特に大きな問題があるわけではないのに、なぜか心がモヤモヤしていることはありますか? 何かをやり残しているような、どれも中途半端な感覚、といったところでしょうか。
その覚えがある筆者は、ある識者の言葉に触れ、「モヤモヤ解消のカギは目的かもしれない」と考えるようになりました。そして、ある取り組みを始めることにしたのです。
その取り組みとは、紙のカレンダーに予定だけでなく「目的」も書いてみること。順を追って説明しましょう。
心のモヤモヤに関する分析
心のモヤモヤについて、一応自分なりに考えてみたことがあります。その結果、「以前はあらゆる挑戦をしてきたが、いまはすっかり受け身の態勢になってしまった」ことが、モヤモヤの原因だと考えました。
受け身の態勢になった要因はふたつ挙げられます。ひとつは、成功がまったくなかったわけではないけれど、失敗も数多く経験したので、新たな挑戦が少し怖くなったから。そして、もうひとつは物理的に難しい状況(たとえば育児、介護、看病、自分の体の変化など)になってしまったからです。
そのため、いつかまた、何かに挑戦できるようになったら、このモヤモヤも解消するだろうと思っていたのですが――ある識者の言葉にハッとさせられました。
モヤモヤ解消のカギは「目的」
その言葉とは、放送作家・PRコンサルタントの野呂エイシロウ氏の、
「いつかやりたいな」と思っていても、「いつか」の時は永遠に訪れません。
という、いまの自分には、なんとも耳が痛い言葉です。
ただ、一見するとこの言葉は “長いスパンの大きな挑戦” を指しているように見えますが、野呂氏の言葉から察するに、もっと身近な “日々つい先延ばしにしてしまうこと” も指しているようです。
そこで、ふと考えてみたところ――自分にも小さな先延ばし案件が、10件近くたまっていることに気がつきました。そして、もしかしたらこの心のモヤモヤは、長いスパンの大きな挑戦ができている・できていないだけでなく、日々の小さな先延ばしも、大きく影響しているのではないかと考え始めたわけです。
じつは若いころズボラだったという野呂氏、「計画の立て方と自分を動かす仕組み」を変えることで、「ちゃんとやり切れる人」になれたのだとか。そのひとつが、スケジュールに予定だけでなく、目的を書くことです。
たとえば普通はスケジュールに「会議」とだけ予定を記入しますが、野呂氏の場合は「アイディアを2本、この会議で通そう」「役員に能力を認められよう」と書くのだとか。同氏いわく
計画として見える化することで、そこに自動的に意識が向かうようになる効果がある
とのこと。
(参考およびカギカッコ内含む引用元:東洋経済オンライン|カレンダーに予定ではなく「目的」を書く納得理由)
「書く」と「書かない」の大きな差
野呂氏の取り組みは、過去の研究成果を見てもたしかに理に適っています。その研究とは、ドミニカン大学カリフォルニア校の心理学教授ゲイル・マシュー氏(2007年当時)の研究のこと。
同氏は、あらゆる国の、あらゆる年代の、さまざまな背景(起業家、教育者、医療専門家、アーティスト、弁護士、銀行家ほか)をもつ149人を対象としたこの研究で、目標を書いた人は、目標を書かなかった人よりも、はるかに多くのことを達成できると見いだしたそうです(参考:Dominican University of California|Dominican Scholar|The Impact of Commitment, Accountability, and Written Goals on Goal Achievement)。
以下の図は、マシュー氏の研究論文にあった図を、わかりやすく作成し直したもの(書いたグループ=目標を書き出したグループ)。
(画像の引用元:STUDY HACKER|【科学が証明】行動力が自然と右肩上がりになる3つの方法。やっぱり “書く” のが最強だった)
研究の詳細は上記引用元で詳しく説明しているので、よろしければあわせてご覧ください。
こうした内容を頭に入れていくうち、日々の目的を書けば “やりきれる人” になり、モヤモヤが解消されていくはずだと思えてきました。
ちなみに、野呂氏は目的を書くのが面倒だと思う人に対し、入力が容易なことからデジタルのカレンダー(カレンダーアプリを指すと思われる)をすすめていますが(参考:前出の「東洋経済オンライン」記事)――
もともと筆者の場合は、紙のカレンダーに予定を書く習慣があるので、むしろアプリではなく紙のカレンダーに目的を書いてみることにします。
カレンダーに「目的」を書いてみた
予定だけでなく目的も書き込むので、カレンダーはスペースに余裕がある、シンプルなものを選びました。ちなみに12月始まりのタイプです。
野呂氏はスケジュールを書く際に、正確な言葉を使うよう気をつけているそうです(参考:同上)。その点に留意しながら、さっそく始めてみます。
たとえば筆者と違い、学生時代からまったく体型が変わらない友人とランチの約束がある日には、「Nの習慣を探り、必ずひとつダイエットのヒントを得る」といったことを書き、
ミーティングがある日には、「テーマ案5つ、わかりやすく説明する。最低4テーマを通す」といったことを書きます。
ちなみに、友人と会う日程はすでに終えており、じつはある成果を得ることができました。ダイエットのヒントを得ようとして観察力が高まり、友人に対し「こんなに所作が美しかったっけ?」「こんなに食べ方がきれいだったのか」と感じたことが発端です。
そこから本人に確認した事実や、「よく噛んで食べるとダイエット効果が期待できる(参考:農林水産省|ゆっくり食べる)」といった定説もふまえ、こう結論づけました。
所作が美しい⇒だから食べ方もきれい⇒だから食べる速度が遅い⇒だからよく噛んで食べている⇒だからすぐお腹いっぱいになる⇒だから終始食べすぎない
⇒だから、“所作を美しくしよう” と心がければ、自然と健康的に痩せられる
この経験は、野呂氏が「計画として見える化することで、そこに自動的に意識が向かうようになる効果がある」(カギカッコ内引用元:前出の「東洋経済オンライン」記事)と述べていた内容にも通じます。もしも、カレンダーに予定だけ書いていたら、このシンプルなメカニズムには気づけなかったでしょう。
そこで、2024年の始まりにも願いを込めて、少しだけ予定と目的を書いてみましたよ。
たとえば、恒例の予定にも “家族をひとり3回笑わせる” などと書いたり、仕事の開始日には “全体の把握から始める” と書いたり、ミーティングの日には “誰かひとりでも「なるほど」とうなずいてもらう” などと書いたりしました。
こうしてみると、「目的」は自然と建設的になるものですね。無機質な「予定」に、加えるべきものだと感じます。
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カレンダーに予定だけでなく「目的」を書いてみたら、ひとつひとつの行動に意味が生まれる気がして、楽しくもあり、自分が頼もしくもあり、なんだか活力が湧いてきます。ぜひ一度、お試しくださいね。
Dominican University of California|Dominican Scholar|The Impact of Commitment, Accountability, and Written Goals on Goal Achievement
STUDY HACKER|【科学が証明】行動力が自然と右肩上がりになる3つの方法。やっぱり “書く” のが最強だった
東洋経済オンライン|カレンダーに予定ではなく「目的」を書く納得理由
農林水産省|ゆっくり食べる
STUDY HACKER 編集部
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