スケジュール管理能力の高い人は、自分の予定を把握して優先順位をつけ、各タスクに必要な作業時間を見積もることができます。納期に間に合うよう、業務をうまく進められるでしょう。
ビジネスパーソンなら、そんなふうになりたいものですよね。具体的にはどうすればよいのでしょう? また、「スケジュール管理」と「タスク管理」はどう違うのでしょうか? この記事では、そんな疑問を解決するヒントとして、スケジュール管理能力を高めるコツを6つ紹介します。
- スケジュール管理能力とは
- スケジュール管理能力が低いとどうなる?
- スケジュール管理能力を高めるコツ1:やるべきことを漏れなく手帳に書き出す
- スケジュール管理能力を高めるコツ2:作業の所要時間を記録する
- スケジュール管理能力を高めるコツ3:「空白の時間」を計算する
- スケジュール管理能力を高めるコツ4:アイゼンハワー・マトリクスで優先順位を決める
- スケジュール管理能力を高めるコツ5:類似タスクをまとめる
- スケジュール管理能力を高めるコツ6:スケジュールの達成度を振り返る
スケジュール管理能力とは
まず、「スケジュール管理能力」とは何かを明らかにしておきましょう。
スケジュール管理能力は、ひとことで言うと「自分が何をいつやるか把握し、実行する能力」。具体的には、以下の3つに分けられるでしょう。
やるべきことを把握する力
1つめは「やるべきことを把握する力」。どんな作業をするべきなのか、いつどんな約束があるのかなど、抱えている業務を漏れなく把握できることです。やるべきことの全体像が見えていなければ、適切な計画を立てることもできません。
優先順位をつける力
2つめは「優先順位をつける力」。複数ある作業のうち何を先にやるべきなのか判断し、こなす順番を決められる能力です。うまく段取りをつけられれば、業務がスムーズに片づき、生産性を大きく向上させられるでしょう。
時間を見積もる力
3つめは「時間を見積もる力」。各作業にかかる時間を、なるべく正確に予測できる能力です。見積もりが甘いと、作業の完了時間がどんどん後ろ倒しになり、締切に間に合わなくなってしまうでしょう。
スケジュール管理の能力は、以上の3つで構成されていると言えます。
スケジュール管理能力が低いとどうなる?
スケジュール管理能力は、ビジネスパーソンにとって必須です。スケジュール管理能力が低いと、どのようなデメリットが生じるのでしょう? 時間管理コンサルタント・水口和彦氏の見解などを参考に、3つ挙げておきます。
業務のミス・遅れが発生する
スケジュール管理能力が低いと、業務でミスを起こしてしまいやすいでしょう。たとえば、約束があるのを忘れたり、ダブルブッキングをしたり。約束を守るのは、ビジネスパーソンとして、あるいは人としての基本ですから、予定をすっぽかしたりすれば、一気に信頼を失ってしまいます。
また、スケジュール管理能力が低いと、早く終わらせるべき業務を後回しにしたり、業務をこなすのに時間がかかりすぎたりして、締切に遅れてしまうこともあるでしょう。期限を厳守することも、ビジネス上の重要なルールです。
生産性が低下する
スケジュール管理能力が低いのは、優先順位をうまくつけられないということ。各業務の重要性・緊急性を適切に判断できないと、取りかかる順番や時間配分がめちゃくちゃになり、余計な時間がかかってしまうでしょう。成果に対して時間がかかりすぎるのは、生産性の低い状態です。
ワークライフバランスが崩れる
業務の完了が遅れれば、残業や持ち帰りが増え、プライベートの時間が侵食される恐れもあります。いわゆる「ワークライフバランス」が崩れた状態です。プライベートの時間に十分な休息をとれないと、ストレスがたまり、パフォーマンスがさらに落ちる……という悪循環に陥りかねません。
スケジュール管理能力が低いと、以上のようなデメリットが生じます。高いスケジュール管理能力が生むメリットと比べてみましょう。
◆スケジュール管理能力が低いデメリット
- 業務のミス・遅れが発生する
- 生産性が低下する
- ワークライフバランスが崩れる
◆スケジュール管理能力が高いメリット
- 業務のミス・遅れを予防できる
- 生産性が向上する
- ワークライフバランスを保てる
スケジュール管理能力が低いままだと、多くのデメリットにつながることがわかりましたね。では、どうすればいいのでしょう? スケジュール管理能力を高めるためのコツをご紹介します。
