あなたが部下や後輩を持つ立場なら、自身のみならず彼らにも能力を最大限に発揮してもらい、仕事効率や生産性を上げたいと考えるでしょう。そのためには集中力が必要です。そこで今回は、「Google流集中力のマネジメント」と集中力アップのコツをご紹介します。
集中力を高めるということは
集中力が高まれば仕事の処理速度が上がるので、余った時間をアイデア産出にあて、充電・リフレッシュを行い、そのあとも最大限の力を発揮できるよう準備を整えられます。
逆に集中力が持続しなければ、仕事が終わらず、成果も上げられず、ついにはその仕事自体を嫌いになってしまうことがあります。つまり、集中力が高まれば正のスパイラルに、集中力が落ちていけば負のスパイラルになるわけです。
とはいえ、米Microsoft社による2015年のレポートによれば、ヒトが集中力を持続できる時間はわずか8秒。この持続時間は金魚以下だといいます。
Google流集中力のマネジメント
どんなに集中力が短いわたしたちでも、なんらかのかたちで職務遂行に必要な集中力を持続させることが可能です。まずは、画期的なマネジメントで世界をリードするgoogle社からヒントをもらいましょう。
【マリア・モンテッソーリ教育】に学ぶ
世界各国にあるGoogle社のオフィスにはカフェテリアやマッサージルームがあり、軽食やおやつが用意されているといいます。また、テントや卵型の会議室から、カラフルあるいは緑たっぷりのリラックススペースに、洞窟のような業務空間があるほか、社内でバスケットボールやボルダリングを楽しむこともできるのだとか。
しかし、そんなオフィスで従業員が遊び呆けているかといえば、そうではありません。彼らはひたすら集中して仕事をしているのだそう。多種多様な人材が心地よく業務できる環境を整えることで、Google社は社員一人ひとりが自律的に集中することを実現しているわけです。
こうした画期的なオフィスが生まれた根底には、Google社の創業者2人が受けたモンテッソーリ教育があるそう。「モンテッソーリ教育」とは20世紀初頭に考案された教育法で、子供たちが安心して自由に遊び、作業のできる環境整備が重視されています。
【マインドフルネス】で“今ここ”に心を戻す
禅の瞑想法が起源といわれるマインドフルネスは、20世紀後半に精神医療や有名企業のリーダーシップ研修などで利用され始めました。Google社もいち早く取り入れています。
産業医の奥田弘美氏によれば、仕事の失敗や不安など、過去や未来に気持ちが飛んでしまうと集中力が低下するそう。だからこそ、“今ここ”に心を戻すコントロール力を高めてくれる、マインドフルネスが役立つのだとか。
そのやり方は、椅子に座って呼吸を整え、動作に意識を向けて肩を回したり、あるいは食べる動作に気持ちを向けて食事をしたり、足の動きに意識を向けて歩行するなど。「回します」「噛みます」「のみ込みます」「右足、左足」という具合に、動作をそのまま心の中で声にすることがコツです。
集中力アップのコツ
Google流集中力のマネジメントは、環境や意識を大切にすることだと分かりました。次に、ちょっとした集中力アップのコツをご紹介します。
1.必要のない刺激を遮断
医学博士の石川善樹氏は「気を散らせるモノを遠ざけることが集中力を高めるテクニック」と、神経内科医の米山公啓氏は「目や耳から入ってくる余分な情報を遮断することで、処理する情報が絞られ集中力が増す」と話しています。机をキレイに片づけるというよりも、不必要なものが目に入らないよう整理しましょう。
2.時間を区切る・終わりを決める
石川善樹氏は集中力を高めるテクニックとして「終わりの時間をきちんと決める」ことも挙げています。「パーキンソンの法則」にもあるように、時間があるほど仕事量は膨張し、集中力も弛緩するわけです。
また、わたしたちは仕事の際、一瞬ほかのデータや窓の外に目をやったり、何かを飲んだりして無意識のうちに頭を切り替え、短い集中力をループさせていますが、それにも限度があります。そのため、心理学者のヨスト氏は「20分集中して、10分休む」という勉強法を唱え、心理学者のライリー氏は人間が注意力を維持できる時間は25分間が限度とし、「25分読書法」を提唱しています。
いずれにせよ、たとえ多くの時間があっても、細かく時間を区切り、計画性をもって作業に挑んだほうが集中できるはずです。
集中力アップのためにできること
これまでを踏まえ、自身あるいは部下や後輩の集中力を高めるために、できることをお伝えします。
【自分自身の集中力を高める】
1.仕事を始める前に机を整理 机の上にはその仕事で必要なものだけを残し、ほかは引き出しなどにしまう。必要なものはすぐとりやすいように整理しておく
2.集中力のための時間管理 「この仕事は30分で仕上げる」「何時までに会社を出る」「1時間ごとに5分間休憩する」といった時間管理を心がける
3.“今ここ”に意識を向ける時間をつくる ひとりで過ごすランチタイムやトイレに行くまでの時間、席でちょっと一息つくときなど、仕事中の休憩時間をうまく利用してマインドフルネスを取り入れる
【部下や後輩の集中力を高める】
最初は上司あるいは先輩のあなたが集中力を高めるための行動を促し、いずれ部下や後輩が自律的に行うようになることが理想です。
【1】仕事前に「机整理タイム」を取り入れ、集中力を妨げるものを排除し、必要なものを即時に扱えるよう整理してもらう。あるいは、そうした行動を指示する
【2】仕事における時間管理を徹底させ、休憩時間もしっかりとるよう促す。基本的に彼ら自身が管理を行うが、進捗遅延や集中力が続かない様子があれば「何が問題か」を考えるよう促す、あるいは対話で導き出す
【3】部下や後輩が安心して自由に、リラックスしながら仕事ができるよう環境を整える。規律で縛らず信頼し、仕事の成果や意欲で評価する。会社として可能な範囲で音楽、照明、植物を置く、場所を変えて作業する、室温など、個々が仕事に集中しやすくなる物事を許容する
*** Google社をそのまま真似るのは難しいですが、環境や時間、そして意識に気を配れば、集中力はぐんとアップするはずです。自身の仕事効率も上げながら、頼れる上司、先輩になってくださいね!
(参考) 石川善樹著(2017),『仕事はうかつに始めるな ―働く人のための集中力マネジメント講座』,プレジデント社. 永田豊志 (2013),『トップ1%の人だけが実践している集中力メソッド』,かんき出版. 平成暮らしの研究会編集(2001),『勉強法 そんなやり方じゃダメダメ!―入試・資格・検定に合格する最強の方法』,河出書房新社. HR NOTE|集中力を高める方法|集中力が持続しない理由と生活に与える影響とは BUSINESS INSIDER JAPAN|突撃!世界各国のグーグルのオフィスはこんなにクール! NIKKEI STYLE|職場で「瞑想ストレッチ」 集中力を高めるワザ Wikipedia|モンテッソーリ教育 Wikipedia|パーキンソンの法則