読書を心がけてはいるけれど、「いまひとつ内容が頭に入ってこない」「色々と読んでいるが頭に残らない」とお悩みならば、その原因を探り、優れた読書人たちから「身につく読書術」を学びましょう。

なぜ本の内容が頭に【定着しない】のか

忘却は必然である

わたしたちの脳が最重要課題にしているのは生存にかかわることなので、それ以外のことはあまり脳に定着しにくいといいます。また、マギル大学で記憶の忘却について研究するオリバー・ハート氏は、「忘れなければ、記憶を持つことができない」と述べたそう。膨大な情報量を抱えたままでは脳が非効率になるからです。

2017年には、神経科学者のロナルド・デイヴィス氏(フロリダ・スクリプス研究所)と、脳科学教授であるイ・チョン氏(北京・清華大学)らが共著した論文で、「脳が記憶を忘却するのは、脳に備わった基本的な機能である」という可能性について述べています。

その要因とされているのは、ドーパミンや、Rac1というタンパク質、神経発生などですが、いずれにせよ、本の内容を覚えておくのは、なかなか難しいことなのです。

記憶はどこかに残っている

では、記憶へのつながりが途絶え「忘却」してしまうと、想起できなくなるかといえば、そうでもないようです。

理化学研究所が2015年5月29日に発表したマウスの研究では、神経細胞同士のつながりが強化されなくても、記憶を想起できる可能性が示されました。また、ドミニカ大学のロバート・ヤゲマン氏のウミウシを使った研究では、ある程度時間が経っても、記憶が消し去られていない可能性が示唆されています。

つまり、忘れたと感じていても、本を読んだ際の記憶を想起できる可能性は高いということです。

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なぜ本の内容が頭に【入ってこない】のか

興味がないから集中できない

また、本の内容が定着しない以前に、「読んでいても本の内容が頭に入ってこない」と悩む方も少なくありません。読書の際に内容が頭に入ってこないのは、本に集中していない証拠。そして、集中できない理由は「その本の内容に興味がないから」ほかなりません。

テレビに、インターネット上に、友人との会話に、雑誌に、そして本に、自分が興味をわかせているものがあれば、意識せずとも集中できるはずです。本の内容がどんどん頭に入ってくるようにしたいなら、興味があるものを自分の意志のまま読めばいいだけです。

「これ知ってるかも」も興味のひとつ

しかし、ビジネスパーソンの方々は、上司や先輩に読めといわれたから、あるいは仕事で必要だからと、義務感で本を読まなければならないこともあるでしょう。まったく興味がわかないことであれば、苦痛にさえなってしまいますよね。

ところが、ある特定のことに対して自分が持っている興味以外にも、興味をわかせる要因があります。それは、「あ、これ知ってる」「聞いたことがある」「前にこんなことを、何かで読んだな」という感覚です。これを駆使できれば、いつのまにか集中を妨げていた義務感がどこかに遠ざかっていくはずですよ。

身につく読書術

では、これまでの内容を踏まえ、読書人のテクニックも参考にして、「身につく読書術」をまとめてみましょう。

【身につく読書術1:サクッと1日1冊】

マインドマップ読書術講師のホラノコウスケ氏は、以下の方法で毎日1冊本を読むことをすすめています。

ステップ1:「まえがき」「はじめに」を読んで本の重要な部分を把握
ステップ2:「目次」をしっかり読んで本の内容をおおむね把握
ステップ3:目次でひろった「気になる箇所」だけ選んで本文を読む
ステップ4:気になる内容は軽くメモしておく
ステップ5:毎日1~2行程度で読んだ本についてSNSに投稿

この方法なら本1冊でも30分程度で読めるとのこと。気にならない箇所は排除してしまいますが、興味がある箇所を選んで読むので集中でき、効率的にインプットできます。

なおかつSNSでアウトプットするので記憶の定着を助け、その本についてSNS仲間とやりとりしていれば忘却を防ぎ、想起しやすくなります。多くの本を読めるので「あ、これ知ってる」が徐々に増え、あらゆる知識が増えるとともに、集中力も高まっていくでしょう。

【身につく読書術2:最後まで本と遊んでみる】

ジャーナリストの立花隆氏は、「もう読むのをやめようと決意した本でも、一応終わりまで1ページ、1ページ繰ってみると意外な発見をすることがある」と説いています。詩人の吉本隆明氏はこうしたことを「本と遊ぶ」といったそう。

ダイヤモンド社論説委員の坪井賢一氏は、「この方法でどれだけ発見できたかわからない」と話しています。同氏によれば、ある問題意識を持ち本のページをめくっていると、重要な言葉が画像として脳に入ってくるとのこと。AIのアルゴリズムの発想(脳の画像認識のメカニズム)がそれです。

たとえば、上司や先輩にいわれて、あるいは仕事上の知識として「読まねば」という義務感で本を開いたものの、いまひとつ読む意欲がわかない場合は、テーマを決め最後までページをめくってみてください。その際は、デフォルト・モード・ネットワーク(DMN・脳内のさまざまな神経活動を同調させる)が働くよう、多少ボーっとするのがおすすめです。

そのテーマにかかわる文字だけが目に飛び込むようになり、そこから興味が生まれていくはずです。

【身につく読書術3:本をノートにしてしまう】

図書館や友人から借りたものではなく、ご自身で購入したものならば、どんどん本に書き込んでしまいましょう。

民俗学者の梅棹忠夫氏や、以前あった五千円札の肖像として知られる思想家の新渡戸稲造氏、建築評論家の川添登氏、著述家の松岡正剛氏らも、本をノートがわりにして気になったことや、浮かんだ発想、考えなどを書き込み、マーキングしていたそう。あのビル・ゲイツ氏も動画で「本の余白にメモすることは、本の内容について熟考するのに役立つ」と話しています。

こうすることで、確実に意識がその内容に向くので、記憶が定着しやすくなります。それに、頭の中に起こっていることを書き記していくので、本自体がマインドマップノートになるともいえます。いいアウトプットにもなるはずですよ。松岡正剛氏は、本に書き込めば集中できて、読みながらの編集が可能で、ポイントが絞られるので再読しやすくなると伝えています。

ちなみに、坪井賢一氏は、消すことのできるボールペンで本に書き込んでいるそうです。

***
読書数が増え、脳内のさまざまな記憶もつながりやすくなるはず。ぜひお試しください。

(参考)
タウンワークマガジン|読書術の講師も実践している、1日1冊本を読めるようになる“たった3つ”のステップ
ダイヤモンド・オンライン | 効率的な読書術”を、古今の読書人に学ぶ
ダイヤモンド・オンライン | 本に書き込む読書術”を古今の読書人が勧める理由
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