記憶力がアップすれば、仕事や学業におけるさまざまなシーンで役立つはず。仕事の手順の暗記、試験に向けての勉強、人前での発表に向けての原稿の暗記など、社会生活には記憶力を必要とする場面がたくさんあるからです。
もしも、その記憶力に自信がないのであれば朗報ですよ。普段の過ごし方を少し工夫するだけで、記憶力アップが期待できるからです。記憶力を高める3つの習慣を紹介しましょう。
【ライタープロフィール】
村瀬裕一
早稲田大学大学院先進理工学研究科所属。松本深志高校出身。日々、細胞の微小管について研究をしている。趣味はゲーム・カメラ・旅行など。
TECH+|脳科学者に聞く - 記憶と脳をめぐる10の真実(前編)
講談社|40代に告ぐ!医師がすすめる「アルツハイマー治療」の秘策
NIKKEI STYLE|物忘れを防ぎ、記憶力を高める10の習慣
STUDY HACKER|「座りすぎ」で記憶力が低下する!? 仕事中に取り入れたい、脳機能回復のための3つの習慣
STUDY HACKER|「覚えたい」と意識しすぎるのは逆効果!? 記憶力を強化する3つのワザ。
STUDY HACKER|記憶力低下の原因は年齢ではなかった。今日からできる「記憶力を高める」4つの習慣。
日本肥満症予防協会|肥満を予防するには?
記憶力とは
まずは記憶力について簡単に説明します。
記憶は大きく分けると、「今日の朝食に何を食べたか」といった数時間から数日で消えていってしまう短期記憶と、幼い頃に先生から怒られた経験のように、何年経っても忘れない長期記憶の2種類があります。
自然科学研究機構生理学研究所の柿木隆介教授によれば、私たちの脳内にある海馬という領域では、記憶の振り分けが行なわれており、必要な短期記憶の情報だけが長期記憶として残されるのだそう(参考:TECH+|脳科学者に聞く - 記憶と脳をめぐる10の真実(前編) )。
つまり、海馬がよく働き、短期記憶を長期記憶へと効率的に変換できる脳が、記憶力のいい脳だと考えられるのです。そうしたことをふまえ、 記憶力アップが期待できる習慣を紹介していきます。
記憶力を高める習慣1:体型維持のための活動
まずひとつめは体型維持のための活動です。なぜかというと、それが記憶に関わるインスリン活性化につながるからです。
インスリンはすい臓で分泌され、血糖値を一定に保つホルモンとして知られていますが、じつは記憶をつかさどる海馬でもつくられているのだとか。
広島大学名誉教授の鬼頭昭三氏らが行なった実験では、脳内でのインスリンの働きが悪くなることにより、マウスの学習能力が低下する一方で――インスリンを補給することにより、マウスの学習能力が元に戻ることを確認したそうです。
(参考:講談社|40代に告ぐ!医師がすすめる「アルツハイマー治療」の秘策)
一般的に、内臓脂肪型肥満(お腹ポッコリ)になると、インスリンの働きが徐々に悪くなるとされています。だとすれば、とにかくそうならないよう、体型維持を心がけることが記憶力の向上にもつながるのではないでしょうか。
日本肥満症予防協会によれば、普段からエレベーターを使わない、ちょっとした距離は乗り物に頼らずに歩くなどのことで、特別に運動をしなくてもエネルギー消費を増やせるそうです。記憶力をアップさせるためにも、ぜひ試してみてください。
(参考:日本肥満症予防協会|肥満を予防するには?)
記憶力を高める習慣2:最適な睡眠をとる
ふたつめは、最適な睡眠をとることです。睡眠には、脳が取得した情報を取捨選択し、必要な情報を記憶として定着させる役割があるのだとか(参考:STUDY HACKER|記憶力低下の原因は年齢ではなかった。今日からできる「記憶力を高める」4つの習慣。)。
早稲田大学研究戦略センター教授・枝川義邦氏は、「記憶を維持する上で最適な睡眠時間は6時間半~7時間半」としたイギリスの研究を紹介し、「試験対策などで寝ずに勉強をすると、記憶力と同時に集中力も落ちるので逆効果」だと伝えています。
ただし、リズムを崩すので寝過ぎもよくないとのこと。つまりは、自分にとって最適な睡眠がベストなのです。
(参考およびカギカッコ内引用元:NIKKEI STYLE|物忘れを防ぎ、記憶力を高める10の習慣)
スッキリと目覚められたとき、それがきっと自分にとって、最適な睡眠時間であるはずです。その睡眠時間を確保するように心がければ、記憶力アップにもつながるのではないでしょうか。
記憶力を高める習慣3:座り続けない
そして3つ目は、座り続けないことです。
勉強などに必死になっていると、机の前に座り続けて、まったく動かないという方もいらっしゃるかもしれません。しかし、そうやって座り続けることは、記憶力を劣化させてしまうのだとか。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)・Prabha Siddarth氏らの研究チームは、日常的に座っている時間が長い人ほど、記憶の形成に必要な脳の部分が薄くなっていると確認したそうです。
(参考元:STUDY HACKER|「座りすぎ」で記憶力が低下する!? 仕事中に取り入れたい、脳機能回復のための3つの習慣)
こうした座りすぎによる記憶力の低下を防ぐには、こまめに休憩をとり、立ったり座ったりする機会を増やすことが大切です。予防としては、次の3つがおすすめですよ。
- デスクワークと、デスクワーク以外のタスクを交互に入れて、強制的に立ったり座ったりを繰り返す。
- 社内で情報をやり取りする際には、ビジネスチャットやメールだけで済ませず、席を立ち対面で話す。
- 座りながら右足・左足交互にかかとの上げ下ろしをする。
(参考元:同上)
記憶力をアップさせるために、ぜひ試してみてください。
記憶力がアップするトレーニング
続いて、記憶力がアップするトレーニングをひとつ紹介します。それは、普段から思い出そうとする時間を長くとることです。
例えば、単語帳を使って英単語の暗記を確認する際、思い出せない単語をすぐに調べようとするのではなく、「これ、なんだったかな」と考えることが大切です。
『脳が認める外国語勉強法』の著者であり、わずか数年で4カ国語をマスターしたというガブリエル・ワイナー氏は、いまにも思いだせそうな瞬間は記憶にとって最適だといいます。その理由は、思い出したいワードを必死に頭の中で検索し始めると、脳の扁桃体(へんとうたい)が「生死にかかわる事態が起きた」と勘違いするからなのだとか。
扁桃体は、感情に関わる記憶において、主要な役割をもつ脳の領域。探している単語が見つかった暁には、生死にかかわる緊張から解放されるわけですから、強烈な記憶として残るわけです。
(参考元:STUDY HACKER|「覚えたい」と意識しすぎるのは逆効果!? 記憶力を強化する3つのワザ。)
このように、普段から思い出そうとする時間を長くとれば、どんどん記憶力はアップするはずですよ。
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記憶力をアップさせるためには、普段の生活習慣を整えることが非常に重要です。海馬に良い習慣を心がけ、ぜひ素晴らしい記憶力を手に入れてくださいね。