「社会人になったいま、中学英語からやり直したい。どんなやり方がいいの?」
「中学英語のやり直しをするのにおすすめの本や参考書は?」
そんな疑問をおもちではありませんか?
学生時代英語がまったくできなかったものの、社会人になって急に英語が必要な状況になったら、困るのも無理はないでしょう。
久々に英語を勉強しようと思うが、中学英語の内容を忘れてしまった……。そんな方のために、今回は「中学英語のやり直しに有効な社会人向けの学習方法」「中学英語のやり直しにおすすめの参考書」などを紹介します。
中学英語に限らず、英語学習全般について知りたい方は「ENGLISH COMPANYの英語勉強法ノート by STUDY HACKER」をご覧ください。
【監修者プロフィール】
田畑翔子(たばた・しょうこ)
米国留学を経て、立命館大学言語教育情報研究科にて英語教育を専門に研究。言語教育情報学修士・TESOL(英語教育の国際資格)を保持。株式会社スタディーハッカー常務取締役、コンテンツ戦略企画部部長。
堀登起子(ほり・ときこ)
大学で言語学を学び、卒業後は英語講師やPR企業の海外担当として活躍。通訳・翻訳として10年以上のキャリアをもつ。大学院では国際言語教育について学びつつ、多読スクールを運営。脳科学とComplex Theoryの視点から第二言語習得をとらえることがライフワーク。大学の助教として英語を指導したこともある。TESOL修士取得。株式会社スタディーハッカーコンテンツ戦略企画部。
社会人が中学英語のやり直しに向けて心がけるべきこと
中学英語レベルのやり直しを考えている社会人の方の場合、限られた学習時間でいかに効率よく学習するかが重要。やり直しを効率よく進めるために心がけるべきことは、主に以下の5点です。
- いきなり英会話から始めない
- 教材や学習法にあれもこれも手を出さない
- 無理な目標を決めない
- 勉強のためのスキマ時間を探す
- 「英語が話せるだけ」の講師から習おうとしない
順番に詳しく見ていきましょう。
1. いきなり英会話から始めない
中学英語からやり直そうとする場合、話せるようになりたいからといって、最初から英会話の練習に励む方もいるでしょう。じつはそのやり直し方は、非効率的なのです。
「第二言語習得研究」(母語以外の言語を身につけるメカニズムを明らかにする学問)の知見によると、言語習得に絶対的に必要なのは「理解可能なインプット」。それとともに、アウトプットの機会と言われています。
話す、書くなどのアウトプット学習は、インプットと並行して行なうのがおすすめ。そうすることで学習した内容が定着しやすくなります。なるべく多くのインプット学習を行ないつつ、ときどき、実際に英会話や英作文の機会をもつようにしましょう。うまく言えなかったり、書けなかったりした箇所に気づいて、より注意を向けることで、インプットの効率が高まります。
まずは、中学英語レベルの語彙、文法の基礎を学び、リーディングやリスニングを鍛えるというインプット学習を中心にしつつ、アウトプット学習も適宜取り入れていきましょう。
2. 教材や学習法にあれもこれも手を出さない
効率よくやり直しを進めるためには、さまざまな教材や学習法にあれもこれも手を出しすぎないことも重要。
「みんなそのやり方でやっているから」「本やインターネットに書いてあったから」という理由だけで、明確な根拠なくやみくもに学習していると、期待された効果は得にくく、挫折しやすくなります。
英語学習における「現在地」や「弱点」には個人差があるもの。そもそも中学英語レベルの単語がわからない場合と、単語は知っていても文法が理解できない場合、読めるけど聞き取れない場合とでは、やるべき学習法が異なります。特に社会人の場合、英語学習に充てられる時間が限定的。だからこそ、いまの自分の学習フェーズに合った正しいやり方で、やり直しを進めていきましょう。
3. 無理な目標を決めない
英語を学生以来ずっと勉強していない方が中学英語からやり直す場合、無理な目標を決めないのも英語学習を続けるためのポイント。英語学習を継続していくためには、短時間で達成できる簡単な目標を具体的に設定するのがおすすめです。
