リモートワークの定着とともに、出社とリモートを組み合わせた働き方も増えている昨今。それぞれの場所で働くのは便利な一方、コミュニケーションの難しさを感じたこともあるのではないでしょうか。
「上司や同僚と思うようにコミュニケーションがとれず、仕事が滞りがち」
「メンバー全員が顔をそろえる機会があまりなく、チームでの仕事がしづらい」
このような悩みを抱える人へ、この記事では出社時とリモートワークそれぞれのコミュニケーションテクニックをご紹介します。
コミュニケーションを円滑にするべき理由
対面やリモートにかかわらず、だれかとコミュニケーションをとるためには、一定の時間を要するものです。人にあったり、メールを作成したりすることは、特に忙しいときには煩わしく思うかもしれません。
しかし、コミュニケーションは仕事を円滑に進めるうえで必要不可欠。これはHR総研が2024年に実施した、「『社内コミュニケーション』に関するアンケート」の結果からも伺えます。
アンケートでは、「社員間のコミュニケーション不足は業務の障害になると思うか」という質問に対し、「大いにそう思う」「ややそう思う」という回答が86%にのぼりました。また、とくに障害のある業務として「迅速な情報共有」「目指す方向への認識の統一」が多く挙がったのです。*1
アンケート結果からは、コミュニケーションが不足すると、情報共有や認識の統一といった業務の根本的な部分に支障をきたすと考える人が多いことが分かりますね。具体的には、次のような例が考えられます。
- 社員間のレスポンスが遅く、その結果クレーム対応が遅れ顧客からの信頼度が落ちる。
- 同僚に話しかけづらく、間違った方法で作業を進めたためやり直しが生じる。
- 仕事の優先順位をチーム内で確認せず、重要なタスクが締め切り直前まで残っている。
このようなトラブルを未然に防ぎ、時間や労力を無駄にしないためにも、コミュニケーションを円滑に行なう必要があるのですね。
フェイス・トゥ・フェイス(出社時)で意識するべきポイント
コミュニケーションのとり方のコツは、出社時とリモートワーク時で異なります。まずは、出社時の対面コミュニケーションで意識したいポイントをご紹介しましょう。
表情や声色に気を使う
出社時の社内コミュニケーションは、対面で行うことが多いはず。直接会って話すメリットは、言葉だけでなく口調や声色、表情などが伝わる点です。
ワークマネジメント専門家のJulia Martins氏によれば、「対面で相手の表情を見て声のトーンを聞くと、相手がどのような感情で言っているのか判断しやすい」とのこと。そのため「いくら言葉遣いは丁寧でも、無表情で相手の顔も見ずに言うなら、冷たい印象を与えてしまう」と言います。*2
たとえば、仕事を頼まれたとき「明日まででいいですか?」と期限を確認することがありますよね。声の抑揚をつけずに無表情で言うと、ぶっきらぼうな印象を与えてしまい、相手も「迷惑だったかな」と不安になるかもしれません。しかし、笑顔で相手と目を合わせながら伝えることで、誤解を招くことなく気持ちのいいコミュニケーションがとれるでしょう。
正直に伝える
「仕事を頼まれると断れず、忙しくても『すぐやります』と言ってしまう」
「同僚に質問しづらくて、わかったふりをしてしまう」
できるビジネスパーソンでありたいという気持ちはわかりますが、正直に伝えたほうがコミュニケーションが円滑になる場合があります。「伝えるプロ」である電通のコピーライター・勝浦雅彦氏は、正直に話すことが信頼につながるとして、次のように述べています。
不安を隠して「任せてください」と言うのではなく、「ここまではできると思いますが、ここはちょっと不安があるので随時相談させてください」と伝えたほうが、信頼を得られるのです。
(枠内引用元:STUDY HACKER|人間関係が断然よくなる伝え方。コミュニケーションで「捨てる」べき3つのもの)
たしかに、「できます」と伝えたにもかかわらず成果を出せなかった場合、相手からの信頼を失ってしまいかねません。それならば、できる部分とできない部分、問題点や質問などを前もって正直に伝えてしまったほうがよいのです。
言いづらいかもしれませんが、前述の通り対面でのコミュニケーションでは表情や声色も伝わります。伝え方に工夫をして、嘘のない情報伝達を心がければ、コミュニケーションが円滑になり周囲との関係もよくなるはずです。
リモートワークで意識するべきポイント
続いて、リモートワークでのコミュニケーションで意識したいポイントをご紹介します。
電話を活用する
リモートワークでのコミュニケーションは、ビデオ会議やチャットが中心。しかしチャットでは表情や声色が伝わりにくいし、ビデオ会議では準備や拘束時間が発生するなど不便さを感じることもありますよね。そんなときは、電話を活用するのがおすすめです。
前出のMartins氏は、電話のメリットを「視覚的なストレスを減らしながら、チームメンバーの声や口調を耳で確かめる」ことだと述べています。視覚的なストレスとは「ビデオ会議疲れ」であり、「リモートチームのコラボレーションやコミュニケーションの障害になる場合も」あるのだそうです。*2
そうしたビデオ会議のデメリットを避けながら、チャットにはない口調や声色を伝える機能をもつのが、電話ということですね。たとえば作業中のささいな疑問や企画を考えるときの手がかりなど、出社時なら隣の同僚にサクッと聞くような内容は、電話をしてみるといいかもしれません。
チャットのリアクションを徹底する
リモートワークでは、チャットでのコミュニケーションが増えますよね。チャットは便利な一方で「たくさんのチャットにいちいち返信するのが億劫」「自分の送ったチャットが見てもらえたか不安」など、ストレスのもとにもなりえます。お互いに気持ちよくコミュニケーションをとるためにも、リアクションの徹底が大切です。
『テレワーク環境でも成果を出す チームコミュニケーションの教科書』の著者、池田朋弘氏はリアクションの重要性を次のように強調しています。
リアクションをしないと、発信者は「そもそもまだ見てないのか」「見てOKなのか」「見てNGなので指摘しようとしているのか」が全くわからず、不安になります。*3
チャットに対して返信や絵文字がないと、発信者は「相手が見たか・見ていないか」「了承したか・そうでないか」といったことがわからないのです。とはいえ、逐一文字で返信を打つのは大変なので、絵文字やスタンプを活用するといいでしょう。
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リモートワークと出社時、それぞれに適切なコミュニケーション方法をとることで、人間関係も円滑になり仕事をしやすくなるはずです。ぜひ、記事内でご紹介したテクニックを実践してみてくださいね。
*1 HRプロ|HR総研:「社内コミュニケーション」に関するアンケート2024 結果報告
*2 asana|職場で円滑なコミュニケーションを図るためのポイントを紹介
STUDY HACKER|人間関係が断然よくなる伝え方。コミュニケーションで「捨てる」べき3つのもの
*3 ビジネス+IT|チャットコミュニケーションで「絶対に知っておくべき」8つのルール
藤真唯
大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいて分かりやすく伝えることを得意とする。