勉強の努力を最小限にするには「戦略マップ」があればいい。大切なのは “自分の立ち位置” を知ること

最少の努力で勉強している女性

スキルアップのために何か勉強していますか? 日々勉強して自分をアップデートしていかなければ、複雑化を続ける現代社会にはついていけないもの。とはいっても、時間もないし、努力も嫌い……という人は多いのではないでしょうか。

そのようなビジネスパーソンに求められるのは、できるだけ努力せず、余分な時間を使わずに、効率よく勉強する戦略です。『9割の「努力」をやめ、真に必要な一点に集中する 勉強の戦略』(岡健作著・朝日新聞出版)を一部抜粋、再編集して、勉強の戦略を立てるための、戦略マップのつくり方を解説します。

【プロフィール】
岡 健作(おか・けんさく)
スタディーハッカー 代表取締役社長
1977年生まれ、福岡出身。同志社大学(文学部英文学科)在籍中から英語教育に関わる。大手学習塾の講師・教室長を経て、2010年に京都で恵学社(現:スタディーハッカー)を創業。“Study Smart”(学びをもっと合理的でクールなものに)をコンセプトに、第二言語習得研究(SLA:Second Language Acquisition)などの科学的な知見を実際的な学びの場に落とし込んだ予備校を立ち上げる。予備校で培った英語指導ノウハウを活かした社会人向けの英語のパーソナルジムENGLISH COMPANYを2015年に設立。その他、学びやスキルアップにまつわるアプリ開発なども行なっている。

ゴールまでの近道を使って、努力は最少にする

なぜ、社会人の勉強には、戦略が必要なのか? それはひとことで言えば「できるだけ努力をしない」ようにするためです。

テクニックを使ったからといって「魔法のように一瞬で単語が覚えられる」「覚えた内容を二度と忘れなくなる」「寝ているだけで頭がよくなる」なんてことはありません。 なぜなら、それを実行するときにはやはり、本人の行動が必要だからです。戦略を立てずに勉強してしまうと、本当は自分にとって必要ないことにまで、余計に時間を浪費してしまう可能性があります。

たとえば、英語学習で考えてみましょう。英語の課題は人それぞれです。「発音」に課題がある人が、ひたすら単語を覚えることは、時間の浪費です。

極端な話ですが、本当は会計士になりたいのに、なぜか秘書検定を学んでいるのと、状況は同じです。どんなに努力したって、方向性が見当はずれだったら、意味がありません。

そこで、重要になってくるのが、戦略です。戦略の「略」という字には「近道」という意味があります。つまり、戦略とはその名の通り、「目標に向かって近道をする」こと

しっかりと戦略を立てることは、ゴールまでの最短距離を見つけておくことでもあります。

地図のイメージで、勉強の全体像を描き出せ

目標までの近道を知るには、まずは「地図」が必要になりますよね。私の英語スクールでは英語習得の全体像を「登山」に見立てたマップにまとめています。

StudyHackerENGLISH COMPANYがまとめた、英語習得の全体像を登山に見立てたマップ

このマップに即して、「英語ができるようになる」ことが目標の場合、ゴールになる頂上がまず決まります。

次に、決めたゴールから逆算していきます。英語の場合は、山のふもとから順番に、「単語・文法の基礎知識」から始まり、「リーディング・リスニング」「スピーキング・ライティング」の順番で、山を登っていきます

一般的には、日本人が「英語ができる」ようになるまでは、この「登山ルート」をたどることになります。多くの人を見てきた経験上、いきなり山頂に行けることはめったにありません。

考えてみれば、当たり前ですよね。基礎知識のない人が、いきなり読んだり聞いたりはできないでしょう。「単語も文法も知らないけどなぜか読める」ということはありえませんね。また、読んだり聞いたりできない人が、自分では正しく文を作り出して、話したり書いたりできるということもありません。立てない人は歩けないし、歩けない人は走れない、みたいなことです。

