「英語の勉強を続けよう」「資格を取得しよう」――年度当初に立てた目標は、いつの間にか後回しになっていませんか?
下半期に入り、今年度の目標の進捗状況が見えてくると、自己嫌悪に陥りがちです。しかし、まだ挽回のチャンスはあります。「なぜできなかったのか?」を冷静に分析し、新たな気持ちで学習習慣を再スタートさせる絶好の機会かもしれません。
本記事では、学習習慣を無理なく定着させるための3つの実践的アイデアをご紹介します。これらは筆者自身が試してみて効果を実感した方法ばかり。「同じ場所で同じ作業をする」という環境づけから、「15分ルール」による時間管理、そして「前日の準備」による心理的ハードルの低下まで、どれも簡単に始められるテクニックです。
下半期からでも、あなたの学習目標を達成するための新しい習慣作りを始めてみませんか?
同じ場所で同じ作業をする
上半期に勉強を続けられなかった理由を振り返ってみると、根本には「気が重い」という気持ちがあったのではないでしょうか。人間は変化を嫌う生き物だというのは有名な話。気が重くなるのも当然です。
しかし、続けるほどに楽になっていく習慣化の方法があるとしたら、やってみたくなりませんか? それが、「同じ場所で同じことをする」という方法です。
習慣化に詳しいメンタルコーチの大平信孝氏は、以下のように述べています。
同じ場所で同じ仕事をしていると、「喫茶店に行くと、執筆が進む」ということが徐々に脳に刷り込まれていきます。そして、同じ行動を続ければ続けるほど、その刷り込みが強化されていきます。*1
この効果を、心理学では「アンカリング(条件づけ)」と呼ぶそう。
喫茶店に行ったら作業をする、という行動を意識的に行なっていけば、次第に「喫茶店に行けば作業が進むんだ」と感じるようになるわけです。もしいま、仕事帰りにコーヒー店に寄ってカフェラテを飲む習慣があるなら、そのときに問題集を1ページ解くようにすれば、楽に習慣化できるのですね。
筆者もこの習慣化に取り組んでみました。自宅のダイニングテーブルで作業をしているので、食事の際はテーブルを壁から離し、作業の際は壁に寄せるようにして変化をつけました。ささいな変化でしたが、机を壁に寄せると、頭が作業モードに切り替わるようになったのを、一週間ほどで実感しました。
同じ場所で同じことをする。簡単に始められ、どんどん行動が楽になるので非常におすすめです。
「15分ルール」で終わる時間を厳守する
「どうせ今日も解けないんだろうな……難しいし、やりたくないな」「勉強しなきゃいけないのはわかってるけど、いまは疲れているし、明日からでもいいだろう」
このようにどんどん先送りにして、結局下半期まできてしまった……というのはよくあることです。このような先延ばしを解決する方法として、心理学者のケリー・マクゴニガル氏は、15分ルールを挙げています。
15分ルールとは、どのようなものなのでしょうか。
「15分ルール」とは、やるべきことを「15分間やり、15分たったら作業を必ずやめる」という方法です。タイマーをセットして行います。あなたが完璧主義者だったとしても、働く時間は15分だけです。きりが悪いからと言って、15分以上作業を続けることはできません。*2
時間になったら必ずやめる、というのがポイントです。
同氏によれば、「人は作業をストップさせられると、やり続けたくなるもの」なのだそう。*2
やる気がでなくても、15分だけ勉強をして、時間になったら必ずやめる。すると、「きりが悪くて気持ち悪いなあ。もう少しだけやりたいな」という気持ちが自然と湧き上がってきます。しかし、その日はそれ以上続けてはいけません。
「もう少しやりたかった」という気持ちがモチベーションとなり、次の日も15分だけ、また次の日も……と続けられるようになるのです。習慣化できたと感じたら、時間を20分、30分と徐々に延ばしていって大丈夫です。
筆者も15分だけ勉強に取り組んでみました。スマホが側にあると気が散ってしまいそうだったため、キッチンタイマーを使用。
これまで、短時間(5分、10分だけ)作業をする、という習慣化に取り組んだことはあったのですが、「もう少しやりたいな」という気持ちに従って、そのあとも続けていました。
今回は、タイマーが鳴ったら一切続けてはいけない、というルール。終わったあとは、「きりが悪すぎて、もう少しだけやりたい!」という気持ちが強く、次の日はすぐに勉強に着手することができました。
毎日継続するには、今回のように「終わる時間を厳守する」というやり方が非常に効果的であると実感しました。
前日に手をつけて、心の負担を軽くする
「勉強するのは、億劫だなあ……」と憂鬱になり、そんな自分に自己嫌悪する、という方もいるかもしれませんね。
ですが、それは脳の働きとしては正常なこと。医学博士の米山公啓氏は、以下のように述べています。
脳は、最初は新しいものに対して拒否反応を示すようにできています。これは、新しいもの、すなわち未知のものに対して警戒するという防御機能です。*3
新しく勉強を始めるときは、なにもかも未知の状態。問題を解けるようになるには、時間がかかるだろうな……と負担に思うのも無理はありません。こうした負担感を軽減するには、前日に少し手をつけておくのが効果的。
たとえば、次の日に解く予定の問題集があるなら、前日に開いて軽く眺めてみるのです。ただ問題集を開いて目を通す程度なら、気楽に取り組めると思いませんか。
この段階で「意外と量は多くないな」「解けそうな問題がある」などに気づけたら、2日めに勉強に取りかかるハードルがぐっと下がります。
もしこの段階で「思った以上に難しそうだ」と気が重くなるなら、次の日に解く問題数を減らしたり、テキストを復習してから解いたりするなど、次にとる行動を変更しましょう。
筆者は、現在取り組んでいる勉強で、基本情報技術者試験が一番気が重く、先延ばしにしがちです。この方法に沿って、勉強する前日、問題集に軽く目を通すようにしたところ、やりたくなくてストレスを感じるということが減りました。
事前に見ておくことで、次の日に勉強に取り組むイメージが具体的に湧いてきて、「解ける問題もあるから、そんなに恐れなくていいんだな」と感じられたのが大きいと思います。「勉強するからにはちゃんとやらなければ」と思いがちな人にこそ、おすすめしたい方法です。
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気の重さをなくす工夫をすることで、勉強の習慣化が可能になります。
本記事から、取り入れやすい方法を選んで、試してみてくださいね。充実した下半期を過ごせるよう、応援しています。
*1 東洋経済オンライン|三日坊主は卒業!「簡単に」行動を習慣化する方法
*2 日経xwoman|やるべきことを「先送りする悪癖」を治す3つの方法
*3 プレジデントオンライン|数字嫌いの原因は脳の防衛機能
柴田香織
大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。