「最近イライラしてばかり……」
「朝起きるのがつらくて仕事に行きたくない……」
「人付き合いが面倒……」
ネガティブな感情は、一時的ならば問題ないでしょう。でも、常にこのような考えに陥っている人は、自己肯定感が低下しているかもしれません。
長期的に自己肯定感が下がったままの人は、考え方が消極的になり、新しいことにチャレンジできなくなったり、物事を悪くとらえやすくなったり、自分を責めてしまったりします。このような状態でいると仕事にも悪影響ですし、人生の満足度も下がってしまうでしょう。
そこで今回は、自己肯定感を上げる効果のある「折れない心をつくるエクササイズ」をご紹介します。
「自己肯定感が低い人」4つの特徴
『何があっても「大丈夫。」と思えるようになる自己肯定感の教科書』の著者で心理カウンセラーの中島輝氏によると、自己肯定感の低い人には以下のような特徴が見られるそう。
1. 過去の失敗へのこだわりやトラウマがある
過去の失敗は変えられないにもかかわらず、「自分はダメだった」「もっとこうするべきだった」と思い悩んでしまうこと。原因は、自分の悪い面もよい面も受け入れる「自己受容感」と、自分の生かされた命を大切にする感情「自尊感情」が低くなっていることが挙げられます。
2. 他人との比較や劣等感の意識が強い
たとえ何かを達成しても「あの人のほうが成功している」と比較し、嫉妬や劣等感でエネルギーをすり減らしてしまうのはもったいないこと。わざわざほかの人より劣っている点を探して自己否定する癖は、「自尊感情」の低さが要因です。
3. いつも「できない」と思ってしまう
「自分にはできる」と思える感覚である「自己効力感」が欠けていて、何かを始めたくても、すぐに「できない」と思ってしまうのです。何かを成し遂げることができると思えなくなり、行動する気力が湧かなくなってしまいます。
4. 周囲への依存度が強い
上司や先輩、取引先の意向を優先するようになり、自分で主体的に物事を決められなくなり、周囲への依存度が高くなる状態です。常に人に決めてもらうようになり、失敗しても他者の責任にする癖が定着してしまうと、何かを決めなければならない場面で、足踏みをしてしまうようになります。
上記の特徴に心当たりがあれば、自己肯定感が低下している可能性があります。
「心の免疫力」弱っていませんか?
自己肯定感は、状況によって高くなったり低くなったりしますが、低いまま低空飛行を続けている状態は、チャレンジ精神や、人生の軸となるエネルギーを奪い取ってしまうこともあるのです。
同じ出来事でも、自己肯定感が高いときと低いときでは、考え方や、それによる行動も変わってきます。たとえば、上司から怒られた際に、自己肯定感の高い人は「熱心に指導してくれた。自分は期待されている」と考えるのに対し、低い人は「怒られて腹立たしい。きっと自分は嫌われているのだろう」とネガティブにとらえてしまうのです。これによって、前者はいままでよりも努力する活力を蓄えられるかもしれませんが、後者は苦痛になってやる気を失うかもしれません。
自己肯定感が低いことは、心の免疫力が弱っている状態であると説明できます。せっかくの成長のチャンスかもしれないのに、過度にネガティブにとらえて自分を責め、へこんだまま動けなくなってしまうのはもったいないことですね。
「心の痛み」を自覚しよう
心の免疫力が低下してしまう原因として考えられるのは、まわりに批判的な人がいるということと、心の痛みに鈍感になってしまっているということ。
TEDでの「感情にも応急手当が必要な理由」と題する登壇が反響を呼び、『NYの人気セラピストが教える 自分で心を手当てする方法』の著者である心理学者のガイ・ウィンチ氏は、批判的な人たちから離れることと、自分の痛みに気づくことが感情のケアとして必要であると語っています。
ウィンチ氏は、TEDトークのなかで、身体の病気は治療するのが当たり前とされているのに比べ、心の不調は放置されがちであるという懸念を示しています。心が弱っているのに、さらに傷つけてくる人から離れないことは、足を骨折しているときに、その足を踏みつけてくる人がいるのに逃げないことと同じくらい不自然なことだそう。