たとえば、「1日5分、夕食後に単語アプリで語彙を学習する」というような、簡単ですぐにできる目標を、「いつ、何を、どれくらい学習するか」まで具体的に決めておきましょう。
4. 勉強のためのスキマ時間を探す
中学英語のやり直しをするのに、必ずしもまとまった英語の勉強時間を確保する必要はありません。
一日の予定を整理してみると、通勤中や昼休み、なにげなくテレビを見る時間など、特に何もしていないスキマ時間が見つかりませんか? こうしたスキマ時間を使って、勉強を15分ずつ1日あたり4回繰り返すことで、まとまった時間を無理に空けなくても、日々1時間の勉強が達成できます。
多忙で英語を勉強する時間がない社会人の方は、ぜひスキマ時間を見つけて英語をやり直してみましょう。
5. 「英語が話せるだけ」の講師から習おうとしない
英語ができるようになりたいからと、「英語が話せるだけ」の講師、「英語が得意なだけ」の講師から習おうとすると、思うような成果が出ない可能性があります。なぜなら、自分が英語を習得しているからといって、他者の英語力を伸ばせるスキルを必ずしももっているわけではないからです。
効率よく中学英語のやり直しをしたいなら、言語習得に関する知識が豊富であなたの現在の課題とその解決策を的確に提示することに長けた講師を選ぶようにしましょう。そうすれば、あなたに最適な学習法で効率よく英語力を伸ばすことができるようになります。
社会人の中学英語のやり直しに有効な学習方法
多忙な社会人の方でも、中学英語のやり直しを効率よく進められる学習方法を、「単語」「文法」「リーディング」の順にご紹介しましょう。
中学英語レベルの単語のやり直しに役立つ学習方法
中学英語のやり直しをする最初の段階では、単語と熟語は、中学卒業レベルの単語帳などで一気に覚えるのがおすすめ。以下の要領で学んでいくと、覚えやすくなります。
- 50語程度を1セットで覚える。セット内の単語の音声を聞き、発音しながら、英単語・日本語訳を目で見て覚える。
- 1セット終わったら、そのセットの単語の日本語訳を隠し、声に出しながら、意味をパッと思い浮かべられるかテストする。その後、思い浮かべた意味と訳が一致しているか確かめる。
- セット内の全単語の意味がパッと思い浮かぶようになるまで、2.を繰り返す。「覚えられた」と思う単語を飛ばしたりせず、すべての単語を含めて5回ほど行なうとよい。
- 翌日、前日に学習した単語の復習と新たな単語の学習を行なう。既習単語は2.の手順でさっと確認。未習単語は1.〜 3.の手順で学ぶ。
多めの数の単語を1セットで覚える覚え方は、脳のメカニズムのひとつである「遅延効果」を働かせることをねらったもの。「遅延効果」とは、ある情報に出会ったあと、その情報にもう一度出会うまでの期間をなるべく長くすることで、長期間記憶に残しやすくする効果のことです。
50語を1セットとすると、ある単語を初めて見たあと、その単語を再び見るまでに、50語を覚えるだけの時間が空きます。記憶が薄れていった状態で、再度記憶から取り出そうとすることで、より長く記憶が残りやすくなるのです。
記憶は「思い出そう」とするときに強化されます。忘れそうというタイミングで、もう一度単語に出会うことで、「思い出そう」とする力が働き、単語の記憶がより強化されるのです。
また、「発音しながら」覚えるのも重要。必ず付属の音声などで発音を確認し、自分でも声に出すのがポイントです。正しい発音を知らなければ、リスニングで正確に聞き取りにくくなり、かつスピーキングで相手に誤解を与える恐れもあります。
単語の発音で重要なのは、「音節」と「アクセント」を意識すること。「音節」は、母音を中心にした音のまとまりを指し、「アクセント」は、強く長めに発音する音節を指します。
音節を意識するためには、日本語と英語の音節の違いをまず認識することが大切。日本語では原則、子音のあとに母音がつきます。
【例】乗った notta
対して、英語は子音で終わる場合が大半です。
【例】box that cap
“cap” を例にすると、日本語だと「カップ(kappu)」と、音のまとまりはふたつ(カッ/プ)になり、最後に母音をつけて発音します。一方英語だと、音のまとまりはひとつで、発音する際は最後に母音はつけません。
