「中間管理職になったけれど、上から要求されたことを下に伝えるのって難しい」
「チームメンバーがなかなか指示に従ってくれない」
中間管理職は、上役からのミッションを自身のチームを率いて遂行する役割。とはいうものの、上司と部下の間で板挟みになり、毎日頭を悩ませている……という方も多いと思います。
この難しいコミュニケーションをとっていくには、どんなことに気をつけるべきなのでしょうか。本記事では、具体例を交えながら、ふたつのコツを紹介します。
【ライタープロフィール】
柴田香織
大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。
基本1:上から指示された仕事の意義・背景を部下に伝える
たとえば、こんな場面があったとします。
進行中のプロジェクトに関して、上司から締め切りを早めるように言われた。作業量は変わらないので、忙しくなることは目に見えている。部下たちはきっと不満をもつだろう。ワークライフバランスを考える必要もある……。どう伝えたらいいだろうか?
上から言われたまま、「締め切りが前倒しになったから、そっちを優先して」と伝えていては、部下は納得せず、不満がたまるでしょう。
部下からの反発を防ぐには、以下の2点を押さえて話すのがポイントです。
- 締め切りが前倒しになった背景
- なぜそのタスクをその人に振るのか
ALL DIFFERENT株式会社(旧トーマツ イノベーション株式会社)で、人材・組織開発コンサルティング本部副本部長を務める田中敏志氏は、以下のように述べています。
部下をうまく動かしている上司は、部下に仕事を任せる際にきちんと目標咀嚼(そしゃく)を行っているようなのです。「目標咀嚼」は聞きなれない表現ですが、わかりやすく言い換えると「『なぜ、その仕事を行わなければならないか』をわかりやすく説明する」という行動です。
(引用元:東洋経済オンライン|あなたの部下が指示どおり仕事をしない理由)
上述した「締め切りが前倒しになった背景を説明する」「なぜそのタスクをその人に振るのか、理由を説明する」という行動は、まさに目標咀嚼にあたります。
なぜその仕事を行なう必要があるのかを共有することで、部下も大局的に仕事を把握でき、自然と動けるようになるのです。
では、この目標咀嚼を含め、どのように部下と話せばいいのかを見ていきましょう。
同氏は、会話に含めるべき要素を、以下の4ステップに分けて解説しています。
Step.1:意義づけ(仕事の意義を伝える)
Step.2:つまずきワクチン(気をつけるべきポイントを伝える)
Step.3:再意義づけ(やりがいがある仕事だと伝える)
Step.4:自己決定(これらを伝えたうえで、自己決定感を演出する)
(引用元:東洋経済オンライン|指示の仕方を変えれば部下はみるみる変わる(丸カッコ内は筆者が補った))
この4ステップに当てはめて、先ほどの例を見ていきます。
まずは、「Step.1:意義づけ」です。ここで前述した目標咀嚼(「なぜ、その仕事を行なわなければならないか」の説明)をします。
以下のように、仕事の背景を丁寧に説明しましょう。
「部長が交渉してくれたけれど、先方の都合でどうしても締め切りを一週間前倒しにしなくてはならなくなったんだ。それで、こちらの作業を優先して進めるから、○○さんにはこの作業を×日までに完成させてほしい」
そして、なぜその作業をその人に任せるのか、意義を説明します。
「○○さんはこれまでたくさんの仕事を覚えてきたよね。この作業もいままで通りやればできると思っている。今回はさらに成長するチャンスになると思って○○さんに声をかけたんだ」
次は、Step.2「つまずきワクチン」です。業務にあたり、気をつけるべきポイントを伝えます。
「いままでより短い期間での作業になるから、プレッシャーを感じるかもしれない」
Step.3「再意義づけ」です。この仕事は、部下にとってやりがいのある仕事だと伝えます。
「私も必ずフォローするよ。○○さんにとっていい経験になると思うんだ」
Step.4「自己決定」です。以上のことを伝えたうえで、仕事を引き受けるかどうかはあくまで部下自身に決めてもらったという「演出」をします。
「どうかな? 率直な意見を聞かせてくれると嬉しい」
一方的に指示をするのではなく、ステップを踏んで依頼をすることで、部下からの反発が減り、さらに成長も期待できるのです。
基本2:上司に「助け」を求めて巻き込む
中間管理職の方は、依頼されたミッションを達成するために、その進め方を上司と掛け合い、決裁を得る必要がある場面もあります。
例を挙げてみましょう。現場では、マニュアルに沿って業務を進めているが、それは非効率的で無駄が多い。しかし、ほかの現場でも同じマニュアルを使って作業しているため、自分の現場だけやり方を変えるわけにはいかない。部下たちの負担を軽減するためにも、どうにか上司に動いてもらいたい。どうすればいいだろう?
このような場面での対応について、株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長の小室淑恵氏は「『助け』を求めるほうが効果的」であると話します。(カギカッコ内引用元:ダイヤモンド・オンライン|現場に無理をさせない「働き方改革」を実現するマネジャーの“大事な仕事”とは?)
「現場では対応しきれないから、○○を変えてほしい」など、要望だけを上司に話すと、「一時的なトラブル」ととらえられ、しっかりと対応してもらえない可能性があります。
代わりに、「いまいるメンバーだけではいい改善案が出てこないので、相談に乗っていただきたいんです。ミーティングに参加してアドバイスをいただけませんか?」と助けを求めるスタイルで上司を巻き込むほうが、上司も自分事として動いてくれるのです。(参考:同上よりまとめた)
また、助けを求めやすくするには、「日ごろから本部の担当者との関係を構築しておく」ことが大事だと、同氏は語ります。(カギカッコ内引用元:同上)
普段現場にいると、本部の人との関わりが薄くなりがちです。問題があっても「誰に相談すればいいのだろう?」「話したことがないから言いにくいな……」と、相談を躊躇してしまいます。
しかし本部に顔見知りがいれば、雑談ベースで「○○に困っているんだけど、誰に相談すればいいかな?」という会話もしやすくなりますよね。この方法は、現場と本部という関係だけでなく、他部署と連携する際にも役に立ちます。
上司に相談するのはもちろんですが、本部の担当者にも話を通しておくことで、ミーティングなどの場ももちやすくなるでしょう。
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コミュニケーションのとり方を工夫することで、ストレスを緩和することができますよ。この記事でご紹介した方法を、ぜひ参考にしてみてくださいね。
東洋経済オンライン|あなたの部下が指示どおり仕事をしない理由
東洋経済オンライン|指示の仕方を変えれば部下はみるみる変わる
ダイヤモンド・オンライン|現場に無理をさせない「働き方改革」を実現するマネジャーの“大事な仕事”とは?