
「仕事で幸せを感じる? そんなの無理だよ」
「仕事は我慢するもの。楽しみは私生活だけでいい」
こんな風に考えていませんか?
多くの人が仕事と幸福を別物と捉えがちです。しかし、実は仕事での幸福感が、あなたのパフォーマンスと密接に関わっているという研究結果があります。
本記事では、仕事での幸福度を高める具体的な方法と、それが仕事の成果にどう影響するかをご紹介します。
「フロー」と呼ばれる集中状態や「自己決定」の重要性など、最新の心理学研究に基づいたテクニックをお伝えします。これらを実践することで、仕事がより充実し、成果も向上する可能性があります。
働く喜びを見出し、同時に仕事の質も高める—そんな一石二鳥の方法を、一緒に探っていきましょう。
【ライタープロフィール】
髙橋瞳
大学では機械工学を専攻。現在は特許関係の難関資格取得のために勉強中。タスク管理術を追求して勉強にあてられる時間を生み出し、毎日3時間以上勉強に取り組む。資格取得に必要な長い学習時間を確保するべく、積極的に仕事・勉強の効率化に努めている。
「働く幸せ」をもっと大切にしたほうがいいワケ
仕事はつらいのが当然だと思って諦めていませんか?
じつは「不幸せ」だと感じる気持ちが強くなると、仕事の質にも影響してしまう可能性があります。つらさを放置していると、業務の成績まで悪化してしまうかも。たとえば、ネガティブな気持ちが態度に表れれば、営業先での印象も悪くなってしまいます。
パーソル総合研究所では、「はたらく幸せ実感」および「不幸せ実感」のスコアと、「個人のパフォーマンス」「創造性」「仕事への活力」の関係性を各国ごとに調査しました。
この調査によると、日本は「はたらく幸せ実感」が世界最下位だったそう。しかし、不幸なのかと問えばそうでもないようです。問題となるのは、不幸せを実感してしまったときのこと。

幸せ実感とアウトカムの関係は他国と同傾向で正の相関が確認されました。しかし、注目すべきは不幸せ実感です。日本では、不幸せ実感が高まる(悪化する)とパフォーマンスも創造性も仕事への活力もすべてが大きく減退する傾向が確認されたのです。
(引用元:プレジデントオンライン|日本人の「仕事で得られる幸福感」は世界最悪…若手社員の幸福度を下げる文化に管理職は満足という絶望)
つまり、幸福感と、アウトカム(仕事の成果)は関係しているというのです。
日本では他国と比べてはたらく幸せ実感のスコアが低いぶん、「不幸せ実感が高まってしまうと堰を切ったようにパフォーマンスが崩れてしまう」といいます。(カギカッコ内引用元: 同上)
「幸福とは言えないものの不幸ではない」と感じているうちは問題がないのですが、「不幸だ」と実感するようになると、明確にパフォーマンスが落ちてしまうのですね。
「毎日仕事に行くのがつらい」「いつも辞めるタイミングを考えている」という人は要注意。幸福を感じていないというだけではなく、仕事の質も落ちてしまうかもしれません。
1日のうち多くの時間を仕事に費やすのですから、せっかくなら幸福に、よい成績を目指したいですよね。
ではどうすれば幸福度を高められるのか、次で解説していきます。
仕事から得られる幸福感を高める方法
筆者が調べたところ、仕事から得られる幸福感を高めるためには、「フロー」という集中状態に入ることが効果的だとわかりました。集中状態と幸福感にはつながりがあり、集中状態に入ると幸福感がもたらされるようなのです。
集中状態「フロー」とは、ポジティブ心理学の権威であるミハイ・チクセントミハイ氏により提唱された「何かに没頭し、時間を忘れるような状態」をいいます。
同氏の調査によると、「収入が2倍、3倍」になることは幸福度には比例せず、「フロー」の状態となり何かに没頭することが喜びにつながるというのです。(TED|ミハイ・チクセントミハイ: フローについて より筆者が日本語でまとめた。)
つまり、仕事の幸福度を上げる点においても、フローに入ることが有効だと考えられます。たしかに、何かに没頭しているときにはほかのことを考えないくらいに集中しますし、そのあとの充実感も大きいですよね。よって、給与を上げるために転職を考えるよりも、フローに入れるよう、仕事に没頭できる状態をつくるほうが重要だというわけです。

