記憶のスペシャリストによる「2つの勉強法」で3回復習した結果。覚えたい欲求が湧いてくる!

ブレインダンプとマッピングを掛け合わせた3回復習法01

「単語自体は暗記したものの意味がおろそかで、テストでいい点を出せない」
「参考書を読んだのに覚えられず、勉強する気がなくなってきた」
このように勉強でありがちな記憶の悩みを解決するには、繰り返し復習するのが最適。

脳は一度で覚えられない仕組みになっており、東大生や世界記憶力グランドマスターも「3回は復習している」と言います。そこで今回は、勉強のスペシャリストや脳科学者が推奨する学習法を組み合わせた3回復習法を、筆者の実践例とともにご紹介しましょう。

一度で覚えられないのは、脳科学的に当たり前

「テキストを1回読むだけで、内容を覚えられたらいいのに」

勉強する人の多くが、一度はこう考えたことがあることでしょう。しかし、脳の仕組みを考えるとそれは難しいだろうと、トレスペクト教育研究所代表で脳科学にも詳しい宇都出雅巳氏は言います。なぜなら、変化する環境に柔軟に対応できるよう、あえて曖昧に記憶する性質が脳にはあるからです。

曖昧に記憶する脳の性質は、実生活では役立ちます。たとえば、初対面の山田さんについて記憶する場合。社名や性別に加え「くせ毛で黒いスーツを着ていて、親指にささくれがあって……」と事細かに記憶してしまうと、湿度の影響でくせ毛の様子が少し変わったりスーツの色が変わったりすると、情報が一致しないために山田さんと認識できません。「A社勤務で写真が趣味の男性」と曖昧に記憶しているからこそ、次に会ったときも山田さんだと認識できるのです。

一方勉強では、「廃藩置県は1871年に断行された」というように、変わらない事実を覚えるケースがほとんど。それにもかかわらず、情報を曖昧にしか記憶できないため「思い出せない」と苦労することになります。

宇都出氏いわく、記憶を曖昧なものから明確なものに変えるには、繰り返し情報に触れるしかないのだそう。つまり、何度も復習することが勉強を成功させる秘訣なのです。また東京大学大学院を修了した株式会社プラスティー教育研究所代表取締役の清水章弘氏によると、東大生でも3回は復習をしているそうですよ。

ブレインダンプとマッピングを掛け合わせた3回復習法02

「ブレインダンプ」と「マッピング」をかけ合わせた3回復習法のやり方

今回、筆者は復習の効果を確かめるにあたり、ブレインダンプ」という手法と「マッピング」という手法をかけ合わせ、ひとつの内容を合計3回復習してみました。

ブレインダンプとは、覚えている内容をすべてアウトプットする勉強法。スタンフォード・オンライン・ハイスクール校長の星友啓氏が推奨するものです。アウトプットしながら情報を整理できるので、記憶をうまく定着させられるメリットがあるそうです。

アウトプットの方法としては、「話す」「書く」が特に適しているとのこと。断片的な情報をつなげて整理するには書き出すほうがよいと考え、筆者はノートへ書くことにしました。

そしてマッピングとは、情報をマインドマップのような階層構造にして書き出す学習法です。2回め以降の勉強で用いました。

世界記憶力グランドマスターの青木健氏いわく、2回めの復習で覚えていないものは特に苦手なところなので、体系づけて覚えることができるマッピングで意識的に覚え直す工夫が必要とのこと。

青木氏が提案する復習タイミングの目安を参考にし、次のような流れで学習を進めました。

復習1回め
タイミング:最初の勉強から24時間以内
学習法:ブレインダンプ
備考:覚えていないものは内容を確認し、参考書や単語帳に印をつけておく。

復習2回め
タイミング:最初の勉強から2~3日後
学習法:ブレインダンプ、それでも覚えられていないものはマッピング
備考:1回めの復習で覚えていなかった箇所を中心に復習する。

復習3回め
タイミング:最初の勉強から約7日後
学習法:ブレインダンプ、それでも覚えられていないものはマッピング
備考:全体を通して復習する。8~9割覚えられている状態が理想的とのこと。

筆者の場合、月曜の朝に勉強(記憶)したら、その日の夜に1回めの復習をしました。2回めの復習は3日後の木曜日、3回めの復習は6日後の日曜日にしました。では、実際に勉強した様子をご紹介しましょう。

