学力向上は生活習慣の確立と時間の使い方で勝負が決まる——東大首席卒・NY州弁護士 山口真由さんインタビュー【第2回】

勉強で十分な結果を出すためには、ただ勉強法を磨いているだけでは足りません。勉強する人の体質や生活パターンに合わせた、勉強の効果を最大限に発揮できる生活習慣の確立こそが大切なのです。

数々の難関試験に合格してきた、文筆業やコメンテーターとしても活躍する山口真由さんに、「7回読み」勉強法をはじめとした「勉強法」を最大限に活かすための生活習慣や、結果を出す人の時間の使い方を教えてもらいました。

■第1回『最速で確実に結果がついてくる「7回読み」勉強法』はこちら

構成/岩川悟 取材・文/辻本圭介 写真/玉井美世子

ルーティーンを重視する生活習慣に変えると続けられる

流し読みを繰り返して内容を頭に写し取っていく「7回読み」勉強法を紹介したときに(「7回読み」については、第1回『最速で確実に結果がついてくる「7回読み」勉強法』を参照)、もっとも多く頂いた意見が「7回も読めない」ということでした。そもそも、1回の負担をできるだけ軽くすることで複数回読むメソッドなのですが、「3回くらいで疲れてくる」といった声をたくさん聞いたのです。

そこで、繰り返すこと自体がつらい場合は、わたしはルーティーンを重視する生活習慣に変えていくことが効果的だと見ています。たとえば、毎日の食事や睡眠の時間を動かさないようにしたり、退社時刻もなるべく固定化したりする。すると、勉強に使える時間は自ずと決まってきますよね。繰り返し読むことがつらいと感じる人は、じつは勉強する時間や場所の使い方が安定していない場合がとても多いのです。

わたしの場合は、起きたらすぐに机に向かう習慣ができています。その日の気分や体調に関係なく、起きたらとりあえず机に座って本を読みはじめるのです。勉強ははじめるのがつらい場合がとても多いですが、生活習慣になっていると「そういうものだから」となにも考えないで繰り返すだけで取っ掛かりの部分が楽になります。毎朝歯磨きができるなら、毎朝机に座ることもできるはずという感覚なのです。

そのため、わたしはベッドと机をなるべく近づけて動線をつくり、起きたらなんの抵抗もなく楽に本を読みはじめます。他にも、自動的に開始できる状態をつくるために電車で読む本をつねに持ち歩き、電車の時間もほとんど変えません。そうして勉強時間を安定させると、繰り返しのサイクルが体に染みついてきて、次第に苦でなくなるというわけです。

勉強は集中力が高まる時間帯に自動的にはじめる

じつは、わたしがこのような生活習慣を身につけたのは、子どものころからルーティーンを重視する家庭で育ったことが大きく影響しています。両親が共働きだったため、母が家を出る時間が毎日必ず決まっており、それに合わせてあらゆる行動の時間が決まっていました。そのため繰り返しが体に染みついて、まるで歯磨きをするかのように本を読んでいたのです。一定した生活習慣のなかに、読書や勉強が自然に組み込まれていたということです。

もちろん、繰り返しの生活習慣はいつからでもつくることができます。手はじめに、食事や寝る時間を固定してみてはいかがでしょうか? すると、人間の基本的な生活習慣が固定化されることで、1日のなかで体調が良い時間帯や、集中力が高まる時間帯を見極められるようになります

また、自分が集中できる間隔を知っておくことも大切ですよね。わたしの場合は食事前に集中力が上がるタイプなので、その時間帯に負荷の高い作業をあてています。そして、90分経つと急激に集中力が落ちる体質でもあるため、そんなときはどんなに途中でも他の作業に切り替える。休憩は、90分サイクルのなかに入れ込むかたちで最後の10~15分に目を休めたり、ぼーっとしたり、軽いストレッチをしたりしています。

いずれにせよ、勉強ははじめることや集中力が切れた後に続けることがつらいので、あらかじめ自分が集中できる時間帯を見極め、そのときに抵抗なくはじめられるようにしておけば苦痛が軽減されます。勉強はなるべく楽に、自動化したほうがいいのです。ちなみに、朝型が良いかどうかは人それぞれ。わたしはむかしから夜型だったのですが、いまは仕事の関係などもあって朝食前に勉強する朝型にシフトしています。

