるのが一番手っ取り早いと、田浦教授は述べます。

【結論】できないことに気づくのが大事。noticingでインプットは促進される

聞き取れないのは、ネイティブ特有の “省エネ発音” を知らないから

・反応:はん + おう で「はんおう(han-ou)」のところが、nが加わり「はんのう(han-nou)」に ・三位:さん + い で「さんい(san-i)」のところが、mが加わり「さんみ(san-mi)」に

日本語でも言いやすさを重視して音に変化が起きるように、英語でも「音声変化」は頻繁に起きています。一例をご紹介しましょう。

【連結】子音とそれに続く母音がくっつく can I:「キャン アイ」ではなく「キャナイ」 need it:「ニード イット」ではなく「ニーディット」

【同化】隣り合う2つの音が混じり合う thank you:「サンク ユー」ではなく「サンキュー」 did you:「ディデュ ユー」ではなく「ディヂュー」

【脱落】一部が発音されなくなる good job:「グッド ジョブ」ではなく「グッジョブ」 take care:「テイク ケア」ではなく「テイッケア」

そして田浦教授によれば、「音声変化のルールを集中的に練習して自分で “言える” ようになれば “聞ける” ようになる」のだとか。リスニング力を高めるには、ただ英語を聞くだけでは不十分。じつは発音練習が効果的だなんて、驚きですね。

【結論】言えない英語は聞き取れない。リスニング力を高めるには「音声変化のルール」を知るのが鍵。

“英語字幕で海外映画を観る” ことの意外な効能

皆さんは、DVDで海外映画を楽しむとき、日本語吹き替えで観ますか? 英語音声のまま日本語字幕で観ますか? あるいは、英語音声のまま英語字幕で観ますか? もしも英語力を高めたいのであれば、3つめの「英語音声+英語字幕」が良いかもしれません

田浦教授は、言語習得論の研究者である植松茂男先生(同志社大学グローバル地域文化学部教授)による研究の興味深い結果を教えてくれました。その研究では、TOEIC400点前後の初級者群とTOEIC500点前後の中級者群に分けた大学生を対象に、全15回の英語の授業の中で、海外映画DVDを「英語字幕で観させた」場合と「日本語字幕で観させた」場合とで英語力の伸びにどのような差が表れるのかを計測しました。すると、以下のような結果が得られたそうです。

初級者群と中級者群どちらも、英語字幕の場合にリスニング力が有意に伸びた さらに、中級者群かつ英語字幕の場合、文法問題も有意に伸びた ・一方で、日本語字幕の場合は、初級者群と中級者群どちらも、リスニング力・文法力に変化は見られなかった

このことから田浦教授は、TOEIC400点~500点前後に属する人は、英語力を伸ばす手段のひとつとして、海外映画DVDを英語字幕で観ることをすすめています。

「ただし、たった1回観ただけでは英語力は上がるはずもありません。英語学習は継続が命。長く続けるためにも、ぜひご自分が大好きな映画を選んで、“英語音声+英語字幕” の組み合わせで10回15回と繰り返して観てください」(田浦教授)

【結論】英語力アップのために「海外映画DVD」はおすすめ!

*** 今の自分に合った正しい方法を選択すれば、英語力は伸びていきます。ぜひ学問的知見に基づいた “科学的なアプローチ” を取り入れて、効率よく英語を勉強していきましょう。

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