ブレインダンプとマッピングを掛け合わせた3回復習法03

3回復習法を実際にやってみた

筆者は今回、『化粧品成分ガイド 第7版』を使って、化粧品に使われる成分を覚えるのに3回復習法を取り入れました。一般用医薬品に関わる登録販売者試験に合格したので、さらに知識の幅を広げるための勉強です。

ノートは、B5サイズ(罫線7mm、30行)を使用。1回あたり5~10の成分について学習します。

こちらは復習1回めのブレインダンプを実践した紙面です。

ブレインダンプとマッピングを掛け合わせた3回復習法04

「油性成分……角層の水分が蒸発しないようコーティング」といった具合に、ノート片ページの左側に覚えた単語の名前、右側には意味や役割を覚えている限り書きます。書き終えたらテキストを見直し、覚えていないところや間違えて覚えているところを赤ペンで書きました。そして苦手なところにはバツ印をつけています。

2回めのブレインダンプで左ページにある「化粧品の構成成分の分類」を復習した際、上から3つめの「効能・効果成分」の項目をあまり覚えられていなかったため、その項目に絞ったマッピングも行なうことに。それが下記の画像です。

こちらもB5サイズのノートを使用しています。テーマを中心に書き、テキストを見ながら内容ごとに分岐させて書き出しました。

ブレインダンプとマッピングを掛け合わせた3回復習法05

またマッピングを行なう際、筆者は必ず声に出しながら書くようにしました。精神科医の樺沢紫苑氏いわく、「話す」「書く」といった運動神経を使った記憶は忘れにくい性質があるとのこと。「声に出しながら書く」というように、「話す」と「書く」を同時に行なうと記憶の強化につながるそうです。

加えて青木氏いわく、マッピングは何度も繰り返すことが重要とのこと。そのため、なかなか覚えられないところは、2回めの復習のなかでさらに二度三度とマッピングを行ないました。

ブレインダンプとマッピングを掛け合わせた3回復習法06

3回復習法を実践してみたら、勉強がはかどって記憶できた!

「ブレインダンプ」と「マッピング」を利用した3回復習法を実践して感じたこと、提案したいことを以下にまとめます。

1. ブレインダンプで「覚えたい欲求」が高まる

ブレインダンプをすると、ノートの空白に目が行きます。筆者の場合、単語は書けるけれど意味や役割は書けないことが多く、ノートが空白だらけに……。覚えていない傾向が顕著になり、「早くテキストを確認したい」「次こそ全部書きたい」という気持ちから、覚えようとする意欲が高まりました

人材育成プログラムを数多く手がける永谷研一氏いわく、欠けているところへ目が行く特性が脳にはあるそうで、身をもってそれを実感しました。特に1回めの復習は空白に目が行きやすく、学習意欲が高まるので、わからないところを見直すベストタイミングだと思ってじっくり勉強することをおすすめします。

2. マッピングで「理解度とモチベーション」が高まる

マッピングでは、学んでいる分野の全体像を可視化でき、理解度を高めるのに役立ちました。また、繰り返し作成するうちに「途中までスラスラ書けるようになる」「分岐が細かくなる」といった変化が現れると、勉強が進んでいることが実感できて、モチベーションも上がりました。細かい分岐を書けるように、ノートは見開き1ページを思いきって使うことをおすすめします。

***
ブレインダンプとマッピング、ふたつの学習法を組み合わせて復習すると単語の意味やつながりを含めて覚えられるので理解が深まります。繰り返しの学習に、ぜひ取り入れてみてくださいね。

(参考)
宇都出雅巳 (2012), 『「1分スピード記憶」勉強法』, 三笠書房.
清水章弘 (2013), 『ビジネスでも、資格取得でもすごい効果! 現役東大生がこっそりやっている、頭がよくなる勉強法』, PHP研究所.
青木健 (2020), 『記憶力日本チャンピオンの 超効率 すごい記憶術』, 総合法令出版.
星友啓 (2021), 『脳科学が明かした! 結果が出る最強の勉強法 スタンフォード大学OHS校長が教える「超効果的頭の使い方」』, 光文社.
宇山侊男 (2020), 『化粧品成分ガイド 第7版』, フレグランスジャーナル社.
樺沢紫苑 (2018), 『学びを結果に変えるアウトプット大全』, サンクチュアリ出版.
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【ライタープロフィール】
かのえ かな
大学では西洋史を専攻。社会人の資格勉強に関心があり、自身も一般用医薬品に関わる登録販売者試験に合格した。教養を高めるための学び直しにも意欲があり、ビジネス書、歴史書など毎月20冊以上読む。豊富な執筆経験を通じて得た読書法の知識を原動力に、多読習慣を続けている。

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