医師×ハーバード×MBA。猪俣武範氏の『最強の勉強法』を東大生が試してみた。

資格やスキルアップのために勉強をしたいけれど、忙しくてうまく時間を確保できない……。そんなふうに悩んでいませんか?

実際、勉強には時間が必要ですし、仕事などで疲れきっているとついつい先延ばしにしてしまいがちですよね。筆者自身、日々の忙しさに追われ、大学院入試の勉強時間を上手に確保することができずに悩んでいた時期がありました。

そんなときに出会ったのが、猪俣武範氏の『最強の勉強法』という一冊でした。忙しい人でもしっかりと勉強時間を確保して着実にステップアップしていく方法として、これだけ鮮やかに解説されている本はなかなかないのではないでしょうか。そして筆者もそれを実践してみたことで、生活を組み替えて忙しいなかでのコンスタントな勉強を実現することができました。

そこで今回は、実際に「最強の勉強法」を実践してみて感じたことを詳細にレポートしたいと思います。

「最強の勉強法」とは?

『最強の勉強法』の著者である猪俣氏は、医学部卒業後に医師として研鑽を積みつつ英語を勉強し、ハーバード大学へ留学。並行してボストン大学でエグゼクティブMBAを取得し、現在は病院に勤務しながら、IoT(モノのインターネット)を医療に応用するIoMT(医療機器のインターネット)の普及を目指す社団法人を設立するという卓越した経歴の持ち主であり、現在業界の第一線で活躍する一流のビジネスパーソンです。

そんな彼が、医師として活躍しながらの留学、ハーバード大学で医学を学びながらのボストン大学でのエグゼクティブMBAの取得など「超多忙のなかでのスキルアップ」を実現するために編み出したのが、この本に収められている「最強の勉強法」になります。

「最強の勉強法」は、その大きな効果とは裏腹に、シンプルなふたつの方針で成立しています。それは「無駄な時間の排除」と「優先順位の明確化」です。この2つを行なうことで、同じだけの期間でも最大限の効率で成果に近づくことが可能となるのです。

最強のメソッド1:無駄な時間の排除

猪俣氏は、週末などにまとめて勉強時間を確保するのではなく、スキマ時間を勉強時間として活用していくことを提唱しています。“週末に5時間” というようにまとめて勉強するよりも、平日に毎日1時間ずつコツコツと続けるほうが、人間の集中力や記憶のメカニズムなどの観点からも効率が良くなるのだそう。

しかし、スキマ時間を活用すること自体が意外と難しいもの。それを実現させるために、猪俣氏は「ディストラクションタイムを減らす」という方法を提示しています。ディストラクションタイムとは、集中力を削がれるような時間のこと。例えば、勉強の最中にメールなどの連絡が来てしまい、返信のために勉強を中断しなければならないようなときがそれにあたります。こういった時間をなくすために、「朝〇時から夕方△時まではメールチェックをしない」などのように、時間を区切ってそれらの「邪魔」を排除するのです。

実際にこれ、かなり効きます。筆者の場合は通学に片道1時間ほどかかっているので、その時間をフルに利用できれば毎日約2時間の勉強時間を確保することが可能でした。しかし実際、電車に乗って最初にすることといえば、SNSのチェックやネットニュースの回遊など……。ひと段落つけてようやく単語帳を開くころには、すでに通学時間も半分以上が過ぎているということも少なくはありませんでした。

しかしマイルールとして「電車に乗ったらスマートフォンの電源を切る」を設定してからは、通学時間に集中して勉強ができるようになりました。その結果、それまでどうしても長時間かかっていた専門文献の読みこなしが進み、コンスタントに週2~3冊を処理するという目標を達成するに至ったのです。

そのほかにも、生活の中には注意してみると非常に多くのディストラクションタイムが存在しており、それを排除していくことで、「自分の生活はこんなにも非効率的だったのか」と、つらい現実を突きつけられることにもなりました。

