「仕事から帰っても勉強する気力が湧かない……」
「職場の人間関係に頭を悩ませ、勉強モードに入れない……」
社会人になってから、仕事と勉強の両立に悩む人は少なくありません。かつては勉強習慣があったのに、今では「疲れとストレス」が大きな壁となっているのではないでしょうか。
そこで今回は、「仕事と勉強を両立させるための疲れない習慣」をご紹介します。筆者自身が実践し、効果を実感した方法ばかり。皆さんの日々の生活にも、きっと役立つはずです。
1. 勉強前に6分瞑想する
仕事帰りの疲労や眠気で勉強に集中できない…そんな悩みを抱える人は少なくありません。そんなときこそ、勉強前の6分間瞑想がおすすめです。
朝型夜型の個人差はあれど、帰宅後の疲労感は誰しも同じ。せっかくの夜の時間も、集中力が続かないという方も多いのではないでしょうか。
カフェインで無理に目を覚ます?それとも仮眠?…どちらも睡眠リズムを崩す恐れがあり、得策とは言えません。しかし、たった6分の瞑想なら話は別。米国・ジョージ・メイソン大学の2013年の研究は、疲労と闘う人々に光明をもたらしてくれそうです。
同大学の認知心理学者ロバート・ユーマンズ教授らの実験によると、講義前に瞑想を行った学生は、そうでない学生と比べてテストで高得点を獲得したそうです。
特筆すべきは、瞑想の恩恵を最も受けたのが誰かということ。ユーマンズ教授らによれば、この効果は「集中力に問題を抱える学生」により顕著だったとのこと。普段から雑念に悩まされる人ほど、瞑想の効果を実感できるかもしれません。
さらに驚くべきは、わずか6分の瞑想で顕著な集中力向上が見られたこと。たった6分なら、毎日の勉強習慣に取り入れやすそうですね。*1
筆者はメンタルを安定させるために、数年前からヨガや瞑想の習慣を取り入れました。瞑想をしない日と比べ、瞑想をする日は勉強の集中力に差があります。勉強前に数分の瞑想を取り入れると、リスニングで単語の聴き落としが減るのです。脳の疲労解消と同時に、呼吸に意識を払う感覚を覚えているため、勉強に集中できるのでしょう。
人によっては「疲れた夜に瞑想すれば、眠ってしまうのでは?」という懸念もありますよね。でも、瞑想を正しく行なえば、その心配もいりません。ポイントは姿勢を正して瞑想すること。大幹を意識すれば、リラックスしすぎて眠ることも避けられます。ぜひ、お試しください。
2. 5分軽い運動をする
「仕事で疲れたから、ベッドで横になってから勉強しよう」と考えることはよくあるもの。でも、じつは筋肉を動かさないでいるほうが、疲労は解消されないのです。座り仕事が多いのであれば、軽度の運動を試してみましょう。
仕事で疲れているのに、運動するなんてうんざり……その気持ちには筆者も共感します。でも、ハードな運動をする必要はありません。科学的に疲労回復効果が証明されているのは、軽い運動なのです。
米国・ジョージア大学は、運動と疲労に関する研究結果(2008年)を報告しています。被験者は、運動習慣がなく、慢性的な疲れがあるボランティア36名。研究者らは被験者を下記の3つのグループに分けて検証しました。
- A:6週間にわたり、週3日で20分の中程度の有酸素運動をする
- B:6週間にわたり、Aと同じ頻度でゆっくりとした散歩程度の有酸素運動をする
- C:6週間何もしない
いうまでもなく、Cグループには何の変化もありませんでしたが、AグループとBグループを比較したところ、Aグループ(中程度の運動)は疲労感が49%減少したのに対し、Bグループ(軽度の運動)は疲労感が65%減少したのです。つまり、軽度の運動のほうが「-16%」の開きで、疲労解消の効果があったとのこと。数値にしてみれば、大きな差ですね。*2
この研究結果で因果関係は報告されていませんが、アスリートのサポートに関わる、パーソナルトレーナーの板井俊憲氏は、身体を動かさないと疲労が解消されないと説明しています。*3
動かないことで疲労物質はどんどん溜まっていきます。肉体労働が多かったひと昔前は、仕事中に身体を動かしていたので、帰ってきた後にすぐに寝ても問題はありませんでしたが、デスクワークが多くなった現代では逆効果です。筋肉がずっと動かされないわけですから疲労物質も流れていかないのです。
