勉強の基本は “国語力” がすべて。高めるコツはたったひとつ「丁寧に読む」こと

山口真由さん「勉強の基本は国語力にあり」01

「学力向上の鍵は『国語力』向上にある」とは、多くの教育者がそろって唱えることです。理系教科を学ぶにしても、その内容を理解するためには教科書や参考書を読まなければなりません。人間が言葉を使って物事を考え理解することを思えば、その主張ももっともです。そして、脳科学者・中野信子(なかの・のぶこ)さんとの共著『「超」勉強力』(プレジデント社)を上梓した信州大学特任准教授の山口真由(やまぐち・まゆ)さんも、「勉強の基本は『国語力』がすべて」だと言いきります。

構成/岩川悟・清家茂樹 写真/川しまゆうこ

すべての勉強の基本は国語力にあり

勉強について私が大切だと考えていること――それは、すべての勉強の基本は「国語力」にあるということです。

ここでの国語力は、インプットのための「読解力」と、アウトプットのための「表現力」を指します。とりわけ読解力は、すべての勉強における最重要要素です。

なぜ、読解力があるとよいのでしょうか? その理由は、文章を読んだときに、「書いた人はなにが言いたいのか」「なにが問われているのか」を明確につかめるからです。

個人的な経験では、大学受験はもとより、司法試験やハーバード大学院の試験でも、この能力が結果を大きく分けると感じました。もちろん、後者ははるかに難易度が上がりますが、それでも、「なぜこのエピソードがここに書かれているのか」「著者にどんな意図があるのか」といったことを文章から読み取る力があれば、的確に課題をクリアすることができるのです。

「国語力がない」と悩む人もいます。でも、国語力を上げることは決して難しいことではなく、その方法はこれに尽きます。

丁寧に読む

コツは、本当にこれだけです。国語力が低い人は、自分でも気づかないうちに文章を読み飛ばしていたり、自分の思い込みで意味を補ったりしてしまい、解答が著者の意図と離れていくことがとても多いのです。

私の両親は、「国語力だけで中学校までの全教科をカバーできる」と考えていました。父に至っては、高校までカバーできるのではないかと言っていたほどです。

おおむね、私も同意見です。「国語力」に偏重したことでハーバード大学院まで行けたと私は本当に思っています。しかも、私は国語力を上げる特別な教育を受けたわけではなく、ただ人よりも多く、本や教科書を読み続けただけなのです。

山口真由さん「勉強の基本は国語力にあり」02

得意分野は「読む」「聞く」「書く」「話す」で分析する

私が「国語力」を重視していることは、勉強や仕事の分野を選ぶ方法にも表れています。私は勉強でも仕事でも、本気で努力するなら自分の得意分野ですると決めています。得意なことを磨いて“尖った能力”に変えていければ、不得意なことは十分カバーできます。

では、「自分の得意なことがわからない」人はどうすればいいでしょうか?

自分の得意分野を見極めるために、私がよく使う方法を紹介します。それは、「読む」「聞く」「書く」「話す」の4つの行動で、自分を分析する方法です。

たとえば、私の場合は「読む」ことが圧倒的に得意ですが、一方で「話す」ことに苦手意識をもっています。また、「聞く」ことも比較的得意ですが、「書く」ことは普通といったところ。すると、私は「読む」ことに特化したインプット型ととらえることができます。

そうであれば、たとえば仕事なら、大量の資料をすばやく読む必要があり、かつクライアントに文書で回答することが多い企業法務専門の弁護士が選択肢に挙がるわけです。逆に官僚の仕事は、政治家に口頭で報告・説明する場面が多く、一流の官僚には「話す」能力が高いレベルで求められるため、私には不向きだと言えます。

この4分野での評価でもはっきりしないときは、他人からの客観的な意見を聞くことで、自分では思いもしなかった得意な一面を発見できることもあるでしょう。

いずれにせよ、結果を出すために大切なのは「自分に合ったやり方」で勉強することに尽きます。誰にでもあてはまる勉強法はありませんが、多くの人が楽に取り組めて、結果もついてくる普遍性の高い方法は存在します。それは、私が編み出した「7回読み勉強法」です。

その方法はとてもシンプル。「同じ本を7回読む」のです。そうすれば、だいたいの内容が頭に入ります。読む時間は、1回あたり30分〜1時間程度。1〜3回目は、見出しなどを拾いながら読み流して、本の全体像をつかみます。4、5回目は、重要キーワードを意識しながら要旨をつかむ。そして、6、7回目は、内容を頭で要約しながら読む。そうすれば、本の内容を頭のなかに写し取ることができます。(参考記事:最速で結果がついてくる「7回読み」勉強法)。

