皆でワイワイするのが苦手……。 しゃべりが不得意……。 自分はとても、内向的だと思う。
そんなあなたが、実はリーダーに向いていることをご存知ですか? その理由を説明しましょう。
1. 内向的な人は「一歩引くから皆のアイデアを活かせる」
2012年に作家のスーザン・ケイン氏が行ったTEDのスピーチ『内向的な人が秘めている力』の内容によると、ペンシルバニア大学ウォートン校の教授、アダム・グラント氏は自身の研究で、「内向的なリーダーは、外向的なリーダーよりも 、良い結果を生むことが多い」と見出したそうです。
その理由は、外交的なリーダーは何でも自分で仕切ることが多いため、知らず知らずのうちにメンバーのアイデアを埋もれさせてしまうことがあるけれど、内向的なリーダーは、メンバーがアイデアを出し、活躍できるようにしてくれるからです。
つまり、内向的なリーダーは、自分が前へ前へと出ないぶん、1歩下がって俯瞰し、状況を把握しながら、他者のアイデアや意見を活かすことに長けているということです。
2. 内向的な人は「目立つことを嫌うから言葉に力がある」
歴史的な変革を成し遂げたリーダーは、内向的な人が 多いとスーザン・ケイン氏はいいます。同氏が例に挙げているのは、アメリカ合衆国第32代大統領フランクリン・ルーズベルトの妻で、リベラル派の婦人運動家として活躍したエレノア・ルーズベルト氏、公民権運動活動家のローザ・パークス氏、インドの政治指導者マハトマ・ガンディー氏です。
自分は内気な人間だと語る彼らは、表立つことを嫌がっていたにもかかわらず、自身が信じることを行ううち、世の中の注目を浴びるようになりました。
ニューヨークのコーネル大学の神経生物学者らが行った研究によると、外向的な人は、周りの環境からの刺激よって報酬系の神経系が活性化され、ドーパミンが放出されて気分が良くなるのに対し、内向的な人はそうならないとのこと。
つまり、内向的な人が強い信念を持って何かを訴えるとき、注目を浴びて心地が良くなるようなことはないわけです。そんな彼らが伝える言葉には切実な思いが表れ、想像以上のパワーが発せられることでしょう。
ちなみにスピーチ専門家であり、『静けさの影響: 内向的な人が自分を変えるためのガイド』の著者でもあるジェニファー・B・カーンウェイラー博士は、「“話す”ことを仕事とする人の、少なくとも半数は内向的」だと話しているそうです。
3. 内向的な人は「よく考えているから思考力が高い」
メンタリストのDaiGoさんによると、アメリカの発達心理学者ジェローム・ケーガン氏は、「内向的な人は高反応であり、外交的な人は低反応である」と述べているのだとか。これは、どちらが良い・悪いというわけではなく、「内向的な人は、外部の刺激にとても敏感」ということです。
心理学者のブライアン・リトル氏も、「内向的な人と外向的な人では、周囲への警戒心や反応が異なる」と指摘しているそう。前項の研究結果にも通じますが、外交的な人とは違い、内向的な人は中枢神経を刺激されてもワクワクせず、逆に疲れてしまうというわけです。
しかし、外部の刺激に対して過敏だからこそ、自分の内側に入り、考える作業に向かいやすいとDaiGoさんはいいます。したがって、内向的な人は考えることによく慣れており、圧倒的な思考力を持っているのです。リーダーには、必要不可欠ですよね。
4. 内向的な人は「自制心があるから成功できる」
また、メンタリストのDaiGoさんは、「内向的な人は、自分を抑える能力がある」とも述べています。その能力は、経済的な部分で有利に働くのだとか。
行動経済学では定番の実験に、「今すぐに1万円もらうか、1週間後に1万500円をもらうか、いずれかを選択する」というものがあります。こうした実験で、内向的な人が選ぶ確率が多いのは後者の「1週間待つほう」なのだとか。
少し待って、500円という金利がついたお金を受け取る自制心が、経済的な部分で有利に働くというわけです。前項で述べたとおり思慮深い内向的な人々は、目先の利益にとらわれず、長い目で見た場合の利益を考慮したうえで、アクションを起こせるはずです。
これも、リーダーには大切なことだといえるでしょう。
5. 内向的な人は「創造性に満ちたリーダーの素質を持つ」
スーザン・ケイン氏はTEDのスピーチのなかで、極めて創造的な人々が、非常に強い内向的な面を持つと伝えています。
たとえば、イギリスの自然科学者チャールズ・ロバート・ダーウィン氏は、1人で森を長時間散歩することが多く、パーティの招待は断っていたそう。また、ドクター・スースとして知られるアメリカの絵本作家、画家、詩人のセオドア・ガイゼル氏は、自宅裏にあった孤独の塔のような書斎で数々の創作を生み出していたのだとか。アップルの共同設立者のひとりスティーブ・ウォズニアック氏も、いつも自室に1人閉じこもっていたそう。
株式会社インバスケット研究所代表取締役の鳥原隆志氏は、著書『AI時代のリーダーの原則』のなかで、これからのリーダーには創造力が不可欠であることを伝えています。前例がある・なしで判断していては、激変するビジネス環境のなかで戦っていけないとのこと。今までとは違う考え方でアイデアを出し、チームを劇的に変えていく――いわゆるイノベーションに必要なのは、創造力なのです。
つまり、内向的な人々は、これからのリーダーに必要な創造性を持っている可能性が高いというわけです。
内向性とシャイは違うもの?
スーザン・ケイン氏によれば、文字通り「内向性(Introversion)」は、「シャイ(shy)」とは違うものなのだそう。内向性は「社会など周りからの刺激に対して敏感」ということであり、シャイは「周りからの評価を気にして恐れる」ことだそうです。同氏は、「内向的な人は外からの刺激を求めず、静かで目立たない環境でイキイキと、その能力を余すことなく使うでしょう」と伝えています。
*** 「自分は内向的だから、リーダーなんて絶対に無理」とは、決して思わないでください。あなたは、あふれる創造力と、思慮深さや自制心を持ち、皆のアイデアをうまく活かせるリーダーの素質を持っているかもかもしれないのですから!
(参考) プレジデントオンライン|実は「内向的な人」ほど成功を掴みやすい TED Talk|スーザン・ケイン 「内向的な人が秘めている力」 HuffPost Japan|シャイとは違う。内向的な人のコミュニケーションの10の特徴 Live Science: The Most Interesting Articles, Mysteries & Discoveries|Extroverts Link Good Feelings to Their Environment 鳥原隆志著(2018),『AI時代のリーダーの原則』,ベストセラーズ.