「もったいない」「せっかくここまでやったのに」
そんな思いで、やめたくても、やめられないことってありませんか?
それは、「コンコルド効果」という、心の罠かもしれません。過去の投資に縛られ、未来の可能性を狭めてしまう、この厄介な心理現象。
この記事では、「コンコルド効果」の正体をわかりやすく解説し、その罠から抜け出すための具体的な方法を提示します。
さらに、「コンコルド効果」を逆手に取り、過去を活かす方法まで紹介。「コンコルド効果」を知れば、あなたの人生は、もっと自由で、豊かなものになるはずです。
- 「コンコルド効果」という名の、見えざる鎖
- なぜ、人は「もったいない」と感じるのか? 「コンコルド効果」の正体
- 日常に潜む「コンコルド効果」
- 「コンコルド効果」脱出のためのステップ
- 「損切り」は「成長」の証
- 「コンコルド効果」を、逆手に取る方法
- 「コンコルド効果」を知れば、人生は、もっと自由になる
「コンコルド効果」という名の、見えざる鎖
「あんなに時間とお金をかけたのに、ここでやめるわけにはいかない」
「せっかくここまで頑張ったんだから、最後までやり遂げないと……」
そんな思いで、本当はやめたいのになかなかやめられないこと、誰にでもありますよね。仕事、勉強、人間関係、趣味……。もしかしたら、それは「コンコルド効果」の仕業かもしれません。
「コンコルド効果」とは、ある対象への投資(お金、時間、労力など)を続けることが、明らかに損失につながるとわかっているにもかかわらず、それまでに費やした投資を惜しむあまり、投資をやめられなくなってしまう状態のこと。「埋没費用効果」や「サンクコスト効果」とも呼ばれています。
この「コンコルド効果」、放っておくと、あなたの貴重な時間や、お金、労力を、どんどん奪い、人生の可能性を狭めてしまう、恐ろしい鎖になりかねません。
なぜ、人は「もったいない」と感じるのか? 「コンコルド効果」の正体
「コンコルド効果」という奇妙な名前。この由来は、かつてイギリスとフランスが共同開発した、超音速旅客機「コンコルド」にあります。
コンコルドは、早い段階で商業的な採算が取れないことが明らかでした。しかし、英仏両国は、それまでにつぎ込んだ莫大な費用を惜しみ、開発を続行。結果、巨額の損失を出し、商業的にも失敗に終わってしまったのです。
では、損をするとわかっていながら、投資をやめられないのはなぜなのでしょうか?
その理由は、私たちの心の中に潜む、以下のような働きにあります。
まず、私たち人間は、利益を得ることより、損失を避けることを強く優先する傾向にあります。「ここでやめたら、いままでかけたお金や時間が、全部無駄になる……」。そんな「損失」への恐れが、「やめる」という決断を、邪魔してしまうのです。これを「損失回避性」といいます。
さらに、「自分の決断は間違っていたと認めたくない」という心理も働きます。「認知的不協和」とよばれるこの性質は、「もう少し続ければ、きっとうまくいく」と自分に言い訳をさせ、過去の選択を正当化しようとするのです。
加えて、「一貫性の法則」というものも影響を与えます。一度始めたことは最後までやり遂げたいという責任感や、周囲からの評価を気にする心理も影響します。
そして、人は変化を嫌い、現状を維持しようとする生き物です。「やめる」という変化は、労力も、精神的な負担も、大きいもの。「続ける」という現状維持は、楽な選択肢なのです。「現状維持バイアス」として知られる性質ですね。
これらの心理が複雑に絡み合うことでうまれる「もったいない」という感情が、私たちを「コンコルド効果」の罠へと誘い込んでいるのです。
コンコルド効果が生まれるのは、以下の4つの要因が絡まり合った結果
- 「損失回避性」
- 「認知的不協和」
- 「一貫性の法則」
- 「現状維持バイアス」
日常に潜む「コンコルド効果」
「コンコルド効果」は、決して他人事ではありません。仕事、勉強、人間関係……。私たちの日常のあらゆる場面に、その罠は潜んでいます。みなさんも思い当たることがあるのでは?
