目は脳ほどに物を言う!? 「ひらめき」と「瞳孔」のおもしろいカンケイ。

視覚を正常に保つには脳の健康を守ることが重要であり、脳の負担を減らすには目の健康を守ることが重要だといいます。そんななか、とても興味深い研究が発表されました。わたしたちが“ひらめいた”とき、わたしたち自身が意識する以前に、瞳はその状況を示しているそうです。その研究内容と、活かし方を探ります。

ひらめくとき、事前に脳は変化を始めている

ドイツの心理学者カール・ビューラー氏が提唱した心理学上の概念に、「アハ!体験」というものがあります。よく、“ひらめいた瞬間”を表す際に使う言葉ですよね。

これらの言葉や表現からもわかるように、わたしたちは“ひらめき”が瞬間に起こるものだと感じています。ところが、実はこのとき脳はすでに変化しているのだとか。つまり、「ひらめいた!」と意識する以前から、脳はとっくに“ひらめき”の脳活動を始めているのです。

しかし、脳の変化が始まっているかどうかを、わたしたちは知ることができません。「よーし、これから“ひらめく”ぞ!」と、意識的に予測することはできないということです。

でも、瞳を見つめることによって、誰かが“ひらめく”予測は可能かもしれません。

ひらめきに先立って瞳孔は広がっている

通常、わたしたちの瞳孔(黒目の部分)は、目に入る光を調節するために、あるいは精神状態を反映して、広がったり(散瞳)、縮まったり(縮瞳)します。

豊橋技術科学大学 情報・知能工学系の研究チームは、前項に記した「ひらめくときの脳活動の事前変化」を深化させ、ひらめきを伴う脳活動に付随し、瞳孔の変化が生じるのではないかといった仮説のもとで、人が“ひらめいた”ときの瞳孔を計測したそう。

すると、仮説どおり瞳孔の広がりは、その後の“ひらめき”を予測したのだとか。つまり、「ひらめいた!」と意識する前に、瞳孔が大きく広がったということです。

わたしたちの脳は、ほとんどが無意識に働いているといいます。そのため、実際に意識できることはほんの一部なのだとか。面白いことに、この研究の実験参加者が「よし、もう少しでひらめきそうだ!」という自信満々の感覚に、瞳孔はまったく反応しなかったそう。つまり、脳がひらめきを伴う活動を始めない限り、瞳孔も広がらないということ。

逆にいうと、「もう少しで、いいアイデアが出そうだ」という感覚は、瞳孔が開いていなければ勘違いというわけです。

※この研究成果はイギリスの科学誌 Scientific Reportsに2018年5月2日付けで掲載されました。

ひらめき予測はどう活用する?

では、この研究から得られた知識を、わたしたちはどう活かせるでしょう。

それは、何かの解決方法をチームで模索していたり、アイデアを出し合ったりする際に、対人において活用できるかもしれません。あなたがチームリーダーなら、メンバーの目をよく観察してみるのです。たとえば、内向的でなかなか発言しないメンバーの瞳孔が開いていたら、「もしかして、何かいいアイデアがわいているんじゃない?」と、意識しないよう瞳孔云々には触れず、受容的な態度で発言を促してみるわけです。思いがけないアイデアが飛び出すかもしれません。

営業や商談などにおいても有用です。

たとえば、もしもビジネスをつなげるにあたって生じた“懸念材料”について話しているとき、相手の瞳孔が開いてきたら、無意識に何かひらめいたのかもしれません。その際には、すかさず「ぜひ、ご意見お聞かせください」と、相手のアイデアを引き出してみてください。

でも、だからといって、相手の目をグイグイ覗き込むことは不自然ですよね。瞳孔が開いている、開いていないは、どうやって判断したらよいでしょう?

瞳孔が開いているか、確認する方法

よく漫画やアニメなどで、恋をしている人物を描く際に目をキラキラさせますが、実はこれ、現実にも起こることです。以前より、興味がある対象を見ると瞳孔が開くという研究報告があり、瞳孔が大きく広がると光の反射率が高くなるため、目がキラキラと輝いているように見えるからです。

したがって、先述のとおり相手の感情を読みとる際にも有効ですが、“ひらめき”予測にも有効だということ。相手の目が「なんだかキラキラしてきたぞ」と感じたら、その人が意識していなくても、頭の中ではすでに“ひらめき”が始まっているかもしれないのです。

それをうまく引き出して、お互いが向上できるよう工夫してみてくださいね!

*** なお、気分が楽しいときや、嬉しいとき、リラックスしているときにも瞳孔は散大するのだそう。逆に不快な感情に駆られているとき、瞳孔は収縮するそうです。コミュニケーションの場で、ぜひ役立ててください。

(参考) 鈴木雄太(2018),「ひらめきを科学する-ひらめきに先立って生じる瞳孔散瞳-」,国立大学法人豊橋技術科学大学Press Release. 中森志穂,水谷奈那美,山中敏正(2011),「顔画像に対する好みは、瞳孔径にどう反映されるのか」,日本感性工学会論文誌 ,Vol.10,No.3,pp.321-326. Scientific Reports|Association between pupil dilation and implicit processing prior to object recognition via insight 医教コミュニティ つぼみクラブ|第37回 なぜ子どもの目はキラキラしているのか? 第一薬品工業株式会社|健康情報 Wikipedia|アハ体験 (心理学)

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