「友人は毎日3時間も勉強して国家資格をとったのに、自分は勉強習慣さえない……」
「上司からもっと努力して学べと言われたが、なかなかやる気が起きない……」
「勉強を頑張れない」と悩む人は、一定数いるでしょう。一説によると、努力は才能。つまり、頑張れるかどうかは遺伝子レベルで決まっているというのです。
ですが、気を落とさないでください。努力できないのであれば、根性に頼るのではなく「勉強したくなるコツ」を取り入れて勉強を続ければいいのです。
今回の記事では、「頑張れないタイプの人」に試してほしい3個の方法をご紹介。お役に立てたら幸いです。
苦手意識がある ⇒「得意なものから」始めればいい
「勉強への苦手意識が強く、教科書を開く最初の一歩さえ踏み出しづらい……」
そう悩んでいるなら、得意なものから始めるのはいかがでしょうか。
「勉強しないからできないのではなく、そもそも人は勉強ができないからやりたくなくなる」と語るのは、学習・教育アドバイザーの伊藤敏雄氏。(カギカッコ内引用元:All About|勉強の”やる気スイッチ”なんて実はない?! 本当のやる気の出し方)
これには筆者も身に覚えがあります。数式が絡む難しい経済学の勉強を、ずっと後回しにしていた経験があるのです。読み解いていくのには、負荷がかかりすぎるため、どうしてもやりたくない気持ちが勝っていました。
このように、苦手な勉強を前にすると、私たちはやる気を失うものなのです。
一方、パズルゲームならどうでしょうか。初めのうちは設定などを理解するのに時間がかかりますが、慣れてくればパズルを解くコツをつかみ、どんどんステージをクリアしていく楽しみがありますよね。ゲームが楽しいのは、“できていく快感” があるから。
伊藤氏は、この心理を次のように説明しています。
このようにやる気の根底にあるのは、「やった→できた→楽しくなってきたまたやろう」という成功体験なのです。やる気が行動を引き起こすのではなく、成功体験がやる気を引き出すと考える方が、シンプルに説明できるのです。
(引用元:同上 ※太字は編集部が施した)
「やった→できた→楽しくなってきたまたやろう」の好循環さえつくれれば、苦手な勉強に対しても「もっとやろう!」という気になるのではないでしょうか。
さらに、伊藤氏は「やる気を出すためのウォーミングアップをしてから、取り組む」ことをすすめています。具体的に提案しているのは、以下のとおり。
- 得意な教科、得意な分野から始めてみる
- 本題の勉強とは関係のないことを2~3分やってから始めてみる
(ex. 簡単なパズルや計算問題など)
(カギカッコ内引用元および上記参考:同上)
得意な教科や好きなものから手をつけて、「理解できた」「楽しい」という小さな成功体験をきっかけに、本題の勉強を始めればいいわけですね。
筆者も、サボりがちな休日の語学勉強にウォーミングアップを実践してみました。
試したのは、「英語の勉強始めに洋楽を1曲聴くこと」です。音楽を聴きながらフレーズを読むと感情移入しやすく、問題文を読むよりも単語の意味が頭に入ってくる手応えがありました。「これくらいなら理解できる」という成功体験が功を奏したのか、英語の問題集に対する苦手意識も薄らぎ、いつもより2倍も問題を解いてしまいましたよ。
「頑張れない」という気持ちが苦手意識からきているなら、あなたが得意なものから始めて、成功体験で弾みをつけてみてはいかがでしょうか。
誘惑に負ける ⇒「誘惑とセット」で勉強すればいい
当然ながら、勉強より楽しいことは多くあります。その誘惑に勝とうとするのは至難の業。ならば、”勉強すれば、好きなこともできる” という仕組みをつくってみてはいかがでしょう。
誘惑とセットで行動習慣を身につける方法を考案したのは、ペンシルベニア大学の行動科学者ケイティ・ミルクマン氏。同氏は、この方法を「誘惑バンドル」と名づけました。具体的には、以下の方法です。
「誘惑バンドル」とは、「好きな音楽を聴く」「ジャンクフードを食べる」などのやりたくてたまらないことと、「勉強」や「運動」などのやらなくてはならないことを抱き合わせにする方法のこと。
(カギカッコ内および上記引用元:ダイヤモンド・オンライン|【行動科学】「退屈な勉強」でもパッと集中できる1つの方法)
「すべきこと」に「したいこと」を掛け合わせると、取り組みたい心理になるわけですね。
この「誘惑バンドル」には、裏づけがあります。考案したミルクマン氏は「運動量を増やしたいと思っている数千人のジム会員に、1か月間のプログラムを提供」しました。そこで、参加者を2つのグループに分けて調査を実施。
- <グループA> ただ運動してもらう
- <グループB> 誘惑バンドルの説明を受け、運動のときだけオーディオブックを楽しむ方法を試すよう勧める
結果、誘惑バンドルの説明を受けた<グループB>は、1か月にわたり週1回以上ジムに通う確率が<グループA>よりも7ポイント高かったとのこと。それだけに留まらず、少なくとも17週間は、毎週運動する確率が高い状態が持続したのだそうです。(カギカッコ内引用元および上記参考:同上)
このように持続性が高い方法ですから、勉強に応用すれば、すぐに習慣として身につきそうですね。
ただし、注意したい点は 「認知的負荷のかかる作業同士」を抱き合わせるのは困難ということ(カギカッコ内引用元:同上)。
たとえば「問題集を解きながらYouTubeを観る」「暗記作業しながらラジオを聴く」などはNGと言えるでしょう。
筆者は、以下を誘惑バンドルに活用してみました。
- 新作のチョコレートを食べること
- 新しいカラーペンを使うこと
すると、理解が難しかった本でも集中力が続きましたよ。
また、「ご褒美は勉強時にとっておく」と制限をかけるのもポイント。ご褒美は ”勉強のときだけ” 楽しめるようにしておけば、より勉強したくなる心理になるでしょう。
自己否定グセがある ⇒「言葉で演出」すればいい
頑張れない自分を自己否定するクセはありませんか?
