「転職すべきか」それとも「いまの会社にとどまるべきか」悩んでいませんか?
新卒入社でも転職前提で会社選びをすることが増えているこのご時世。多くの人が、自分らしい働き方やライフステージに合った働き方を希望しています。
今回は、20代~40代のリアルな「転職に関する悩み」と、「転職すべきかどうかの正しい判断」について考えていきましょう。
【ライタープロフィール】
高原朋美(たかはら・ともみ)
株式会社インフィニティ 代表取締役。大学卒業後、インテリジェンス(現パーソルキャリア)入社。転職支援キャリアコンサルタントMgr、人事部採用担当、日本最大級のジョブカフェ受託事業責任者の経験を経てフリーランスとして独立(2024年 株式会社インフィニティ設立)。キャリア支援実績延べ1万人、法人/個人向けに年間200回以上のキャリアセミナー・講演・コンサル事業を手掛ける。 社会人向けキャリアコーチングサービス「CAREER STAGE」の監修・キャリアコーチ向けスーパーバイザー担当。
年齢とともに「転職を迷う原因」は変化する
年齢によって「転職に対する考え方」や「転職に迷う理由」は変化します。なぜなら、仕事選びと人生は密接しているからです。
特にライフイベントの多い20~40代までは、各年代によって「転職に関する悩み」が違います。年代ごとのリアルな悩みを見てみましょう。
20代:理想と現実のギャップに悩む時期
20代は仕事を始めたばかりなので、日々新しい経験を積みながら「自己成長」や「挑戦」を求める時期です。一般的に、理想と現実のギャップに悩みやすい傾向があります。
- 描いていた理想と現実にギャップがある。やりたいことができていない。会社、上司、仕事に対する不満が多い。仕事が辛い。(25歳)
- なんとなく就職してしまったからか、仕事が楽しいと思えない。自分のやりたいことを一から考えたい。(24歳)
- できないことが多い。自分にできる仕事、または向いている仕事に転職したい。(22歳)
- 将来に漠然とした不安がある。悩んではいるけれど、なにから解決すればいいのかわからない。現状が合っているのか間違っているのか判断がつかない。将来のビジョンもない。とりあえず転職を考えている。(27歳)
- 周囲の意見でキャリアの良し悪しを判断してしまう。隣の芝生が青く見える。(27歳)
30代:自分らしい働き方を追求する時期
30代は仕事に慣れ、部下や後輩も増えて、仕事をひとりで回せるだけのスキルや経験を習得します。一般的にはキャリアアップや「自分らしいライフワークバランス」を追求する傾向があり、多い悩みは、たとえば以下のようなものがあります。
- キャリアの停滞感。仕事がマンネリ化しているように感じ、昔ほどの成長実感や新しい学びを得られない。(31歳)
- 自分の市場価値が気になる。「市場価値」という単語に振り回される。専門スキルを高めてキャリアアップをしたい。(38歳)
- このままずっと安定した収入が得られるのか、とても不安……。家族と過ごす時間が足りない気がする。生活の安定を求めたい。(36歳)
- 育児による仕事の制約に悩んでいる。チームに迷惑をかけているような気持ちがあり、肩身が狭い。(34歳)
- 転職するなら「いまが最後のチャンスかもしれない」と焦る。(35歳)
40代:キャリアチェンジが難しく感じる時期
40代は責任あるポジションを任されるなどし、これまでの経験やスキルを発展させる時期です。プライベートでは経済的な責任も大きくなり、自分の希望だけで転職を考えにくくなります。新しいチャレンジよりもリスクの少ないキャリアプランを重視する人が多い傾向にある一方で、異業界転職や地方移住など思い切った方向転換を考える人もいます。
- 教育費やマイホーム購入などの家計支出が増えた。経済的な安定や収入アップに悩む。(40歳)
- 育児や介護などの時間的制約に悩んでいる。(44歳)
- 挑戦したい夢があるけれど、社会的な立場や家庭の事情などを鑑みると、キャリアチェンジは難しい……(48歳)
- 管理職になり、社内での立ち位置やキャリアの方向性もおおよそ定まってきたため、転職を容易に考えられなくなった。(42歳)
- キャリアチェンジやリスキリングには、若い世代との競争にハンデを感じる。未経験転職は若手有利なことも多いので。(45歳)
このように、各年代ごとに抱える悩みは大きく異なります。ですから、20~40代は年齢に応じた適切なキャリアプランを立てることが重要になってくるのです。
次項では、キャリアプランを考えたうえで、「転職すべき人」と「いまの会社にとどまるべき人」の判断基準について、それぞれ見ていきましょう。
「転職すべき?」「いまの会社にとどまるべき?」の判断
「転職すべきか」「いまの会社にとどまるべきか」を見極めるには、以下の特徴に当てはまるかどうかで判断してみましょう。
【転職を検討すべき人】の特徴
- 人間関係や仕事のストレスが原因で、健康やメンタルを害している
- 育児や介護で時短勤務を続けたいが制度がない
- 家族の都合で引っ越しをしたため、テレワークができない環境下では通勤が難しい
- やりたいことや得たいものが明確だが、現職では実現が難しい