カタカナ発音のまま英語の発音を覚えると、発音が不自然になり、相手にとって聞き取りづらくなる恐れがあります。1音節の単語を1拍で発音できるよう、手拍子でリズムをとるなどして、音節を意識した発音練習をしましょう。
音節が複数ある単語では、どの音節にアクセントがあるか注意して音源を聞き、アクセントの位置を意識しながらリピートすることが重要です。
発音に関しては、コラム「英語の発音が上達するトレーニングとおすすめのアプリ」が参考になります。ぜひチェックしてみてください。
中学英語レベルの文法のやり直しに役立つ学習方法
中学で学ぶ「基礎レベルの文法知識」は、英語を書いたり話したりするために必須の知識です。ただ、従来の学校教育では英文法の細かいルールを丸暗記で教わることが多く、苦手意識を抱えている方もいるでしょう。
そんな方に有効なのが、「認知文法」と「パターンプラクティス」。それぞれどのようなものか、詳しく説明しましょう。
1. 認知文法
「認知文法」は、認知言語学という学問をベースした、文法のとらえ方のこと。「ネイティブが世界をどのように認知し、どのように言語に反映させているか」というアプローチで英文法をとらえていきます。認知文法のアプローチでは、ネイティブが感覚的にもっている文法の「コアイメージ(根底に共通して存在するイメージ)」を通して、文法を理解していきます。
たとえば、中学で習う「進行形」の ing形。学校では「ing形=〜している」と訳を当てはめて学ぶため、 “The car is stoppng.” を「車は止まっている」と解釈してしまうような間違いが起こります。
じつは「車は止まりかけている」が正しい意味。認知文法のアプローチでは、ing形のコアイメージを「動作の途中」としてとらえます。「止まるという変化(動いている状態から止まる状態に変わる)が起きている “途中”」というイメージで理解するのです。
「認知文法」では、なるべく日本語訳に頼らず、英語のままのイメージで理解しようとしていきます。すると、わざわざ日本語に訳そうとしなくても理解できるため、英文の意味処理がスムーズになるのです。
2. パターンプラクティス
中学で習う英文法を「イメージ」で理解したあとは、「パターンプラクティス」を行ないましょう。 “I play soccer every Sunday.”→ “She plays soccer every Sunday” のように、身につけたい文法表現が含まれた例文の主語や動詞などを部分的に変化させて、繰り返し声に出していくトレーニングです。
パターンプラクティスを続けることで、正確にすばやく文を組み立てられるようになりますよ。
中学英語レベルのリーディングのやり直しに役立つ学習方法
「中学英語レベルの英文でも、単語や文法はわかるのに読んで理解するのに時間がかかる」とお悩みの方。日本語にきれいに訳そうとして、後ろから前に戻って読んでいませんか?
英語と日本語では語順が異なるため、一文すべてをきれいな日本語に訳そうとすると、英文を訳しながら何度も行ったり来たりしながら読むことになります。すると、読みきるのに時間がかかってしまいます。
英文をスラスラ読めるようになりたいなら、英語の語順のまま意味を処理していかなければなりません。そのためには、一文ごとにきれいに訳すのではなく、英語のチャンク(意味のかたまり)ごとに順番に理解していくことが重要です。そんな読み方は、以下の勉強法で身につきます。
- チャンクリーディング(スラッシュリーディング)
- サイトトランスレーション
- 音読
詳しくみていきましょう。
1. チャンクリーディング
英語のチャンクごとにスラッシュを引いたり、改行されたものを読んでいくトレーニングが、「チャンクリーディング(スラッシュリーディング)」。意味のかたまりごとにすでに切れ目が提示されている場合も、そうでない場合も、チャンク単位で内容を理解・イメージしながら、英語を頭から読めるような癖をつけていきます。慣れていけば、構造が複雑でも、返り読みせず、英語の語順で理解できるようになります。
まずは、以下の英文を読んでみましょう。
Last night, I went to dinner with my friend, John, and his family at a Japanese food restaurant.