スケジュール管理能力を高めるコツ1:やるべきことを漏れなく手帳に書き出す
スケジュール管理能力を身につけたいなら、自分がやるべき業務をすべて把握し、スケジュール帳に漏れなく書き出すことが基本です。時間管理コンサルタントの水口和彦氏によると、仕事は「アポイント」「タスク」「予定外の業務」の3種類に分けられるそう。
- アポイント:ほかの人との約束。開始・終了時刻が決まっており、基本的に動かせない
【例】10時の会議、14時からの商談 - タスク:自分ひとりで完結する業務。自分でコントロールできるため、スケジュール管理能力が特に問われる
【例】資料作成、メール返信 - 予定外の業務:本来のスケジュールにはない仕事やタイムロス
【例】急に頼まれた業務、想定外のトラブル
この3種類を把握し、以下の順番でスケジュールに落とし込んでいきます。
- 「アポイント」を書き出す
- 「アポイント」の合間に「タスク」を配置する
- 「予定外の業務」を考慮して空白を残す
スケジュール管理能力に自信のない人は、まずここから始めましょう。
スケジュール管理能力を高めるコツ2:作業の所要時間を記録する
スケジュール管理能力を構成する「時間を見積もる力」を高めるため、作業に要した時間をこまめに記録しておきましょう。次に同様の業務を行なうとき、所要時間を見積もるのに役立ちます。
「企画書の構成を決めるのに30分かかった」「資料を集めるのに1時間かかった」といった記録をExcelなどに残しておけば、次回も「また構成に30分かかりそうだ」と見積もれるでしょう。初めてやる作業だとしても、似たような業務の記録を参考にし、所要時間の推測が可能です。
以下の図は、業務の効率化を専門とするコンサルタント・大橋悦夫氏が紹介しているフォーマットです。所要時間の「見積」、実際にかかった「実績」、「開始」および「終了」時刻の4項目があります。
所要時間を記録する際は、タスクをなるべく細分化しましょう。「資料作成に3時間かかった」ではなく、「構成決めに30分」「資料集めに1時間」「執筆に1時間」「推敲に1時間」と分ければ、自分がどのプロセスに時間を割いているのかわかりやすくなります。「時間を見積もる力」が高まり、スケジュール管理能力全体が向上するでしょう。
スケジュール管理能力を高めるコツ3:「空白の時間」を計算する
「スケジュール管理能力を高めるコツ1」で、「予定外の業務」のために空白を残しておくべきだとお話ししました。具体的には、どの程度の余白が必要なのでしょう?
経営コンサルタントの横田尚哉氏が紹介している「定量的リスク分析」によると、所要時間は予定の1.4倍に膨らむ確率が最も高いそう。1時間の予定だった業務は1.4時間(1時間24分)、10時間を予定していた業務は14時間です。
「資料作成に3時間かかりそうだ」と思っても、60×3×1.4で、実際には4時間12分(252分)ほど要する可能性が高いと言えます。つまり、3時間の作業に対して1時間12分の余白を設けるのです。
「そんなにたくさん?」と思うかもしれませんが、これはあらゆるトラブルを想定したうえでの値。「新たな業務が差し込まれた」「急に会議が入った」「やり直しを求められた」「電車が止まって2時間遅刻した」などさまざまな可能性を考慮すれば、決して大げさな数字ではないでしょう。
この作業も、スケジュール管理能力を構成する「時間を見積もる力」を育ててくれます。
スケジュール管理能力を高めるコツ4:アイゼンハワー・マトリクスで優先順位を決める
スケジュール管理能力において重要な「優先順位をつける力」。仕事の優先順位を決めるには、経営コンサルタント・生方正也氏が紹介している「アイゼンハワー・マトリクス」がおすすめです。
アイゼンハワー・マトリクスでは、以下のように優先順位をつけます。
- 重要・緊急
- 重要・非緊急
- 非重要・緊急
- 非重要・非緊急
仕事上の各タスクについて、「重要/重要でない」「緊急/緊急でない」を判断し、4つのエリアに割り振りましょう。
- 「今日の会議で使う資料の作成」→重要かつ緊急なので「優先度1位」
- 「来月が締切の企画書の作成」→重要だが緊急ではないので「優先度2位」
同じエリアに複数のタスクがあるなら、重要性もしくは緊急性がより高いほうを先にやります。
優先順位をつけるのが苦手な方は、アイゼンハワー・マトリクスを印刷し、手元に置いてはいかがでしょう? スケジュール管理能力が高まるはず。
