「“100%” よりも重要なのは……」行動できない新人営業マンを救った上司の深すぎるひとこと。

「行動できない」「続かない」「自信がない」……。人生や仕事がうまくいかないとき、わたしはそこですべき習慣を3つに集約して考えています

これから紹介するその3つの習慣は、それぞれ別の部分にフォーカスしたものに見えますが、すべては「今・ここ」ということにつながっています。これらの習慣が定着していけば、いまあなたが抱えている問題はどんどん解決していくことでしょう。

構成/岩川悟(slipstream) 写真/玉井美世子

【習慣1】小さなベビーステップではじめる

わたしは社会人になってすぐの時代、情報システムの営業をやっていました。そして、社内でもいちばん厳しいことで有名なN課長の下に配属されたのです。営業をはじめて1カ月も経ったある日、情報システムの小さな提案依頼を顧客からもらいました。そこでN課長から、「古川、提案書を書いてみろ」と指示されたのです。わたしはどうやって提案書をつくればいいのかをN課長に尋ねたのですが、「自分で考えろ!」と厳しく突き放されてしまいました。

1週間後の納期に向け、わたしはなにをどう進めたらいいのか検討もつかず、時間だけが過ぎていきます。そんな状況で、日常の仕事はオフィスにかかってくる電話対応や先輩から言われた大量の雑務を慌ただしくこなしていました。結果的に4営業日経ってもなにも進められず、意をけっして怒鳴られることを覚悟しながら「じつは、なにも進んでいません……」とN課長に報告しました。

そのときにN課長から言われたのは、「おまえは、提案書の表紙もつくれないのか?」というひとことでした

なんで、完璧にできないと思ったら行動しないんだ。はじめから100%できないことくらいわかっている。問題は、自分にできることをなにもしないことだ。せめて提案書の表紙と目次案ぐらいつくれないのか?」と、手厳しく自分の姿勢を指摘されたのです。

たしかにシステムの提案書の完成版をイメージし途方に暮れていたわたしは、今できること、自分にできる小さな一歩を見ていなかったのです

そこで、自席に戻り、表紙と目次案をつくりました。過去の先輩たちがつくってきた提案書を集めたところ、なんと目次構成はほとんど似ているものだと気づいたのです。提案書の構成にはパターンがあり、そのまま踏襲できるものがあること、流用できる資料がたくさんがあることがわかりました。

それらを参考にして提案書をつくってみると、6割くらいの情報が埋まりました。それを見せに上司に報告にいくと、「はじめからこれぐらいやってから持ってこい」と言われたのです。

わたしはこの経験から、「100%の完成状態だけを見ていると、一歩も踏み出せなくなる」「小さく行動すれば、解決策やヒントは見えてくる」という教訓を得たのでした。

【習慣2】今、ここから自分が成長していく未来をイメージする

12年前に独立したてのころ、知り合いからコーチングのコラムを書く仕事をもらいました。執筆料はわずかなものですが、わたしははじめての執筆の依頼に心がウキウキ。机に向かって、必死に書きました。しかし、わたしが書いた記事は自分で見ていてもじつに面白みがなく、平凡な内容になっていたのです。そこで、当時のコーチングの師匠だった人に原稿を見てもらい、「率直なフィードバックをください」と依頼してみました。

そして、次のように言われたのです。「よいところは、わかりやすくコーチングが解説されていること。ただ、教科書的なコーチングの解説にとまっている印象かな」。わたしは思っていたことをズバリと突かれた感覚でした。「そうですよね……面白みがないですよね」と肩を落としながら答えると、それに対して師匠が言ったひとことがいまでも強く心に残っています。

古川さん、でも、ここからはじめるのではダメなんですか?

この言葉にハッとさせられました。わたし自身で面白みがあるとふだん読んでいるコーチング本と比較して、「こんな記事しか書けない……」と肩を落としていたのです。比較対象は、この道10年、20年のベテランコーチや著者が書いた内容ですから、わたしが面白いコラムを書けなくて当然です。

コーチング1年目のわたしが、いきなりその道20年目の人と比較して肩を落としているのだと気づいた瞬間でした。同時に、みんな1年目からスタートして20年目を迎えているという事実を無視していたのです。「ここからはじめるのではダメですか?」という言葉には、未来の成長のビジョンが含まれています。そこから、はじめの一歩を踏み出せばいい。足元をしっかり見て、一歩ずつ進んでいこうというメッセージだったのです。

あれから12年、わたしも20冊の本を出し、毎月5本の連載を書いていますが、あのころよりは少しマシな記事が書けるようになりました。

【習慣3】「自分史上最高」を更新する

わたしの知り合いの、海外に駐在するある日本人の女性ビジネスパーソンは、英語へのコンプレックスがありました。それを克服すべく、毎日2時間も勉強を続けていたということです。しかし、半年続けていくとパッタリとその後続かなくなってしまうそう。

わたしがその続かなくなる理由を聞くと、「現地の人と商談をしていて、何度も聞き返さないと会話が成り立たない状況になると、激しい自己嫌悪感が湧いてくる」「こんなに勉強しても話せない、聞けないのは、わたしには英語のセンスがないからだ」というのです。わたしは、この女性を自己嫌悪から解放するために、自分がなにと比較しているのかを明確にしてもらいました

「誰と比較して話せないと思っているのですか?」と聞くと、「同じ事務所の男性だ」と答えます。その男性スタッフは、駐在20年目の大ベテラン。一方の彼女は、駐在3年目の経験がないスタッフです。この比較は単純に「経験」がちがうのですが、隣でスラスラ男性スタッフが英語を話す姿を見ていると、「わたしはできない……」という思いが強くなり、自信が喪失されやる気がなくなるというと言うのです。

こんなとき、大切なことは比較対象を変えることに尽きます。そこで彼女には、過去の自分と比較してもらいました。わたしは、「駐在1年目のときと比較して英語力はどのように変わりましたか?」と聞きました。リスニング、リーディング、ライティング、スピーキングのすべてで、実力がどれくらい上がっているのかを数値化してもらったのです。すると、英語の勉強の成果は間違いなく出ていたことを彼女は実感できました。

つまり、大切なことは「自分史上最高を更新する」ということ

過去の自分より1ミリでも成長する。そして、「自分史上最高になっているんだ」という実感がモチベーションになり、ものごとを継続する勇気になっていくのです。

*** いろいろと書いてきましたが、他人との比較、理想・完璧との比較をしすぎて前に進めないことは誰でもあります。行動できないとき、続かないとき、誰かと比較して自信がなくなるときは、「今・ここ思考」でものごとを考える習慣を身につけてください。

【今回の習慣化ルール】 「うまくいかないな……」と思ったときのポイントはこれ! ・小さなベビーステップではじめる ・「今ここから」自分が成長していく未来をイメージする ・「自分史上最高」を更新する

連載『人生が変わる「習慣化」』記事一覧はこちら↓

30日で人生を変える「続ける」習慣

古川武士

日本実業出版社(2010)

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