時間の使い方を改善するためには、計画を立てたり、実行したりすることが重要ですが、もうひとつ、とても役に立つのが、実績をふり返ることです。
実績をふり返るというのは、計画したタスクが完了したかどうかだけでなく、「それぞれの仕事にどれくらい時間を使ったか」をふり返るということです。しかし、これを実際に出来ている人は少ないです。実績をふり返るには、まず記録しなければいけませんし、これはやり方しだいでかなり負担になります。
たとえば「自分の1日の行動を15分おきに記録する」なんてことを実際にやろうとすると、かなり大変です。時刻ばかり気にしていると仕事に集中できませんし、15分刻みでタイマーを鳴らしてそのたびに記録する……というのも、やはり集中の妨げになります。記録することで仕事の効率が悪くなるようでは本末転倒ですよね。
そこで今回は、私がおすすめする方法を紹介します。記録する負担が少なく、集中の妨げにならない方法なので、ぜひ試してみてください。
時間をどう使ったか、覚えてますか?
まずは、この質問について、考えてみてください。
「あなたは、過去1週間にどんなタスクを行いましたか?」 「それぞれのタスクにどのくらいの時間がかかりましたか?」
実はこれ、私が時間管理の研修で受講者の方たちによくしている質問ですが、こう質問されて自信を持って答えられる人は、ほとんどいません。タスクにどれだけの時間がかかったかなんて、後から聞かれてもはっきりとは思い出せないのが普通です。
そもそも、時間に関する記憶は、かなりあいまいなものです。たとえば、「退屈な時間は長く感じて、楽しい時間は短く感じる」とか、よく言いますよね。仕事に集中していて時間を短く感じる場合もあります。そのときの行動で、時間の感じ方はかなり変わってしまうんですね。
では、今度は質問を変えてみましょう。
「あなたは、過去1週間にどんなアポイントメントを行いましたか?」 「それぞれのアポイントメントにどのくらいの時間がかかりましたか?」
この質問だったら、答えられますよね。手帳またはパソコン、スマートフォンなど、自分のスケジュールが入っているものを確認すれば、どんなアポイントメントがあったか分かります。
これらはもともと「予定」として入力していたものですが、アポイントメントは予定通りの時刻に実行することが多いので、予定がほぼそのまま実績になるわけです。ですから、わざわざ実績を記録し直す必要はないわけです。これを利用しましょう。
簡単にできる「時間の使い方」のふり返り
できるだけ手間をかけずに、自分の「時間の使い方」を記録するためには、アポイントメントの管理に使っているツールをそのまま使用するのがおすすめです。もともと「予定」を入れるためのものですが、実績を記録するためにも使ってしまおうということです。
ですから、アポイントメントに関しては、基本的にそのままで構いません。予定と実績が大きくずれた場合だけは修正しておきましょう。
問題は、第4回「“空き時間” を可視化せよ! 「スケジュール管理」を「時間管理」に変えるコツ」でも話題に出た「空き時間」の部分です。私たちはこの時間を使ってタスクを実行したり、「予定外の仕事」に対応したりしています。これらをアポイントメントと同様に記録していきます。ただし、予定としてではなく、実行しながら記入するわけです。
たとえば、手帳を使っている場合は、タスクに取りかかるときにその開始時刻を始点に線を引き始めておき、タスクが終わったら終了時刻まで線を延ばします。パソコンなどを使っている場合は、タスクに取りかかるときに、その時刻を開始時刻とした新しい用件としてタスクを入力しておきます。終わったときに終了時刻を入れて、入力を完了させます。このように、ひとつのタスクの開始時、終了時に入力する方法なら、仕事への集中を妨げられることもなく、あまり負担になりません。
また、ごく短時間の仕事は、ひとつひとつ記録しなくてもいいと割り切ってしまいましょう。そもそも記録が特に重要なのは影響が大きい仕事、つまり、所要時間が長い仕事です。特に詳細に記録・分析したい場合は別として、通常はある程度時間がかかりそうな仕事(15分~20分以上かかる仕事)だけで構いません。実績は完璧に記録できなくても、意外に役に立つのです。
ただし、メールの返信やルーチン的な事務処理などの細かい用件もまとめて行うと時間がかかります。これらは記録しておくのがおすすめです。何度も出てくるので「M」や「R」のように省略して書くと手間が省けます。特にメールは思った以上に時間を取られている人が多いです。ちょっと注意して記録してみてください。
実績をふり返る効果
このように実績を記録していくと、いろいろなことに気づきます。
まず、ひとつのタスクを記録するときに、発見があります。所要時間が予想よりも長かったり、短かったりするなど、意外な結果に気づくはずです。場合によっては予想の2倍以上の時間がかかることもあります。このように、タスクの所要時間を確認することで、今後似たようなタスクが出てきたときに、所要時間をよりうまく予想できるようになってきます。
また、このように記録していくと、全体としての自分の時間の使い方が見えてきます。たとえば、1日の終わりや1週間の終盤にざっと眺めてみるだけでも、自分がどんな時間配分で行動しているかが見えてきます。
たとえば、自分が「予定外の仕事」にどのくらいの時間を使っているかもわかるようになってきます。第5回「計画通りいかないのが仕事。それでも計画は役に立つ」で紹介したように、自分がふだん「予定外の仕事」にどのくらいの時間を使っているかがわかってくると、自分の仕事量をよりうまく把握できます。
他にも、いろいろ気づくことが出てきます。「メールにこんなに時間を取られていたのか?」と驚く人もいますし、「本来は重要なはずの仕事に、あまり時間を使えていない」ことに気づく場合もあります。このように気づくことが、自分の仕事や職場を改善するきっかけやヒントになります。
意外なところでは「自分がどれだけのことをやれたのか」を、少し客観的に見ることができます。たとえば、たくさんの「予定外の仕事」に追われた日などは「タスクが全然できてない」と自己嫌悪になる人もいます。しかし、実績をふり返ってみれば「予定外の仕事が多かった割にはがんばれたかな」と思えて、自信を持てたりします。
このように「時間の使い方」をふり返ることには、いろいろな効果があります。できる範囲で構いませんので、ちょっとやってみてはいかがですか?