英語指導者に今こそ “プロ級スキル” が求められる納得の理由。

日本人の英語力を高めていくために必要なもの。それは、英語を教える側の “確かな指導力” です

慶應義塾大学環境情報学部兼大学院政策メディア研究科名誉教授・ココネ言語教育研究所所長の田中茂範(たなか・しげのり)先生、元獨協大学外国語学部および同大学院教授・阿部一英語総合研究所所長の阿部一(あべ・はじめ)先生、そして社会人向け英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を運営する株式会社恵学社より、ENGLISH COMPANY担当取締役の田畑翔子(たばた・しょうこ)氏、コンテンツ開発室シニアリサーチャーの谷原英利(たにはら・ひでとし)氏をお招きし、“公教育” と “民間教育” 双方の観点から、教師力・指導力の重要性を聞きました

英語教師力を高めるオンライン塾

——単に、語彙・文法の知識や問題の正答を教えるのではなく、“真に使える英語力” を育てる教育が求められていると、田中先生ならびに阿部先生はご指摘くださいました(『なぜ「英語を使える日本人」が育たないのか? 今の英語教育に足りないこと。』参照)。そのために必要な “英語教師力” を伸ばしていくために、「PEN」というサービスを展開されていますね。

田中先生: 「PEN」は、“Powerful Educators’ Network” の頭文字から来ています。力ある英語教育者のネットワークを広げていきたい、そんな思いから始まりました。

私自身、英語教育に関する講演や研修のために全国各地を訪れた際には、現場の先生方にもお会いします。そして夜に一緒に食事をすると、「今日の話はとてもためになった」「おもしろかった」なんて言葉を頂くんです。でも次の日の朝になると、皆さんすっかり忘れている(笑)。

阿部先生: リアルな場所に先生方を集めて講演や研修を実施したとしても、どうしても一過性で終わってしまう節がある。結果、英語教師力はなかなか高まっていかず、生徒にも “真に使える英語力” は身についていかない。こういうジレンマを抱えていたわけです。

阿部一先生

田中先生: そこで考えました。教師自身がいつでもどこでも本格的に英語教育について学べる空間をオンラインで作るのはどうかと。これがPENのスタートラインでした。

柱は大きく3つあります。1つめは「動画で学ぶ」。言語論・文化論・コミュニケーション論といった理論面はもちろん、実践面として語彙・文法・音声面等の効果的な指導法を、豊富なオリジナル動画を通して学べます。2つめは「教材を探す」。実際の教室や自学自習で使えるスライドや教材を自由にダウンロードできます。そして3つめは「交流する」。英語教育や英語学習について自由にトピックを共有し、オンライン上で意見交換や議論ができます。そうやって英語教師力を高めてもらい、生徒に “真に使える英語力” を届けるのが狙いです。

田中茂範先生

ENGLISH COMPANYが高い指導力を誇る理由

——生徒の “真に使える英語力” を育てるためには、教える側の高い英語教師力が求められる、ということですね。「ENGLISH COMPANY」のトレーナー陣は非常に高い指導力を誇ると伺っていますが、“教える側の指導力” の重要性について、今の先生方のお話と通じる部分があるのではないでしょうか?

田畑氏: ENGLISH COMPANYのトレーナー数は現在100人を超えますが、大学や大学院で応用言語学や認知言語学などを専門的に学んできた者が多くいます。私も大学院で言語教育学を専攻していましたし、谷原もアメリカで第二言語習得のマスターを取得しています。

そして、英語を教える側が研鑽を重ねて日々進化していかなければいけないというのは、私たちも常々思っていることです。教育学や言語学の研究は今も世界中で行なわれていて、新しい情報が毎日更新され続けています。それらを逃すことなくキャッチアップしつつ、指導法をどんどんブラッシュアップして、現時点で最高の教育を提供するというのが、教える側に求められることなのではないかと。

田畑翔子氏

谷原氏: ENGLISH COMPANYのトレーナーに対しては、厳しい初期研修をクリアしてもらうのは当然のこと、定期的に研修会を実施しています。そして「PEN」と同様、トレーナー全員で教材や動画などを共有し、指導技術を徹底的に磨いてもらう。そうやって、専門的な知識を持って指導に当たれる人材を育てています

田中先生: 100人超というボリュームのトレーナー全員に知見を共有している。すばらしいですね。

谷原英利氏

英語力を伸ばすために “学習者に” 求められる2つのこと

——ここまで、英語を教える側のお話でした。では、英語力を獲得するうえで、反対に “学習者側に” 求められることとは何なのでしょう?

阿部先生: 英語学習を進めるうえで重要な鍵になってくるのが「英語の日常化」です。1週間のなかで数えるぐらいしか英語と関わらないようでは、残念ながら上達はあまり期待できません。

特に社会人は、仕事で忙しいという側面もあるかもしれませんが……頻繁に英語に触れるなり英語で会話するなり、いかにして英語を毎日の生活の中に組み込むかを考えなければいけません。

田畑氏: ENGLISH COMPANYの受講生の方々に聞いてみても、「英語学習に割ける時間が確保できない」という悩みは多く耳にしますね。しかし私たちとしても、英語学習を日常に組み込むのは必須事項だと考えています。そこで、たとえ30分でも構わないからこの時間には必ずこれをやりましょうと、毎日のトレーニングメニューまで含めて細かくコンサルティングするようにしています

——“授業以外の時間は何もしない” では、英語力は伸びていかないのですね。

田畑氏: ENGLISH COMPANYでは、週に1回または2回はトレーナーのレッスンを受けていただきますが、それはあくまで現状の課題を発見するための “チェックポイント”。やはり大前提として、英語学習を日常に組み込むことが必要になってくるのです。

谷原氏: また、学習方法の選択にも気をつけなければなりません。ENGLISH COMPANYは、人間が母語以外の言語を習得していくプロセスやメカニズムを研究する学問領域である「第二言語習得研究」をベースにサービス設計を行なっています。学問的知見・科学的知見が根底にあるのです。

一方で、民間のほかの英語教育サービスを見渡してみると、学問的根拠を抜きにした “見せ方” や “インパクト” を武器に展開しているところが非常に多いのです。「英語を話せるようになりたければ、とにかくネイティブと会話しよう」「成功者がおすすめしている学習方法をまねすれば、英語ができるようになる」など、英語教育の専門家ではない人が謳う “根拠のない学習方法” が世に蔓延してしまっていることに、注意しなければなりません。

田中先生: 本当に求められているのは、根拠のある指導、つまりエビデンスベースの指導ですからね。

谷原氏: 多くの社会人が英語力を欲しているいま、英語教育の世界には他業種を含めて多くのプレイヤーが参入してきています。中には、マーケティングは非常に巧みだけれど、ほとんど専門性を持たない、というところもあります。それも、エビデンスのない学習方法がここまで広まってしまっているひとつの要因なのではないかと思います。

キャッチーなフレーズに安易に飛びつかず、本当に効果のある英語学習法は何なのかを学習者自身が見極める必要がありますし、我々自身も、科学的に正しい英語学習法を世に伝えていく必要があると感じています。

【田中茂範先生・阿部一先生 × 株式会社恵学社 田畑翔子氏・谷原英利氏 ほかの対談記事はこちら】 なぜ「英語を使える日本人」が育たないのか? 今の英語教育に足りないこと。

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