誤解のないように補足すると、これは「基礎を完璧に仕上げてからリーディング・リスニングに取り組み、それを完璧にしてからスピーキングに取りかかる」ということではありません。

実際には「スピーキングの練習を通した語彙習得」とか、「多読を通した文法理解」はありえます。これはあくまで、ターゲットとするスキルを習得する順番だと考えてください。

一般的には、英語学習の「全体像」は図にある要素の組み合わせということになります。

英語以外でも同じです。まずはこのような「全体像」を把握するのが大切。できる人に話を聞いたり入門書を読んだりすることの本質は、ここにあるのです。自分よりも多くを知っている人からは、学びたい分野の「地図」を手に入れるようにしましょう。

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全体像を把握したうえで地図上のゴールを指している女性の人差し指

まずは、「現在地」を把握しよう

次に、戦略を立てる上で大切なのは、「自分の現在地」を知ることです。

精密でわかりやすいマップを手に入れたとしても、現在地がわからなければなんの意味もありません。いまの自分が目標地点までどのくらい手前にいるのか、あるいはゴールまでのルートから外れているのか。戦略マップの場合でも、それがわからなければ、結局どこへ進めばいいのかわかりません。

普通の地図なら当たり前の話だとわかるはずです。カーナビがわかりやすいのは、地図上に常に現在地を示してくれるからですね。

ただこれが勉強となると、なぜか「とにかくひたすら歩いていれば、いずれ頂上が見えてくるだろう」と思ってしまう人が多い傾向があります。もし山道だったら、がむしゃらに進んで、体力をムダに消費していたら遭難してしまいますよね。

幸いなことに、勉強では「自分が今、どこにいるのか?」をきちんと整理する方法が確立されています。では、どうやって、現在地を見つければいいのでしょうか。

一番いいのは、マップを手に入れるときと同じで、その道に詳しい「第三者」に、自分のことを客観的に見てもらうことです。まずはいったん立ち止まる勇気をもちましょう。

勉強の仕方について女性講師からアドバイスを受ける男性

何かを身につけるという意味では、スポーツと同じです。バッティング練習をしたからといって、すぐにうまくなるわけではありません。2日間、ボールを打ちまくったからと言って、3日めから急にうまくなるわけじゃない。

自分ひとりで自主練をしていると、なかなかうまくならないので、自分が成長しているのかどうか、この練習を続けていいのか不安になります。このような状態では、落とし穴にはまりがち。自分の状態がはっきりと認識できていなくて不安な状態になると、ついついいろんなことに手を出してしまいます。

たとえば、ネットでは「野球は、やっぱりバッティングよりも守備練習だ!」と言っている人もいる。YouTubeで自己流のバッティングの技術をものすごく熱心に解説している人もいる。すると、「やっぱりその方法を試した方がいいかな……」と心に迷いが生じます。

そこで重要になるのが、「コーチ」のような第三者の存在です。客観的にあなただけのことを見て「いまはこれをすべきだよ」と言ってくれる人。コーチや先生の一番の役割はそれなのです。

一方で、「熱血コーチ」には、注意が必要です。熱血すぎて「やれることは全部やれ!」という感じだと、コーチをつける意味がありません。

コーチは、応援団ではありません。これは、勉強にもまさに当てはまります。生徒をモチベートすることもたしかに大切です。しかし、それは高いお金を払ってまで、専門家にお願いすることではない。ときどき部活にきて、差し入れなんかをくれて、励ましてくれるのは嬉しいことだけれど、直接上達の役に立っているわけではありません。

ですので、教室や先生を選ぶときには「モチベーター」ではなく、きちんと知識のある「課題発見の専門家」を探しましょう。

先ほどから紹介している「地図をつくって、現在地を把握する」ということは、全体像を把握しているからこそできる技術です。できれば専門家にお願いするのが理想なのです。ただ、ポイントを押さえれば、ある程度のところまでは、自分で戦略マップを作成できますので、ご安心ください。

【『9割の「努力」をやめ、真に必要な一点に集中する 勉強の戦略』より 記事一覧】

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