山口真由さん「勉強の基本は国語力にあり」03

網羅性の高い1冊の基本書を選ぶ

「7回読み勉強法」は、1回1回が流し読みなので、読む負担も軽くなります。30分〜1時間程度で1冊を読みきるには、かなりの集中力が必要と思われるかもしれませんが、最初は内容を理解せずに読み流すだけで大丈夫。ですから、気楽に取り組むことができるはずです。

それでも、同じ箇所を繰り返し読んでいると、自然と記憶に定着していきます。むしろ、「読むこと=ページをめくること」くらいに思って、とにかく最後まで読み進めることが重要なのです。

「読む」というアプローチは、「聞く」「話す」「書く」と比べて、情報のインプットが圧倒的に速い方法です。また、「いつでもどこでも」できるのもメリットです。本1冊さえ持ち歩いていれば、移動中でもどこでも勉強ができるからです。「スキマ時間」を最大限に活かせるので、毎日の貴重な時間をほとんど無駄にしません。

1冊の本を繰り返し読むということは、当然ながら、読む本を厳選する必要があります。もし、ほかの本と比べて内容に、抜けや漏れがあれば、どれだけ繰り返し読んだとしても、得られない知識や情報が出てきてしまうでしょう。

ですから、読む本を選ぶときに気をつけるべきポイントは、なにより「網羅性です。学ぶべきことが余すことなく書かれている、あるいは自分がそう信じることができる本を選ぶ必要があります。学生の場合は教科書でいいのですが、社会人が勉強する場合は、網羅性の高い参考書や問題集を1冊選ぶことを強く意識しましょう。

本への「愛着」が、勉強に対する意欲を持続させる

また、意外に大切なのが、その本に「愛着」をもてるかどうかという部分。なぜなら、常に持ち歩いて何度も繰り返し読むためには、自分が気に入った本でなければ続けるのがつらくなってしまうからです。

その分野で定評のある、いわゆる定番本に縛られる必要はありません。もちろん、定番には定番たる理由があるので、慎重に内容を検討する必要はありますが、遜色がない内容・情報量であれば迷わず自分に合ったほうを選ぶべきです。

さらに言えば、上下巻に分かれていると持ち運びしやすくて重宝しますが、図や写真が多い本は厚さのわりに内容が薄くなっているので注意が必要。図や写真が多用されているとたしかにわかりやすいのですが、ページ数の都合上どうしても本文を削る必要があり、内容の抜け・漏れが避けられないからです。

このように、自分に合った網羅性の高い基本書を1冊選ぶことが、「7回読み勉強法」を始めるにあたって、とても大切な要素になります。

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勉強に必須の国語力を上げるためには、「丁寧に読む」。結果をともなう勉強をするためには、「流し読むように7回読む」。一見、矛盾しているようですが、そうではないようです。前者は、特に試験を受ける場合などに、出題者の意図を正確に読み解くための方法。一方の後者は、普段の勉強で使う参考書等の内容をきっちりインプットするための方法です。また、見方を変えれば、同じ本を7回も読むことは、それこそ「丁寧に読む」とも言えるでしょう。勉強の基本は、「丁寧に読む」。やはり、それに尽きるのかもしれません。

山口真由さん「勉強の基本は国語力にあり」04

※今コラムは、中野信子・山口真由 著『「超」勉強力』(プレジデント社)をアレンジしたものです。

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【プロフィール】
山口真由(やまぐち・まゆ)
信州大学特任准教授・法学博士・ニューヨーク州弁護士。1983 年、北海道に生まれる。東京大学を「法学部における成績優秀者」として総長賞を受け卒業。卒業後は財務省に入省し主税局に配属。2008 年に財務省を退官し、その後、2015年まで弁護士として主に企業法務を担当する。同年、ハーバード・ロースクール(LL.M.)に留学し、2016年に修了。2017年6月、ニューヨーク州弁護士登録。帰国後は東京大学大学院法学政治学研究科博士課程に進み、日米の「家族法」を研究。2020年、博士課程修了。同年、信州大学特任准教授に就任。出演中の主な番組として『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)、『ゴゴスマ』(CBCテレビ/TBSテレビ系)など。主な著書に『いいエリート、わるいエリート』(新潮社)、『思い通りに伝わるアウトプット術』(PHP研究所)などがある。

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