「試験範囲が広すぎて、最初のほうに勉強したことを覚えていられない」
「頑張って勉強しているのに、努力に見合った成果を挙げられない」
このようにお悩みの人は、勉強の “最後の5分” の使い方を工夫するといいかもしれません。
今回は、勉強の質を上げるためには最後の5分をどのように使えばいいのか、筆者の実践を交えて紹介します。ぜひ参考にしてみてくださいね。
【ライタープロフィール】
澤田みのり
大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格を取得。現在は国際中医師合格を目指し毎日勉強している。勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。
Active Brain CLUB|記憶の定着を促すエビングハウス忘却曲線とは
朝日新聞EduA|「その日に復習」は効果薄? 目からうろこの効率がいい学習法
ダイヤモンド・オンライン|5分で簡単に記憶が定着する「イマナニ法」
最後の5分で「復習」するといい
みなさんは勉強するとき、最後の5分で何をしていますか? 「もっとやっておかなくちゃ」という意識で、1問でも多く解こう、1ページでも先へ進めようとしている人もいるでしょう。資格試験の勉強をしている筆者も、試験範囲が終わらないかもしれないという焦りから、先へ先へと進むことを優先しがちです。
こうすると、試験範囲をこなせるというメリットはあります。一方、あるデメリットも。最初のほうの単元で覚えたはずの内容を忘れてしまい、あとで勉強し直さなくてはならなくなるために、勉強効率が悪くなりかねないのです。
その理由は、先へ先へ進もうとするとどうしても復習が足りなくなるから。そこで、勉強の最後の5分で行ないたいのが、その日の復習です。
復習ならあとでまとめてやっている、という方もいるでしょう。ですが、勉強効率を上げるには、復習のタイミングに気を配ることが重要。
脳科学研究者の川島隆太氏が、ウォータールー大学によるこんな研究を紹介しています。「学生が1時間の講義を受けた後に24時間以内に10分間復習するとほぼ100%記憶が戻り、1週間後に2回目の復習を行うと5分で記憶が戻り、30日後に3回目の復習を行うと2~4分行うと記憶が取り戻せる」と報告されているのだそう。(カギカッコ内引用元:Active Brain CLUB|記憶の定着を促すエビングハウス忘却曲線とは)
つまり、復習を繰り返せば、記憶の定着率は上がるということです。1回めの復習を後回しにしていてはいつまで経っても繰り返せないので、まずは優先的に復習するのが大切だと言えるでしょう。その1回めの復習を、勉強の最後の5分で行なうのです。
とはいえ、勉強直後に復習するより時間を空けて復習する「分散学習」のほうが効果的だと聞いたことがある人もいるかもしれません。それも一理ありますが、知覚心理学・実験心理学が専門で日本女子大学教授の竹内龍人氏によれば、「よく理解できなかった場合は、その日のうちに復習して理解す」るのがいいそう。(カギカッコ内引用元:朝日新聞EduA|「その日に復習」は効果薄? 目からうろこの効率がいい学習法)
そこで、勉強の最後に5分だけでも時間をとり、間違えた箇所や理解できなかったところなど自分の弱点に焦点を当てた復習をするのがよさそうだと言えるわけです。
5分では足りない場合におすすめの復習法
「勉強範囲が広いので、最後の5分で復習し終えるのは難しい」と感じる人もいるはず。そんな問題を解決するには、途中でいったん勉強を区切り、そのタイミングで復習をするのがいいでしょう。
これは、京都大学に首席で合格した経験をもつ、教育系事業を手がける実業家の粂原圭太郎氏がすすめる「イマナニ法」というものです。
教材の1~2ページに1回程度、区切りのいいところでいったん先に進むのをやめ、「今、何をやっていたんだっけ?」と、1~5分ほど振り返ります。
(カギカッコ内および枠内引用元:ダイヤモンド・オンライン|5分で簡単に記憶が定着する「イマナニ法」 ※太字は編集部が施した)
区切りがいいところまで来るたび振り返れば、復習の後回しが予防できますよね。勉強の範囲が広くても、効率的に復習に取り組めそうです。
なお粂原氏によると、このイマナニ法は「科目のタイプ」によって方法が異なるとのこと。
- 「歴史や暗記ものの場合は、参考書の『目次』『見出し』および『太字』で書かれているところをチェック」して「時間をかけすぎない」
- 「数学など理解系の科目の場合は、自分がいちばんできていなかったところを振り返る」
目次や見出し・太字部分には「大切なポイント」が「集約されてい」ます。また、自分ができなかったところに焦点を当てた振り返りは、「やるべきことの優先順位をつけるうえでも効果」があるのです。(カギカッコ内引用元:同上)
上記のような目安があれば、復習するとき迷わずにすみそうですね。また、それぞれの区切りの最後だけでなく、その日の勉強の最後の5分であらためて全体を復習すれば、記憶の定着にも効くはず。
いつも復習が後回しになってしまう人や、学習範囲が広くて覚えるのが大変だと感じる人は、イマナニ法を試してみてはいかがでしょうか。
2ページごとに区切って復習してみた
広い試験範囲の勉強を早く先に進めたい筆者も、これまで復習がないがしろにしてしまっていたため、イマナニ法を実践してみました。
筆者は問題集をベースに勉強しているので、問題を2ページ解き終えるたびに復習することに。こちらが、2ページ分の選択式問題の解答を書き出したノートです。
あとで振り返ったときに内容を思い出しやすいよう、A〜Eの選択肢だけでなく答えも書くように工夫しました。答え合わせのあとには、間違えた問題を振り返り、ページ下部の余白にメモ。そのあとで次の2ページに取りかかります。
次の2ページは満点でしたが、答えを導くのに時間がかかった問題について簡単に振り返りをして、知識の整理をしました。
最後にその日の学びの全体を振り返り、間違えた問題の解き直しをしました。丸暗記になってしまうのを避けるため、なぜその答えになると考えたのかについてもメモを残しています。
この実践を通して、感じたことが3つあります。
- 復習のハードルが下がった
- 勉強効率が上がった
- 記憶の定着を実感した
これまで筆者は、少しでも先の範囲まで勉強を進めたいという焦りから、問題を一度にたくさん解いていました。当然、一度の演習で間違える問題の数も多くなります。そのため解き直しに時間がかかることや、「たくさん解いて疲れたから、解き直しはあとにしよう……」と復習を後回しにしてしまうこともありました。あとで復習するとき、問題を一から読み直さなくてはならなかったので、効率の悪いやり方だったと思います。
ですが今回、復習を後回しにせず2ページごとに必ず振り返ったことで、勉強効率の悪さが解消。気持ちの面でも、追い詰められなくなりました。
また、1回あたりの復習にかける時間はたったの5分。復習へのハードルが下がり「復習はあとにしよう」と思うこともなくなりました。
そして、勉強時間の最後に全体を振り返り、間違えた問題をまとめて解き直した結果、その日に学習した内容全体の記憶を呼び戻せて、記憶の定着につながったと感じます。復習した内容をノートにメモしておけば、あとで見返すときにも役立ちそうです。
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最後の5分に復習をすることで、勉強の質を上げる方法を紹介しました。日々の努力を成果につなげるために、この記事が参考になれば幸いです。