「勉強を頑張れない自分はなんてダメなんだ」と思うほど、やる気がなくなっていく……。そんな状況に心当たりがある人は、ポジティブな言葉で自分をコントロールしてみましょう。
脳神経科学を専門とする諏訪東京理科大教授の篠原菊紀氏によれば、脳の部位である「線条体」がやる気の鍵を握っているのだそうです。
線条体には、実際に快感を伴う行動をしているときのほか、その行動によってごほうび(快感)が得られると予測したときに最も活性化するという性質があり、この予測こそがやる気の正体です
ところが、線条体は「意思や思考などをつかさどる脳(高度な脳)とは離れた場所」にあるため、「意思でやる気をコントロールすることはできない」とのこと。
(カギカッコ内および枠内引用元:Web eclat|やる気の最強スイッチは脳の奥に! 脳科学者が教える「やる気が出るスイッチ」の入れ方)
つまり、脳の仕組み上、勉強に対するやる気や情熱は自らの意思でつくれないわけですね。
たとえば、働きながら毎日2時間以上勉強している人と勉強していない自分とを比較して、「勉強習慣が身についていない自分は怠惰な性格だ」と思ってしまうことがあるでしょう。しかし、篠原氏が述べるとおり、やる気は自分でコントロールできません。もともとやる気を出すのは難しいのですから、「頑張れない状態」は自然なことなのです。
とはいえ、頑張る気力がなくとも勉強を継続したいもの。ならば、やる気に関わる部位を意図的にだましてみましょう。篠原氏も、以下のように語っています。
実際の体験だけに頼らず、疑似的に気持ちよさを演出すればいいのです。線条体をはじめとした『報酬系・快楽系』と呼ばれる神経系は“だまされやすい”という特徴があります。
(引用元:Web eclat|行動をスイッチにしてやる気を発動! やる気を起こすスイッチの押し方)
具体的には、「ポジティブな言葉で快感を演出する」のが有効とのこと。たとえば、以下のような具合です。
- 仕事終わりに15分復習できたとき
→「疲れているのによく勉強したなあ。えらい!」 - 勉強のために早起きしたとき
→「ちゃんと起きられている。なかなかやるね!」
一見、子どもだましに思えるかもしれませんが、「行動と快感を無理やり結びつけることを繰り返すうち」に、自動的に「やる気のスイッチが発動する」ようになるのだとか。(カギカッコ内引用元:同上)
筆者も問題集を解いて採点する際に「頭がよくないから間違えるんだ……」と自己否定に陥りがち。しかし、「発音は上手なほうだ」「文章を読解する速度は上がっているぞ」と心のなかで自分のできるところを認めると、向上心が高まり、勉強の習慣化に結びつきました。自己肯定感を傷つけないことは、勉強の継続に大切なのかもしれませんね。
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無理して頑張る必要はありません。「勉強したくなるコツ」を取り入れ、効果を楽しみながら勉強してみてくださいね。
All About|勉強の”やる気スイッチ”なんて実はない?! 本当のやる気の出し方
ダイヤモンド・オンライン|【行動科学】「退屈な勉強」でもパッと集中できる1つの方法
Web eclat|やる気の最強スイッチは脳の奥に! 脳科学者が教える「やる気が出るスイッチ」の入れ方
Web eclat|行動をスイッチにしてやる気を発動! やる気を起こすスイッチの押し方
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。