「いまの会社で、いまの仕事をずっと続けるのか……」「この先、現職でずっと働いていけるのだろうか」とモヤモヤしながら過ごしているけれど、転職に踏み出すのも怖い……そんな人が増えているようです。
転職したいという気持ちはあるのに、転職に踏み切れないのは「やりたいことがわからないから」かもしれません。
今回は、そんな「キャリア迷子」になってしまっている人が、正しい一歩を踏み出せる方法を紹介します。
【ライタープロフィール】
松尾洋希(まつお・ひろき)
(株)ベネッセコーポレーション入社後、進研ゼミ高校講座のマーケティング経験を経て、(株)ベネッセi-キャリアにて大学の教育改革・大学生のキャリア教育支援に従事。大学生向けキャリア教育のプログラム開発責任者を担当。現在は(株)ベネッセコーポレーションにて社会人向けキャリアコーチングサービス「CAREER STAGE」のサービス開発を手がける。
「キャリア迷子」が増えている “2つ” の要因
総務省の資料によると、2023年7~9月の転職希望者は1035万人、そのうち実際に転職した人は325万人でした。なんと、転職希望者のうち710万人が「転職希望」にもかかわらず転職しなかったのです。
いったいなぜだと思いますか? 大きな要因として考えられるのは、人生やこの先のキャリアをどうしていけばいいのかわからない状態の「キャリア迷子」が増えていることでしょう。
- なにを軸に判断していけば、自分自身が納得できるのかがわからない。
- 今後のキャリアに希望がもてず、キャリアパスが見えない。
- 自分には特別な経験やスキルがないためキャリアに一貫性がないと感じている。「なにが専門なの?」と聞かれると困る。
- 自分の「強み」でキャリアを築きたいが、なにが「強み」かわからない。自分のキャリアより上には上がいると思っている。
- まじめに仕事に取り組んでいるが、まわりから評価されないためモチベーションが上がらない。
- 停滞感があり、新しいチャレンジをしたいが、機会をつかむ方法がわからない。
- 現職に満足していないが、会社を辞めることが怖い。なにがやりたいのかわからない。
- なにかを学ぼうとしても興味がもてず、意味がないと感じる。
- 年齢とともに選択肢が減り、生活を考えるとリスクがとれない。
- 業界の将来が不安で、どうすればよいかわからない。キャリアチェンジに踏み切れない。
- 自分が活躍でき、自分を求めてくれる場所(転職先)がわからない。
当てはまった悩みはありましたか? このような「キャリア迷子」が増えた要因は、大きく2つあります。
1つめは、個人の価値観の変化です。働き方や会社に対する考え方が変わってきているため、いろいろな働き方を選ぶ人が出てきています。将来的に転職や副業を考える人が、以前より増えています。
2つめは、社会環境の変化。デジタル化が進み、企業が求める人材の条件も変わってきています。企業は終身雇用を前提としなくなり、自分のキャリアは自分で責任をもつように求められているのです。
現在は、個人の価値観が多様化し、働き方を含めてキャリアの選択肢が増えています。にもかかわらず、「キャリア迷子」になってしまう人が多いのは、やはり「自分がどうしたいのか」「なにがやりたいのか」――もっと言うと、「自分が活躍できる仕事」「自分に合った環境や働き方」「自分の市場価値」がわからない人が増えているからでしょう。
自分の意思に自信がもてないために、本当は選べるはずのキャリアでも、「難しいだろう」「無理そうだ」と感じてしまい、「転職をしようにも選択肢が少ないから(できない)」と決めつけて、時間だけがどんどん過ぎてしまうのです。転職だけが選択肢でもない昨今、自分にとってのベストな選択肢を見つけていきたいですよね。
キャリアに悩みを抱えている人は、あなただけではありません。一緒に「自分が活躍できる仕事」「自分に合った環境や働き方」「自分の市場価値」を見つけていきましょう。
「キャリア迷子」からのアクションの起こし方
キャリアの方向性に迷いを感じる「キャリア迷子」。多くの人が経験するこの状況は、不安や焦りを引き起こしがちです。一方で、この時期は自己を見つめ直し、新たな可能性を発見するチャンスでもあります。
ここでは「キャリア迷子」から抜け出すための具体的なアクションを3つ紹介します。
【最初にすべきこと】自己分析(Will・Canの言語化)
まず、アクションを起こす前に自己分析から始めます。自分の強み、特性、タイプ、価値観、興味、ライフプランなどを整理したうえで、キャリアパスを考えてみましょう。具体的な整理のスタートは、WillやCanの言語化からです。以下を参考に書き出してみてください。
Will:やりたいこと、キャリアビジョン(なりたい・ありたい姿)、欲しい条件
Can:やってきた、できる、できそう、得意、知っている、向いている
※「やりたいこと」と「得意」は混同されがちなので、その点に注意して区別して書きましょう。
【アクション1】環境分析してニーズを理解する
- 現職でのキャリアパスやジョブディスクリプション(その仕事が求める要件)を確認します。
- 次に、「転職するとしたら」と仮定して、転職サイトなどで興味のある職種を調べ、その職種がどのような経験やスキルを求めているのかを確認します。
- すぐに転職するわけでなくても、求人要件を見ることで、自分が身につけておいたほうがよいスキルや経験などを理解することができます。
- 複業や副業にも興味があるのであれば、それらの分野で「どんな人材が求められているのか」などをリサーチするとよいでしょう。
【アクション2】必要なスキルを身につける
自己分析と環境分析の結果から身につけるべきスキルが明らかになります。あなたが身につけるべきスキルはなんですか? 積極的にスキルアップに取り組みましょう。
テクニカルスキル(専門的な知識・スキル)にあまり興味がもてない場合は、ポータブルスキル(汎用的なスキル)を現在の仕事を通して磨きましょう。変化の激しい現代社会において、問題解決力をはじめとしたポータブルスキルは特に重視されています。
【アクション3】キャリアの専門家に相談する
身につけるスキルは見つかったけれど、なかなか実際の行動に移せない、面倒になってきて結局「キャリア迷子」に戻ってしまったという人は、キャリアのプロに相談しましょう。人に相談することで、思考が整理されたり、前向きになれたりして、一気に展望が開ける場合もあります。
キャリアは人に相談するものではない、恥ずかしいと感じる人もまだ多いようですが、専門家に相談することで明るい未来を描けるのなら、それはとても素晴らしいことではないでしょうか。
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「キャリア迷子」の状態は多くの人にとってよくあることです。モヤモヤしたり悩んだりするのは、自分のなかにもっとこうしたい、こうありたいという思いがあるからこそです。
キャリアに正解はありませんし、将来の社会は誰にもわかりません。噂や評判だけに振り回され続ける人生は疲れてしまうでしょう。
周囲がどうあれ、「自分は大丈夫なんだ」と自分らしさを確立できていれば、安心できるはず。周囲に流されない自分らしさを手に入れたいものです。自分ひとりでは納得のいく答え(自己分析・環境分析)にたどり着けないときは、ぜひプロの力を借りてみてください。自分らしいキャリアを築くための第一歩を、一緒に踏み出しましょう。