- 改善努力をしても組織が変わらず、価値観やビジョンの違いを長く感じている
- 社内異動やキャリア相談の機会がなく、現職のキャリアに限界を感じている
- 長期間に渡る残業などの就業環境が悪化している
- 新しい経験を獲得し、ステップアップするために、いったんの年収ダウンもいとわない覚悟がある
ちなみに「転職活動」は「転職」ではありません。もしあなたが上記の条件に当てはまっているならば、まず行動をしてみましょう。
転職活動を通して気づくことはたくさんあります。冷やかし目的は好ましくありませんが、外の世界といまの状況を比較するうえでも、転職活動をしてみて、転職するかどうかを最終的に考えてもいいでしょう。
【いまの会社にとどまったほうがよい人】の特徴
- 一時的な感情で転職を考えている
- 現職で働き方やキャリアについての交渉、提案をまだしていない
- 転職目的が曖昧
- 就職、転職したばかり
- 「高年収」など、ひとつの条件だけで判断している
- 周囲の人が転職や起業をしたことに影響を受け、「とりあえず自分も転職を」と考えている
- ライフイベントや家庭の事情など、複数の変化が重なる
- 忙しすぎて転職活動に時間が割けない
- 年収や勤務地など、大きな犠牲があってもかまわないと思っている
- 家族などまわりの人が転職に反対していて、話し合いが必要と思われる
上記に当てはまる項目があれば、いまは「転職しないほうがいい」と言えるでしょう。少ない情報しか得られていないのに転職をする、「転職しよう!」と決めてから実際の転職までの期間が短いなど、一過性の興奮状態で決断しないことをおすすめします。
軽い気持ちで転職活動をしても内定は出ませんし、たとえ内定が出たとしても、短期間で同じような転職を繰り返しかねません。また、現職の在籍期間が1年未満の場合、次の転職活動で「簡単に辞める人」「問題のある人」という印象を与える可能性があるので注意が必要です。
まずは「自己分析」、そして “次の行動” へ
「転職したほうがいい人」も「転職しないほうがいい人」も、まずは「自己分析」から始めます。キャリアビジョンなどを明確にしたうえで、行動を開始しましょう。
- 【Will】「やりたいこと」「キャリアビジョン(なりたい・ありたい姿)」「欲しい条件」
- 【Can】「これまでやってきたこと」「できる・できそうなこと」「得意なこと」「知っていること」「向いていること」
- 【Must】「生活上の制約条件(金銭的・家族・身体的・信条的など)」「やりたい仕事に求められる人材要件」
【転職を検討すべき人】の次の行動
- 「転職をしてなにを実現したいのか」「どんな業界、会社、職種に転職したいのか」を言語化します。現職では実現不可能なのかも再度確認しましょう。
- 転職エージェントや転職スカウトに登録して、1について求人情報などを比較しましょう。業界のイベントやセミナーに参加して、実態について詳しく質問するのも◎です。
- 2について、キャリアコーチなどのプロに相談、もしくは、信頼のおける身近な人に意見を聞きましょう。
- 転職先で必要とされるスキルや資格の勉強をしましょう。
- 応募先を選定し履歴書を準備します。可能なかぎり複数企業に応募しましょう。プロのキャリアコンサルタントや転職エージェントに応募書類を添削してもらうといいですよ。
【いまの会社にとどまったほうがよい人】の行動
- 現職でのキャリアパスを再度整理し、自身の希望と照らし合わせます。ジョブディスクリプション(職種、等級ごとにどんな人材が求められるか)を確認したり、異動制度、評価制度、昇級ルールなどの人事制度を調べたりして、現職でのパフォーマンスを向上させるキャリアプランを考えます。
- 上司や人事に相談し、希望のキャリアについてアドバイスを求めましょう。相談の際は、喧嘩腰になったり、転職を匂わせたりしないよう気をつけてください。
- スキル修得のため研修やセミナーに参加しましょう。自分のスキルを活かせる新しい業務やプロジェクトにも積極的に参加することも大切です。
- 健康的な働き方を維持するために、ワークライフバランスを見直しましょう。
- 冷静に判断したうえで「転職が必要」だと思ったら、転職活動をスタートさせます。キャリアコーチや転職エージェントの無料体験などから始めましょう。身近な人に相談してみてもいいかもしれません。
転職するにしても、いまの会社にとどまるにしても、なんらかの行動を起こすことが大切です。前述したとおり「転職活動」は「転職」ではありません。ですから、いろいろな可能性を探ってみてください。活動することで見えてくるものも多々ありますよ。
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一般的に「期末(3月・9月)」「ボーナス支給後(7月・12月)」のタイミングで辞める人が増えるため、求人が増えるとされています。しかし「求人は水物」です。いつの時期が有利だとは一概には言えません。企業との出会いは「運命的なご縁」なのです。
「転職?」「とどまる?」は多くの人が遭遇するモヤモヤポイント。人に相談することで、長年のモヤモヤが一気に晴れることがあります。まずは、ひとりで悩まず誰かに相談してみましょう。