「時間があればやろう」「時間ができたときにやろう」
そんな言葉で、やるべき行動を先延ばしにしていませんか? 「なんでいつも自分はやるべきことをやらないんだろう。気合いが足りないのか」と必要以上に落ち込む必要はないそうです。なぜなら、行動が起こせない原因は「時間や気合いのなさ」ではなく、「認知」にあるから。
実際に行動に起こすには、まずは頭の中で何が起きているかをとらえ、それらを解きほぐしていく事が必要です。本書では、そのプロセスを詳細に学ぶことが出来ます。
思考停止の仕組み
目の前のタスクに追われているようで、実は一向に進んでいないという経験はありませんか? 「考えているけど進んでいない」のは、思考のコンフリクト(衝突)が起きているから。
私たちの頭の中には、考えを同時並行で処理できる「ワーキングメモリー」がありますが、これは通常「7±2」、つまり5~9つの情報処理ができます。これ以上の情報処理をしようとしたときに、焦りだけが募り、行動できなくなってしまいます。
これを回避するためには「見える化」すれば良い、と本書では様々な「見える化」の方法を紹介しています。
10秒間のマインドチェンジ
行動するのもしないのも、実はそれらは「その時の気分」で決まってしまうそう。なんと非科学的なものでしょうか。しかしそうと分かれば、「なんとなくやりたい気分」を引き起こせば良いわけですね。自分の気分を味方につけ、ポジティブに行動していくための5ステップをご紹介します。
1.「気分は選択できる」と知る
私たちの気分には、「社交的」「活動的」「跳躍」といった陽の気分と、「内省的」「冷静」「静止」といった陰の気分の二種類があります。これらはどちらが良いという訳ではなく、その場面に適した気分でありさえすればよいのです。これを使い分けるためには「どちらか片方の気分しか心に置いておけない」ということを知ることが大切です。
2.「感情表現の3要素(表情・動作・言葉)」で気分を変える
●表情
悲しい表情をすれば、悲しくなくても悲しくなり、飛び切りの笑顔をつくると楽しくなる。この性質を利用するのです。顔の表情を変えて表情に連動した感情を導き出して、その感情にふさわしい気分を生み出すのです。
「楽しいから笑うのではなく、笑っているから楽しいんだ」ということですね。
●動作
動作によって気分を切り替えている例は、例えばシンクロナイズドスイミング。オリンピック銅メダリスト、田中ウェルヴェ京さんは次のように語っています。
「試合前によくあれだけの笑顔が出来ますね」と驚かれることがありますが、逆なのです、一生懸命笑顔を作って胸を張って歩かないとプレッシャーに押しつぶされてしまうんです。
●言葉
自分の心に合った言葉を口に出すことで、内面と外見を一致させることが出来ます。成功したら「やったー!」と叫んだり、嫌なことをされたときには「ばかやろー!」と声にするのです。まずは自分の気分を正しく把握することで、その後の対応がスムーズにできるようになります。
3. リマインドで気分を変える
楽しいことを思い出すのも効果的です。腹が立つことに直面したら、おかしなエピソードを思い浮かべて、大げさに笑ってみましょう。それだけで、目の前のトラブルが不思議なくらい小さく感じます。
4. イメージングで気分を変える
恋愛映画を見たあとは、なんだか優しい気分、アクション映画を見たあとは、なんだかすっきりした気分になっていませんか? これは「視座の転換」が起きているから。実際に経験したことでも、未来のことでも妄想でも、ある風景に自分を置くと気分が変わるものなのです。
5. 環境から気分を変える
気分は環境によっても大きく影響を受けます。「Aという案件はカフェで、Bはオフィスで」というように使い分けると、気分も変わりはかどることがあるようです。
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このような人間の脳や認知の仕組みをよく知り利用することで、「すぐやる人」に近づきます。最終章では「具体的にどんな行動を起こしたら人生が変わるか」という普遍的な話題も述べられているので、一瞬で判断して行動に移せる人に向って早速一歩踏み出してみてください。
(参考)
藤由達藏 (2015),『結局、「すぐやる人」がすべてを手に入れる』, 青春出版社.