第二言語(いわゆる外国語)を学習するときに、「シャドーイング」が効果的だとよく言われます。
シャドーイングとは、耳から入ってきた文章をなるべく遅れることなく復唱する勉強法のこと。プロの同時通訳者の訓練法としても使われています。
なぜシャドーイングがそんなにすすめられているのか。科学的に見ていきたいと思います。
シャドーイングが良い理由
シャドーイングで主に使われるのは、脳の「ワーキングメモリ」という仕組みです。ここでは、視覚や聴覚からの情報を一時的に保持、そして情報の操作と処理を行います。
ワーキングメモリには「音韻ループ」という部分があります。ここでは耳から入ってきた情報の処理を行ないます。シャドーイングはこの音韻ループを活性化し、効果的に使えるようにします。これにより、より速く正確な復唱が可能になるわけです。
例えば、バッティングの練習を繰り返せば、だんだんと頭で考えなくても綺麗なフォームで打てるようになりますよね。それと同じで、シャドーイングは運動面から英語の力を上げる効果があると言えるのです。
リスニングが苦手な人ほど大きな効果が!
実際の効果はどれほどのものなのか見ていきましょう。
(画像引用元:玉井健(2002),「リスニング力向上におけるシャドーイングの効果について」(日本通訳学会第3 回年次大会 講演)(PDF))
上のグラフは、英語の成績が同程度の高校生90人を対象にしたテストのグラフ。青い線がシャドーイングを用いたグループで、最初の成績に応じて、3つの群に分けられています。
このグラフでは、下位群の伸びが著しいことがわかりますね。つまり、リスニングが苦手だと感じている人にこそ、シャドーイングが効果的だということ
実験を行なった玉井氏は「シャドーイングによって、上位群がもともと持っているような、知識に依らないリスニング技術が身に付く。」と考察しています。
正しいシャドーイングの方法
せっかくのシャドーイングですが、間違った方法では効果が現れません。正しく、かつシンプルなシャドーイングの方法をご紹介します。
1. 英語の文章を聞き、なるべく早く復唱する。
シャドーイングは、耳からの情報を処理するのが目的です。書き起こされた英文は見ないようにしましょう。
また、意味は理解しようとしなくてOK。どうしても気になるなら、シャドーイングを始める前に一通り理解してから始めましょう。
2. 録音してフィードバックする
自分のシャドーイングを録音し、でき具合を確認しましょう。これをすることで、ただシャドーイングをしたときより、リスニング力が伸びるという実験結果が出ています。
※注意点
難しい文章を選ぶのはやめましょう。自分がある程度聞き取れるスピードであること、知らない単語がほぼないことなどを基準に、文章を決めてください。難しすぎると長続きしないですし、効果もなくなってしまいます。
***
シャドーイングが良いと言われるのには科学的な裏付けがありました。正しい方法で、リスニング技術を伸ばしていきましょう。
(参考)
門田修平(2007),『シャドーイングと音読の科学』, コスモピア.
望月通子(2006), 「シャドーイング法の日本語教育への応用を探る : 学習者の日本語能力とシャドーイングの効果に対する学習者評価との関連性を中心に」(PDF)
玉井健(2002),「リスニング力向上におけるシャドーイングの効果について」(日本通訳学会第3 回年次大会 講演)(PDF)
【ライタープロフィール】
新城藍里
京都大学工学部電気電子工学科所属。カリタス女子高等学校卒業。宇宙開発に興味あり。高校では演劇部に所属。文化祭執行部に入り、文化祭に積極的に参加。大学では硬式女子テニス部に所属。