「生成AIは校正ツール以外に使ったことがない……」
「生成AIとの会話は楽しめるけど、仕事でアイデア出しには活用したことはない」
事務作業の効率化で生成AIを活用できても、まだ十分に使いこなせていない人は多いのではないでしょうか。ほかの人と差をつけるには「生成AIの活用方法」を広げることが重要です。
今回の記事では、生成AIの活用法で差が現れる理由と、筆者自ら生成AIでブレインストーミングをした結果をお伝えいたします。
- 生成AIの活用方法で差が出るワケ
- 生成AIの活用で差がでる「質問の仕方」とは
- 生成AIに質問を繰り返してブレインストーミングをしてみた
- 1.「世代を指定しておおまかな案を出してもらう」
- 2.「情報から選択して絞り、具体的な答えをもらう」
- 3.「ChatGPTで出した案をもとに、自分の頭で考えてみる」
- 生成AIでブレインストーミングする場合、「最初は抽象的な質問」から
生成AIの活用方法で差が出るワケ
DXプラットフォーム「Techtouch(テックタッチ)」を提供する、テックタッチ株式会社が、生成AIを活用している大企業(従業員数1,000名以上)の会社員416名を対象に調査を行なったところ、生成AIの利用頻度に関して以下の回答結果が出ました。
<業務上、ChatGPTなどの生成AIを使用する頻度>
- 毎日使用している:21.2%
- 週に数回使用している:33.4%
⇒およそ5割(54.6%)が日常的に使用している
- 月に数回使用している:18.5%
- ほとんど使用していない:26.2%
⇒およそ4割(44.7)が十分に使用していない
「活用できている人/できていない人」は、半々という結果に。2022年にChatGPTが公開され業務活用への期待が高まるなか、実際に活用している人は半数のみなのです。
しかし、さらに活用している人に「生成AIの用途」を調査したところ、「文章編集・添削」(58.6%)、「プレゼンテーション資料作成」(42.8%)、「議事録の自動化」(41.4%)と、事務作業の効率化が中心。つまり、「アイデアを出す」「データを分析する」などの、頭脳を使うサポートに活用している人は少ないのです。*1
言い換えれば、まだ多くの人が活用できていない分野——「クリエイティブなもの」に生成AIを活用できるか否かで、ほかの人との差が生まれるのではないでしょうか。
生成AIの活用で差がでる「質問の仕方」とは
とはいえ、多くの人が「事務作業以外のものに活用できない」のですから、そこには当然課題があります。それは、生成AIに対する “質問の仕方” です。
専門的には、ChatGPTで質問にあたる文章を「プロンプト」と呼びます。たとえば、ChatGPTの質問ボックスに、「あまなかしA14L」とランダムな文章を打ったとしても、以下のように応答してくれます。
ChatGPTに送る文章そのもの(上記で言えば「あまなかしA14L」)が、「プロンプト」なのです。となれば、生成AIを活用するキーとなるのが、こちらが求める答えを導きだすための、”プロンプトの作成” です。
NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事する、(株)LinkX Japan代表坂本将磨氏によると——
与える言葉によってAIが参照する情報が変化することで、回答内容が大きく変わります。
プロンプトの設計は、AIに適切な知識を引き出すための重要な手がかりとなっているのです。*2
人にたとえれば、それぞれ考え方の違う新入社員に指示を出すようなもの。「会議前に資料をまとめといて」と指示しても、指示通り資料を整理するだけの部下もいれば、内容をチェックし、補足資料を追加する部下もいるかもしれません。ですから、こちら側の意図通り働いてもらうためにも、指示を工夫する必要があるのです。
では、生成AIからこちらの意図する答えを導くコツとは? Webシステム等の書籍を多数上梓している、テクニカルライターの大澤文孝氏によると、「繰り返し指示を与えることで、だんだんと精度を上げる」ことがポイントなのだそう。
なぜなら、生成AIは「いつも同じ回答とは限らない」ため、ひとつの質問では期待通りの情報を得られないからです。