重要なのは、まず自分の心が踏みつけられて傷んでいることを自覚することです。自分自身の痛みに鈍感になってしまえば、ケアする必要があると気づくこともできません。
折れない心をつくるエクササイズ
「自分は無力でどうせ失敗するのだからチャレンジするのはやめておこう」
「まわりは批判的だけど、自分には能力がないから批判されても仕方がない」
心の免疫力が低下すると、このようにネガティブ思考になり、自分のことを嫌いになってしまいます。
そこで、ウィンチ氏が実際に患者に行なって効果的だった、“自分を嫌いになってしまったとき” に有効な方法をご紹介しましょう。ポイントは、自分のよいところを認識し、それらを活かす方法を掘り下げていくこと。エクササイズの手順は以下の1〜5の通り。毎日できるとベストですが、週1回でも効果があるそうです。
- 紙を2枚用意し、1枚目に「自分のよいところ(性格・特徴・達成したことなど)」を書き出しましょう。10個以上書くことをおすすめします。
- そのあいだ、ネガティブな考えや批判的な言葉が心に浮かんでしまった場合は、それを2枚目の紙に書き出します。
- 1枚目の紙に書いたなかから、最も大切だと思うものをひとつ選び、それについて短い文章を書きます。なぜそのスキルや経験が大切だと思ったのか、自分の人生にどういう意味をもつのかなどを書き出しましょう。
- 2枚目の紙はくしゃくしゃに丸めてゴミ箱に捨てましょう。こんなものはただのゴミです。
- 翌日(または後日)1枚目のリストのなかから別のトピックを選び、それについて短い文章を書きます。1日にひとつずつ、定期的に(できれば毎日)実行し、リストのすべての項目が終わるまで続けましょう。
途中で新たによいところが思いついたら、リストに追加しても大丈夫。このエクササイズは、無力感や傷つきやすさを軽減し、嫌なことがあっても折れない心をつくることが目的です。
実際にやってみた
筆者が実際に折れない心をつくるエクササイズを実践してみました。まずは、自分のよいところを10個書き出します。
それと同時に、ネガティブなことが浮かんできたら2枚目の紙に書き出しました。
よいところリストのなかから、「真面目なところ」を自分の大事な要素だと思ったので、それについて短い文章を書きました。
次に、2枚目の紙をくしゃくしゃに丸めてゴミ箱に捨てました。
翌日、リストから別のよいところ「健康に気をつかっている」を選び、それについて短い文章を書きました。
実際にやってみると、意外と自分の悪いところよりもよいところのほうをたくさん知っていると気づくことができるでしょう。
頭のなかで考え事をすると、悪いことが浮かんでそこに着目してしまいがちですが、書き出してみると「じつは私にはよいところもあるのだ」と気づき、自信がついてきます。自分の悪いところにばかり目が行ってしまい、落ち込んでいる人には、ぜひ試してみてほしいです。
マイナス思考に陥ってしまう理由として考えられるのが、まわりと比べたり、自分にはないものをもっている人をうらやましく思ったりすることなのかもしれません。立ち止まって、自分のよさを改めて書き出してみることで、それらを活かして頑張ろうと思えるのではないでしょうか。落ち込んだり自信がなくなってしまったりしている人には、特に効果的なエクササイズです。
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マイナス思考が続いていたり、最近なぜか調子が悪い人は、自己肯定感が低下しているのかもしれません。ぜひ心の免疫力を高めるエクササイズを実践してみてはいかがでしょう。
(参考)
東洋経済オンライン|自己肯定感が低い人に表れる危ない5つの特徴
東洋経済オンライン|「心の免疫力」がどんどん高まる5つの習慣
TED|感情にも応急手当が必要な理由
【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。