そこで、デスクワークが多いビジネスパーソンに坂井氏が推奨するのは「アクティブレスト」。これは「適度に筋肉を揺り動かしてから休むという方法」です。坂井氏は、5分ほどの軽いストレッチをすすめています。(カギカッコ内引用元:同上)筆者も、PC仕事で頭痛や疲労を感じていた日に、試してみました。
筆者が取り入れたのは、股関節のリンパを流す簡単なヨガのポーズ。10分にも満たない時間でしたが、肩こりや目の疲れが軽減されていくのと同時に、頭にモヤがかかった、いわゆるブレインフォグが解消されていくのがわかりました。
疲れるとどうしても腰が重くなりがちですが、数分の間でそれまでの疲労が解消されるのなら試してみる価値は十分にありますよ。
3. ネガティブ思考から気を逸らす
感情と記憶は密接な関係にあるため、仕事のストレスは勉強の大敵。疲れないためにも、ネガティブ思考の切り替えが大切です。
職場の対人関係でストレスを受けたとしても、翌日気に留まらなくなれば問題はないもの。でも、翌朝起きても、仕事中でも、帰ってソファに寝そべっていても……「また同じことが繰り返されたら?」と不安が止まらない場合もあるでしょう。
元臨床心理士で作家のアリス・ボーイズ氏によれば、「際限なく考え続けることを『反芻(はんすう)』と呼ぶのだそうです。この反芻を継続すると——
反芻は、ただ不快になるだけでは済まない。問題解決力の低下、不安、抑うつと密接なつながりがある。*4
つまり、何度も繰り返し考えごとをするクセがついていれば、心が消耗しやすくなるわけですね。問題解決力の低下が見られるのですから、認知能力も同時に低下すると言えるでしょう。
であるならば、”ネガティブ思考を止める” クセをつけて、脳に覚えさせてみては? 実際にアリス・ボーイズ氏はひとつのトレーニングとして「気を逸らす」ことを提案しています。
反芻していると気づいたら、ただちに数分間、気を逸らそう。短時間で没頭できて、ことさら難易度の高くない活動をするのだ。
(上記引用元:同上)
不安を抱えやすい筆者も、反芻思考の罠に陥るたびに気を逸らすクセをつけようと試みました。とはいえ、考えすぎるときは気を逸らすことさえも忘れてしまいます。そのため、ノートにリストアップ。
ちょうど、知人とチャットですれ違いがあり、モヤモヤを抱えていたため、リストを見ながら実行しやすいものから試してみました。考えずに手を使う、キッチンの掃除や、本棚の整理は一時的な効果がありましたが……想定外にも、集中力を要する文学作品を読むことがもっとも有効でした。
というのも、慣れ親しんだ本の世界に没頭すると、現実の悩みごとが取るに足りないものとして遠ざかるからです。考えを切り替えるためには、不快な気持ちに立ち止まらず、好きな場所へ心を移動させることが大切なのでしょう。
本を読み終えて心が癒されたからでしょうか。語学の勉強に取り組むことができましたよ。“これなら切り替えられる”ものを、ぜひ探してみてくださいね。
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仕事と勉強の両方をこなすのは、とても負担が大きいもの。ぜひ、今回紹介した方法を取り入れ、「疲れとストレス」を減らしてみましょう。勉強の継続に役立てられたら、幸いです。
*1 Science Daily|Meditating before lecture leads to better grades
*2 The NewYork Times|The Cure for Exhaustion? More Exercise
*3 Panasonic|疲れた時は、筋肉を動かそう 疲労回復の新常識「アクティブレスト」
*4 DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|過去の失敗で自分を責め続けるのをやめる方法
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。