「勉強をする」というと、「努力」や「頑張れ」といった言葉がセットで語られることは多いもの。努力が大好きな人や頑張ることが必要だと思っている人には、なんの問題ないかもしれません。ですが、「めんどくさい」「努力なんて無理……」と感じてしまう人はどうしたらいいのでしょう。
そんな悩みにお応えするのが 『9割の「努力」をやめ、真に必要な一点に集中する 勉強の戦略』(岡健作著・朝日新聞出版)。効率的に勉強するための「勉強の戦略」の立て方を解説しています。そのノウハウを、同書の一部を抜粋、再編集して紹介しましょう。
【プロフィール】
岡 健作(おか・けんさく)
スタディーハッカー 代表取締役社長
1977年生まれ、福岡出身。同志社大学(文学部英文学科)在籍中から英語教育に関わる。大手学習塾の講師・教室長を経て、2010年に京都で恵学社(現:スタディーハッカー)を創業。“Study Smart”(学びをもっと合理的でクールなものに)をコンセプトに、第二言語習得研究(SLA:Second Language Acquisition)などの科学的な知見を実際的な学びの場に落とし込んだ予備校を立ち上げる。予備校で培った英語指導ノウハウを活かした社会人向けの英語のパーソナルジムENGLISH COMPANYを2015年に設立。その他、学びやスキルアップにまつわるアプリ開発なども行なっている。
「努力」よりも価値があること
「頑張る」ことは、しんどいし、めんどくさいですよね。その一方で「ちりも積もれば山となる」「継続は力なり」など、頑張ることを後押しするようなことわざを、みなさんも一度や二度耳にしたことがあると思います。
ただ、実際はあらゆる場面で、みんな「ラク」をしています。たとえば、毎日の通勤の際、多くの人は電車や自転車、車を使っていますね。「毎日3時間かけて歩いて通勤します。努力は美しいので」なんて人はいません。
みんな本質的には、「めんどくさい」「楽しくない」「好きじゃない」ことは、極力やりたくないんです。
面倒なことは効率化して、好きなことができる時間を増やしていくほうがいい。移動手段として徒歩を選択することはできますが、多くの人は「好きなことができる時間を増やしたい」と考えているから電車に乗っているのです。
もしそんなふうに思えるのであれば、あなたにはすでに「勉強の戦略」を練るための準備が整っています。
ぼくには、努力の才能がなかった
ぼくも、小さい頃から、努力することが大の苦手でした。
一方で、ぼくの弟は、とても努力ができるタイプの子でした。小学生の頃から、弟は地域のソフトボールチームに所属して、雨が降ろうが雪が降ろうがおかまいなしで、毎朝早くから起きて素振りをしていました。その後、中学では野球部に入り、遅くまで部活をやって、へとへとになって帰ってきて、そのうえ勉強もしっかりやる。
こんな調子だから、弟はどんどん野球がうまくなりました。中学2年生にもなると、野球では花形選手が守るショートのレギュラーとして大活躍しました。体も超ムキムキで頭もいい、本当に立派です。兄としても誇らしかった。
しかし、当の私はというと、とてもマネなんてできませんでした。どうやっても、ぼくは弟のようには頑張れない。朝は眠くて起きられないし、毎日「めんどくさい」と思いながらぎりぎりに学校に行っていました。
さらに、対照的なぼくら兄弟は、事あるごとに比較されてきました。頑張れる弟は、みんなからとてもほめられます。一方で、私は全然ほめられず、どんどんひねくれていきました。そして「自分はダメなやつなんだ」と思うようにすらなりました。
ついには、「そもそも野球ってなんなんだよ」「ボールなんて投げたら、危ないだろ」なんて、悔しまぎれに悪態をつくようになってしまっていたのです。
「とにかく頑張れ」という呪いからの解放
しかし、そんな私が、急に自信をもてるようになりました。きっかけは、中高6年間、担任だった先生のこんな言葉でした。
「頑張らなくていいから、結果を出せ」
あとから聞いたところによると、「頑張ったんです!」なんてアピールはいらないから、とにかく結果を出してほしいという意図をどうしても伝えたくて、こんなふうにしつこく言っていたらしいです。
ぼくは、そこから6年間、この言葉に従って生活を送りました。先生は宿題もほぼ出さないし、テストもいたって普通のものでした。ただ、テストの結果が出ると、それをもとに面談をするんです。「点数を上げなくちゃいけないけど、どうするの?」「いつまでにやるの?」と。
そこで「頑張ります!」なんて言うと怒られます。先生は「そんなこと聞いていない」と言わんばかりです。当時の私にとって、これは衝撃でした。と同時に、なんだか救われた気がしました。
「頑張らなきゃいけない」「弟のようにならなければいけない」という呪いから、急に解放された気分になったのです。
勉強の「ハック」は、誰にでもできる
このときに気づいたのが、「努力ができる」というのは、成功のために絶対に必要な条件ではない、ということです。もちろん「努力ができる人」ならば、有利です。しかし、「努力できない」のであれば、それはそれで仕方ない。ほかの方法で、「努力」の代替をしてもらえばいいのです。
この代替手段こそが「ハック(効率を高めるためのコツ・ノウハウ)」の正体であり、ぼくが「戦略」と呼んでいるものです。
人間には誰しも「向き・不向き」があります。「努力できない」ことは、単に、その人が努力に不向きな性質をもっているだけのことです。それは、持久走の得意・不得意とほとんど変わりません。
たとえば、長距離走で1位の人とビリの人を比較した場合、ビリの人は持久走に不向きな性質をもっているわけです。そうだとしたら、ビリの人が長距離走で1位になったり完走したりすることを目指すよりも、持久走とは別のジャンルで、自分の得意分野を伸ばした方がよっぽどいいのではないでしょうか。
これは勉強にだって、仕事にだって当てはまります。ぼくは恥ずかしながら「勉強」や「仕事」を頑張ることが苦手です。逆に自分がそれらのことを苦手だとわかっているからこそ、「苦しい努力」をしないようにしているのです。
結果を出すには、再現可能なマニュアルがある
努力の才能がなくても、努力するのと同じぐらい成果を出すことはできます。むしろ必要になってくるのは、「技術」です。
たとえば、目標から逆算して、最短距離でゴールまでたどり着けるようにするための戦略。自分に必要な課題を見極めるための解像度の上げ方。
他人の知恵を借りながら、自分が行なう必要がない勉強を外注化する技術。習慣化して無理なく継続する技術。技術を身につければ、気合や根性などに頼らなくても、よい成果を出すことができます。
自分としては努力しているつもりはないのに、気づいたら努力したのと同じ成果を得ている。「努力して」歩かなくても、電車に乗れば会社に着くのと同じようなことです。
「才能がなくても、誰でもできる!」みたいな実用書をよく見かけますが、成果を出すためにもそういう方法論があります。つまり、努力をせずとも成果を出せる「マニュアル」があるのです。
【『9割の「努力」をやめ、真に必要な一点に集中する 勉強の戦略』より 記事一覧】
- 「めんどくさがり」でも勝てる! 努力が苦手な人でもぐんぐん力がついてくる「勉強の戦略」
- 「戦略」を立てれば勉強を効率化できる。まずは「とにかく頑張れ」という呪いからの解放を(※本記事)
- 勉強の努力を最小限にするには「戦略マップ」があればいい。大切なのは “自分の立ち位置” を知ること
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