物事が循環しているのは、必ず“誰かのおかげ”があるからですよね。しかし、ときにその“誰か”は、こうしてくれたら「うまくいく・助かる・安心できる」のに、どうしても望みどおりに動いてくれないことがあります。

とはいえ、他人の心は操作することができないし、強要は倫理に反します。どちらにしろ、後者は長続きしないでしょう。

そこで今回は、心理効果の応用と、自己啓発の父や専門家からのアドバイスをもとに、仕事をうまく回すうえで「人に動いてもらいたい」ときのためのテクニックを4つ紹介します。

1.自分は重要だと思ってもらう

不朽の名著『人を動かす』の著者、D・カーネギーはこういいました。

人を動かすには、相手の欲しているものを与えるのが、唯一の方法である。

(引用元:【創元社】 特集|D・カーネギー|カーネギーとは・・・

コミュニケーション総合研究所代表理事の松橋良紀氏いわく、『人を動かす』には珠玉のメッセージがぎっしり詰まっているとのこと。そして、D・カーネギーの“人を動かす三原則”のひとつ「重要感を持たせる」を挙げ、人は“重要感”が満たされると頑張れると伝えています。

たとえば取引先との会議があり、「誰かもうひとり助けがいるから出席してほしい」と、誰でもいいかのように頼まれるより、「〇〇さんの助けが、どうしても必要だから」と頼まれたほうが、意欲が高まるのは当然ですよね。

それが「重要感を持たせる」ということ。

動いてほしい相手に何かを伝える際には、「こんな風にいわれたら、自分も頑張るだろう」というアイデアを、ぜひ取り入れてみてください。

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2.心理的リアクタンスを応用する

“止めなさい”といわれると、それをやりたくなってしまうこと、あるいは、“やりなさい”といわれると、それを止めたくなってしまうことを「心理的リアクタンス」といいます。いわゆる、「自由が侵害されたときに、その回復を目指す動機づけ」のことです。

したがって、「何かアイデアを出してほしい」と頼んでも、なかなか出してくれない相手に対し、「〇〇さん(他の人)に知恵を借りてみるので、アイデアを出してもらう件は忘れていいよ」と告げると、なぜか躍起になって出してくる可能性があります。

どうしても動いてもらえないときは「心理的リアクタンス」を思いだし、逆に働く反発力を応用してみてください。

3.タイプ別の反発を考慮する

昭和女子大学・人間社会学部心理学科の今城周造教授が2018年2月に発表した研究では、人が高圧的な態度で説得された場合、抵抗する理由がタイプによって違うとパス分析によって示されました。(※パス分析:仮説がどのくらい現実にあてはまるか、AとBの関連はどうなっているかなどを明らかにするために、因果関係や相関関係を矢印で表したパス図を用いて分析)

ちなみに、個人主義は「集団よりも個を尊重」し、集団主義は「個人よりも集団を尊重」します。前者は主張がハッキリしていて、後者は周囲との調和を常に考えているイメージです。

また、他者との平等性を重視するのが「水平型」であり、不平等性を認めるのが「垂直型」です。前者はあらゆる場面で権利を主張し、後者は比較的、多くの状況を受け入れるといったイメージでしょう。それらを踏まえ、研究で示された内容は以下のとおり。

高圧的な説得に対し――

・水平型「個人主義者」は「自由」を脅かされると考えて反発
・垂直型「個人主義者」は反発なし

・水平型「集団主義者」は「集団の調和」を乱されると考え反発
・垂直型「集団主義者」は反発なし

どちらも垂直型に反発がないのは、先述のとおり承諾傾向があるからなのだそう。また、“自由侵害を理由に反発するのが心理的リアクタンス”なので、水平型「集団主義者」の場合は“リアクタンスではない心理機制”で反発しているとのこと。

いずれにせよ、他者との平等性を重んじる水平型「個人主義者」と水平型「集団主義者」は、強い説得にはそれぞれの理由で反発します。しかし、“丁寧かつ反発の理由がクリアされたかたち”であれば、それぞれを説得することも可能なわけです。たとえば、仕事のシフトを変えてほしいとします。

水平型「個人主義者」には、「どの曜日でもいいので、1日だけシフトを終日入れてほしい」といった具合に、比較的自由な選択であることを前面に出して説得します。

水平型「集団主義者」には、「全体的なバランスを整えるために、1日だけシフトを終日入れてほしい」と伝え、集団の調和が前提であることを示します。

4.「名前」と「ありがとう」

D・カーネギーの「重要感を持たせる」という人を動かす原則にのっとり、コミュニケーション総合研究所代表理事の松橋氏は即効性のあるテクニックをアドバイスしています。それは、相手の名前を呼ぶこと。「あの、すみません、ちょっとこれお願いします」といわれるより、「〇〇さん、これ、お願いします」といわれたほうが、重要感が大きいのは当然ですよね。

また、「ありがとう」と感謝の言葉を伝えることも大切だと述べています。感謝の気持ちが伝われば、重要感も伝わるというもの。次回に良い影響を及ぼしてくれるでしょう。

それに、感謝の言葉は事後のみならず、事前にも大いに活用できます。たとえば「いつも、ありがとう。また、情報を集めてもらえると助かる」といった具合です。

フロイト、ユングと並び「心理学の三大巨頭」と称されているアルフレッド・アドラーの思想を伝えた岸見一郎氏、古賀史健氏の共著『嫌われる勇気』にも、「ありがとう」「助かったよ」といった言葉が、横の関係にもとづく勇気づけのアプローチだと書かれています。

勇気づけのアプローチは、「わたしには価値がある」「わたしは誰かの役に立っている」という感覚につながるそう。それは、「重要感」に通じる感覚だといえるでしょう。

“すみません”という言葉で多くを網羅してしまおうとせず、いつでも相手の「名前」を呼び、そして「ありがとう」と伝えましょう。

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「人に動いてもらいたい」ときのためのテクニック4つを紹介しました。

1.自分は重要だと思ってもらう
2.心理的リアクタンスを応用する
3.タイプ別の反発を考慮する
4.「名前」と「ありがとう」

自分に価値があると感じ意欲的になってもらったり、反発力を応用したり、反発力を吸収したりと、テクニックの作用はさまざまですが、いずれも相手は「自分の意志」で動いてくれるはず。ぜひお試しください。

(参考)
今城周造(2018),「個人主義・集団主義が高圧的説得への抵抗の理由に及ぼす効果:抵抗の動機としてのリアクタンスと調和維持」,昭和女子大学近代文化研究所,学苑・人間社会学部紀要,928号,pp.1-7.
古家聡(2006),「大学生の個人主義と集団主義に関する国際比較」,異文化コミュニケーション学会2006年度年次大会.
岸見一郎著,古賀史健著(2013),『嫌われる勇気』,ダイヤモンド社.
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