「良い習慣」は才能を超える! 謙虚に学びハードに働く【元東レ経営研究所社長 佐々木常夫さん「リーダーになるために必要なこと」part1】

優れたリーダーたちは、リーダーになる前の若いころにどのような姿勢で毎日の仕事に取り組み、いかなる方法で周囲から認められる成果を挙げてきたのでしょうか。

東レ株式会社取締役および株式会社東レ経営研究所社長を経て、現在は経営者育成事業をはじめ、旺盛な執筆・講演活動に携わる佐々木常夫さんに、リーダーに必要とされる姿勢と考え方、また、具体的な仕事の進め方のノウハウを伺いました。佐々木さんの “金言” の数々を、3回にわたって配信します。

構成/岩川悟 取材・文/辻本圭介

失敗の「原因」と「対策」をメモに書き出し、主体的に仕事に取り組むと必ず成長できる

長らくリーダーとして、また経営者として活躍されてきた佐々木さんにも、当然ながらリーダーになる前の下積み時代がありました。20代や30代前半のころ、佐々木さんはどのような姿勢で毎日の仕事に取り組んでいたのでしょうか。そんな質問から、インタビューはスタートしました。

「若いころはじつに情けないビジネスパーソンでしたよ(笑)。なぜなら、わたしには『志』がまるでなかったからです。『志』がある人は、若いうちから将来どのようなリーダーになりたいのかをイメージしているもの。でもわたしは、ミスは多いし、平気で遅刻もするし……遊ぶことばかり考えているような典型的なダメ社員でしたから」

リーダーのお手本のような存在である佐々木さんが、仕事に真剣に取り組まなかった時期があったというのです。そして、そのころはミスをするたびに人前でよく怒られていたと言います。

「あまりに怒られるものだから、いくらなんでも悔しいなと思うようになってね。そこで、失敗しないためにどうすればいいかを自分なりに考えた。まず、『なぜ失敗したのか』その原因をはっきりさせ、次に『どうすれば失敗を繰り返さなくなるのか』をメモに書き出しました。そして、自分なりに考えた対策をすぐ実行に移した。すると、少しずつミスが減っていき、やがて先輩に少し認められるようになったのです。主体的に問題に取り組めば仕事がうまくいき、周囲からも一目置かれるようになる。『あれ? 仕事って意外と面白いな』と感じた瞬間でした」

その後、32歳のときに破綻会社の再建チームに最年少で抜擢されます。それからの3年間は、「死ぬかと思うほど」夢中になって働いたそう。

「平日は毎日のように終電で帰宅し、土日もほぼ出勤。それこそ、月に150時間は残業していましたよ。この時期に、わたしは会社や仕事について多くを学んだと思います。会社が潰れる理由はなにか? そのとき経営者はどのように振る舞い、社員はなにを考えているのか? 経営が失敗すると社員がいかに酷い立場に立たされるのか。『会社は潰れるもの』という厳しい現実を、まさに肌で感じながら働くことができた。そのころから、わたしは仕事観や人生観を見つめはじめ、38歳で課長になったころにようやく自分の考え方が固まりました。こうして振り返ってみると、ビジネスパーソンとしての成長スピードはとても遅かったんですよ」

謙虚に学ぶ姿勢があれば、人はいつでも変わることができる

では、若いころから立派な「志」を持つことが大切かと言えば、佐々木さんは、「志」だけ持っていてもあまり役には立たないと考えています。

「読者のみなさんのまわりにも、『将来は社長になるぞ!』と公言している人がいますよね? でも、それはものごとがわかっていないだけ。それなりの企業で社長になれるのは何千人、何万人にひとりであり、言うだけなら誰でもできます。むしろ、若いころは夢みたいな『志』を持つよりも、自分がリーダーになったときのことをイメージしながら、目の前の仕事に真剣に取り組み、コツコツと学びを積み重ねることが大切だと思います」

また、若いビジネスパーソンのなかには、大きな野心を抱くどころか、逆に20〜30代をなんとなく過ごしてしまった……と、後悔している人もいるかもしれません。

「でもね、30代ならまだ遅くないですよ。心理学者のアルフレッド・アドラーも、『人はいつでも変われる』と書いています。ただし、そのためには『考え方』を変えることが必要。わたしが思うには、まず自分に不足していることを知り、さまざまなことから学び取る姿勢を持つことが大切。上司に学び、同僚に学び、部下に学び、お客様に学び、仕事全体から学ぶ。そんな心構えをつねに持っていれば、人はいつだって変わることができます。人をバカにしたり、学歴や経歴で相手を見下したり、自分がつねに正しいと疑わないような人は絶対に成長できないのです。どんなことからでも謙虚に学ぶ姿勢がある人こそが、本当の意味の『学力』、つまり『学ぶ力』を持っている人だと思いますね」

