「誘惑に負けて今日も勉強できなかった。学生の頃のように強制力がないから……」
「持続力のない自分には、独学は無理かも……」
独学には、コストがかからず自由にできるといったメリットがありますが、強制力がないので続けにくいという欠点もあります。この欠点をものともせず独学を継続できている人には、いったいどのような習慣があるのでしょうか。
本記事では、独学を継続できる人とそうでない人の習慣の違いを紹介しましょう。
違い1.「小さく」考える
塵も積もれば山となる——。よく聞くことわざのとおり、独学が続く人は小さな積み重ねを大切にしています。「1か月で成果を出す」「専門書を半年で100冊読破する」など、最初から大きく動こうとは考えません。
『習慣超大全——スタンフォード行動デザイン研究所の自分を変える方法』(ダイヤモンド社)の著者で、スタンフォード大学の行動科学者であるBJ・フォッグ氏は著書のなかで、成功者の物語が印象深いのは「それが『例外的』だからだということを忘れてはならない」と警鐘を鳴らします。(カギカッコ内引用元:ダイヤモンド・オンライン|「習慣がラクに続く人」と「続かない人」の決定的な差)
残念ながら、普通の人より2倍も3倍も努力した成功者のストーリーは、簡単にはまねできないもの。にもかかわらず、例外的な成功者のように最短で成果を出そうと「1日問題集50ページ解く!」などと大きな目標を掲げて勉強を始めても、長くは続きません。「今日もできなかった……」とすぐに失望しかねないでしょう。
多くの人にとって成功への近道は、とるにたらない小さな行動を重ねること。しかも、小さな行動は挫折するリスクも低いのです。フォッグ氏は、その理由を「再開するのも簡単だからだ」と語ります。(カギカッコ内引用元:同上)
目標とする1日あたりの勉強量がほんの少しであれば、たとえ1〜2日できなかったとしても、大きな敗北感など味わいませんよね。それは、次の日になればまた簡単に勉強に取り組めて、しかも目標を楽に達成できるから。このような “小さく行動する” という考え方こそ、独学が続く人とそうでない人の分かれ目なのです。
もしあなたがいま、「独学を始めるぞ!」と意気込んで大きな目標とともに踏み出そうとしているなら、一度冷静になって次のように目標を小さくしてみてはいかがでしょう。
- 毎日1冊、ビジネス書を読破する
⇒ 朝と夜、5分だけビジネス書を読む - 休日に問題集で50問解く
⇒ 1週間以内に問題集で10問解く
小さな行動に慣れれば、いつしか習慣となって自動的に勉強することができるようになるはず。独学を継続できる人になるために、まずは小さな行動から、あなたが望む目標に向かってみてください。
違い2.「時間」を測っている
独学に挫折した経験がある人のなかには、勉強するための時間的な余裕がないと感じて諦めてしまった人も多いでしょう。しかし、“勉強を終えるには時間がかかる” という思い込みこそが、あなたの独学を阻害しているかもしれません。
「問題集や単語の暗記に取り組めば、1時間くらいかかるかな」という漠然としたイメージをもっていると、心理的ハードルもあいまって想像上の勉強時間が膨れ上がり、「勉強するのは面倒」という心理に陥ってしまうのです。
医学博士であり能力開発コンサルタントの森田敏宏氏は、このような心理を変えるためには時間を測ることが効果的だと述べます。
作業時間を毎回測ることで、心理的時間と物理的時間にギャップがあることがわかり、心理的な認識のほうを変えていけます。
(引用元:プレジデントオンライン|"締め切り直前"に脅威の集中力が出るワケ)
勉強にかかる実際の時間を確認し、「意外と短いな」と想像との誤差に気づければ、勉強は “面倒くさいもの” ではなく “簡単に終わるもの” だと考えを変えることができるのですね。
残念な例ですが、筆者も、勉強にかかる時間を漠然と以下のようにイメージしていました。
- 単語の勉強:10~15分ほど
- 問題集:およそ20分
ところが実際に測ってみると、以下のように筆者のイメージとは異なっていたのです。
<形容詞48単語のチェック+テスト>
(予測時間)15分→(実際の時間)約5分|-10分の誤差
<問題集18ページ>
(予測時間)20分→(実際の時間)約14分|-6分の誤差