大澤氏によれば、「チャットで会話しながら作業を進められる利点を活かし、繰り返し、指示」するイメージで生成AIを利用するのが好ましいとのこと。何度も質問を繰り返すことで、ほしい情報を絞り、答えをどんどん具体化するわけですね。
(カギカッコ内引用元:IT STAFFING エンジニアスタイル|質問ではなく指示を。生成AIとの賢い付き合い方)
生成AIに質問を繰り返してブレインストーミングをしてみた
前項ではおおまかな質問のコツを紹介しましたが、実際に流れをイメージするのは難しいもの。そこで、筆者は試しに質問を繰り返して、アイデアのブレインストーミングをしてみました。
正直なところ、筆者は生成AIでアイデア出しをしたことがありません。そのため、「生成AIを使ったとしても、退屈な返答ばかりでヒントにならないのでは?」と懐疑的です。ですが、今回は試験的に「女性用のアプリケーション」制作のアイデアを、生成AIとともに考えてみました。
1.「世代を指定しておおまかな案を出してもらう」
まず始めに筆者が生成AIに投げたプロンプトはこちら。
Q1<わたしは女性向けのアプリケーション開発を考えています。20~30代を対象にする案を4つ簡潔に教えてください>
「対象者の性別」「世代」「案の数」「答えの長さ」を指定し、ChatGPTに答えを求めたところ、次の回答が——
ライフスタイルやフィットネス、メンタルヘルス関連は筆者も想像できたものの、1の「スキンケア診断アプリ」は思いつかなかった案です。たしかに、美容意識の高まる昨今では、このアプリケーションは需要が見込めるよいアイデアと言えるでしょう。
2.「情報から選択して絞り、具体的な答えをもらう」
前項で提案された4つのうち「スキンケア診断アプリ」を選び、さらに具体的な案を出してもらいます。スキンケアに関する「女性のルーティンの悩み」に関しては、想像が膨らまなかったため、その点に関して生成AIの力を借りてみました。
Q2<スキンケア診断アプリについて案を出したいと思います。「女性のルーティンの悩み解決」を目的としたアイデア案を4つ挙げてください>
「出したい案」「目的」「アイデアの数」を指定し、生成AIに聞いたところ——
化粧品の成分を分析してもらうのは、敏感肌やにきびなどの肌トラブルを抱えやすいユーザーにとって大きなメリットになりますね。
3.「ChatGPTで出した案をもとに、自分の頭で考えてみる」
前項のChatGPTで洗い出したアイデアをもとに、新しいアプリケーションを考えてみましょう。といっても、アイデアを組み合わせるだけでいいので——
「スキャン機能」「そのときの肌状態に合わせて、スキンケアルーティンの提案」の2点が特徴のアプリケーションを考案。実現できるのかは置いておいて、スキンケアに関心のない筆者にしては、よい案と言えるのではないでしょうか。
生成AIでブレインストーミングする場合、「最初は抽象的な質問」から
筆者が生成AIを活用して気づいたコツは、「最初は抽象的な質問」をすること。なぜなら、初めから的を絞りすぎると、ひとりでは考えつかない情報を得られないからです。
たとえば、筆者は女性用アプリケーションの案に関しては「世代」のみを指定して、プロンプトを作成しました。そのため、筆者の視野外にある情報を得られたのです。
また、生成AIはあくまでも「アイデアの素材となる情報」を提供してくれるもの。生成AIにすべてを委ねても、創造的なアイデアとはなりません。生成AIを活用するには、生成AIを利用しながら、自分の頭で考える必要があります。ただ、個人でブレインストーミングするには、大きな味方となるでしょう。
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生成AIの活用法は、まだ未知のものがあります。普段から使い、試行錯誤をすれば、生成AIの運用力が上がるでしょう。
*1 PRTIMES|【生成AI、大企業の活用実態は?】職場で生成AIを活用できているのは、約1割の実態。約8割の企業が、自社における生成AIの活用に課題
*2 AI総合研究所|ChatGPTのプロンプトとは?効果的な書き方やコツ、活用例を紹介
IT STAFFING エンジニアスタイル|質問ではなく指示を。生成AIとの賢い付き合い方
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。