目に前にあるタスクを整理し、優先順位の高い仕事から着手する――。これが仕事の要諦であることには、多くの人にとって異論がないと思います。しかし、実際のところは……雑用や他者から依頼された緊急性が高い仕事から手をつけてしまうというパターンで1日がはじまり、それらのことに振り回されてしまいます

でも、それでいいのでしょうか? そのままでは、最高の仕事はできないまま時間だけが過ぎ去っていきます

そこで、連載『人生が変わる「習慣化」』の第4回は、「朝一(あさいち)」でしてはいけない習慣と、1日を有効に使うために知っておきたい習慣について考えていきます。

1日のエネルギーと時間には限りがある

「さあ、今日も頑張って、仕事をどんどんこなすぞ!」と意気込んで出社しても、実際にはそうはいきません。それはなぜでしょうか? ほとんどの人は、朝の「一発目の習慣」で失敗しているからです。その悪い習慣とは……、

パソコンを開いてメールを受信すること

あなたもその習慣を長く続けていませんか? おそらく、95%以上のビジネスパーソンは、このパターンから1日をスタートしていることでしょう。しかし、メールを開いた瞬間、上司からのメールや自分が参加しているプロジェクトの緊急メールなどに振り回され、他動的な時間管理スタイルになっていきます

そこでしてほしいのは、たった15分でいいので、メールを読むことや作成すること、送信することを我慢し、自分が決めた重要な仕事からスタートすること。それによって、間違いなく1日の使い方が変わってきます。

1日のエネルギーと時間には限りがあるのです。雑用からスタートすると「マルチモード」の頭になり、重要事項への取り組みがあとまわしになってしまいます。メールに限らず、雑用からはじまる悪循環と、重要仕事からスタートする好循環とを比較してみます。そして、すぐに行動に移す方法もお伝えしましょう。

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会社に到着すると時刻は8時半――。とりあえず、自席に置かれた郵送物を見て、中身をチェック。次にメールチェックをします。おもむろに古いメールから返信しはじめると、5通であっという間に9時半になってしまった……

10時からの会議に出席するために、資料を用意しなければなりません。急いで資料をプリントアウトしたいのに、プリンターの前には3人が待っているではありませんか。また時間のロスです。なんとかプリントアウトを済ませ会議室に到着すると、すでに9人のお偉いさんが表情を強張らせながら椅子に座っています。


会議が終わると、もうランチタイム。午後の仕事がスタートしパソコンに向かうと、またもやメールの嵐。「仕方ない、今日やる予定だった企画書は夜に着手しよう」とあとまわしになってしまいました。結局、19時になってようやく企画書に着手します。でもすでに、残されたエネルギーがほとんどない状態です。頭が冴えず、仕事ははかどりません。企画書を作成し終えたのは23時でした

朝早くに出社して、帰宅したら寝るだけの生活。まさに、会社と家の往復です。どうにか、この生活から抜け出したいと思っています。

では、このAさんはなにがいけなくて、どうすれば好循環を手に入れることができるでしょう。

朝、雑用メールに着手するのは非効率

朝一で、雑用やメール処理からスタートすると、わたしたちの脳は雑務を処理するモードになります。この、雑務やメール処理のモードは、浅く広く、緊急業務を処理する拡散型の集中スタイル。朝一にこのモードが立ち上がると、ひとつのことに深く集中する、深度の高い集中モードを立ち上げるのが困難になってしまいます

朝から雑用やメール処理など緊急対応モードにしないほうがいい理由は、朝は脳がいちばん深度の高い集中力を発揮しやすいから。時間の活用というと、物理的な時間だけに着目しますが、脳のエネルギー消耗という観点で考えると、まったく新しい観点が見えてきます。

脳は、朝一がもっともエネルギーがあります。そして、夕方になっていくにつれて、エネルギーは消耗していくのです。脳のエネルギーがある朝は深度の高い集中力が必要な仕事をこなし日中は突発・緊急の仕事をこなします。そして、夕方に雑用を処理するのが、脳のエネルギー効率を使っていくうえでの良い戦略です

「朝の1時間は、夜の3時間に匹敵する」という格言がありますが、頭脳集約型の高い集中力を発揮する業務においては、まったくそのとおり。逆に、メール処理や雑用は、エネルギーが低いときにやっても大きく効率面で差がつきにくいのです。