単語に関してはずいぶん早く終わったため、正直混乱しました。およそ50単語を5分で済ませられるのなら、たとえば1日3回のスキマ時間で150単語終えられる計算です。野菜を茹でている最中や眠気が襲う就寝前でも、ラクに取り組めそうな気持ちになりましたよ。
「勉強は時間がかかる」というイメージしかないうちは、独学を続けるのは難しいままかもしれません。みなさんも時間を測って、想像とのギャップがないか確認してみてくださいね。
違い3.「締め切り」を決めている
試験日まで、あと2か月——。この状況で「もう2か月しかない」と考えてすぐ行動に移せる人はいいですが、「まだ2か月もある」と余裕を感じる人は、勉強を先延ばしにしてしまいがちです。独学の継続に悩む人の多くは、後者の心理に心当たりがあるのではないでしょうか。
先延ばしについて「『パーキンソンの法則』の罠にはまって」いると指摘するのは、前出の森田氏。これは「英国の歴史・政治学者のパーキンソン」が考案した法則で、「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて使い切るまで膨張する」というものです。
森田氏は、「夏休みの宿題を新学期直前までやらずに」先延ばしにしてしまう子どもの例を挙げ、この法則は仕事だけでなく勉強にも通ずるとしています。(カギカッコ内引用元:プレジデントオンライン|"締め切り直前"に脅威の集中力が出るワケ)
もちろん、社会人の独学でも同じことが言えるでしょう。試験日までまだ時間があるうちは勉強の優先順位を下げ、試験日直前になって慌てて勉強を詰め込む……。このように、時間があっても余裕をもった勉強ができるとは限らず、期限ぎりぎりまで時間を使いきってしまうのです。
そこで、あえて個人的な締め切りを設けてみるのはどうでしょうか。
モチベーションや目標達成について研究する社会心理学者のニラ・リバーマン氏は、集中してタスクを終わらせるためには短期間の期限を設けるべきだと語ります。
“Deadlines and progress monitoring help keep us in focus and advance our work,”
(締め切りと進捗状況の記録は、私たちの集中力を維持し、作業を進ませるのに役立ちます)
(参考および枠内引用元:BBC|How to make deadlines motivating, not stressful ※和訳は筆者が補った)
仕事でも納期が迫れば、それに向かって集中して取り組むものですよね。勉強も同様で、短期間の締め切りを設ければ、気を緩めず勉強に取りかかることができるのです。
期限を設けると、いったいどのような変化があるのでしょうか? 卓上カレンダーを用意し、筆者が実践してみました。
使用したのは、今年購入した無印良品の卓上カレンダー。まだ今月の予定は記入していません。
そんなまっさらなカレンダーに締め切りを記入したものが以下です。現時点で達成可能だと思う締め切りを設定しました。
筆者は英語と韓国語のふたつの言語を学んでいるので、混乱しないようにそれぞれを色分けしました。
勉強を忘れている瞬間も、カレンダーに書いた締め切りは目に入ってきます。そのうえそれぞれの締め切りまでの期間は長くないため、夏休みの宿題のようには先延ばしにできません。
「課題を早く終わらせたい」「期限を延ばしたくない」という心理状態になり、早めに着手するクセがつきました。そして、達成できたら、緑色のマーカーでレ点をつけてチェック。印をつけると、課題をやり終えた安心感を覚えました。
一週間後にはすべて達成し、次の締め切りも設けました。タイムリミットが迫っているため、いつもより密度の濃い学習を体験できますよ。独学を継続できる人になりたい方は、締め切りの効果をぜひお試しあれ。
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独学が続かないのは、怠惰でも意志が弱いせいでもありません。勉強を継続させるための考えや仕組みを学んでそのコツさえつかめば、あなたの目標達成は遠くないはずです。
ダイヤモンド・オンライン|「習慣がラクに続く人」と「続かない人」の決定的な差
プレジデントオンライン|"締め切り直前"に脅威の集中力が出るワケ
BBC|How to make deadlines motivating, not stressful
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。