もし今、限られたなかでせいいっぱいやっているのだと思っている人は、一度この「ディストラクションタイム」に注目してみることで、時間の有効活用のための鍵がまたひとつ見つかるかもしれませんよ。

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最強のメソッド2:優先順位の明確化

スキマ時間の活用で時間を捻出したとしても、時間は決して無尽蔵ではありません。限られた時間のなかで最大限の効率化を図るためには、何よりも「優先順位の明確化」が重要になってきます。

医師である猪俣氏は、その優先順位の選別方法として、救急医療の領域で用いられている「トリアージ」の考え方を導入しています。そのために必要なのはまず、自分のタスクを一覧として明確に管理するということです。

皆さんは今、自分がやらなければならないことをきちんと全て把握していますか。「忘れるはずはない」と思うかもしれませんが、忘れていないことと「きちんと把握している」ことはまた別の話。一覧でのタスク管理を行なっていない人は、一度ご自身が抱えているタスクを一覧として書き出してみてください。「そうだ、これもあった!」と、あまり意識していなかったタスクがひとつやふたつ出てくるはず。そういうタスクは期限ぎりぎりになったときに慌てて取りかかることになり、結果として自分のペースを崩してしまう原因になります。

タスクの一覧化が完了したら、「トリアージ」の手法に基づいて優先順位を設定していきます。このとき重要になってくるのが、トリアージが基準とするのが “緊急性” であるということ。“緊急性” があるとはすなわち、重要度が高く期限が近いタスクということになります。

皆さんの中にも、「このタスクは比較的楽だから……」「ちょうど気が向いたから……」と、難易度や気分によってタスク処理の順番を安易に決めてしまったことのある方もいるはず。しかしそれを行なってしまうと、「緊急性が高いけれども重たいタスク」がどんどん先送りにされ、期限が過ぎてしまったり、期限ぎりぎりになってタスクに振り回されたりしてしまいます。これを「トリアージ」で防ぐことで、スケジュールが安定し、習慣が崩れることも防げるのです。

筆者の場合、デッドライン症候群ともいわれる「ぎりぎりにならなければ手をつけられない」という悪癖があり、何とかしなければと思いながらも、なかなか改善することができずにいました。しかしこの方法を採用したことで、見事にこのデッドライン症候群から脱却することに成功したのです。その結果として、メソッド1で紹介したようなコンスタントな学習の習慣を定着させるのにも苦労しなかったのだと思います。

効率を求めるためには「習慣の力」は必要不可欠になってきます。その力を自分の味方につけるためにも、トリアージでタスク管理をするのは非常に重要なことなのです。

「最強の勉強法」のすごい効果

限られた時間を有効活用するのは、忙しい現代人にとって至上命題ともいえるでしょう。しかしそれがわかっていても、いざ実践に移すのはなかなか難しく、気づけばまた非効率的な生活に戻ってしまっているというのが以前の筆者でした。

そんな筆者がこの「最強の勉強法」に取り組んでみて実感したのは、「スケジュールに安定をもたらす」ことと「習慣の力を味方につける」ことの合わせ技が驚くほどに大きな効果を持っているということでした。それにより、今までは思うように進められずにストレスの種になっていた大学院入試の勉強が捗り、むしろ生活に好循環を生み出す原動力にまで変貌することとなりました。

すぼらなせいで習慣づけがうまくできない……。何かに追われているうちに、実践していた「新たな習慣」がなおざりになる……。こんな悩みを持っている方にこそ、この「最強の勉強法」をぜひ実践してもらいたく思います。いつの間にか習慣づけに成功している自分自身に、必ずや驚くことになるはずです。

(参考)
猪俣武範 (2016),『ハーバード×MBA×医師 目標を次々に達成する人の最強の勉強法』, ディスカヴァー・トゥエンティワン.
眼科医 猪俣武範オフィシャルサイト

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