チャンクで区切ると、次のとおり。
Last night, /
I went to dinner /
with my friend, John, /
and his family /
at a Japanese food restaurant.//
「どこまでが名詞のかたまりか」「次にくるのはどんな要素か」などの構造を意識しながら、チャンクごとに瞬時に理解する癖をつけて、英語を文頭から順番に読めれば、訳しながら読むのと比べて、速く英文を読んで理解できるようになります。
この時点で知らない単語や文法があれば、単語帳や文法の参考書などで調べておきましょう。
2. サイトトランスレーション
「サイトトランスレーション」では、チャンクごとに瞬時に意味を思い浮かべられるか確かめます。
先ほどのチャンク分けした英文を見て、瞬時に以下のような日本語に脳内で置き換えられるかチェックしましょう。きれいに訳すのではなく、「スピード」がポイントです。
Last night, /
昨夜
I went to dinner /
ディナーに行った
with my friend, John, /
友人のジョンと
and his family /
彼の家族と
at a Japanese food restaurant.//
日本食レストランで
サイトトランスレーションをしてみて、パッと意味が言えないチャンクがあれば、含まれる単語や文法が定着していない可能性があるので、再度意味を調べて理解できるようにしておきましょう。
3. 音読
チャンクごとに意味が理解できるようになったら、今度は「音読」。チャンクごとに意味を思い浮かべながら、声に出して読んでいきます。
私たちは英文を読む際、脳内で音読していると言われています。目で見て認識した文字を脳内で音に変え、脳内にある「辞書」と照合し、すでにある語彙や文法の知識などを使って理解しているのです。
音読を繰り返すことで、脳内で文字から音に変換するプロセスが速くなり、音への変換にかかる脳の負荷が軽減するのです。結果、「理解」の処理にすばやく移れるようになるため、リーディングスピードが向上します。
単に声に出すだけではなく、内容をしっかりイメージしながら音読するのを心がけましょう。
以上のようなトレーニングでやり直しをすれば、中学英語のやり直しがスムーズにできるはずです。
中学英語のやり直しに有効な社会人向けの教材
多忙な社会人なら、最適な教材を選んで中学英語のやり直しに励みたいところ。今回は、中学英語のやり直しに有効な教材を「単語」「文法」「リーディング」に分けてご紹介しましょう。
中学英語のやり直しに最適な本(単語)
1. 『改訂版『キクタン』【Entry】2000』
中学英語レベルの英単語のやり直しにおすすめな単語帳のひとつが、『改訂版 キクタン 【Entry】2000』。リズムに合わせて英単語を覚えられるのが特徴です。
「旅行」「病気」「スポーツ」など、ジャンル別で覚えるべき単語のまとめも収録されています。
2. 『速読速聴・英単語Basic2400 ver.3』
『速読速聴・英単語 Basic 2400 ver.3 』も、中学英語レベルのやり直しに最適な単語帳のひとつ。中学英語レベルに設定された短めの対話文を通して、単語の適切な使い方が学べる一冊です。 “give” や “make” などの中学英語で頻繁に用いられる動詞とその中心的な意味、例文がまとめられているコーナーもあります。「日記」や「レシピ」など、さまざまなジャンルの例文を扱っていることも特徴です。
音声のダウンロードも可能で、スマートフォンなどにあらかじめ音源を入れておけば、スキマ時間で中学英語のやり直しができます。
中学英語のやり直しに最適な本(文法)
1.『英文法の鬼100則』
『英文法の鬼100則』は、英文法を認知言語学をもとに「イメージ」でとらえる例を紹介している教材。中学英語で習う「進行形」や「完了形」などの使い方を、丸暗記したり、日本語に無理に訳したりしなくても効率的に文法を理解できる一冊です。
2.『ポンポン話すための瞬間英作文 パターン・プラクティス』
『ポンポン話すための瞬間英作文 パターン・プラクティス』は、「パターンプラクティス」におすすめのトレーニング教材のひとつ。
主語や時制を変えたり、肯定文を疑問文にしたりするなど、文の一部を入れ換えて、瞬間的に英作文していくトレーニングに役立ちます。
中学英語レベルの文法を、「知っている」段階から「使える」段階まで効率的に上げられる一冊です。
中学英語のやり直しに最適な本(リーディング)
1.『アルゴリズム音読』
『アルゴリズム音読』は、手順を追った音読トレーニングで、中学英語レベルのリーディングスキルを身につけられる教材。
「時制」や「受動態」など、中学英語で習う文法を使った長文を通して、チャンクリーディング、サイトトランスレーション、音読などのトレーニングができる一冊です。
1日10分ほどで完結できるように設計されているため、スキマ時間の学習にも役立ちます。
2. グレイデッド・リーダーズ
ストーリーを楽しみながら中学英語レベルのリーディングスキルを身につけたい方は、「グレイデッド・リーダーズ(graded readers)」はいかがでしょうか?
グレイデッド・リーダーズとは、ネイティブの子ども向け絵本や有名な児童書、古典文学を、英語学習者向けにレベルに合わせた単語や文法を使ったシンプルな英語に書き直した段階別読み物のこと。中学英語レベルで読める読み物も多数あります。
楽しくリーディングのやり直しを進めたい方は、おもしろそうと思った読み物を一冊手に取って読んでみてもいいですね。
以上のような教材を使って、中学英語のやり直しを進めてみましょう。
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