昼食も食べたことだし、午後の仕事も頑張ろう。こう意気込んだはずなのに、どうしても睡魔に襲われてしまう……。よくありますよね。

午後の眠気は仕方がないもの。だからこそ上手な対処法を知り、午後の仕事をもっともっと捗らせませんか? 今回は、いいことづくしの「パワーナップ」を取り上げます。

「午後の眠気」のメカニズム

人間は、体温が下がると眠くなるというメカニズムを持っています。したがって、1日のなかで最も体温が低い “明け方2時~4時” が、眠気が最も強くなる時間帯です。では、次に眠気が強くなるのはいつでしょう? じつはそれが、ちょうど昼食後の “14時~16時” なのです。

巷ではよく、「お昼ごはんの消化のために胃に血液が集まるから、ランチ後は脳の血流が少なくなって眠くなる」などと言われていますが、真相はそうではありません。午後の眠気に関係があるのは、“体温のリズム” や “体内時計”。体温が一時的に下がることによって発生する「ポストランチディップ」と、ランチを食べてお腹が満たされたことによる「オレキシン(※覚醒作用のある物質)分泌の減少」。これらの要因が重なることが、ランチ後に眠気が起こるメカニズムなのです

このような眠気の強い時間帯は、一般に「ナップゾーン(昼寝帯)」と呼ばれています。地中海沿岸や南米などでは「シエスタ」と呼ぶ昼寝の習慣がありますし、アメリカではコーヒーブレイク、イギリスではアフタヌーンティー、日本では「おやつの時間」なんてものもありますよね。古今東西問わず、この時間帯は眠気が強くなるものなのです。

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15~20分の昼寝習慣で仕事効率が上がる!

さて、「シエスタ」といえば、日本でも昼寝を推奨している企業が一部あるようですね。しかし、一般的には習慣として根づいておらず、まだまだ “昼寝=サボり” という考えがマジョリティです。それゆえ、気合いでなんとか必死に乗りきろう、ガムを噛んだりタバコを吸ったりして眠気を追い払おうと、睡魔と奮闘している方も多いと思います。

しかし実際のところ、眠気が強い状態だと思考回路が停止状態になり、頭も働かなくなりますよね。こういった、集中力や発想力などが落ちることと併せて、なんと自分の成果を過小評価する傾向が強まり、達成感まで減退すると言われているのです。さらに、心理的な負担がどんどん大きくなれば、精神疾患などの深刻な問題につながる危険性も。

逆に、座った姿勢のまま15~20分の昼寝をとるだけで、その後の眠気がすっきり除去されたり、気分が改善したり、午前中の脳の疲労回復が促されたりして、その後の作業能力が改善することが報告されています。実際、アメリカでは昼寝のことを「パワーナップ」と呼び、脳と体にパワーを取り戻すビジネススキルとして、エグゼクティブたちに広く浸透しています。また、認知症の発症の危険性が5分の1以下に軽減することや、心臓病死のリスクが37%も低くなるという研究結果まで報告されているのです。

反対に、1時間以上の昼寝をとっている高齢者の認知症罹患リスクは、昼寝をとっていない人の2倍も高くなるという報告もされています。1時間以上の昼寝はかえって身体や心に負担をかけ、疾病リスクを高めてしまうので、昼寝は20~30分程度に収めるように注意してください。最初は周囲の音などが気になって眠れないと思いますが、まずは目を閉じるだけで大丈夫。お昼寝を取り入れる習慣を自分のなかで根づかせてあげましょうね。

また、帰りの電車でついウトウトしてしまう方も少なくないと思いますが、15時以降の仮眠は夜間睡眠の妨げになる可能性があるため、おすすめできません。母親のお腹の中にいた頃の心臓のリズムや振動を脳が記憶しているため、あの一定のリズムが母体に守られているような安心感を与え、眠気が引き起こされるそうですが、そこはぐっとこらえて眠らないほうがベターですよ。

 こまめな昼寝で「睡眠負債」解消を!

昼寝には、心身の健康維持や脳のパフォーマンス向上だけでなく、日頃の睡眠不足の蓄積を解消する効果もあります。

毎日の睡眠不足、これを睡眠専門用語で「睡眠負債」と呼びます。負債が溜まれば溜まるほど、脳や身体に老廃物が溜まり、健康な細胞を蝕む原因に。そこでやりがちなのが “休日にたっぷり眠る” という習慣ですよね。しかし人間は「寝だめ」ができないため、お金のように「溜まってきたからまとめて返済」なんて都合のいいようにはいきません。むしろ身体のリズムが乱れて、かえって負担になってしまうことも。また、先々を考えながら溜める「貯金」のように、眠りを貯める「貯眠」もできません。

睡眠負債は、溜め込んでしまうと、あとで大きなツケとなって返ってきます。睡眠負債をこまめに返済するために、ぜひ毎日のお昼寝習慣を積極的に取り入れてください

オフィスで働いている方は、昼食後、チョコレートをひとかけら口にする、あるいはコーヒーを飲むなど、カフェインを含むものをとり、歯を磨いて自分の席に戻ったら目を瞑る方法が最もおすすめです。

カフェインの覚醒効果メカニズムは科学的にも解明されており、脳内の睡眠中枢に直接働きかけて脳を覚醒させてくれます。カフェインは脳内で、神経を休める作用を持っているアデノシンを感知するアデノシン受容体の働きをブロックし、神経を興奮させるのです。

カフェインは摂取後およそ30分程度で効き始めるので、先ほどおすすめした方法を実践すれば、ちょうどお昼寝が終了する頃に効果を発揮し、さわやかな目覚めを後押ししてくれます。実際に、カフェインの摂取と短時間仮眠を組み合わせることで、目覚めたあとの睡眠慣性(※寝起きによくある、ぼーっとした状態のこと)が低減することが明らかになっています。

反対に、夜にカフェインを摂取することはおすすめできません。夜は、コーヒー、緑茶、煎茶、紅茶、ウーロン茶などは控え、カフェインの含有されていないハーブティーや甜茶、ルイボスティー、白湯、レモン白湯、麦茶などを飲むようにしましょう。

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お昼寝を味方につければ、午後の仕事はもっともっと捗ります。ぜひ明日から試してみてください。

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