睡眠に対する意識を高く持つのは、とても大切なことです。でも、「眠れない!」「もっと寝なくちゃ!」などと過剰に意識しすぎるのは、かえって眠りを妨げてしまうことがわかっています。
例えば、「22時には就床していなくてはいけない」という誤った情報を信じ、眠たくもないのにベッドに入る、など。むしろ睡眠の質を低下させ、眠れぬ夜を招く原因になりかねません。
今回は、どのくらい効率的に眠れているかを表す「睡眠効率」を取り上げます。ご自身の眠りを客観的に点数づけしてみましょう。
「早く寝なければ……」の努力は逆効果!?
上で述べたような、必要以上に長い時間ベッドの中で過ごす行為は、夜中に目が覚める「中途覚醒」の一因となり、眠り全体を浅くして睡眠効率を下げてしまいます。
健康であれば約10分程度で入眠しますが、ベッドに入っても30分以上寝つくことができないと、焦りや不安感だけが増強され、脳が「ベッド=眠れない」という意識づけをしてしまうことも。すると、ベッドに入るたびに入眠がスムーズにいかないという負のスパイラルを起こしてしまうことにもつながりかねません。
また、夜中に何度も覚醒すると、そのたびに眠りが分断されてしまいます。当然、熟眠感は得られず、起床時には疲労感が残っているという状態になってしまうのです。
眠るために行なっていた努力が、じつは不眠や不健康のスパイラルを引き起こす入り口になっていたかもしれないという事実に、驚かれた方も多いのではないでしょうか。
「良い眠り」は、免疫力の強化や学習能力の向上、さまざまな心身疾患の減少、そして美容にも欠かせないことは周知されています。では、そもそも「良い眠り」とは何なのでしょうか?
「睡眠効率」を計算してみよう
「良い眠り」を満たす条件として、睡眠の適切な「量(時間)」と「質」の2つが確保されていることが挙げられます。
でも、「自分にとって適切な睡眠時間がわからない」というお悩みも耳にしますね。じつは、睡眠の質から、自分の睡眠時間の目安を算出することができるのです。
どのくらい効率的に眠れているかを表す「睡眠効率」は、自分の眠りを客観的に知るうえで大切な指標となります。ぜひ計算してみてください。方法はとても簡単です。
睡眠効率 = 総睡眠時間(実際に眠っていた時間)÷ 総就床時間(ベッドの中にいた時間)× 100
たとえば、夜にベッドに入った時刻が0時、朝ベッドから出た時刻が7時、実際に眠っていた時間が5時間だった場合、総睡眠時間は5時間、総就床時間は7時間となります。これを先ほどの式に当てはめると、
睡眠効率 = 5 ÷ 7 × 100 = 71.4
となり、睡眠効率得点として「71点」と算出されます。
皆さんの睡眠効率はどれくらいでしたか? まずは自分の眠りがどんな状況にあるのか、睡眠効率の点数から知ることが大切。当然、ベッドに入ってから眠りにつくまでにとても時間がかかったり、早朝に目が覚めてそのまま眠れなかったりするような場合は、睡眠効率の得点は低くなってしまいます。
睡眠効率を上げるには、戦略的な「遅寝早起き」を効果的
さて、上記の例のように、睡眠効率点数が85点未満の場合は、ベッドに入る時間をあえて遅くし、就床時間を短縮するところから睡眠改善に取り組んでみましょう。睡眠の圧が高まり、睡眠の効率もぐっと上がるはずです。「健康のためには早寝早起き」という認識は一般的には間違っていませんが、睡眠の効率が悪い場合は、このように意識的に「遅寝早起き」にしていきます。
そして、ふたたび睡眠効率を計算し、合格点である85点を超えてきたら、今後は就床する時刻を15分だけ早めてみてください。90点以上であれば、30分早めに就床します。このプロセスを繰り返していくのです。そうして、あえて圧迫させた睡眠時間を少しずつ延長させながら、自分に合った適切な睡眠時間を確保していきましょう。
この睡眠効率を計算するにあたっては、「睡眠日誌」を活用することで、自分が何時に就床したのか、何時間程度眠ったのかなどを簡単に把握できるようになります。私のサイト「SLEEP CULTURE」では、これまでの睡眠日誌(簡易版)に加え、睡眠効率が計算できるバージョンもダウンロードできるようになりました。どちらのバージョンも無料ですので、ぜひ睡眠改善にお役立てください。
まずは2週間続けて記録することで、自分の睡眠覚醒パターンが見えてきて、仮に問題がある場合は、その改善すべきポイントが浮き彫りになってきます。そこをひとつずつトラブルシューティングしていけば、徐々に睡眠が改善され、熟睡感や目覚めの気分、日中の生産性も上がっていくことでしょう。
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