本をつねに持ち歩き隙間時間を徹底的に活用する

みなさんのまわりには、「そんな大量の本をいつ読んでいるの?」と驚くような人がいませんか? 仕事が多忙で家族の時間もあるのに、読書や勉強を驚くほどこなしている人。これには生活習慣が安定していると同時に、「隙間時間」を徹底的に活用していることも挙げられるでしょう。要は、ほんの少しの時間も無駄にせず自分のために使うことを習慣化しているのです。

そんなわたしもつねに本を必ず持ち歩き、誰かが約束に数分遅れたらどんな場所でもためらいなく本を開いています。ランチの行列のなかでも本を読むし、友人がトイレに立ってもすぐに読みます。図書館で本を借りたら、降りるエレベーターのなかで読みはじめ、1階に着くころには「このあたりを重点的に読めばいいかな」と判断を下しているほど。わたしは6分あれば1単元が読めるという考え方をしているので、とにかく少しでも時間があれば本を開いています。「なぜそこまで?」と驚かれますが、本を読みたいという気持ちに加えて、コントロールできない他人の行動にイライラしたくないからです。強いて言うなら、遅れるなら6分サイクルで遅れてほしいな……と思っています(笑)。

こんなことを話すと、「ほんとうに勉強が好きなんですね」と言われますが、じつはわたしには勉強が楽しいという感情はほとんどありません。むしろ、喜びの感情だけで人は勉強なんてできないと思っています。でも、結局のところ、勉強ははじめなければなにもはじまらないことも事実。だったら、どれだけそのスタートの負荷を少なくするか。そこにこだわっているのです。

大きな目標を持つことで、続けるモチベーションにする人もいるでしょう。ただ、わたしは目標はなるべく小さく分解して、自分を追い詰める1カ月後くらいの目標にしたほうがいいと考えています。英語なら、計画を立てる前に至近のTOEICに申し込んでみる。「うまくなればいいな」と漠然と思っていてもなかなか勉強は続けられませんが、高い受験料やスコアを考えると頑張りやすくなります。計画をつくるよりも、短期的な負荷をかけていくほうが効果的なのです。細かい計画をつくると、「また遅れた……」とどうしてもマイナス評価をしがち。勉強はただでさえつらいので、なるべく心に負荷をかけないスタンスが大切だと思います。

■第1回『最速で確実に結果がついてくる「7回読み」勉強法』はこちら ■第3回『仕事で大きな成果を導く「俯瞰力」』はこちら

東大首席・ハーバード卒NY州弁護士と母が教える合格習慣55

山口真由

学研プラス (2018)

【プロフィール】 山口真由(やまぐち・まゆ) 1983年生まれ、札幌市出身。東京大学法学部を首席で卒業。大学3年次に司法試験、翌年には国家公務員Ⅰ種に合格。学業成績は在学中4年間を通じて「オール優」で4年次には総長賞も受ける。2006年4月に財務省に入省し、主税局に配属。2008年に退職し、2009年から2015年まで大手法律事務所に勤務し企業法務に従事。2015年から1年間ハーバード・ロースクールへの留学、修了し、ニューヨーク州弁護士資格も取得。現在は、テレビのコメンテーターや執筆でも活躍している。著書に『東大首席が教える超速「7回読み」勉強法』、『東大首席が教える「間違えない」思考法』(以上PHP研究所)、『リベラルという病』(新潮社)など多数。

【ライタープロフィール】 辻本圭介(つじもと・けいすけ) 1975年生まれ、京都市出身。大学卒業後、主に文学をテーマにライター活動を開始。2003年に編集者に転じ、芸能・カルチャーを中心とした雜誌の編集に携わる。2009年以後、上場企業の広報・IR媒体の企画・専門編集に携わりながら、月刊『iPhone Magazine』編集長を経験するなど幅広く活動。現在は、ブックライターとしてもヒット作を手がけている。

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