「良い習慣」は才能を超える! ハードワークゆえのワーク・ライフ・バランスだ

佐々木さんは38歳で課長になったとき、仕事に対する考えをまとめた「仕事の進め方の基本10カ条」を作成しました。リーダーになる前から、自分がリーダーになったときにやること、やらないことを具体例とともに書きとめ、仕事の原則として実証的に抽出した、まさに成果を出すための「佐々木流仕事術」の根幹です。

「良いリーダーになるためには、とにかく『良い習慣』を持つことですよ。わたしは、良い習慣は才能を超えると考えています。才能が足りなくても、良い習慣を持つ人は毎日確実に成長を続け、やがて才能ある人を抜いていく。10カ条に則して言えば、『他人の意見よく聴くこと』や、『仕事の計画を立てて重要度を評価すること』、『最短コースを選ぶこと』といった良い習慣を根づかせることがなにより大切です。わたしはリーダーになったとき、この10カ条を部下に配って徹底して守らせました。そして、長時間労働をやめて部下を定時に帰したにもかかわらず、大きな成果を出すことができたのです」

佐々木さんは、仕事と多難な家庭生活を両立させたエピソードでも知られる存在です。病身の妻と自閉症の長男の世話をしながら、妻の3度にわたる自殺未遂や長男のいじめなど、さまざまな家庭の困難に打ち克ち、いまではワーク・ライフ・バランスについて提言する機会も増えました。

「とことんハードに働いたからこそ、ワーク・ライフ・バランスの大切さを実感できたのだと思います。あくまで個人的な考えですが、入社2~3年でワーク・ライフ・バランスを求めたり、仕事が合わないからすぐ転職したりする考えは、わたしに言わせれば『10年早い』(笑)。若いころは大したことができないのだから、与えられた仕事に全力で取り組むのがあたりまえなんですよ。だって、どんなに成功した人でもそうやって力をつけていったのですから」

いまのご時世では言いにくいけど……と苦笑しながらも、「残業代をつけるなんて未熟者の証」と佐々木さんは熱を込めます。

「若いころは、10年くらいはハードに働くことが絶対に不可欠。なぜなら、必死になって取り組んだ者だけが、結局はなにかを生み出せるからです。どんな企業にも、ハードに働くことを期待されている将来のリーダーたちが存在するのがれっきとした事実です。彼らがなにかを生みだすからこそ、企業が存続していけるわけですからね。逆に言えば、リーダーになることに興味がない人は、若いうちからワーク・ライフ・バランスをすればよいのでしょうね」

■part2『良きリーダーは「世のため人のため」に働く』はこちら ■part3『優れたリーダーになるために「今日からすぐにできる」こと』はこちら

【プロフィール】 佐々木常夫(ささき・つねお) 1944年生まれ、秋田県出身。東京大学経済学部卒業後、東レ株式会社入社。自閉症の長男を含め3人の子どもを持つ。しばしば問題を起こす長男の世話、加えて肝臓病とうつ病を患った妻を抱え多難な家庭生活。一方、会社では大阪・東京と6度の転勤、破綻会社の再建やさまざまな事業改革など多忙を極め、そうした仕事にも全力で取り組む。2001年、東レ同期トップで取締役となり、2003年より株式会社東レ経営研究所社長に。 2010年、株式会社佐々木常夫マネージメント・リサーチを設立。何度かの事業改革の実行や3代の社長に仕えた経験から独特の経営観を持ち、現在経営者育成のプログラムの講師などを勤める。社外業務としては、内閣府の男女共同参画会議議員、大阪大学客員教授などの公職を歴任。

【ライタープロフィール】 辻本圭介(つじもと・けいすけ) 1975年生まれ、京都市出身。明治学院大学法学部卒業後、主に文学をテーマにライター活動を開始。2003年に編集者に転じ、芸能・カルチャーを中心とした雜誌・ムックの編集に携わる。2009年以後、上場企業の広報・PR媒体およびIR媒体の企画・専門編集に携わりながら、月刊『iPhone Magazine』編集長を経験するなど幅広く活動。現在は、ブックライターとしてもヒット作を手がけている。

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