マルチタスク、マルチモードの弊害

脳は、集中モードのギアチェンジをするほどに、エネルギーを消耗します。いちばんの弊害は、同時にいくつものタスクを切り替えること。メールを返信している最中に上司から声をかけられる。会議に出席してデスクに戻ると、顧客からの電話に追われる……。これらの突発的な業務が、脳のギアチェンジを余儀なくします。

もちろん、働いている以上は仕方ないことですが、この突発的な業務への緊急対応で陥るマルチモードに入る前に、シングルモードで深度の高い集中モードをつくっておきたいところです。なぜならば、突発的な業務への緊急対応で陥るマルチモードは、他者からの力によりつくらざるを得ないもの。一方、深度の高いシングルモードは、自分で意図してつくれるものだからです。そして、朝いちばんがもっともそのモードをつくりやすく、一度朝につくってしまえば、日中にも再びつくりやすくなります

朝一にやってはいけない業務とは?

ここまでのことを踏まえ、朝出社してからの15分で取り掛かってはいけない業務を整理します。

× メールチェック
メールチェックは、マルチモードや緊急モードに入りやすくなります。大量のメール、多様な業務、緊急対応に追われるからです。

× 電話連絡、電話対応
電話の相手をコントロールすることはできません。また、コミュニケーションそのものが即興、緊急モードになる傾向があるからです。

× 雑用
申請書の作成や郵送の宛先記入など、脳の集中力が必要のない業務に没頭してしまうと、本当に大切な業務に投入する時間とエネルギーがなくなってしまいます。雑用は残りの時間とエネルギーで行うことをおすすめします。

朝からトップスピードで仕事をする準備

最後は、どうすれば最高の1日にできるかという基準で、ポイントをいくつか説明します。

○ 前日に必ず予定を組んでおく
当日になってなにをするかを考えていると、深度の高い集中モードを立ち上げにくくなります。まずは、「いのいちばん」にもっとも重要な仕事に入れるよう、前日に予定を組んでおくことをおすすめします。

○ メールを開かなくても取りかかれるよう準備する
仮に段取りを考えていたとしても、「このメールの添付ファイルだけは確認しないと……」とメーラーを開いた瞬間に、マルチモードへの罠にはまってしまいます。それでは意味がありませんので、重要なメールはプリントアウトしてデスクにまとめておいたり、どういうメールがくるかを想定しておいたりするなどすると、メールを過剰に意識せずに済みます。

○「think on paper」をやる
紙のうえでものごとを考えるのは、深度の高い集中力を発揮するうえで有効な手段。パソコンで考えるよりも、ペンを持って紙に書き出すことで、脳が深い集中に入りやすくなります。出社したら、パソコンの電源をいきなりONせずに、重要なことを紙に書き出してみましょう。

○ 即答は良い戦略ではないと心得る
上司や同僚からの依頼に「即答」することは、効率がいい戦略ではありません。なぜなら、「即答精神」のもとではマルチモードを立ち上げやすくなるからです。ちなみに、顧客や仕事相手を前にしたときに、即答しないと印象が悪くなりそうですが実際そうでしょうか? じつは即答により安心しているのは自分なのです。長期で見れば、時間効率の良い人は「即答」ではなく、きちんと自分のリズムや境界線を保っています。特に朝一は、「即答」して急な仕事を受けるのではなく、しっかりと自分の時間管理を意識してください

○ 早出は最高の戦略
わたしたちが集中力を発揮するためには、突発的なことに追われない静かな時間が必要です。問題は、それを朝にするか、夜にするか。朝にその時間を確保できる人は、誰にも邪魔されない時間に深度の高い集中モードを立ち上げています。であれば、早出して朝に30分でもいいので集中して作業することは、時間や業務の主導権を握るうえで最高の戦略です

***
以上、1日をメールチェック(その他、雑用)からスタートしてはいけない理由と対策を書いてみました。これまでのような悪循環をなくしていくためにも、出社してから「朝一の15分」はメールをチェックせず、最初から自分のなかで決めている重要な仕事に集中してみてください。

【今回の習慣化ルール】
出社後、朝一にしてはいけない習慣はこれ!
・メールをチェックすること
・電話連絡、電話対応
・その他、雑用(他者から依頼された急用や、自分で抱えている雑用)

連載『人生が変わる「習慣化」』記事一覧はこちら↓

30日で人生を変える「続ける」習慣

古川武士

日本実業出版社(2010)