スケジュール管理能力を高めるコツ5:類似タスクをまとめる
スケジュール管理能力を高めるため、『図解でわかる一点集中のすごいコツ 最強の時短仕事術』(CCCメディアハウス、2020年)の著者で資格講師の碓井孝介氏がすすめる「類似のタスクをまとめる」も実践してみましょう。
たとえば、「会議資料の作成」と「企画書の作成」は、どちらも “資料作成系” のタスク。なるべくスケジュールを近接させ、連続でこなしましょう。
類似したタスクに連続で取り組めば、集中力が途切れにくく、作業効率を高められるそう。しかし、途中で別種の作業に移ってしまうと、せっかくの “資料作成脳” がリセットされ、意識が別の作業に切り替わってしまいます。
優先順位が同程度で、内容が類似しているタスクを連続でこなすようにすれば、あなたのスケジュール管理能力はますます高まるでしょう。
スケジュール管理能力を高めるコツ6:スケジュールの達成度を振り返る
スケジュール管理能力を向上させるため、一日の終わりなどに振り返りを行ないましょう。反省することで、次回への教訓を得られます。
仕事術に関する本を多数著している石川和男氏によれば、以下のポイントに着目して振り返るといいそうです。
- 予定より長引いた仕事はあったか
【例】2時間を見積もっていた資料作成に3時間かかった - 予定外の仕事・トラブルはあったか
【例】部下の資料提出が2時間遅れた - 会議・打合せにどのくらいかかったか
【例】定例会議に2時間半かかった - 重要性の低い仕事にどのくらいかかったか
【例】報告書の作成に1時間かかった
次は、スケジュールがずれてしまった原因と改善策を考え、同じことが起こらないようにしましょう。
- 2時間を見積もっていた資料作成に3時間かかった
【原因】資料の構成段階で悩んでしまった
【改善策】構成のテンプレートをつくっておく - 部下の資料提出が2時間遅れた
【原因】進捗状況のチェックが不十分だった
【改善策】こまめに進捗状況を聞く - 定例会議に2時間半かかった
【原因】雑談が盛り上がってしまった
【改善策】話が脱線したときは、それとなく本題に戻す - 報告書の作成に1時間かかった
【原因】パソコンの調子が悪かった
【改善策】パソコンの修理・買い換えを依頼する
より詳細に振り返りを行なうなら、人材育成コンサルタントの村中剛志氏が開発した「プロアクティブ・タイムマネジメント」もおすすめ。左側に本来の予定を、右側に実績を書き、予定のずれを洗い出します。
赤色の部分は「予定の遅れ」、緑色は「予定外の仕事・トラブル」を表します。上の図だと、9時30分からの定例会議が伸びたせいで、11時から予定していた報告書作成が遅れてしまいました。また、資料作成のタスクが差し込まれたことで、さらに予定がずれたこともわかります。
プロアクティブ・タイムマネジメントのやり方を詳しく知りたい方は、「『時間があるときにやろう』では何も進まない。仕事の先延ばしを防ぐ方法——水口和彦『仕事も学びも効率化 目からウロコの時間管理術』第6回」をご参照ください。
以上、6つのコツをご紹介しました。スケジュール管理能力を高めたい方は、できそうなものから実践してみてください。
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スケジュール管理能力を磨くには「タスクの把握」「優先順位の決定」「時間の見積もり」を意識しつつ、実践と反省を繰り返すことが大切です。日々の積み重ねが、しだいに習慣となり、スケジューリングがうまくなっていくはずですよ。
生方正也(2018),『仕事の悩み 問題解決』, 日本能率協会マネジメントセンター.
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STUDY HACKER|“空き時間” を可視化せよ! 「スケジュール管理」を「時間管理」に変えるコツ——水口和彦『仕事も学びも効率化 目からウロコの時間管理術』第4回
水口和彦(2012),『残業ゼロ! 時間管理のコツ39』, 学研プラス.
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佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。