たとえば、仕事で「失敗が明らかなプロジェクト」があるとしましょう。「でも、ここまで進めたんだから……」と、ズルズルと続けてしまう。これ、まさに「コンコルド効果」の典型例です。
将来性のない資格の勉強。「もう、こんなに勉強したのに……」と、やめられずにいる。これも、「コンコルド効果」の影響かもしれません。
人間関係でも、同じようなことが起こります。嫌な相手とのいわゆる腐れ縁。「いままで、付き合ってきたんだし……」と、なかなか断ち切れない。これも過去の「投資」に縛られている状態と言えるでしょう。
ここで、ある女性、Aさんの話を例に挙げてみましょう。
Aさんは、数年前から、あるオンラインゲームにハマっていました。レアなアイテムを手に入れるために、かなりの時間とお金を費やしてきました。
しかし、最近、そのゲームに飽き始めてきたのです。「もう、やめようかな……」と思うのですが、「いままで、こんなに時間とお金をかけたのに、ここでやめたら、もったいない!」という気持ちが、Aさんの決断を邪魔します。
まさに、Aさんは「コンコルド効果」の罠に、はまってしまっていたのです。
あなたにも、似たような経験、ありませんか?
「コンコルド効果」脱出のためのステップ
では、どうすれば「コンコルド効果」の罠から抜け出すことができるのでしょうか?
ここでは、具体的なステップを紹介します。
「損切り」は「成長」の証
「損切り」は、勇気のいる行動ですよね。でも、「損切り」は、「失敗」ではありません。むしろ、「成長」のチャンスだと捉えましょう。
うまくいかなかった原因を分析し、過去の「投資」から得られた「学び」を、未来に活かすことが大切。
そして、時には、第三者に相談し、客観的な意見をもらうことも有効です。「コンコルド効果」に囚われていると、自分では、なかなか冷静な判断ができません。信頼できる人に、相談してみるのも一つの手です。
何より、自分を、責めないでください。「損切り」がなかなかできないのは、あなたのせいではありません。「コンコルド効果」という、人間の心理がそうさせているのです。自分を責めず、前を向いて進んでいきましょう。
「コンコルド効果」を、逆手に取る方法
「コンコルド効果」から抜け出し、過去を清算したら、それで終わり? いいえ、過去の経験を、別の形で「活かす」方法だってあるんです。
たとえば、失敗したプロジェクトの経験。それを、ブログやセミナーで情報発信してみる。あなたの経験が、他の誰かの役に立つかもしれません。
将来性のない資格の勉強で得た知識。じつは、他の分野で応用できるかもしれません。
使わなくなった趣味の道具。リメイクして、新しい作品を生み出したり、必要としている人に譲ったりするのもいいでしょう。
「コンコルド効果」を逆手に取り、過去の経験を、未来の「糧」に変える。そんな、前向きな「転換」を、目指してみませんか?
「コンコルド効果」を知れば、人生は、もっと自由になる
「コンコルド効果」は、誰にでも起こりうる身近な心理現象。しかし、この心理を知ることで、「もったいない」という感情に惑わされなくなります。
過去の投資に囚われず、未来志向で、合理的な判断ができるようになる。そして、「コンコルド効果」を理解し、「損切り」の技術を身につけ、過去を活かす。こうすることで人生は、もっと自由で豊かなものになるはずです。
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あなたも、「コンコルド効果」の罠から抜け出し、本当に「進むべき道」へ、一歩踏み出してみませんか? きっと、新しい景色が、あなたを待っているはずです。
日本経営心理士協会|コンコルド効果
大谷佳乃
「なぜ?」という疑問を大切に、日常に潜む人とモノとの関係性を独自の視点で読み解くライター。現在は、私たちが何かを選ぶときに働く「見えない力」に注目し、そのメカニズムを探求中。休日は、古書店で先人たちの知恵に触れるのが、自分にとっての「特別な時間」。