では、この集中した状態に入るためにはどうしたらいいのでしょうか。
同氏は集中した状態に入るために必要な条件について、プレゼンテーションで示した資料内で次のように述べています。
Knowing that the activity is doable- that our skills are adequate to the task.
Knowing what needs to be done, and how well we are doing.
(実行可能な活動であること、スキルがタスクに見合っていること。
求められているものがはっきりしていて、うまく進められているかわかること。)
(引用元:TED|同上の中で同氏が提示した資料より 和訳は筆者が補った)
少し漠然としていますね。これを踏まえて、仕事に取り入れるための方法を次のように考えてみました。
- 仕事のタスクを達成できそうかどうかそれぞれ%で示す
- タスクごとに目的を書き出す
- 問題なく業務が進められているか定期的にフィードバックをもらう
それぞれ具体的にご説明しましょう。
1. 仕事のタスクを達成できそうかどうかそれぞれ%で示す
タスクのうち、自分にどの程度達成できそうか難易度について%でまとめていきます。
例:
取引先へのメール返信 100%
企画会議の資料作成 80%
会議でのプレゼンテーション 90%
2. タスクごとに目的を書き出す
依頼された仕事が「どういった目的で必要なのか?」「何を期待されているのか?」を明確にするため実施します。
目的のわからない仕事を求められると、方向性に迷ってしまい、集中して取り組むことができません。目的の曖昧な仕事は、用途を確認してから実施しましょう。
例:
取引先へのメール返信>提示した見積もりに対して、お礼のメールが届いていたので、返事をする>関係構築のため
企画会議の資料作成>若年層の顧客にアピールするための広告戦略案を練るため
会議でのプレゼンテーション>同上
3. 問題なく業務が進められているか定期的にフィードバックをもらう
取り組んでいる内容に誤りがないか、フィードバックをもらうようにしましょう。先輩や上司に、自分がどの程度達成できているか、改善点などがあるか確認をすることで、安心して仕事に取り組むことができます。
例:
メールの返信がタイミングよくできていた
作成した資料はわかりやすくまとめられている
会議でのプレゼンテーションもよくできていた
これらの方法を、筆者も1か月間実践してみました。1日ごとに達成の可能性と目的を書き出し、1週間ごとにフィードバックをもらいました。ある1日の結果は以下のとおりです。

画像は筆者にて作成
達成の可能性と目的がわかれば没頭できる
フローに入るための条件を実施してみたところ、漠然と仕事をするよりは、これまでより集中して仕事に取り組めたように感じます。「フロー」を意識し始めた1か月では、没頭といえるほどの集中には至らなかったのですが、これを継続することで、フローに入れる可能性は高いと思いました。
改善点もあります。「1. 達成可能な目標であること」の明確化については、その工程まで書き出したほうがフローに入りやすいと感じました。たとえば「月間の売り上げ目標達成」のように達成までに時間がかかるものは、工程まで書き出す必要があります。「売り上げを達成できたかどうか」のみの指標だと、もともと会社から設定されている目標が高い場合、達成の可能性が低いことを実感してしまい逆にやる気が下がる可能性があるからです。
そのため、「販売先訪問」や「新規取引先開拓のための電話」といった工程にも達成可能度を設定することで、ひとつひとつの目標は達成がしやすくなり、没頭できる可能性が高くなると感じました。
今回は十分なフロー状態を味わえたとはいえないかもしれませんが、これまでより集中して仕事に取り組むことができたのはたしか。今後いっそう集中していくために、継続していきたいと思います。

また、仕事の目的や達成度を意識するようになったことから、これまで「指示されたから実施する」という受け身の気持ちだった仕事でも「自分の意志で実施している」というポジティブな気持ちで取り組めるようになりました。
じつは、「幸福感」に「自己決定が強い影響を与えている」とする研究結果もあるのです。(カギカッコ内引用元:RIETI|幸福感と自己決定―日本における実証研究)
筆者も自分の意志で仕事に取り組む経験をし、まさにこのことを実感できました。「フロー」以外にも「自己決定」を意識することで、幸福度の向上を期待できそうですね。
***
仕事の中での幸福度の上げ方について解説しました。仕事に幸せを感じる機会はあまりなかった人でも、工夫次第では幸福度を上げることができるのですね。ぜひ参考にしてみてください。
プレジデントオンライン|日本人の「仕事で得られる幸福感」は世界最悪…若手社員の幸福度を下げる文化に管理職は満足という絶望
一般社団法人 日本ポジティブ心理学協会 国際ポジティブ心理学会(IPPA)日本支部|ポジティブ心理学とは
TED|ミハイ・チクセントミハイ: フローについて
RIETI|幸福感と自己決定―日本における実証研究