優れたリーダーになるために「今日からすぐにできる」こと【元東レ経営研究所社長 佐々木常夫さん「リーダーになるために必要なこと」part3】

リーダーになる日は、いくら願っても急にはやって来ません。優れたリーダーたちは、リーダーになるずっと以前から、自分ができるベストな行動をコツコツと積み重ねてきた人たちなのです。今回は、東レ時代に同期最年少役員になった経歴を持つ佐々木常夫さんに、将来リーダーになるために「今日からすぐにできること」を伺いました。

■part2『良きリーダーは「世のため人のため」に働く』はこちら

構成/岩川悟 取材・文/辻本圭介

「思う」ことと「できる」ことはちがう。もっとも大切な「ひとつのこと」を実行しよう

上司を見ていて、「自分がリーダーだったらこうするのに……」とは、ビジネスパーソンなら誰もが一度は思うものかもしれません。リーダーのあり方によって組織の活性度が変わるので、もしリーダーが幸せに働いていないなら、きっと部下も幸せに働くことはできないでしょう。でも、いざ自分がリーダーになってみると……思っていたことを実行できないリーダーもたくさんいるようです。

「つまり、頭で考えていることと、実際に『できる』ことはちがうということですよね。たとえば、わたしは企業研修の冒頭でよくこのように伝えています。『わたしの研修を受けても、なにもしなければなんの役にも立ちません。でも、10人にふたりくらいは学んだことを職場で実践する人がいます。その人のために、わたしはこれから研修をします』と。そして実際に、ほとんどの人は『いいことを聞いたなあ』と思うだけで終わるのです(苦笑)。でも、行動してはじめてわかることが、世の中にはたくさんあります。頭で考えているうちは、まだ考えているだけでなんの成果にもつながっていないことを忘れてはなりません」

だからこそ、やろうと思ったことは「必ず行動に移すことがなにより大切だ」と佐々木さん。そうすれば、実践の場で多くのことを学びながら成長していけるからです。でもどうすれば、これまでの習慣や自らの心理的な壁を打ち破って、すぐ行動に移せるような人間になれるのでしょう。

「たったひとつでいいんですよ。人から役に立つ話を聞いたとき、たとえば5つ聞いたら5つすべてをやろうとする人がいますが、実際には5つなんてできません。ならば、たったひとつに絞ってみてください。『これだけはやってみよう!』と決心して、自分にとってもっとも大切なひとつのことを実行すればいい。さもなければ、人間ってなかなか行動まで至れないものですよ」

やりたいことを組織やチームで「共有」すると、実現の可能性が一気に高まっていく

選択肢が多いからこそ迷いが生じ、迷うからこそ行動が難しくなっていく――。そんなとき、やるべきことをひとつに絞ると行動するハードルを下げることができるのです。

「ほかには、『やりたい』と思ったことを、仕事の仲間と共有することも大切だと考えています。結局のところ、組織の仕事はひとりではできないので、だったら最初からまわりの人を引き込めばいいんですよ。たとえば、部署内で問題を提起してみたり、一緒に考える場をつくったりしてみんなの議題にしてみる。すると、自分の頭で考えているだけでは出なかったアイデアなども出やすくなります」

そうして上司や部下たちからさまざまな意見や提案が出てきたら、そんなプロセスも含めて共有化することで、組織の力がどんどんついていくそう。

「リーダーはもちろんのこと、たとえリーダーでなくとも、思い立ったらとにかくまわりの人に意見をぶつけてみること。これは、成果を挙げるためのとても有効な方法になると思います」

自分はどのように生きどのように働くのか。年1回、A4用紙1枚で上司や部下に伝える

行動することはひとつに絞って、実現の可能性を高めていく。思い立ったことは仲間と共有して、組織やチームとして戦う。こうした成果重視型の仕事に変えていくには、最終的には一人ひとりの仕事に対する取り組み方が問われます。

「やっぱり、『自分はどう生きるのか』『どう働くのか』『どう人と付き合うのか』という考えを持っていなければ、すべてがはじまりません。人から言われたことをただやっていたり、世の中でこうあるべきとされていることを信じたりしているだけでは、大きく成長することはできないのです。言い換えると、『主体性』を持って仕事に取り組むことがなにより大切だということ。そこでわたしの場合は、40歳のときから毎年1回、このことを自分に問うことを決めました。具体的には、年初にA4用紙1枚で、『今年はこのような考え方で仕事をする』と、個人の基本方針をつくることをはじめたのです」

長々と書くのではなく、あえてA4用紙1枚のみ。これを、佐々木さんは仕事はじめの日に部署の全員に発信しました。もちろん、上司にも臆せず手渡すことを毎年のように続けたのだとか。

「上司も一緒に仕事をする仲間ですから、当然わたしの考えを共有してもらわなければなりません。また、自分の考えを人に伝えることには責任が伴うので、自分自身がいい加減な気持ちでは仕事に取り組まなくなります。さらに、これを毎年のように続けていくとすべての基本方針が紙に残っていくので、自分の成長の軌跡がよくわかるようにもなります。結果、『いますべきこと』がさらに明確になっていくというわけです」

部下には共有できたとしても、ふつうはなかなか上司にまでは言いづらいものかもしれません。でも、「リーダーから見れば、なにを考えているかよくわからない部下が一番困るんですよ」と佐々木さん。

「自分の考えを上司と共有すると、上司は必ず『ここはこうしたほうがいい』と、ひと言言ってくれるものです。そして、『あいつこんなことを考えているんだな』と思ってもらえれば、さらに具体的なアドバイスをもらいやすくなります。すると、どんなことが起こると思いますか? そんな部下のことは、上司が少しずつ認めはじめるのです。なぜなら、こうしたことができる部下ってやっぱり頼もしいからです。しかも、上司の立場になってみれば、自分の影響力も行使できるわけなので、じつはウィン・ウィンな方法でもあるのです。だからこそ、繰り返しますが、『なにもやらないのが一番の損』。これはいまリーダーである人はもちろんのこと、これからリーダーを目指す人には、ぜひ知っておいてほしい成果を出すための『基本中の基本』ですね」

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【プロフィール】 佐々木常夫(ささき・つねお) 1944年生まれ、秋田県出身。東京大学経済学部卒業後、東レ株式会社入社。自閉症の長男を含め3人の子どもを持つ。しばしば問題を起こす長男の世話、加えて肝臓病とうつ病を患った妻を抱え多難な家庭生活。一方、会社では大阪・東京と6度の転勤、破綻会社の再建やさまざまな事業改革など多忙を極め、そうした仕事にも全力で取り組む。2001年、東レ同期トップで取締役となり、2003年より株式会社東レ経営研究所社長に。 2010年、株式会社佐々木常夫マネージメント・リサーチを設立。何度かの事業改革の実行や3代の社長に仕えた経験から独特の経営観を持ち、現在経営者育成のプログラムの講師などを勤める。社外業務としては、内閣府の男女共同参画会議議員、大阪大学客員教授などの公職を歴任。

【ライタープロフィール】 辻本圭介(つじもと・けいすけ) 1975年生まれ、京都市出身。明治学院大学法学部卒業後、主に文学をテーマにライター活動を開始。2003年に編集者に転じ、芸能・カルチャーを中心とした雜誌・ムックの編集に携わる。2009年以後、上場企業の広報・PR媒体およびIR媒体の企画・専門編集に携わりながら、月刊『iPhone Magazine』編集長を経験するなど幅広く活動。現在は、ブックライターとしてもヒット作を手がけている。

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