「仕事に追われているように感じられて、家に帰ってもリラックスできない……」
「明るく前向きな同僚を見ていると、ネガティブな自分に落ち込む」
このような悩みを抱えた状態が続くと、余裕をもって仕事に臨んだり、周囲の人に優しく接したりすることが難しくなりますよね。その背景には、あなたの “考え方のクセ” が隠れているかもしれません。
本記事では、心が疲れやすい人が陥りがちな考え方のクセとその解決法をご紹介します。環境を変えるのは難しくても、考え方のクセを意識して過ごすだけで心の疲れを軽減させることができますよ。ぜひ参考にしてみてください。
【ライタープロフィール】
YG
大学では日韓比較文学を専攻し、自身の研究分野に関する論文収集に没頭している。言語学にも関心があり、文法を中心に日々勉強中。これまでに実践報告型の記事を多数執筆。効果的で再現性の高い勉強法や読書術を伝えるべく、自らノート術や多読の実践を深めている。
心を疲れさせる “考え方のクセ” 1:物事を極端にとらえてしまう
ささいな失敗を引きずってしまい、気持ちを切り替えられなかったことはありませんか? 小さな失敗で挫折を感じる人は、「成功か失敗か」「いいか悪いか」と物事を極端にとらえてしまう傾向があるかもしれません。
たとえば、以下のようなシーンを想像してください。
健康診断について、全社員へメールで連絡した。しかし、添付する事前アンケートのURLを間違えたため、受け取った社員は事前アンケートを開けなかった。
社内への連絡ですし、指摘を受けてすぐに対応すれば事態は解決しそうなものですよね。しかし、「完璧でないとダメ」と考えてしまう人の場合、「担当の業務をきちんとこなせなかった。自分の失敗が社員全員に知られてしまった」と、ミスの内容以上に無意識で自分を責めてしまうのです。
そんな「ほぼ無意識的に頭に浮かぶ『考え』」には「考えの癖が最も出やすい」と話すのは、公認心理師の石上友梨氏。先述したような物事を極端にとらえる考え方のクセを改善するには「認知再構成法」が有効だと語ります。そのようなとらえ方をしてしまう状況やその影響を紙に書いて分析することで「考え方の幅」を広げ、「思考を柔軟にする」方法です。(カギカッコ引用元:ヨガジャーナルオンライン|白黒思考を改善する「認知行動療法」とは|公認心理師が解説)
石上氏によれば、紙に書いて頭の外で分析すると「脳の負荷が軽減するだけでなく、客観的になれる効果がある」そう。(カギカッコ引用元:同上)
では、さっそく先ほどの例で認知再構成法を実践してみましょう。
認知再構成法1. どのような状況だったのかを詳細に書き出す
リアルタイムで自分の考え方のクセに気づけることが最もですが、「慣れないうちは後から日記のように振り返」るのもいいそう。(カギカッコ内引用元:同上)いつ、どのような状況で両極端な考え方をしてしまったのか、詳細に思い出して書き出してみましょう。
〇月△日、社員全員へ健康診断についてメールで連絡したが、添付した事前アンケートのURLを間違えてしまった。
認知再構成法2. 3つのカテゴリーに分けて整理する
それぞれのカテゴリーに分け、以下の内容を書き込みます。
考え(自動思考):その状況でどんな考えが浮かんだのか
気持ち:その時どんな気持ちになったのか。分かりやすく%をつけます。
行動:その時どんな行動を取ったのか。
(引用元:同上)
考え(自動思考):自分はダメな人間だ
気持ち:落ち込み 80%、後悔 20%
行動:すぐに訂正したが、落ち込んで、そのあと1時間は仕事に集中できなかった
認知再構成法3. 両極端な思考にアプローチする
2で書いた内容から自分の “考え方のクセ” を確認し、「別の考え方ができないか検討」します。(引用元:同上)
以下の4つの項目を書き出してみましょう。
- 両極端な思考の根拠を探す
- 反証(自分の思考と矛盾する事実)を探す
- 同じ状況で友人や家族が悩んでいたらどう声をかけるか考えてみる
- バランスのとれた考えを作る
(参考元:同上)
先ほどの例であれば、次のようなアプローチが可能です。
このように、認知再構成法は仕事だけでなく、家族や友人との関係に悩んだときにも使えます。もし物事を極端にとらえてしまう傾向があると感じたら、この方法をぜひ試してみてください。
心を疲れさせる “考え方のクセ” 2:「未来の感情」を決めてしまう
自分自身を明るく鼓舞するため、通勤中に「今日は落ち込まずに笑顔で過ごそう」と考えている人はいませんか? じつは、こうした “未来の感情” を決めてしまうと、心に大きな負担になるのです。一見、とても前向きな目標に見えますが、なぜ未来の感情を決めることがストレスにつながるのでしょうか。
行政や官公庁を中心にメンタルヘルス実務に参画している心理カウンセラーの片田智也氏によれば、感情は「起きた物事に対する反応」であり、こうした反応を「意志で止める」のは容易ではないそう。(カギカッコ内引用元:マネー現代|「心が疲れやすい人」がしている勘違い…大事なのは「感情」よりも「行動」のコントロール)人前で話す緊張から心拍数が上がるといった、生理的反応と同じようなものなのです。
しかし、冒頭で述べたように落ち込まずに笑顔で過ごすと事前に決めてしまっては、それに反して「落ちこんだ自分に落ちこんだり、イライラした自分にイラ立ったり」と、かえって「ネガティブな感情を増やしてしまう」と片田氏。(引用元:同上)
では、どのように考えれば心穏やかに過ごせるのでしょうか。片田氏は、次のような具体例を挙げています。
まずは「イヤな気分になってはいけない!」などと感情を決めるのはやめてください。「楽しく過ごせたらいいな」、願望レベルに留めるのがポイント。
その上で、イヤな気分が湧いてきたらどうするか、事前に行動を決めておくのです。
たとえば、「10分間、ぼんやりネコの動画を観る」のように、なるべく具体的なものがよいでしょう。
(引用元:同上 ※太字は編集部が施した)
つまり、制御しにくい “感情” ではなく “行動” にフォーカスし、事前に決めるのですね。怒られると気持ちが沈み、人前で発表すると緊張するものです。こうした自然に湧き上がる感情を無理に抑え込もうとせず、自分が落ち着く行動を取り入れてみましょう。
好きなアーティストやキャラクターグッズ、ペットの写真などを職場の机に置いておき、少しのあいだ眺めるといった簡単なことで大丈夫です。自分を責めすぎることなく、心の疲れも最小限に抑えられますよ。
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考え方のクセを意識せずに過ごしていると、自分を苦しめてしまうかもしれません。心が疲れていると感じたら、この記事を参考にしてみてくださいね。
ヨガジャーナルオンライン|白黒思考を改善する「認知行動療法」とは|公認心理師が解説
マネー現代|「心が疲れやすい人」がしている勘違い…大事なのは「感情」よりも「行動」のコントロール